俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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【古都内乱編】開始…といってもあんまり進まない…。

そして唐突に現れるオリジナルキャラが登場します。(フレーバー程度)
そして仄めかされる八幡の存在とその関係…。

それではどうぞ!



『古都内乱編~八幡と巡る想い出と誓いの証を』
忌まわしき(大切な)記憶


『はん、数字落ち(エクストラ)が俺達に楯突くんじゃねーよ?』

 

『ほんとに数字落ち(エクストラ)の癖に俺達より成績上とか…カンニングでもしたんじゃねーの?』

 

『あんたみたいなのがうちのクラスにいると評価が落ちるんだけど?』

 

懐かしい夢を見た。

あれは比企谷の家を出る当日だっただろうか?

 

校舎の裏側、三年に進級し呼び出された少年は無抵抗であり学生服を着用した男女に蹴る殴るの暴行を受けていた。

受けていた、受けていたのだが…その攻撃受け流してあるときは受けて、を繰り返していた。

その三名は家の名前は忘れたが百家の家系だったか師補十八家だったか忘れてしまったが所謂「エリート」だったな、と。

まぁ、今となってはどうでも良いことだろう。

 

教室に戻れば目の前の少年少女は良い子ちゃんに猫かぶりして担任の教師やクラスメイトはその事に気が付こうともしなかった。

学校、という社会のなかで少年は”孤立”させられていた。

このときの少年の心情的には《味方などいない》というのが当たり前であった。

 

しかし、いくら強靭な精神と肉体だとしても自身が思うより限界に近づいてきていることに気がついていない。

涼しい顔をして実行犯をその蒼縁メガネの裏にかくれた黄金色の瞳で射貫く。

 

「……。」

 

『なんだその目は…良いのかぁ?お前に妹いたよな?それにあの奉仕部の二人…手を出されたくなかった…大人しく喰らってろ比企谷っ!』

 

「…ッ!!」

 

知り合いに危害を加える、といわれ視界が赤く染まり目の前の少年に殺意を覚える。

気が昂りすぎた虐める側の人間が懐からCADを取り出して魔法を発動するのを確認した取り巻きの少年少女はぎょっとした顔を浮かべ静止しようとするがもう遅い。

 

起動式の構築が完了し魔法が解き放たれた。

『エアブリット』の兆候を確認した少年はそれが自分に着弾する前に【詠唱破棄】による【術式解体】で無力化する。

 

『へぇっ?…ぐぼらっ!?』

 

この数年、今までは自分で虐めてきた相手に手を出さなかった。

魔法を無力化され間の抜けた声を出す少年の顔面に振り抜いた魔法を纏っていない拳が突き刺さる。

ぐちゅり、となにかが砕けた感触と生暖かい液体が拳に付着し自分を苛めていた少年、妹と自分の大切な少女達への危害を加える、のその外道な一言に抑圧されていた鋼の拘束が破壊され暴力性が解放された。

 

顔を殴られた魔法師の少年の顔は見るも無惨な流血と変形をしていた。

 

「……。」

 

「う、うわぁ!」

 

「ひ、ひぃっ!?」

 

今まで反撃などしてこなかった少年が殴り殺さん勢いで加害者を魔法を纏わない純粋な拳一つで黙らせた。

その事に取り巻きの少年少女はその虐めの実行者を見捨てて声を挙げて逃げ出したがそれを眺める目はひどく虚ろで「どうでも良い」という感情が渦巻いている。

 

少年はため息を付いて壊され破かれた外に出ていた教科書を鞄に突っ込み立ち去ろうとしたが虐めの当事者が後ろで呻いて煩いので加重系統魔法の振動で気絶させて顔の傷を治してその場から立ち去る。

 

部室棟の裏側に移動し自分に与えられた魔法を使い傷を癒し破壊された教科書を修復していく。

 

「…こんなになるまで壊しやがって。」

 

