俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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【四葉継承編】突入…といっても触り程度ですが。
皆様のお陰でUAが1,000,000を突破しました!ありがとうございます。
何気に最初の投稿から一年経過…二年目が見えてきて戦々恐々です(完結するんか…?これ)
といった状況ですが頑張って書きます。

…失踪はしたくないようにします。はい。

UA100万突破記念で短編書こうかな…魔法少女ほのかとか。

それではどうぞ!


『四葉継承編~希望と絶望を込められた子供~』
狂乱の序章


2096年の12月、その放課後。

お馴染みになったいつもの溜まり場であるアイネプリーゼへ集合した。

街がざわついているのは当然だった。日時は十二月の二十五日、クリスマス。

街では恋人とそれ以外がランペイジしている非モテはさっさと家に帰ってママとチキンでも喰ってな!という日である。

それもその例に漏れず…と思ったが気さくな同級生が俺をパーティーとやらに誘ってくれたのだ。

 

「なんか変なことを考えたでしょ?」

 

「いいや?ナニも。」

 

そういうとエリカは納得していない表情をしていたが司会進行を進めることに意識を集中したようだ。

 

「えー無事に二学期が終わりまして一日遅れになりますが気にせずご唱和ください!」

 

我の名を、そういってエリカがグラスを少し持ち上げパーティー開始の掛け声を始めた。

 

「メリークリスマス!」

 

「「「「「「メリークリスマス」」」」」」

 

店内には旧暦でヒットした往年のバックナンバーが掛かっている。

この時間俺たち以外の客はない。貸し切り状態であり声を挙げても他の利用客に気にする必要はない。俺たち学生に貸し切りを許してくれるぐらいに俺たちに良くしてくれるここのマスターには頭が上がらない。

向こうも同じで結構な金(俺支払いたまに達也、または割り勘)を落としているお得意様なので無下には扱われないだろう。やはり金か…

 

「ご唱和ありがとう!欲言うなら日のある内にやりたかったけどねー?」

 

女子達がキャッキャと騒ぎ男達も軽食に舌鼓を打ち楽しそうにしている。平和だな…。

 

「………。」

 

「八幡さん?今失礼なことを考えていませんでした?」

 

「いや、…みんな楽しそうだなって思っただけだ。…まぁエリカの言う通りかもしれんが予定があったからな。」

 

実際にそう持っているので嘘じゃないんだが…つか深雪さん?俺の心の声を読み取らないでね?

俺が誤魔化しの言葉を向けると笑みを浮かべ別の人物へ話しかけていた。

 

「仕方がありません。全員都合と言うものがあったのですから」

 

深雪が補足してくれた。そう用事があったのだ。

 

「うちの部は抜けてもあまり厳しい事を言われないわよ?それを言うなら深雪は生徒会長だから厳しいんじゃない?特に八幡の妹がいるし」

 

そう言うエリカの言葉に俺は苦笑いを浮かべるしかない。

そんな不倶戴天の敵みたいなことを言わんでくれ…でもエリカと泉美と香澄仲悪くないんだよな…何でだ?

 

「確り仕事をして反論はさせないわよ?そもそも私と泉美さんと喧嘩をしているわけではないのだけど…それに抜けられないのは私だけじゃなく八幡さんや雫、幹比古くんだって当番だったから忙しいでしょう?」

 

其々が反応し俺も一応頷くと雫が俺の横腹を摘まむ。痛ぇ…。

仕事はしていたが面倒くさくなったので幹比古や雫に任せていたのもあってそれを今突っ込まれた形になった。

 

「良いじゃないか。みんなで集まれる日が出来たんだ。」

 

達也が纏めると皆が頷いた。ワイトもそう思います。

 

「昨日は予定があるってことで皆集まることは出来なかったものね」

 

雫が反応し

 

「うん。一日遅れだけど今日の方が予定がついて良かったと思うよ」

 

ほのかが頷いた。

 

そう、其々に前日予定があったのだ。

雫とほのかは雫の父親が主催するパーティーに引っ張り出された。二人曰く雫の父親がほのかを実の娘のように可愛がっている為に連れ出されてしまったらしい。

幹比古も一門の若手パーティーに引っ張り出され断りを初めは入れたらしいのだが兄の頼みに仕方なく参加したとのことだ。しかも門弟に女子が多かったらしくモテモテだったらしい。

