俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

78 / 98
魔法科熱が上がっているので投稿します。
一部新キャラ?の名前に某ソシャゲのキャラの名前が使われていますが無関係ですので悪しからず(前振り)


因果応報、勿論良い意味で

狐の社から離れた八幡達は枝宮にやって来ていたのだがその中で水波は目の前の光景に思わず目を背けたくなった。見苦しい、と言う意味ではなく気恥ずかしいと言う意味でだ。

 

「さっきのキツネさんうちで飼えないかしら?」

 

「いやいや…神の御遣いを飼うなんて罰当たりな…」

 

「神様のお御遣いなら人に馴れすぎじゃないの?あれは誰かにお世話されてたわよ絶対」

 

「そうか?油揚げをあげたから懐いてただけで…」

 

目の前では二人が楽しそうに会話をしている…がその姿が問題であり距離はほぼゼロであり近すぎるのだ。もう少し近づけば腕が絡み合ってしまいそうな程に仲睦まじく隣り合って歩いているのだ。

 

「むぅ…」

 

「深雪…顔に出ているぞ?」

 

その二人の後ろ姿を達也と深雪が見ており特に後者がそれを羨ましそうに怨めしそうに見ているのを兄の達也が呆れ半分応援半分で見ていた。

 

「………///」

 

「大丈夫?水波さん」

 

「あ、はい大丈夫です…」

 

「あはは…八幡さんと真由美さんは仲睦まじくて…こっちも恥ずかしくなっちゃいそうだ」

 

その光景を見ていた光宣も同じことを思っていたようで頬を掻いて苦笑いを浮かべていた。

先輩、それにご主人のそんな恋模様を見ているだけで多感な年齢の水波は顔から火が出るほど身体が熱くなった。

そんな状況を察してか隣には光宣が移動していた。

 

そんな八幡を取り囲む恋模様の様子を見守る時間は終わった。

 

「………」

 

遊歩道の手前で八幡と達也が立ち止まる。

腕にすがり付いていた真由美はその雰囲気を察知し腕から離れその柔和な微笑みは直ぐ様警戒の色に染まることになった。

 

今日は日曜日であり観光客は疎らだがいた筈なのだがそれが遊歩道の入口に近づく程にその気配はなくなり今は八幡達しかいない。

 

人の気配が希薄になった遊歩道の入口で達也が口を開く。

 

「精神干渉魔法…結界だ」

 

「かなり高度な精神干渉系だな…」

 

「敵ですか?」

 

八幡が所感を述べると深雪が鋭く問い返しながら周囲を見渡す。

この場にいる八幡と深雪は精神干渉系に強い耐性を持っていたが不思議なことにそれまで気がつかなかったのは相手の魔法の使い方が巧かったからか。

八幡の場合は境遇が境遇のため通用しないが。

 

その問いに光宣が答えた。

 

「高位の結界術者がいるようですね。魔法出力を最大まで絞って此方が接近するまでギリギリまで気が付かせないようにしていたようです。」

 

「なるほど…古式魔法にはこの種のテクニックが存在するようだ。」

 

「まぁ古式術式はそこのところが巧い。コソコソするのが得意と見える」

 

そう言って八幡は直ぐ様右手に着けたブレスレッド型CADを起動させ【フラッシュエッジ】を複数発動し投擲する。

狙うは付近にある雑木林であり次の瞬間に八幡達の近くにある木々達がざわり、と揺れ動いて飛び出した。

 

その数は”十二”今いる八幡達の倍以上の数が取り囲む。

 

「自分達の隠業によほどの自信があったように見えます。此方に気が付く前に仕掛けるつもりだったんでしょうが…」

 

光宣が隠れていた敵に対して挑発的な言葉を掛けるのを聞いて八幡は呆れたような反応を見せる。

 

「姿は隠せても殺気まで隠せないなら三流だろう」

 

トドメの一言が襲撃者の神経を逆撫でした。

 

「水波!」

 

「はいっ!」

 

後ろにいた達也が水波に命じ障壁が展開されると同時に金属製のダーツ弾が弾け飛ぶ。

 

「……っ!」

 

水波が攻撃を防いだその次の瞬間に悲鳴が立て続けにあがるのは八幡が素早くショルダーホルスターから抜いた【ガルム改】から魔法を放ち複数展開した銃座から【風撃鉄槌】から発動し当てる。”瞳”を使わずとも垂れ流された”敵意”を辿るだけでも場所は把握できる。