もったいねぇだろうが…と見当違いな事を言っているが指摘する者は誰もいない。

傷を癒して日々のルーチンとなっている部活棟の階段を登っていく。

 

「……。」

 

扉に手を掛ける。

 

奥には人の気配が三名。しかし、ある種のセーフゾーンの扉を開こうとするが開けなかった。

その日その部室に顔を出すこと無く帰宅しそれがある意味での今生の別れになるとは。

 

その場から立ち去るために一歩踏み出した次の瞬間。

 

『……………!…………。……………!』

 

『………。……………!…、…………、…!』

 

次の瞬間に少年は学校の通路ではなく暗闇の中にいた。

大切な二人の少女が迎え入れるのではなく叱責されたシーンがリフレインする。

 

吐き気がする。

 

中学の修学旅行の際に部活に依頼が入ってきた依頼。

少年が今いる場所が修学旅行、京都での雑木林での一幕になった場所だ。

 

その時は依頼の事など頭から抜けていた。

二人の少女からその言葉を、好意を向けられて俺は逃げていた。今の関係が壊れてしまう。

 

その事件以来俺は様々なことに巻き込まれたを思い出す。

 

文化祭の件、生徒会長立候補の件。

それら以降、学校の『悪役』に選ばれたことで”部活”に顔を出しにくくなった。

 

『修学旅行の際に告白を邪魔したくそ野郎』

『文化祭の実行委員長を責め立てて泣かせた』

『あの『一色』に取り入るために比企谷家の長男が『一色の娘』を自作自演で生徒会長に立候補させたあげく手助けした。』

 

上履きは墨まみれ、教科書はずたぼろ。机には動物の死体。囲まれてリンチは日常茶飯事。

過酷な環境、どんな苛めにあっていても少年が信じた二人の少女を巻き込むわけにいかなかった。

だから二人を遠ざけた。

 

暗転する。

 

『あら、遅かったわね”比企谷くん”』

 

『”ヒッキー”遅いよ!』

 

『ーーーーー。ーーーーーー。』

 

いつも通りの口調で出迎えてくれるそれがある種の日常をを失った、ということを理解した。

 

◆ ◆ ◆

 

「……っ…懐かしい夢…見たな。」

 

ベッドから起きる。

秋口だというのに妙な不快な暑さが俺に纏わり付き汗を掻いて引っ付いていたのを拭う。

寝巻きは湿っており気持ちが悪い。

 

「ちっ…」

 

不意に手に残る感触に顔をしかめそうになった。

彼女達の夢を見るのは久々だった。

 

ベッドの上で上半身を起こしてシーツを握り締めてまるで過去にすがっている自分に嫌気が差した。

 

◆ ◆ ◆

 

9月に入り話題は10月に行われる論文コンペの話題で学校が持ちきりだった。

 

「そう言えばさ、八幡は論文コンペにでないの?」

 

いつものように登校し授業を受けて昼食時何時ものメンバーで集まり取っているとエリカから質問が飛んできた。

やはり、というべきかその話題は投げ掛けられる。

 

「……。」

 

「あ、あれ…?」

 

エリカの質問に無意識だったのだろうげんなりしているようでそれを感じ取ったほのかが怪訝な顔を浮かべている。

それに釣られるように全員が顔色を窺っている。

黙ってしまったことに若干の後悔を覚えていたが後の祭りか。

 

「…ああ、すまんちょっとボーッとしてた…いや、大したことじゃない…論文コンペに出ないかって言われたんだが興味ない、って断った。そこにいる何食わぬ顔した野郎が蹴ったから俺に回ってきたんだがな…。」

 

視線は今度達也に向かい困ったような表情を浮かべている。

 

「え、断ったの?あ、でも達也くんは出ないんだ。」

 

「ああ。深い意味はないんだが…単純に間に合わなかったんだ。今手に付けている研究が忙しくてな。」

 

