俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

9 / 98
コメント&高評価、お気に入り登録ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます(本当に申し訳ない。)

今回魔法理論・CADについてガバガバな部分がございます。それでも良いよという方はご覧ください。


※話の後半でちょっとセンシティブな表現がございますお気をつけてください。


『万能』対『鉄壁』

「…早速で悪いんだが俺と模擬戦をしてくれないか?お前の実力を見てみたい」

 

「…はい?」

 

唐突な十文字先輩からの模擬戦の申し込みがあり、俺は直ぐ様帰れるものだと思っていたので固まってしまった。

十文字先輩の発言に反応するものが一人いた。

 

「そう言えばまだ八幡君の実力を見ていなかったな。私が八幡君の実力を測ろうと思ったのだが、十文字が手合わせすると言うのなら是非見せてくれ」

 

「え、ちょっと」

 

この先輩は何を言っているんだ、俺は早く帰って妹達のお世話しなきゃならな…はっ!この先輩ニヤついていやがる!

あんた楽しんでやがるな…?

 

「そうね、八くんの実力を知って貰うには実際に見て貰った方がいいかもね。あーちゃん準備して」

 

「わ、わかりました~!」

 

慌ただしく端末で模擬戦場の設定と使用書類の作成を行っている。くっ…!逃げ場は…そうだ深雪と達也ならこの状況を打開してくれるかも知れない、と思い視線を向けると深雪が俺の視線に気がつき頬を赤くして俯きながら

 

「わ、私も八幡さんの実力を拝見したいと思います」

 

思ってたんと違う!た、達也なら…

 

「自分も八幡の実力を見てみたいと思っていました」

 

君たち裏で打ち合わせしたの?俺逃げ場無いじゃん。はんぞー君…服部先輩も乗り気じゃねーか!くそっ、さっきの当て付けがここで回ってくるとは、これが本当のインガオウホー!じゃない。

…仕方がない、腹決めるしかないか。姉さんの顔に泥を塗るわけにいかないしな…

 

「分かりました。十文字先輩、模擬戦お受けいたします…CADの準備があるんで待ってて貰ってもいいっすか?」

 

「構わないぞ。八幡、此方こそよろしく頼む」

 

十文字先輩も名前呼びかよ…まぁ姉さんと分かりやすくする為か。

俺は教室を出て急ぎ足で事務室へ向かう。

 

さぁ、相手は十師族の『鉄壁』と称される十文字家の次期当主、万能と称される七草家に入った不純物(紛い物で混ざり者の俺)が挑ませて貰いますよ。

俺は無意識にニヤリと口角を上げて不敵な笑みを浮かべていた。

その笑みを指摘できるものは誰もいなかった。

 

事務室から俺のCADが入ったアタッシュケースを取りに戻り再び模擬戦場に入室する。十文字先輩は既に所定の位置で腕を組んで目をつぶりながら待っていた。気にするような人物ではないと思うが一応十文字先輩へ謝罪の言葉をかける。

 

「遅れてすんません。お待たせしました」

 

「いや、気にしないでくれ」

 

台の上にアタッシュケースを置いてケースとセキュリティを解除しようとすると中条先輩か此方をキラキラした目で見ている…本当にCADオタクなんだな。

 

解除しケースから本体を取り出す。取り出されたものに真っ先に食いついたのはやはりと言うか中条先輩だった。

 

「は、八幡君!そ、それって『ペイルライダー』シリーズじゃないですかっ!?

新進気鋭のCADメーカー「ナハト・ロータス」の!!

存在しているかも怪しく都市伝説レベルの魔工師「ファントム」が作り出したハイエンドカスタムモデルCADじゃないですかっ!!しかも世界に2丁しかないとされているロングバレル型の超超限定品モデル!いいなぁ…!!」

 

「ナハト・ロータス」、近年になりその頭角を表してきたCADのメーカーであり作成されたCADは種類こそ少ないものの発売される度に即完売。持っているだけでも資産価値がある…とされている。