 

戦闘不能にし同時に達也も分解魔法を用いて襲撃者の四肢を穿ったの理由だった。

 

真由美と深雪はその光景を確認し大丈夫だ、と判断し水波と真由美達に近づく魔法発動の兆候を感じとった。それぞれそれは同級生である幹比古が良く用いる雷撃と風撃の精霊魔法だ。

しかしそれは発動することなく霧散した。

 

深雪には達也の情報体分解の対抗魔法である【術式解散】、真由美には八幡の情報体が干渉する空間を消し飛ばす【次元虚空霧消】が放たれ無力化された。

 

「お兄様!此方は大丈夫です!」

 

「八くんこっちは大丈夫。」

 

二人はその言葉を証明するために領域干渉を展開する。

近くにいる水波と光宣の魔法の干渉をしないようにまずは自らの周囲に出きるだけ細かい円筒状の力場を形成しさながら逆にしたグラスのようになっていた。

 

「凄い…これがお二人の実力ですか…」

 

感嘆の声を漏らす光宣だったがただただその光景を見ていただけでなく”彼”もまた魔法師の一人として襲撃する敵に対して攻撃を仕掛けていた。

敵は二パターンいるようで武器を使用した魔法を使う魔法師とSB魔法を使う魔法師がおり光宣はその後者と相手取っている。

後者の魔法師は向かってくる魔法師が因縁深い九島家の魔法師、と言うことに気がついたのか攻撃が集中しており真由美や深雪、水波は眼中にないと言った状態だ。

 

しかし、光宣を狙った雷撃や火炎に突風は尽くすり抜け対象の居なくなってしまった魔法は定義破綻し霧散する。

実際に光宣は後者の魔法師達の反対側にいるそして迫っている幻影の光宣に向けて魔法を放っていたのだ。

 

「幻影…ですか?信じられない…」

 

迫っていた古式魔法師を掌底で吹き飛ばし真由美のすぐそばに降り立った八幡が水波に補足説明をする。

 

「あれが九島家の秘術”パレード”だ。光宣は”血”が濃いからな…凄まじい完成度…ありゃリーナも真似できないレベルだぞ」

 

「シールズさんも凄かったけど…光宣くんは凄いわね。」

 

「七草先輩…リーナ、と仰有いますと…」

 

水波が疑問を漏らしたので先輩らしく返答して見せた。

 

「ああ。アンジェリーナ・クドウ・シールズのことだ。九島老師の弟の孫で魔法の腕は深雪にも劣らない実力者だな…ちょっと抜けてるところがあるが。」

 

真由美が反応する。

 

「そうね…でも魔法の腕は八くんの言うとおり凄まじいものよ。でも彼女よりも魔法の、”パレード”に関してはそれを上回っている…九島家にこんな秘蔵っ子が居るなんて…」

 

八幡と真由美の称賛の声は今戦っている光宣の耳には入っていなかった。

入っていたらこの少年は「光栄です」「僕なんてまだまだです」と謙遜の言葉を重ねるだろうと容易に想像がついた。

 

そして九島光宣の実力はこの場にいる全員に知られることになった。

光宣の右手で起動式が展開され一瞬で吸収されたのは完全思考操作型のCADを使用しているのもあるがその早さは真由美と同等、いや八幡に匹敵するかもしれない速度を叩き出していたが…それだけでは終わらない。

 

起動式の反動を受けることなく魔法が放たれたれ彼の一歩先が発効、放出系統魔法「スパーク」が発動したことを意味した。

しかしそれは通常の【スパーク】とはことなり彼の視界目一杯に広がり対象とした土表面から電気が発生し襲撃者の身体の自由を奪い去っていく。

その効果範囲は服部刑部の【這い寄る雷蛇】よりも放電範囲が広い。

【這い寄る雷蛇】は静電気を利用するもので【スパーク】よりも難易度が高いのにも関わらずにだ。

 

(まじか…威力は服部先輩より上で発動速度は姉さんや俺に匹敵とか…やばくね?)