そう達也が告げると全員が「へぇ~」と頷いていた。

一先ずはこの話題に終止符を打ったと思ったんだが…。

 

「八幡は論文サポート、というか護衛を受け持ってないの?」

 

「…いや、今のところ頼まれてない。」

 

「えっ、何故です?」

 

エリカを回避したと思ったら今度は美月が不思議そうに首を傾げている。

 

「まぁぶっちゃけるとその話がまだ俺まできてない、ってのあるし…そういや深雪、今年の論文コンペって会場また横浜か?去年みたいにどっかの誰かが攻めてきたりしたらたまらんぞ?」

 

「お前…そういうことさらっと言うよな…。」

 

レオが若干引き気味にしていると苦笑いが伝播した。

何でだよ。

 

「論文コンペティションはその年で会場が変わりますよ?去年は横浜でしたけど今年は、」

 

その開催地に少しだけ耳を疑った。

 

「”京都”ですから。」

 

開催場所を教えてくれた瞬間に途切れ途切れにあの時言われた言葉が思い出される。

 

 

『貴方のやり方嫌いだわ…あなた一人で○○○○……!貴方が傷つくのはもっと嫌い…!』

 

『………!私、ヒッキーの事…○○、なのに!ヒッキーが傷つく必要ないじゃん!私そんなに頼りないかな…!』

 

 

「………っ。」

 

「八幡?大丈夫?急に神妙な顔になってたけど…。」

 

表情が変わったことに怪訝な顔を向けるエリカ。

悟られるわけにも行かずに普段通りに対応した。

 

「いや、何でもない。今年は京都なのね…。」

 

「論文コンペは横浜と京都で交互に開催されますが今年は京都、その場所によって評価の傾向が違いますからね。横浜の場合は技術的な理論が好まれますが、京都の場合は純理論が好まれるらしいですからね…八幡さん的には前者の会場の方が好まれるのですよね?」

 

深雪が微妙な空気になっていたのを会話によって無理矢理変えたのに驚いたが今それが自分にとって非常に有り難いものだったので乗ることにした。

 

「まぁ深雪の言うとおり前者の方が俺が好むものだしなぁ…それに幾らリニアモーターが進化した、といっても数時間揺られるのは正直…面倒くさい。」

 

「ダメですよ八幡さん。」

 

「八幡らしい。」

 

「だ、ダメですよ八幡さんっ」

 

「それに八幡は風紀副委員長だから行かない、ってのは無理だとおもうわよ?」

 

そんな会話をしていると次の授業の予鈴がなったので大急ぎで片付けてそれぞれにクラスに戻っていった。

 

しかし、京都、か…行きたくねぇな、と八幡は今度開催される論文コンペティションについて誰にも理解できない憂鬱さを持っていた。

 

◆ ◆ ◆

 

九月に入ると当然ながら生徒総会、並びに生徒会長選挙が行われつつがなく終了した。

去年は【スノークイーン深雪】と【覇王七草】が爆誕したわけだが…今年はそんなイレギュラーな事は起こらず当然ながら生徒会長に就任を決めたのは深雪であり現代の選挙権を持つ大人に見習わせたいまさかの投票率が百パーセントであり対抗馬は数名出ていたが圧倒的投票数であったことは想像に固くない。

 

それは深雪の人徳と人気ゆえ、それとも恐怖政治による心酔か…真相は闇の中である。

 

さて無事に生徒会長選挙が終わった八幡&達也グループそして下級生を含むメンバー達はいつもの喫茶店をほぼ貸し切りの状態で就任祝いをしていた。

 

「それでは~皆さん!深雪の生徒会長就任を祝って…乾杯!」

 

エリカが音頭を取りこの場にいる全員が頭上少し上に高々とソフトドリンクが掲げられていた。

この場に集ったのはいつものメンバー…以外にも意外な人物がいた。

 

「さ、七草先輩…俺はここにいても良いんでしょうか?」

 