俺が手にしている『ペイルライダー』と呼ばれる特化型のCADだ。達也が先ほど使用していた『シルバー・ホーン』と同じものだ。形は大分違っているが。

達也の『シルバー・ホーン』はマガジン型のカートリッジストレージだったが、『ペイルライダー』の特徴は旧世紀に存在していた「S&W500」のリボルバーマグナムのブラックカラーに近いもので、通常特化型CADは9つ魔法の起動式を格納出来るがこいつは6つまでしか格納できないのだ。だがそれを補って余りある能力がある。

 

それは異なる系統の魔法の起動式を連続して使用することが出来ると言う点であり俺が持つカスタム機の特徴だが、これは俺のサイオン量を直接魔法の威力に上乗せ出来ると言うことだ。

…俺は生まれと今の家の事情で「八」と「七」の魔法を使用することが出来るが、元々「七」の魔法と相性がよかったのかも知れない。

最近は魔法(物理)ばかりだけれども。

 

中条先輩が「存在しているかも怪しい魔工師」と言っていたがその存在は今、目をキラキラと輝かせている中条先輩の前で苦笑している存在…つまりは俺、「七草八幡」だ。

発端としては暇だった時間にCADを組んでいたら弘一さん…じゃなかった父さんがそれをみて「会社立ち上げてみるかい?八くん」と唆されて設立して売り出してみたらあら不思議、瞬く間にCADの業界では有名な会社となったとさ。今は忙しいから本当に欲しい人にしか作ってないのだが…そもそもリボルバー式のCADがピーキー過ぎて使う人は少ないがマニアがいるらしい。本当に玄人向けのCADだ。

 

どこぞの怪盗アニメのリボルバーを使うイケボのおじさんかよ。

 

そんな幻影みたいな魔工師が目の前にいるとは露知らず中条先輩が目をキラキラと輝かせながら此方を見ているが先輩に渡して見せると永遠と続いて十文字先輩との試合ができないので。

 

「終わったら見せてあげますから待っててくださいね…」

 

「本当ですよ!絶対ですよ!嘘ついたら針千本飲ませますからねっ!!」

 

俺と先輩達は中条先輩のマシンガントークに若干の苦笑いだが俺は定位置について十文字先輩と向き合う。

 

「よろしくお願いします」

 

「ああ、来い八幡」

 

「試合開始!」

 

渡辺先輩の開始の合図と共に俺は自己加速術式を使わずに「縮地」を使用し先輩の背後をとってCADから旧第八研究所に所属していた八幡家の系統である重力操作を行って重力弾を発動するが直ぐ様先輩は障壁魔法(ファランクス)を発動し防いだ。数発打ち込むがびくともしない。再度攻撃を仕掛けてもだ。

此方の攻撃の様子見をしていた先輩が障壁を展開しながら口を開く。

 

「今の背後に回った移動は自己加速術式は使用していないのか。凄まじい身体能力だな」

 

「…ありがとうございます。先輩の障壁魔法(それ)固すぎませんかね?」

 

「伊達に『鉄壁』の名前で語られているわけではない。行くぞ…ふんっ!!」

 

瞬間先輩も《ファランクス》を展開し発射する形で此方に飛ばしてきた。言わば破壊が難しい鋼鉄の壁が此方に向かってきていることになる。

俺は迷うことなく回避を選択する。術式解体(グラムデモリッション)を使えないわけでは無いが先輩の展開速度と強度を考えると使用してもサイオンが無駄になってしまう。

俺は障壁魔法(ファランクス)の回避と同時にCADを起動し重力爆散(グラビティ・ブラスト)と呼ばれる先ほどの重力弾よりも強力な魔法と知覚系の魔法、姉さんが使用する《マルチスコープ》の真似事の魔法、俺が作成した《ファントム・バレット》を併用し先輩目掛けて発動するが、やはり先輩の目の前で再び防がれてしまう。俺は表情には出さないが悪態を吐きそうになる。しかし先輩たちは驚愕の表情を浮かべていた。

 

「くっそ…!どんだけ堅いんだよその盾…!」

 

「あれは真由美の《魔弾の射手》!?彼も使えるのか…まさか十文字の《ファランクス》にヒビがはいるだと…!?」

 

「会頭の障壁魔法にキズを付けるとは…八幡君の魔法強度は一体」

 

「さっすが八くん!十文字君をやっつける勢いでやっちゃいなさーい!」

 