 

援護をしようとした八幡、それに真由美達はその光景に思わず見入ってしまっていた。

魔法の実力とそのセンスは明らかに前者、生まれもって獲得したその実力は凄まじい、と言う一言に尽きるだろう。

そうしている中にも敵は次々と倒れていき敵も残り一人になってしまったようで自分が敗北した、と察するにはさほど時間は必要ないようで物陰から現れた。

それは逃亡ではなく玉砕覚悟、火中の栗を拾いにいくように破れかぶれの攻勢に出るつもりのようだ。

が、かの者が使う古式魔法はどうやら強力なモノだったらしい。

それは形として現れた。光宣の目が捉えていた放った魔法が最後の一人を打ち倒した、がそれは油断だった。と光宣に告げるのは酷であり彼は病弱ゆえの戦闘における経験値が圧倒的に不足しておりそれを天性のセンスで補っていただけなのでそれを責めると言うのは見当違いだ。

 

ほぼ同時に茂みから大きな影が躍り出た。

魔法師ではなく、それよりも大きい獰猛な四足歩行の”獣”が姿を現したがそれに気が付くまでに”接近され過ぎていた”のだから。

 

「虎!?」

 

光宣の声は警告を含めての呼び掛けだったが既に時遅し。

 

飛び込んできた猛獣は明らかに真由美と深雪、水波を喰い殺そうと飛び掛かっておりその光景を驚いた表情を浮かべる三名の少女と急ぎ特化型を向ける二人の少年、そして主を守るためにシールドを張るがすり抜けられてしまう感覚を覚え深雪に飛び掛かる。

 

牙に引き裂かれ真っ赤な華を咲かす…ことにはならなかった。

 

「~~~~~~~~ッ!!」

 

飛び掛かる霊虎が横から吹き飛ばされ一つの影が飛び込んできていたのだ。

その姿を見て八幡が驚く。

 

「お前…さっきの狐か…?」

 

それは虎を吹き飛ばし飛び込んできた影の正体…それは先ほどの社に住み着いていた”狐”であった。

 

「そうだよ」と言わんばかりに頷いた狐…しかしその偉容は先程までとは異なっていた。

 

「…はは…まさか本物だったとはな。」

 

八幡は苦笑いを浮かべるしかない。

 

「コニャン♪」

 

狐は大層満足そうに頷いた。

何故ならば先ほどまで太い一本の尻尾が逆立って揺らめいている。

 

その光景に全員が目の錯覚かと驚愕し虎は怯えているような素振りを見せているのはかの存在が頂点であると理解しているからかなのかは知らないが動けない虎を見た白狐は身体を深く沈ませた。

 

その瞬間に虎が発火し消え去る。八幡と達也は理解していた。

この白狐が”魔法”を行使したと言うことを。

 

◆ ◆ ◆

 

「まさかの狐の恩返し…助けてくれてありがとな…ありがとうございます?」

 

「♪」

 

残る襲撃者は全て無力化され辺りには緩い空気が流れていた。

主に尻尾の戻った”狐”を中心として。

 

「ありがとうキツネさん。助けられちゃったわ」

 

「ありがとうございますキツネさん…可愛いだけでなくお強いんですね?」

 

「~♪」

 

真由美と深雪がこの戦闘のMVP?を労うために油揚げを渡し頭を撫でると美味しそうに食べているのを見て思わず頬が緩むが…

 

「え、いやマジ化け狐じゃねーのかこれ…どんなBOW?」

 

「魔法が使える動物何て聞いたこともないぞ…化生体…って訳じゃないようだな。」

 

「ああ…どうなってるんだ?」

 

【瞳】で確認するとその情報体は普通のキツネではあったが驚く事にその脳は動物の脳の大きさ…ではあるが魔法師と同じように魔法演算領域があるのが見られた。

 

(何処かの実験体なのか…?動物に魔法演算領域を植え付け行使させる…聞いたこともないが…だが何故だろうこの演算領域、何処かで見たような…。)

 

そんなことを思っていたがまさかのゲストに驚いた全員だったがこの助けに入った狐に感謝していた。

あのタイミングでは八幡も達也も間に合わなかった可能性が高かったためだ。

あの炎はある意味での”狐火”だったのかもしれないと思いつつ狐様?への感謝を述べて油揚げを渡すとこれまた美味しそうに咥えながら再び社の方角へ戻っていった…というわけではなく懐いて付いてきてしまい追い払うことも憚れたので一先ず狐を仲間に加えたのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「ちっ、なにも持ってやがらねぇな」

 

「それはそうだろう…襲ってくる敵が自らの身分を明かすような物を持っているわけないからな」

 