困惑する七宝琢磨の姿が有り上級生達が優しげな視線を向けているが七草の双子は「何であんたがいんの?」といった感じで見ており小町は「始まったかぁ…」といった様子で見ている。

 

問いかけは八幡にだったのだが…。

 

「…良いんじゃないか?小町に誘われたんなら俺が拒む理由はねぇし。」

 

そう淡白に返答し手にしたグラスに口を付けて一口煽った。

 

ホッとする七宝を尻目に怪訝に思い小声で会話する双子。

 

「ねぇ泉美…?」

 

「なんですか香澄ちゃん。」

 

「なんだかおにぃ…変じゃない?」

 

「香澄ちゃんもですか?…実は私もそう思っていました。小町ちゃんに近づいている七宝君に殺気を向けないなんて…御加減が悪いのでしょうか…?」

 

「でも小町は何も心配してなさそうだし…大丈夫、だよね?」

 

「はい、大丈夫…だと思いますけど…。」

 

普段と様子が違う兄を心配する双子だったがそれでも普段通りクラスメイト達と会話をしているのを見て杞憂かもしれない、と手にしたグラスに注がれたオレンジ色の液体を煽った。

 

「まぁしかし…順当といえば順当よね?」

 

乾杯を終えての開口一番にエリカが告げると反対意見を述べるものは誰も居なかった。

 

「そ、そうかしら…私以外にも相応しい人がいたと思うのだけれど。」

 

深雪がそう告げて一部を見る。

 

「……なんで俺を見るんだ?」

 

深雪が視線を向けると全員の視線が八幡に突き刺さり傾けていたグラスを戻し疑問の声を浮かべるが「あぁ…」妙に納得したような声を挙げていると泉美が急に興奮し出す患者のようにエキサイトし始めた。

 

「当然です!お兄様が当校の生徒会長に相応しい器です!実力!才能!ルックス!何気ない女性への扱い!…はちょっともやっとしますが…!実際に司波先輩いらっしゃらなければ投票結果は火を見るよりも明らかだったでは有りませんか?…司波先輩も当校の生徒会長に相応しい逸材、だと思いますが。」

 

実際に対抗馬で出ていた生徒はいたが次点で最も多かったのは八幡であり十分一校の生徒会長として選出されるに値されている。

 

「そ、そうか…でも俺みたいな冴えない男が生徒会長やるよりも深雪みたいな美人が務めた方が生徒のやる気もあがんだろ…それに俺は誰かを率いて、ってのは好きじゃないんだ…でもありがとうな泉美。」

 

変なテンションになっている泉美を落ち着かせるために一旦肯定的な感想を述べる。

 

「お兄様…。」

 

「は、八幡さん…そんな美人だなんて…///」

 

顔を赤くする二人の妹達の光景に達也と八幡は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「そういえば生徒会役員を決めたの?」

 

そんな中誰もが声を掛けづらい状況の中で果敢に声を掛け問いかけてきたのは雫だった。

エキサイトしている妹二人を完全に視界から外していたが。

 

雫の発言に我に返った深雪、その内容に同じ生徒会に所属するほのかと泉美が興味津々に見つめ彼女達の目は八幡を行ったり来たりしている。

 

「副会長は泉美さんにお願いしようと思うの。」

 

その返答に一瞬だが落胆したような表情を見せようとした泉美を八幡が軽く叱り付けると自分でも不味いと思ったのか先輩に対する姿勢を改めてお辞儀をしていた。

 

(なんで本当にウチの妹達は深雪とほのかと仲が悪いんだろうか…?)