…一人だけ俺の魔法で先輩の障壁にヒビを入れたことを喜んではしゃいでいる姉さんがいてちょっと嬉しいけど複雑だった、てかそれでいいのか姉さん?体裁とかあるだろうよ。

 

「流石だな八幡。しかしその魔法は…七草の《魔弾の射手》も使えるのか」

 

「姉さんのに比べたら劣化品ですよ…それに俺にも色々あるんすよ…察していただけると助かります。それにしてもさっきの魔法は結構本気で撃ったんすけど割れなかったとは…ちょっとへこみますわ…「あれ」使います。先輩、本気で《ファランクス》割りに行くんでしっかり防御しておいてくださいよっ…はあああっ!」

 

俺にもプライドと言うものがある。俺のとった行動はあり得ないものだっただろう。

 

 

手に持ったCADを落としてポケットに突っ込んだのだから。

 

 

「「なっ…!?」」

 

ここにいた全員がそう思っただろうが姉さんだけは違った。

 

「そう、八くん…『あれ』を使うのね」

 

体のサイオンを解放し魔法と格闘を組み合わせた『四獣拳』の四つある内の一つ、威力重視で一対一用の破戒の型「白虎」を構え腰をしたに落とし右腕を前方に握るように突きだし左手は腰の辺りで構えた。

その姿に皆が驚いていた。

 

「会長、八幡さんがおっしゃっていた「あれ」とはなんでしょうか?」

 

深雪が「あれ」という言葉に反応し姉さんに問いかけるが悪戯な笑みで

 

「見ていれば分かるわ、ほら」

 

視線を八幡と十文字との模擬戦に目の向けさせるように誘導するとそこには驚きの光景が広がっていた。

 

「どんな秘策があるのか知らないがそう易々と俺の『鉄壁』を越えられると思うな!」

 

十文字が《ファランクス》の強度を上げて発射してくる。八幡の眼前に迫った瞬間に加速し右手を引いて左手を突き出すと同時に八幡のサイオンを食らった霊体のような白虎のオーラが左手に形成され十文字が起動させた《ファランクス》にぶつかると《ファランクス》が破壊されていく光景が広がる。

 

「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

最後の一枚がピシリッとひび割れてガシャン!!とガラスが砕けるような音が鳴り響く。

 

「なにぃ!?」

 

「なんだって!?」

 

リアクションをとったのは渡辺先輩であり同時に反応した服部先輩も驚愕していた。

一番驚いていたのは言うまでもなく

 

「なっ…!!」

 

俺は十文字先輩を守っていた障壁まで砕ききり、魔法を中断して再び先輩の正面まで近づくと同時にポケットのCADを起動させ、眉間へと突きつける。

先輩は呆気に取られていたが直ぐ様気を取り戻し降参した。その行動に呆然としていた渡辺先輩もジャッジした。

 

「しょ、勝者。七草八幡!」

 

膝を突いている先輩に俺が手を伸ばすと先輩が手をとって立ち上がる。先程までの試合について俺に感想を述べた。

 

「…俺の敗けだ。今年の人材は優秀な者が多い、一科も二科も関係なくな…まさか俺の《ファランクス》が破られるとは思わなかったが…俺もまだまだということか」

 

「さっきの「あれは」俺の奥の手だったんで先輩に通用してよかったですよ…」

 

「八幡君さっきの魔法は一体…加速術式を使用したのは分かったのだが…」

 

「あれですか?違う系統の魔法と身体技能を融合させた魔法格闘術(マジック・マーシャル・アーツ)で正確な名前は俺も教えてくれた師匠もよく分かってないみたいで、仮の名で『四獣拳』って名前にしているんですけど…渡辺先輩とか知りません?」

 

「「四獣拳」か…聞いたこともないな。いやしかし、凄まじいな」

 

「先輩も聞いたことないっすか…うーん、達也なんか聞いたことないか……って?深雪?どうした?」

 

「あの白虎はやはり…あのとき助けてくださったのは八幡さん、貴方だったんですね…」

 

小声で俯きなにかを喋っているのは聞こえるがよく聞こえない。

 

「おーい?深雪さーん?…ってなんで泣いてるんだよ…!!」

 

な、なんで泣いているんだ?!…やはりさっき頭を撫でてしまったのが不味かっただろうが…ヤバイ、お兄様に怒られる…!!