「まぁなぁ…はぁ…襲撃され損か」

 

掃討が終了し達也が襲ってきた敵の懐をまさぐるが身分を示す一切のものはなかった。

期待していたわけではないので落胆はない。

何食わぬ顔で八幡と達也が光宣のところに戻ってくる。

 

「それにしても流石です八幡さん。複雑な術式を複数展開するなんて。それに達也さんも即座に対処されるなんて」

 

その発言に八幡は思わず苦笑してしまう。

 

「いやいや…それを言ったら光宣の方が凄いんだが。俺のは不意打ちだぞ?」

 

「八幡に同意だ。」

 

「そんなことありませんよ!八幡さんは敵の殺気を感じ取って隠れていた茂みに攻撃を仕掛けていたじゃないですか。それを言ったら僕の攻撃は騙し討ち、【パレード】あっての攻撃ですから。お二人も殺気を感じ取って反撃するなんて…流石は重ねた経験が違いますね」

 

光宣は八幡と達也へ近づいて目をキラキラと輝かせ讚美の言葉を掛けてくるものだからなんとも言えない気持ちになって逆に申し訳ない気持ちになっていたがそれを遮るのも憚られた。

片一方では深雪に対して水波が頻りに頭をペコペコしていたのは守れなかったからだろうが気にする必要はないだろうと八幡は思っていた。

 

真由美が落ち込んでいる水波を慰めた後に光宣へ話しかけた。

 

「ところで光宣くん。ここから伝統派の拠点まではどのくらい掛かるのかしら?今の戦闘で大した時間は掛かっていないにしても私たちが”拠点に向かっている”と言うことが知られているだろうし向かったところで痕跡を消されている可能性があると思うのだけれど…」

 

「そうですね…真由美さんの言う通り証拠、と言うか痕跡は残っていないでしょう。それにこの者達をここに残しておくのもよくありませんね。」

 

光宣の視線の先には伸びている、もしくは痛みで気絶してる男達が転がっている。

ここが戦場ならばそのままでも良いのだがここは観光地であり今は代わりに八幡が精神干渉系の人避けの魔法を使っている。

 

「八幡さんにこれ以上の負担を掛けるのは忍びないですしそろそろ移動をした方がよろしいのではないですか?それにあまり長居すると人目が…」

 

深雪が”無意識”に八幡の状態に気に掛ける発言をすると達也が頷いた。

 

「そうだな。これ以上は手がかりも得られなさそうだし今日はここまでだな。」

 

「それでしたらここは僕が見ておきます。あの余計なお世話かもしれませんが帰りの時間は何時頃になりますか?」

 

その問いかけは八幡と達也に投げられたもので二人で「時間はある」という返答をするとそれに対して光宣は案を出したのだが…それはある意味で自爆であった。

 

「それでしたら時間もあるようですしこの付近に良い温泉宿があるんですよ。如何ですか?」

 

「「「温泉…?」」」

 

その発言を聞いていた三人の女性陣は一人は苦笑いをもう一人は氷の眼差しを残る一人は顔を真っ赤にして首の襟元を押さえ手でパタパタ、と仰いでいるその姿を見てしまった光宣は麗しい女性達の地雷を踏んでしまったと自覚していた。

 

「い、いや!これはその…お三方が汚れているとか汗くさいとかそう言う意味ではなくてっ!?」

 

「へぇ~?光宣くんは私たちが汗くさいと思っていたのねぇ…お姉さんショックだわ~」

 

「うぐっ…ち、違いますっ僕は皆さん汗を掛かれて大変だとおもいましてぇ…!」

 

訂正しようと発言した言葉はさらに燃料を投下してしまう。

真由美は意地の悪い笑みを浮かべ深雪は氷月の眼差しを浮かべ水波は仰ぐスピードが早まりそれを見た光宣の全身は硬直してしまい少し涙目になっているその姿は先ほど迄堂々としていたのが嘘のように思えるほどでありその姿を見た達也と八幡はフォローに入った。

 

「光宣、それは自爆だ。」

 

しっかりと釘を指した。これ以上被害が拡大しないように。

 

「深雪、水波も落ち着け。光宣は皆に温泉に入って疲れを癒したらどうか?と提案をしていただけだ。」

 

「達也の言う通りここに三人の美女がいたら言葉を間違うだろ。俺なら余計なことを言って怒らせるまである。」

 

「いや、それは違うと思うぞ」「いやそれは違うと思います…」

 