 

そんなことを考えていると深雪が爆弾発言を投下した。

 

「他の役員はまだ決めかねているの。ほのかにも手伝って欲しいと思っているのだけれど…。」

 

そう言って、深雪はほのかではなく八幡をちらり、と見てそう言った。

 

「……。ん?なんか言ったか?」

 

が、その熱視線に上の空、と言った感じで何処かを遠くに見つめながらグラスに注がれれた液体を煽っていた。

全員が八幡の様子がおかしい、と感じ取っていたが指摘できるものは誰も居なかった。

 

◆ ◆ ◆

 

一部の女子が大騒ぎした祝勝会?は和やかに終了した。

明日が休み、ということもあって全員が店を出たのは日没前でそこから兄妹で七草家に戻る頃には茜色から群青色へ景色が変わっていた。

 

喫茶店で軽食を注文し食していたがかなりの量があったため兄妹は夕食を取らないと決めて香澄と泉美、小町はその日はシャワーやお風呂に入って雑談をしている。

八幡も妙な疲れを感じていたのでそのまま…と行きたかったが部屋に戻り暫くすると名倉が部屋に訪れた。

 

「弘一様がお呼びでございます。」

 

弘一の書斎に呼び出された八幡が入室すると既に真由美の姿あり部屋に入ってきた八幡を確認した部屋の主は短く「掛けなさい」とだけ促してソファーへ真由美と隣り合うように腰かける。

 

「さて…お前達の耳に入れておく必要がある情報があってな…疲れているところ悪いが少し付き合ってもらうよ。」

 

学生のバカ騒ぎと父親の十師族の仕事を秤に掛けないでくれ、と内心で思いながら八幡と真由美は「大丈夫」と返答した。

 

「先月の九校戦での行われた【P兵器】の実験…亡命を装いその制御術式に改編に留まらず去年の『横浜事変』に深くか関わってるとされる周公瑾という人物が横浜で四葉の分家である黒羽家からの追撃を逃れて反撃の機会を伺っている、という情報が入ってきている。」

 

差し出された写真にはスリーピースを着こなす秀麗な美男子の姿があった。

 

「周公瑾?」

 

「……。」

 

真由美は聞いたこともない、と言った感じだったが八幡は聞き覚え、”覗き覚え”があった。

論文コンペの際に大陸系統の暗示魔法を掛けられ研究装置の破壊や達也へ危害を加えようとしたが実行初日に阻止され病院に入院している時に【記憶読込】で覗いた際に周、という名前とその見た目を覚えていたからだ。

 

「それでなんで今この男の情報を俺たちに出したんだ?」

 

「ああ。四葉家でも黒羽、と言えば諜報、暗殺を生業とする筆頭分家でありそこの黒羽の当主が取り逃がした、となればその重要さを理解できるか?」

 

「四葉の実力者が取り逃すほどに危険な人物が日本国内に潜伏していていつ火種になるかわからない、ってことか?」

 

「そういうことだ。」

 

八幡の発言に満足げに頷く父親を見て若干あきれたような表情を浮かべる真由美だったが言葉には出さずにただ見つめている。

 

「今分かっているのは横浜を脱出した後に海路西に向かい太平洋側に向かったところを再び四葉家に阻止され伊勢に上陸し北上した周公瑾が琵琶湖で捕捉されたが取り逃がしたようで」

 

父が告げた今周が潜伏しているとされる場所を告げると思わず眉をひそめた。

 

「”京都”へ潜伏しているものと見られる。」

 

「………。(また京都か…一体何なんだ?)」

 

続けざまに話題に出る”京都”という話題に八幡は内心うんざりしていた。

 

「お父様、その支援者についての情報は?」

 

真由美がお父さん、ではなくお父様呼びするのはある意味での公の場であるからか。

 

「ああ。もちろんある。…周公瑾を匿っているのが『九』と対立関係にある古式魔法師の組織…【伝統派】と呼ばれる組織が逃亡の支援を行っていようだ。」

 

「伝統派…八くんはなにか知ってる?」

 