 

「深雪…?…そうか、お前が逢いたかった恩人はやはり八幡だったのか…」

 

達也が精霊の瞳(エレメンタルサイト)で深雪の状態を確認すると八幡に対して「嬉しい」という感情を示しており達也自身も安堵した。

 

「あ、達也!俺が悪いのかも知れんけど俺のせいじゃないんだ許して!急に深雪が…」

 

「安心しろ八幡、誰もお前の事だとは思っていない」

 

そう言って深雪を引き寄せ耳打ちする。

 

「深雪」

 

「お兄様…やはりあのとき私とお母様と穂波さんを助けてくださったのは八幡さんです。あのサイオンの暖かさ…あの時に感じたものでした」

 

「そうか、お礼を言わないとな」

 

「待ってくださいお兄様、お礼を言うタイミングなのですが…」

 

「ん?」

 

「私に任せて頂けますか?」

 

「深雪がそう言うならそうしよう…今日は母様にも報告しないとね」

 

「はいっ!…八幡さ、」

 

深雪が達也と話が終わり、先輩との試合に勝利した八幡を労おうとして振り返ると

 

「八くん~!!凄いわ!!十文字くんに勝っちゃうなんて!!さすが私の弟ね!」

 

「姉さん抱きつかないで貰っていいですかね!?先輩たちが凄い目でみてる…って深雪がめっちゃ凄い目で見てるんですけどぉ!?」

 

八幡が姉である真由美に抱き締められてたのだ。しかも八幡と真由美は身長差があって八幡が屈む形になる、なので自然と頭が真由美の胸の部分に来るため胸に埋もれているような状態になる。流石の八幡でも顔を赤くし動揺していた。家族とは言え血が繋がっていない義姉弟になるのだ。真由美の見た目も相まって美少女に抱き締められている状態であればこうなるのは当然である。

…それを真由美が自覚していないのも原因なのだが…

 

「…」

 

「深雪さん…?」

 

「おめでとうございます八幡さん、十文字先輩にご勝利されるとは。会長」

 

「はい?」

 

「いくら御姉弟と言っても異性なのですから、いつまでも抱き合うのはよくないかと思われますが」

 

抱きついていた姉さんは深雪にそういわれよく見ると悪い笑顔を浮かべていた。その表情を深雪が確認すると表情の笑顔の固さがMAXになって…あの姉さん、早く離れてくんない?目の前の深雪さんなんか怖いんだけど。

 

「怖くないですよ八幡さん」

 

エスパーかよ。

 

「会長、私は兄と共に先に生徒会室に戻っております…失礼いたします」

 

「ええ、分かったわ」

 

「では……八幡さんのバカ…」

 

去り際になにか言われたような気がするがよく聞こえなかった。それと達也呆れるような表情をやめて。

 

その後、姉さんの抱擁から解放され、服部先輩からすげぇ目で見られたけどお前はダメだ、姉さんはお前にはやらん。中条先輩には俺の『ペイルライダー』を渡したらめっちゃ欲しそうな顔で見てたけどダメです、それ俺が作ったやつなんで。「伝があるんで『ペイルライダー』のショートバレルなら譲れますけどそれは…」と言うと本当に嬉しそうに喜んだ。本当に好きなんだな。

十文字先輩からは「また試合をしよう」と誘われたが正直勘弁して欲しい。

「前向きに検討します」と言うと笑って部活棟へ服部先輩と向かっていった。

 

残った渡辺先輩につれられて俺は風紀委員本部へ先に向かうように指示されたので、直接繋がる階段から入室すると凄い散らかりようだった。○○さん家の大家族みたいな足の踏み場もないほどだ。主に書類関係。

 

「少し散らかっているが、まぁ適当に掛けてくれ」

 

後から入ってきた達也も俺と同じことを考えたのだろう「掃除をしたい」と。

 

「ご覧の通り男所帯でな…整理整頓するよう口酸っぱく言っているんだが」

 

「渡辺先輩のデスクの周りが一番汚いんすけど…」

 

「誰もいないのでは片付くものも片付きませんよ…」

 

「…校内の巡回が主な仕事だからな、部屋が空室になるのは仕方がない」

 