エリカも実家の千葉家主催のパーティー…ではなく関東地方警察のパーティーに父親の代わりに出た長男である寿一の付き添いで参加したとのことだ。エリカ曰く『散々日陰者扱いをしてるくせにこういうときだけ扱うの…ムカつく』と本人が本当に思っているらしく俺に語っていたが…まぁそう思っていても行動に移さないのは性格の良さと本人の我慢強さが出ている。たぶんあれだ「一度だけだからな!」って言って三回目ぐらいまで頼んで次から頼まなくなったら「本当に良いのか?」って聞いてくるタイプだ。

 

因みに俺と姉さん、小町、泉美、香澄が七草傘下企業のパーティに参加。俺は慣れない愛想を振り撒いていたが姉妹達は其が素なのかと思うほどの笑みを浮かべていたのを見て「女って怖い…」と思っていたが。

因に小町、泉美、香澄と水波はクラスのクリスマスパーティーに参加しており前日の堅苦しいパーティーでずっと愛想を振り撒いていたので羽を伸ばすことが出来るだろう。

…正直妹達と深雪達が顔を会わせると最近は大丈夫なのだがちょっとしたことで白熱するのでそろそろ仲良くなって欲しい…いや割と切実に。

 

「は、八幡さん…!あ、あーん…」

 

唐突に隣にいたほのかが取り分けたケーキにフォークを入れて一口サイズにして俺に差し出してきたことに一瞬フリーズしたが素直に受け入れ食べることにした。

 

「え?あ、あーん…」

 

受け入れると口の中にマスター謹製のケーキの味が広がる。うん、旨い。

と思っていると三人の女子の視線が俺へ突き刺さる。

 

「あーっ!?」「ほのか抜け駆け」「ほのか?」

 

「お、美味しいですか…?」

 

顔を真っ赤にして俺へ問いかけるほのかの表情を見て少しコメントがとんだ。

 

「んぐ…旨いけど…?」

 

「良かったです…えへへ」

 

嬉しそうに笑うほのか…あれか?俺は小鳥にエサをやるとかそんな感じなのか?

いてぇ!三人して俺の脇腹を摘まむんじゃないよ…!

と、ほのかが先程俺に食べさせてフォークを再び使い一口にしたケーキを口へ運ぶ…あ、それ…と指摘しようとしたが雫がジト目になりながら指摘していた。

 

「ほのかそれ間接キス…」

 

「へっ…へぁぁぁっ!?」

 

いや気づいてなかったんかいとツッコミそんな図書委員みたいな声を挙げんでくれ。

 

「八幡さん?こちらのケーキも如何でしょうか?」

 

「八幡?あたしがサンドイッチを食べさせて挙げるわよ?」

 

「ん、こっちのフライドポテトを食べるべき」

 

「三人して一気に口に詰め込もうとするなぁ!…あ、本当にちょっとまっ…モガガガッ…!!?」

 

口の中に甘いのとしょっぱいのが混ざって最悪なんだが?

が、三人の其々の攻撃を受けていると皆が笑っていたが悪くない気分だった。

 

今回のアイネプリーゼに集合しているのは同学年のいつものメンバーが集合し軽めの軽食と大きめのホールケーキを切り分けお開きの時間まで会話と食事を楽しんだ。

今年は色々あったな…一月からは吸血鬼事件に国防軍の海軍戦略基地でドンパチしたり四月はなんか研究をお披露目したり…九校戦はパラサイドールの無力化に周公僅の無力化…色々ありすぎでは?まぁ…一番の出来事は雪ノ下と由比ヶ浜にあって想いを告げられたことか…振られたけどな?

 

パーティーが終わってそんな感傷の中店を出て家へ帰ろうとすると俺はほのかに声を掛けられた。

 

「来年は初詣に行きませんか…?」

 

「初詣に?あー…」

 

その誘いに普通に疑問が浮かんだ。

俺の反応が悪かったのか慌てるように否定するように慌てて手を振る。

深読みしたのが原因かもしれない。

 

「あっ、み、みんなで、皆でです!今年は雫もエリカも参加できるって話なのでその…行けたらって思いまして…その…やっぱりご迷惑でしたか…?」

 

そういえば去年は挨拶回りとかで色々出歩いていたから去年は行けなかったしな…まぁ今年は出なくても良いって言う風には聞いてたし大丈夫か。近くの神社だろうし問題ない…か?