「国内にはぐれた古式魔法師を集めてるだけじゃなく大陸からの方術士を取り込んでの組織強化をやってるとかなんとか…それにこの間の事件で九島家に転がり込んできた亡命方術士がいたみたいだが敵対してた伝統派に逃げ込んだって話だったな…まぁ調べてくれてた佐織に確認してたんだが。それにしても連中、昔の僧兵…本願寺みたいだな。」

 

「ああ。八幡の言うとおり今回の件は【伝統派】が一枚噛んでおりある意味で九島家は被害者だ。まぁ真言殿に関しては自業自得、と評した方が言いかもしれんが…。」

 

「お父様。」

 

その事について真由美が窘めると軽く咳払いをして本件を告げた。

何時ものような雰囲気とは違い父親・七草弘一ではなく十師族七草家・七草弘一として変化した。

 

「…今回”あの四葉家からの追撃を逃れた”周公瑾、彼は昨年から続く日本魔法師への批判や攻撃を先導している中心人物である可能性が非常に高い。そんな人物を日本国内に留めておくことは十師族を担う七草家当主として看過できるレベルの話でない。明らかに益に反する人物だ。」

 

そこで一旦言葉を区切り八幡と真由美へ視線を向けた。

 

「真由美、お前は七草の実働隊を指揮して周公瑾の居場所を九島家と協力して明らかにしてくれ。」

 

「ですけどお父様…九島家が協力してくれるとは…。」

 

懸念の色を浮かべる真由美だったがそれはあっさりと解決した。

 

「そこは問題ない。その事を告げたら九島先生が「是非とも協力をさせて欲しい」と快諾してくださってな。元々【伝統派】と対立をしているからな…先生もその辺り丁度良い、と考えていらっしゃるのだろう。一先ず、生駒の九島家本邸に行ってもらうが」

 

そう言って八幡を見る弘一。

 

「そして八幡は場所が割れ次第対象の無力化、捕縛を頼みたい。真由美は八幡の援護を。…お前の実力なら問題ないだろう?八幡。」

 

その言葉は『四葉家の分家では対象を取り逃がす失態を犯したが七草の長女、長男であれば問題ない』と言ったあからさまに挑発だった。

聞かれていないのが救いか。

 

「…分かった。」「分かりました。」

 

元より拒否権などあるわけがなく八幡と真由美は首を縦に振って了承をせざる得なかった。

《瞳》を使わずとも面倒な問題に巻き込まれる”予感”がしていた。

 

◆ ◆ ◆

 

時を同じくして司波家。

そのリビングにて画面の向こうに映る人物とテーブル席に着いている女性が会話をしていた。

その内容は先程まで弘一が八幡と真由美に言い伝えて居た内容だ。

 

「…ということよ姉さん。今回貢さんが深傷を負わせられ逃げおうせている周公瑾の”捕縛”に達也さんに”協力”をお願いしたいと思っているの。」

 

「それは分かったけれど…その周某を探すには骨が折れるんじゃないかしら?今その対象は京都…【伝統派】の拠点なのでしょう?現地の協力者を頼まないと探し抜くのは無理だと思うわ。七草家と九島家に協力の打診はしたの?」

 

深夜は前提として今回の周公瑾の捜索に七草家も関わっている…真夜にそう告げると不機嫌そうな表情を浮かべているのを見つけ溜め息を吐いた。

その光景を見ている達也と深雪、そして御付きの穂波は珍しいものを見る目で見ていたが伏せていた目が深夜に向けられる前に視線を反らす。

 

「…七草家の手は借りません。第一に四葉に連なるものが大陸の魔法師に深傷を負わされた、という事実がよくないわ。」

 

その言い分はどうにも子供の癇癪のようだ。

どうしても七草の手を借りずに解決をしたい、そう言っている。

 

「でもどうするの?大原辺りを捜査している貢さん達も重要な情報を手に入れられていない…ウチの達也は亜夜子ちゃんや文弥くんのように捜査が得意じゃないわ。むしろ後詰のお仕事向き。…それとも私の方から八幡くんに依頼を…」