俺と達也は同じことを思っただろう「あ、こいつ掃除する気ないな」と。

 

達也と俺で本部を掃除していると書類が出てきた。しかも今日までのやつ。書類提出が出来ないやつは会社で厄介者扱いされるぞ。

俺は渡辺先輩に書類を渡し判子を押すように強めに指示を(お願い)するとコクコクと頷き綺麗に整頓された机に着席し書類仕事を始めた。

こうしてみるとほんと出来る女、キャリアウーマン然としていて似合っていた。

割りと量が多そうで時間がかかりそうだったので本部に備え付けられていた食器棚にあったお茶(期限切れではない)を湯呑みに注ぎ、渡辺先輩の机の上の邪魔にならないところに置くと気がついたのか

 

「おお、すまない八幡君。君は意外と気が利くんだな」

 

「意外は余計っすよ…なんだと思ってるんですか」

 

「面倒くさがりだと思ったのだが…」

 

「否定はしないっすね、たまたま気が向いただけっす」

 

「捻ねくれているな君は…うん、うまい」

 

俺がいれたお茶に口をつけて一服していた。

 

  ヒッキー捻ねデレだ! 先輩、ほーっんと捻ねくれてますよね? 比企谷くん、本当に貴方は天の邪鬼ね…

 

「…そうっすね」

 

とっさに放課後の懐かしいあの教室でのもう会うことはないだろう3人の少女の顔を思い出す。

忌々しい記憶ではあるが、あの部屋で繰り広げられた時間は掛け替えのないものだ。

俺の声は少しか細かったかも知れない。

 

 

「摩利、ここ本当に風紀委員会本部?」

 

「いきなりなご挨拶だな真由美」

 

「だってあーちゃんやりんちゃんが片付けて!って言っても片付けなかったじゃない。どういう心の変化…ってそっか」

 

俺と達也の顔をみてなるほど、と納得していたようだがまぁ触れないでおこう。

 

姉さんが降りてきたのはそろそろ生徒会室を閉めるとの事を伝えに来たためだった。姉さんからは「じゃぁ八くん校門で待っているからね」といって退出していった。

俺も姉さんを待たせるわけにいかない、渡辺先輩も

 

「明日からクラブの一斉新入部員獲得競争で騒がしくなる、頼むぞ。それともう今日は終わりだ。解散しよう」

 

といわれ俺は憂鬱だった。さっさと姉さんと一緒に帰ろう。

 

達也が備品のセキュリティを設定しているときに風紀委員の上級生が巡回から戻ってきた。

 

「ハヨーッス」

 

「おハヨーございまス!」

 

威勢の言い掛け声が響く。なぜか「っべーわ」と言っていた金髪の奴を思い出した。

 

「おっ、姐さん、いらしたんですか」

 

「委員長、本日の巡回終了いたしました。異常無しです!」

 

「姐さんっていうな!何度言えば分かるんだ!鋼太郎お前の頭は飾りか!?」

 

「そんなに怒らんでくださいよ…あ、そういえば委員長、そこにいる一年坊は?もしかして新入りですかい?」

 

「まったく…そうだお前の言う通り新人だ、期待のな。生徒会枠の1年A組の七草八幡と風紀委員推薦枠の1年E組の司波達也だ」

 

「七草?もしかして七草生徒会長の弟さんで?こいつぁ逸材だ!…もう一人は、へぇ…紋無しですかい」

 

その発言に俺がまたしても切れそうになると達也が諌めてきた。鋼太郎と呼ばれた先輩は興味深そうに達也を観察しているようだ。

 

「先輩、その発言は禁止用語に抵触する恐れがあります!」

 

「お前たち、そんな単純な了見だと足元をすくわれるぞ。ここだけの話だがさっき服部が足元を掬われたばかりだ。さらに七草は…」

 

「先輩」

 

「おっとすまない八幡くん。七草は私がしっかりと実力を確認しているから言う必要もないな」

 

渡辺先輩、俺が十文字先輩に勝っただなんて言ったら変に目をつけられるからやめて欲しいんだけど。

渡辺先輩が達也が服部先輩に勝ったことを伝えると先輩二人の達也を見る目が変わったようで

 