「えぇ…?」

 

達也と光宣に梯子を外され困惑する八幡だったが咳払いし真面目なことを告げる。

 

「んんっ!…まぁ言いたいのは出力が少し違った程度でそこまで怒るな、って話だ。光宣みたいなイケメンが面と向かって女子の体臭なんて突っ込むわけないだろ?疲れているからだろうからって理由で提案してくれた、それだけだ。あと姉さんも光宣をからかうなよ?深雪も怖い顔するなよ…。」

 

(せっかくの綺麗な顔が台無しだからな…」

 

八幡の言葉に色々と突っ込みたいところはある女性陣であったが光宣が意図的に”そう言うこと”を言う人物ではないことをこの短い触れ合いで理解していた。

その言葉に大人げなく反応してしまっていた真由美と深雪は反省した。それに”温泉”という単語に心踊っていたのは事実であったし。

 

それはそれとして水波は顔を真っ赤にしてセーターの襟元を右手で押さえておりそれはそれとして八幡が余計なこと、歯の浮くようなコメントをして深雪から脇腹を摘ままれるのは予定調和だった。

 

◆ ◆ ◆

 

光宣から案内された平城京跡地から程近いロケーションの老舗ホテルであった。

紹介、ではなく案内なのは男達が倒れている現場を監視しておくべきだと光宣が主張したのだがそれは八幡と達也が無理矢理引っ張ってきた。

なんでそんなことをしたのかと言うと二人の同行者が問題であって恐らくは隙あれば真由美と深雪は八幡を家族風呂のある客室に連れ込んでシッポリ、と楽しむであろう算段だったらしいからそれを回避する為の方法であった。

 

八幡達は狐をこっそりと客室に持ち込んで男とオス?の三人と一匹は雑談に興じ場所を変えて男三人はサウナで語らっていた。光宣の体躯が妙に艶かしく視線を思わず外してしまう八幡と達也。

客室で丸くなって寝ている白狐。

 

一方で真由美と深雪、水波は八幡達と分かれてすぐに大浴場へと向かった。

水波を除く二人は八幡と入りたいな、と思っていたが当の本人に「ゆっくり楽しんでこい」と言われ男三人で会話をするのを見て少し残念がったが結果として源泉掛け流しの温泉は非常に満足の行くものだったからだ。

 

ここでも湯着を着用し素肌を見せることはしないようになっており着替えた三名は浴場へ姿を現すと老若の女性達の視線は特に深雪に視線が集中しており一瞬無音になったほどだった。

三名は体を湯で洗い慣らしてから滑らかな湯に足を差し込むと誰かのため息が合図となり時間が動き出す。

数名が利用していた大浴場であったが一人、二人…とタイミングを計ったかのように出ていき最終的には深雪、真由美、水波の三名出の利用となった。

 

「あら…?皆さん一体どうしたのかしら…?」

 

三名での利用になっていたことに気がついた深雪は疑問を漏らすがそれを聞いた水波はこっそりと溜め息を漏らし真由美は苦笑いを浮かべていると二人の視線が交わって軽く頷いた。

頷いた理由は同じであり”女としての劣等感を刺激される”というこれに尽きた。といってもこの二人も端から見ればスタイルは同年代から見れば羨ましがられその顔立ちは非常に整った美女と美少女なのだが”深雪”という存在を見れば嫌でもそう思ってしまうだろうと。

 

(司波さん…肌本当に綺麗ね…わたしも胸の大きさや括れも負けてない筈だけど…”これ”を見るとちょっと揺らいじゃう、というかどんな肌質なのか触ってみたいわ…」

 

三人で並んで湯に浸かっているのだがそんな深雪を見てた真由美がぼそり、と呟いた。

思っていたことを呟いてしまうのは八幡の影響か。

それはそれとしてその呟きは深雪の耳に入るとそそ…と距離を取る。

 

「え、ちょっと司波さん?な、なんで距離を取ったの?」

 

「七草先輩…?さ、触らせませんからね…?」

 

「ちょ、ちょっとだけ…」

 

「だ、ダメですっ!」

 

距離を取った深雪は顔を赤くして体を守るように腕をクロスさせているが真由美は自分の思っていたことが口に出ていたのに対して「しまった…!」と後悔したがそれ程までに同性である真由美を狂わせるほどの”美”がそこにはあった。

 