脳内のスケジュール表を確認し初詣の算段がついたので返答した。

 

「予定は空いてる筈だから…うん。大丈夫、だと思う。」

 

歯切れの悪い回答にここに小町がいたら今ごろ爪先を潰されていたかもしれない。

だがほのかはそう告げると嬉しそうに微笑んだ。そんな微笑みを見るのも悪くないと思うようになったのはきっとアイツらのせい?(お陰)なのかもしれない。

…今思うとほのかみたいな美少女に「一緒に初詣いきましょう!」と誘われている時点でヤバイと思う。

が、それはただ友達として数あわせで呼ばれているだけだ、と信じたかったがもう一人の俺が「確実に誘っている」と謳ってやがる…クソが…!

 

「はい!初詣楽しみにしてますから」

 

「お、おう…」

 

食い気味にそんなことを言うものだから少し驚いてしまったが楽しみにしているのなら変な予定が入らないようにしなければ…と思っていると深雪の顔色が少し悪い。あと達也もその深雪を心配そうに見つめているのが気になった。

 

「?…そういえば深雪達も行くのか?初詣。」

 

深雪に問いかけたのだが達也が返事を返してくれた。それも申し訳なさそうに。

 

「すまない。来年の正月は俺も深雪もどうしても外せない用事が入っているんだ。」

 

「……」

 

正月、という言葉に深雪が過剰反応しているように見えたが気のせいか?

本当に体調が優れないのならお兄様が何とかしている筈だからな。

 

「…悪いな聞き返すような事をしちまって…大丈夫か深雪。顔がいつもより白い気が…」

 

「いえ、大丈夫です。…お気遣いありがとうございます。…え?」

 

普段の肌の白さがより際立つほどに血の気が引いている…まるで病人のような肌色に思わず深雪の額に俺の手を当てて熱が無いかを確認する…うんひんやりしてるくらいで気持ちいい…ってなんか段々熱いような…?

 

「は、八幡さんっね、熱はありませんから!だ、大丈夫ですっ」

 

さっきの血の気が引いたような顔色は人間らしい血色に戻る…というか赤くなっており急いで距離を取られた。

 

「そ、そうか…体調が悪いなら達也に言えよ?」

 

「ふふっ…ご心配ありがとうございます。…ですがいきなり女の子の額に触れるのはどうかと思いますよ?」

 

「それは…すみません…」

 

至極当然な事を指摘され俺は素直に謝ることしか出来なかったが深雪は口を押さえ笑っていた。

先程の血色の悪さが嘘のようで俺の心配は杞憂で良かったと。

 

…まさかその心配が杞憂でなかったなんてその時の俺は想像してもいなかったんだ。

 

◆ ◆ ◆

 

「お帰りなさいませ八幡さま。お手紙が届いております。」

 

「手紙?いったい誰が…………はい?」

 

住み込みのメイドさんから今日届いたとされる手紙を受けとりその宛名をみて思わず間の抜けた声を出してしまう。

その宛名は『比企谷朔夜』。俺の婆ちゃんの名前が記されていた。

 

俺は自室に戻りオートメイションに命じてエアコンを作動し室内を快適な状態にするように命じ着ていた制服とコートを脱ぎ部屋着へ着替え机にある封を切る道具を手にしてベッドに腰かけた。

 

「……なんだって今さら手紙を寄越した?」

 

『久しぶり。八幡と小町。如何お過ごしでしょうか?…って書いたけどあんた達の近況は知っているよ。

あの冬から弘一くんのところでお世話になっているようだね。本当ならお前達をうちで引き取るつもりだったんだがお前達がそっちで幸せそうに暮らしているのを見てお婆はほっとくことにした。あのバカ親二人のそばにいるよりずっと良いだろう?それに比企谷の名を継ぐのは不本意だろうし』

 