「そいつぁ、心強ぇ」

 

「二名共に逸材ですね」

 

「意外だろ?」

 

「は?」

 

「そうっすね」

 

「この学校はやれ、ブルームだウィードだなんて言い争いをしているのを見ていてうんざりしていたんだ。今日の試合は爽快感抜群だったね」

 

渡辺先輩が今日のことに関して感想を述べていると達也もこの先輩達の事を知り意外そうにしていた。

 

「3ーCの辰巳鋼太郎だ。よろしくな七草に司波。腕の立つのは大好きだ」

 

「2ーDの沢木碧だ。名前で呼ばないようにしてくれよ?」

 

先輩達と俺と達也は握手をした。この雰囲気ならば達也も過ごすには悪くないのではないかと思えてきた。

 

 

 

「ただいま~」

 

「たでーま」

 

「お帰りなさいませお嬢様、八幡様」

 

「ただいま名倉」

 

「ただいまです名倉さん」

 

「八幡さま。呼び捨てで構いませんと申し上げましたのに」

 

「いや、そういうわけには…」

 

学校から七草家へ帰宅すると執事である名倉さんが出迎えてくれた。俺たちが帰ってくる音を聞き付けたのか泉美、香澄、小町がリビングから出てきた。

 

「お帰りなさい、お姉さま、お兄様」

 

「お帰りなさい!お姉ちゃん、お兄ちゃん」

 

「おかえり~お姉ちゃん、お兄ちゃん」

 

妹其々で出迎えの挨拶が違うのは面白いなと思ったのは俺だけだろう。そんなことを思っていると名倉さんが声を掛ける。

 

「そろそろ御夕飯の時間でございます。お荷物を運ばせますのでリビングへ」

 

そういって家政婦さん達が出てきて俺と姉さんの荷物を預かっていった。本当にこれ慣れねぇな…

 

 

リビングで待っていると食事が運ばれ姉弟で食事をすることになる。父さんは仕事が立て込んでいるので別で取るらしい。

 

食事が終わり其々に当てられている部屋に入っていき、俺も少し学校での勉強を復習していると時計の針が11時を指そうとしており、そろそろ風呂に入って寝るか…と思いクローゼットから着替えを出して浴室へ向かうと事件は起こった。

 

 

 

真由美は久々に姉妹4人でお風呂に入っていた。

七草家のバスルームはホテルのように広く、人が数十人で入ってもまだ余裕がある程だ。

 

「八くんってば副会長にものすごい啖呵切っちゃって、あのときの雰囲気は私も怖かったな。本当に副会長に実力行使するんじゃないかってヒヤヒヤしちゃった」

 

「流石、私のお兄様ですわ!ご友人のためにお怒りになれるなんて…」

 

「兄ちゃんかっこいい…!他人のために怒れるなんて流石だね!それにしてもその副会長って人僕嫌いだな」

 

「へぇ…お兄ちゃん友達出来たんだ…小町は安心しちゃったよ」

 

「「「ねー?」」」

 

姉妹の血は繋がっていないが本当の姉妹のようで思わず真由美は笑みを浮かべてしまった。ここには今、弟の八幡はいないがそのように感じられてそれも笑みを浮かべる要因なのだろうか。

 

話が進み真由美が今期生徒会に入ることになった深雪について話を始めるとピタリと止まり、泉美と香澄が小町を見てため息をついている。一体どうしたのだろうか?

 

「ねぇ、小町ちゃん?」

 

「ねぇ、小町…?」

 

「はぁ…まったくごみぃちゃんなんだから…」

 

ブクブク、と湯船に沈んでいく小町。

 

「??一体どうしたって言うの泉美ちゃん、香澄ちゃん、小町ちゃん」

 

疑問に覚えた真由美は妹達に問いかける。

 

「小町から兄ちゃんの中学校でのモテ具合が異常なんだーって話を聞いててさ。ね泉美」

 

「はい、お姉さまはご存じなかったかもしれないですけどお兄様は総武中学に在学していたときに部活動で『奉仕部』という部活に所属していてそこで様々な同級生を落としていたそうです。しかも全員タイプの違う美人」

 