が、触らせない、やっちゃダメというのは人間の逆の方向に進ませてしまうため小時間ほど真由美と深雪は互いの”矜持”を守るための小競り合いが発生し結局は腕や足を触らせ互いに「凄い…」という感想を漏らしている。

 

「………」

 

その光景を見ていた水波はのぼせていた。それは湯中りによる湯疲れではなく美女二人の”スキンシップ”を見てのぼせてしまっていたからだ。

 

◆ ◆ ◆

 

名湯を堪能した真由美達はホテルを後にして駅前にリムジンを着けて列車で東京に戻る達也達を八幡達と光宣が見送った後に帰路に着くために八幡は”駅の駐輪場に停めた”という体でその場から少し離れ自家用二輪を引っ張ってきてタンデムした。

 

準備が整い八幡は光宣に別れの挨拶を交わすと名残惜しそうな寂しげな笑みを見せているのだが余計にそれが少女のそれに見えてしまい二人は苦笑いを浮かべる。

 

「…それでは八幡さん、真由美さん。今日は楽しかったです。」

 

「それじゃ光宣。色々助かったよ」

 

「…また、お会いできますか?」

 

それを年頃の少女に言うものならば勘違いを量産するんだろうな…と八幡は思ったが口には出さずに返答した。

 

「ああ。また少し手伝ってもらうかもしれないし…そのときは良いか?」

 

そう告げると光宣は満面の笑みで頷いて了承した。

 

「はい!是非に!僕に手伝えることがありましたら言ってくださいね?八幡さんの為なら僕、なんでもお手伝いしますから!」

 

キラキラと輝く笑みにその後ろに犬の尻尾があったのならブンブンと振られているだろう。

…それはきっと気のせいではないだろう。

 

「…そういやお前も見送りに来てくれたのかありがとな。」

 

「♪」

 

視線を下に向けるとまさかの見送りに先ほどの白狐が光宣の隣にお座りしていた。

この狐先ほどの社に帰ることなくリムジンに乗り込んできたのであった。

 

「ははは…この狐も八幡さんとのお別れをしたいみたいですね。」

 

「そうだったのか…」

 

「あ、八幡さんと分かれた後に必ず責任をもって社の付近まで連れていきますのでご心配なく」

 

狐は社に戻りたくない訳ではなく世話になった八幡に「別れ」を言いに来ているのだと”何となく”で感じ取り「義理堅いな…」と関心していた。

 

「……あ。」

 

ふと、八幡は思い付いたかのように懐をまさぐり端末を取り出して一枚の画像を表示し狐に見せていた。

その意味不明な行動に光宣は疑問符を浮かべ真由美は怪訝な表情を浮かべる。

 

「どうしたの八くん突然キツネさんに写真なんか…」

 

その問いかけに八幡は苦笑せざる得なかった。

 

「いやぁ、まぁ…ただ何となく…かな?そうだな…白狐…だとちょっと味気ないから名前はそうだな…ワカモにしよう。ワカモ、もしこの写真の”これ”を見たなら俺に今度会ったときに教えてくれないか?」

 

ワカモ、と名付けられた狐へそう問いかけると耳をピクリと動かして分かった!と頷いて器用に前足をフリフリ、と振ってリムジンの中に戻っていった。

 

光宣と再会の約束を別れの挨拶にして八幡と真由美は一路七草の家へと向けてバイクを疾走させた。

 

◆ ◆ ◆

 

高速道路を疾走中の大型自動二輪のタンダム席、その背後にいる人物である真由美から八幡へ問いかけられた。

 

「八くんさっきのワカモちゃん…?で良いのかしら」

 

「ああ。ワカモね。あれメスだから合ってる。」

 

「メスだったんだワカモちゃん…じゃなくてさっき端末の画像を見せてたみたいだったけど…何をしていたの?」

 

そう問いかける八幡は一拍おいて返答した。

 

「…今度会うときまでに今日あげた油揚げの画像を見せてただけだよ恋しくならないようにね。」

 

その返答に真由美は少しおかしくなってしまって笑ってしまった。

 

「ふふっ、なにそれ」

 

(まぁ…ワカモの知能は人間並みの思考を持っていたみたいだからな…なんか嫌な予感がするし”保険”として…な。)

 

ハンドルを握り一人八幡は思案していた。

狐に見せたその画像は見目麗しいスリーピースを隙なく着付けた男性だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。