 

茶化すような深夜の言いぐさに真夜が声を荒げた。

 

「…っ誰があの男の力を借りるものですかっ!!」

 

「…っ…!」

 

「深雪…」

 

真夜の聞いたこともない感情に任せた憤怒の発露に画面越しだというのに伝わり深雪が驚く。

それを見た達也が深雪の手に自分の手をおいて落ち着かせる達也が居た。

突如として怒りを現した妹に頭を抱える姉の姿。

 

「…前から気になっていたけど真夜。どうして貴女は八幡くんをそこまで敵視するの?彼は元八の家系…今は七草家の息子…それのどこが気に入らないのかしら?」

 

「姉さんには関係ないわ…七草の養子…あの目を見ると”朔夜”お姉さまを思い出す…っ!」

 

「待ちなさい真夜…どうして”お姉さま”の名前が出てくるの?」

 

「ともかく!七草家の手は借りません。周辺の足取りに関しては黒羽家と貢さん達に任せます。達也さんは周公瑾の捕縛、撃破をお願いします。」

 

「あっ、ちょっと待ちなさい真夜!」

 

一方的に通信を切り司波家のリビングには静寂が広がる。

 

「母様、叔母上は一体どうなされたのでしょうか?…何時もと違って見えましたが。」

 

「…わからないわ。あんな感情を表にして怒るなんて…幼い時ぐらいしか見たことないし…それに…」

 

「それに…?」

 

達也が考え込む深夜に聞き返すと首を振って否定した。

 

「(真夜は小さくなにかを言いたげだったけど…よく聞こえなかったわ。それに真夜と八幡くんは直接の面識がない筈…でもどうしてそんなに敵視する感情が出ていたの?)…なんでもないわ。それよりも達也、また真夜に振り回される形になるけど依頼、引き受けてくれるかしら?恐らく今回の件は八幡くん七草家も関わっている筈だからまたあの子の機嫌が悪くなっちゃうわ。…でも四葉に連なる者が害された、となれば司波家としても無視するわけには行かないわ。貧乏くじを引かせる形になるけど…お願いね、達也。」

 

「分かりました。」

 

少しはにかんでいる母親の表情を見る達也は「いや、冗談ですまなさそうだけど…?」と思いつつ母親と叔母のひいては”四葉家”の指令ということになるので断ることは出来る筈もなく頷くしかなかった。

 

「先程叔母上が”姉さま”と言っていましたが…いったいその人物は…。」

 

そう問われた深夜は懐かしそうに答えた。

 

「達也達は知らないのも無理ないわね。…姉さまは私と真夜の姉に当たる人物…”姉”と言っているけどまぁ血縁的には父…私と真夜のお母様、あなた達で言うところのお祖母さん、阿部泰夜の妹に当たる人物よ。今でも生きていれば六十を越えているんじゃないかしらね…”生きていれば”の話だけど。」

 

「生きていれば…お母様その…叔母様は亡くなられたのですか?」

 

深雪に問われて複雑そうな表情を浮かべ立ち上がりリビングにある戸棚からアルバムを引っ張って来て開きテーブルに置いた写真を見せると驚愕の表情を浮かべていた。

 

「この方が私達のお祖母さま……と言うにはその…あまりにも…」

 

「若すぎるような…。」

 

アルバムの写真には無邪気な笑顔で笑う幼い頃の深夜と真夜に抱きつかれ笑う三十代後半…ではなく二十代始めの美女の姿が写し出されていた。

 

「ほんとうにこの方がお祖母様の妹?ですか…?どう見ても…叔母様とお母様のお姉さまにしか見えないのですが…。」

 

「正真正銘お母様の妹…叔母様よ。まぁ…”叔母さん”って言われるのは嫌いな人だったわね」

 

笑みを浮かべ懐かしそうに深夜は言った。

 

「亡くなられた原因はなんだったんですか?」

 