うーん自由というか無責任というか…婆ちゃんは元両親と仲が悪かった。いや”興味が無かった”というべきか。

まぁ比企谷の名前に未練があるわけではないから良いが。

 

『おっと、話がそれてしまったね。昔の話はこのぐらいにして…八幡。お前には伝えなければならないことがある。大事なことをね?』

 

大事なこと?なんだか含みがあるような言い回しに疑問を覚えたが次の文章で吹き飛んだ。

 

『まぁ大事、とは言ったけどそんな大層なことでもないのよ。ただ久々に孫の顔が見たいお婆のワガママさ。まぁ単純に会いたいだけだから来てちょうだい。これ住所ね。』

 

その二枚目に添付された地図…がはらりと落ちて拾い上げ確認する。

 

「……雑ぅ!?分かるかこんなもん!!」

 

そこに書かれているのは七草家から黒い線が延びて”ここ婆の家!”と書かれた略地図で『長野の山奥』とだけ。

 

地図を叩きつけてしまうほどの雑さに声を挙げてしまった。

 

「…マジで国道の道順しか書いてねぇ…どうすんだこれ。つか今さら家に来いって…なに考えてんだ?」

 

俺と小町が七草家に拾われてから婆ちゃんと連絡を取ったことがない…いや連絡先を知らない、というべきなんだろうな。昔から気がついたらいた、という感じで住所も端末、家電の番号もわからない。

中に入っている便箋を開き内容を確認する。要約すると「小町を連れて私の家に来い」と言うものだったのだが…それも元旦に。

その内容をみて思わず天を仰ぐ、なんでこのタイミングで家に呼んだんだと。

便箋には住所とそこへ向かうまでのルートが記されており電話番号は乗っていない。

…このルートだと山の中か。長野の山奥をバイクで攻めるのをキツいよな…まぁバイクで向かうんだが。

 

「これは…ほのかに悪いことをしたかもしれんな。」

 

「必ず来てほしい」の文言と拾われてからの進捗状況を伝えたいのもあったので断ることは出来なかった。

俺は小町を呼び出した。

 

「どうしたのお兄ちゃん急に」

 

「まぁこれを見ろよ。」

 

「なになに~…………っておばあちゃんから?」

 

先程の便箋を渡して目を通すと呆気にとられた表情を浮かべている。当然だろう今の今まで連絡が取れなかったのだから。

 

「ああ。そこにも書いてある通りだけどな」

 

「お婆ちゃんのうちって長野の山奥だっけ…?うう、今の時期は寒そうだなぁ…でもお兄ちゃん元旦の初詣深雪さん達と行くんじゃないの?」

 

「なんで俺が初詣に行くことを知ってるんだお前は…」

 

やだ、小町ちゃんってばお兄ちゃんの行動パターンを予測してるのね。どんだけ俺の事好きなの?

 

「キモいこと考えてると殴るよ?ま、それは冗談にして…お婆ちゃんから呼ばれてるけど…そっちを優先したら?」

 

据わった目をして拳をシュッシュしている…こら《四獣拳・白虎乃型》を構えるのをやめなさい。

真面目な顔で此方に選ぶにように告げたが。

 

「まぁ…後で埋め合わせするとしてほのか達に断りの電話を入れておく。……それにあの婆ちゃんがこんな急に連絡を寄越すなんて今まで無かった筈だからな…嫌な予感がする。」

 

「まぁお婆ちゃんが連絡を寄越すときなんてのは大抵なにかあるものだけどさ…」

 

小町も同意見だったらしい。

まぁ中学の時に沖縄に連れていかれたときに事件に巻き込まれたりしたしな。それ以外にもあったが。

 

一先ずほのかにその日の内に「行くよ」と約束を入れたばかりだというのに早速「行けなくなった」と言うのは非常に心苦しかった。

案の定その事を伝えると「そうですか…」と残念そうに気落ちしたほのかの声が聞いて此方まで悲しくなりそうだったが苦し紛れに放った一言がクリティカルヒットしたようだ。

 

「埋め合わせで買い物に付き合うから…許してくれないか?」

 

『ッ!?そ、それってデート…ッ!?はいっ、喜んで!……やったー!!』ピッ

 