そう達也に問われ深夜は悲しそうな表情を浮かべた。

 

「真夜の事件…崑崙方院並びに大漢壊滅の際に真夜を助け出すために亡くなったのよ。」

 

「っ…」

 

「……。」

 

口を押さえて「信じられない」と言う表情を浮かべる深雪と先代達の犠牲を噛み締める達也。

 

「叔母様は実の娘のように私と真夜を可愛がってくれていてね……子供が欲しいと言っていたのだけど子供が出来づらい身体だったの。…私の叔父、貴方達だとお祖父様の弟、四葉逢魔(よつばおうま)さんと結婚して高齢になって子供が漸く授かってあの時の叔母様は嬉しそうだったわ…。」

 

一拍置いて辛そうに告げた。

 

「でも、真夜を救い出す丁度その時…お婆様の”出産”が近づいていた。私たちに「漸く出来た私の子」と喜んでいたのに…真夜が拐われた、となったときにお父様の制止を振り切ってお婆様は自分の身を省みずに魔法が飛び交う戦場に赴き敵を屠った、とされているわ。」

 

「それでは…お祖母様のお腹の子供と逢魔叔父様は…?」

 

恐る恐る問いかける達也に深夜は無慈悲に首を横に振る。

 

「沢山の敵を葬った逢魔叔父様は魔法演算領域のオーバーヒート…それにお父様を庇って亡くなられたわ。そして叔母様は敵の魔法師の攻撃から重蔵叔父様と真夜を庇うために身重の身体を挺して亡くなられた…お腹にいた赤ん坊も共に即死だったそうよ。」

 

「そんな…っ………っ!」

 

「深雪…落ち着きなさい。」

 

「…申し訳御座いません…お母様。」

 

「いえ、大丈夫よ…すこし湿っぽい話になってしまったわ。ごめんなさいね。(叔母様の記憶は私の精神干渉がまだ甘かったから”経験”に置き換えることは出来なかった…でも叔母様と八幡くん、一体何の関係があると言うの…?分からないわ…。)」

 

アルバムの視線の先には豊かなで艶やかな黒髪を動きやすいように後ろで結ってポニーテールにして快活そうな二十代前半にしか見えない美女がいる。

 

「…そういえばお祖母様の名前は…?」

 

達也が質問をしてきたので考えを中断し告げた。

 

「旧姓 阿部”朔夜”…嫁入りされたから 四葉”朔夜”よ。」

 

◆ ◆ ◆

 

「………。」

 

部屋の明かりが落とされた書斎にソファーにもたれ込む真夜はテーブルの上に置かれたすっかり冷めてしまった紅茶が入ったティーカップを覗き込む。

 

「………。」

 

物憂げに映るその表情は妖艶な美女のものでなく年頃の少女のような幼さに見えるのは気のせいだろう。

 

「………。」

 

ぱっくりと開いた胸元のドレスのポケットから使い込まれた少し擦れてしまった銀色のロケットをおもむろに取り出し開きその中身を見て溜め息を吐く真夜。

 

ロケットの中に入っている写真は三人の姿。

一人は真夜であり家人でも見たことない笑みを浮かべ隣にいるのは真夜に袖を捕まれ困ったような表情を浮かべる”女性”とその反対側にいるのは同じく笑みを浮かべている深夜が映っている。

 

「朔夜お姉さま……。」

 

その写真に写る細めた”朔夜”の眼は美しい”黄金色”であった。

 




そして唐突に四葉の家系図に現れた【四葉逢魔】と【旧姓阿部:四葉朔夜】は一応深夜と真夜の叔父、叔母?に当たる人物です。

二人は其々魔法を逢魔は【四種八系統全般】と【精神干渉系統】を得意とする魔法師…という設定で崑崙方院壊滅時に死亡している”故人”という設定でお腹にいた赤ん坊は魔法の影響で死去しています。

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