めちゃくちゃ嬉しそうにしているほのかは電話が繋がっているのに気がつかずに大声で喜びの声を挙げていたのを聞いてなんかいたたまれなくなった。

 

「おーおー。お兄ちゃん女の子に告白したから強気だねぇ…振られたけどね~」

 

「るせぇ…茶化すな。」

 

取り合えず義父さんに告げて正月は此方にいないことを伝えておかなければならないな、と思った。

…一先ず長野行きの準備をしなければ。

 

◆ ◆ ◆

 

「弘一様。お客人がお見えになっております。」

 

「客だと?いったい」

 

十二月二十五日同日。七草家書斎にて。

 

今日はクリスマスで家族全員で食事を…と思っていたが息子娘達が学校での付き合いがあるとのことで一人寂しく夕食を遅めに取ろうとしていた弘一は年の瀬も近づいて来ていたので仕事量を多めにして今日一日の仕事を終えて休憩をしていた弘一へ名倉が客人の来訪を告げた。

 

「誰だ?」と聞き返そうとすると目の前にいた筈の名倉が居なくなっていた。

目の前には若い女性が。その姿を見て立ち上がりサングラスの下に隠れた義眼ともう片方の目が飛び出しそうにほど見開かれた。

 

「久しぶり。元気だったかい?」

 

「……ッ!…ど、どうして貴女が…!?」

 

驚く弘一を尻目にまるで数週間ぶりにあった友人のように気軽に挨拶を交わす女性。

 

「やぁ。弘一くん。…うんうん。随分と格好良くなっちゃって…まぁ…私が生きてるのにはちょっとした事情が…ってそれはまぁ一先ず置いておくとして…正真正銘君が知ってる”お姉ちゃん”さ?あ、信じてないって顔してるな?…それなら…あ、昔に九島先生のお家で修行してたとき修行終わりに弘一くんが女風呂に間違えて入って深夜と真夜のはだ…」

 

「信じます。信じますからその話は掘り返さないでください」

 

綺麗なけがき定規の如く九十度のお辞儀をしてそれ以降の言葉を遮ったのを見てイタズラな笑みを浮かべる女性は非常に楽しそうにしていた。

この光景を見たものは明らかな上下関係があることが分かるだろうが明らかに五十に近い七草の当主が見る限り二十代前半の大学生の見た目の少女に頭を下げている光景ははっきり言って異常である。がそれを指摘できるものは誰一人いない。

 

「あはははっ…いやー変わらないね弘一くんは。そう言う可愛らしいところ好きだよ?」

 

「からかわないで下さい………」

 

女性はかんらかんら、と笑っているが弘一は今の光景を信じられていなかった。

その脳内を支配するのは「何故?」という疑問であり解明するために仮断定するその存在に質問をする。

 

「本当に…生きている?どうして…貴女が生きているんだ…”朔夜さん”…」

 

目の前にいるのは二十年以上経過した弘一にとっては汚点であり後悔しかない忌まわしき事件で亡くなった筈の姉弟子である朔夜が今目の前にいる。その疑問を口に出すと懐かしそうに目を細めた。

 

「まぁ…ちょっと色々あってね?ここにいるのは正真正銘朔夜お姉さんさ。」

 

信じられない、と言ったような表情を浮かべる弘一であったが

 

(でも昔からこんな人だったな…自分を中心にして周りを振り回す…そんな嵐のような人だ。)

 

変わらない、自分が知っている朔夜であること認識し目の前にいるこの女性は”本物”である、と。

が、突然現れて生きてました、と言われても感情の整理がついていないのは確かであった。

そんな感情を知ってか知らずか朔夜は会話を続ける。

 

「その顔を見るに信じてくれたみたいだね。それじゃ続きなんだけど…君のところで預かっている七草八幡と七草小町を大晦日まで貸して欲しいんだ」

 

「それは一体何故…?」

 

そう問いかけると朔夜は答えた。

 

「何故って…ーーーーーーーーーーー、だろう?」

 

「……………………………は?」

 

まさかの回答に思わず弘一は間の抜けた声を出す。

目の前にいる朔夜の顔は笑みを浮かべたままであったが年若いその身は一瞬実年齢相応の皺の刻まれた愛嬌のある老婆に見えた。

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