「そうなのお姉ちゃん。お兄ちゃん昔から面倒ぐさがりなんだけど…今でも変わらないか…自分を犠牲にして事件を解決しようとする姿勢と行動から堕とされちゃう女の子がね…その中の一人にいろはもいるんだけど…」

 

自分の兄がモテて色々な女性に好意を寄せられていることは喜ばしいことなのだろうが、お兄ちゃん大好きな小町にとっては複雑なのだろう。

 

「いろはって『一色家』の一色いろはさん?」

 

「うん、そうだよー。ほんと困っちゃうよねごみぃちゃん…」

 

「小町ちゃんはお兄様が大好きですものね?」

 

「小町は兄ちゃん好きだからなー?」

 

「…別に、好きじゃないんですけど?」

 

好きじゃないとは言いつつその表情は赤くなっている。湯当たりしたわけではないだろう。その好きは「親愛」の方であるが。

 

「それを言っちゃったら泉美達はどうなのよ!お兄ちゃんのこと好きなんでしょ?」

 

「「そ、それは…」」

 

「泉澄達はお兄ちゃんと血が繋がってないんだから結婚できるよ?」

 

小町が泉澄に問いかけると迷っていたが覚悟を決めてその心に秘めているモノを告げた。

 

「私は…お兄様、いえ八幡様の事を好いています。一人の異性として」

 

「僕も…兄ちゃん、八幡さんの事が好きなんだ…間違いなく」

 

二人の表情は真剣そのものだった。兄としてでなく一人の異性として誘拐され救われたときとこの数ヵ月で触れ合って八幡という男性に惹かれていったのだ、その表情は妹ではなく一人の少女達だった。

 

「そっか…泉美達も大変だね~。さっきお姉ちゃんが言っていた深雪さんだっけ?聞く話によると結構な強敵かもね、泉澄達~応援してるよ。あ、お兄ちゃんが結婚したら私が妹になるのか…うーん」

 

「負けませんわ!お兄様に対する想いは負けませんもの」

 

「僕も…泉美と同じく兄ちゃんに対する想いは負けないよ」

 

姉妹の話を聞いていた真由美は自分は八幡に対する想いはどうなのだろうと考えた。

真由美自身、八幡の事を出会った時は不思議な子だなと思った。双子をなんの損得無しに助けに入り、父に七草家に養子入りを勧められた時も小町ちゃんを案じて七草家に養子入りした。

その後彼と触れあう内に知らず知らずの内に真由美は八幡の事を想っていたのかもしれない。それは弟に向ける親愛の情だろう…家族以外にベタベタくっつかれると嫌な顔をするのは自覚はしていないが。

妹達の恋の応援はしてあげたいとおもう真由美であった。

 

「お姉ちゃんは泉美ちゃん達の恋の応援しちゃうわ。八くん程の格好いい男の子はいないもの。家族だけれども血は繋がっていないからいけるわよ~」

 

それに私も狙っちゃおうかしら?と言おうとしたところバスルームのドアが開かれる。

 

「予習も終わったし風呂に入って寝よう…って…へ?」

 

「「「「え?」」」」

 

カポーン、と浴室内に反響した音が響き静寂が広がっている。

八幡の視線の先には生まれたままの姿でいる真由美と妹達がおり真由美は小柄でありながらその豊かなバストと括れが見え髪をアップにしているので普段の幼い印象から色気が出ていた。

泉美と香澄は姉と違い豊満ではないが少女から大人へ成長する段階で体つきは女性らしい柔らかさが出ており特に腰周りは抱き締めれば折れてしまう様な細さと女性らしさを持っていた。

 

「(え///、八くん…え?)」

 

「(お兄様…///)」

 

「(兄ちゃんの…///あ、あわわ…!)」

 

対して真由美と泉美達からは、八幡の体は普段の制服姿からは想像できないほど引き締まった筋肉を持ち、魅せるためでなく戦うための肉体が見えた。

更に八幡の一部を注視しており真由美はアワアワし、泉美は目を見開き、香澄は顔を真っ赤にしながら両手で顔を覆うが指の隙間からそれを確認していた。小町は「あーあ」と言っている。

 

八幡は急ぎ浴槽を出ようとするが既に遅かった。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「うわあぁぁぁぁぁぁ!!?…って!…ぐふっ」

 

「はっ…!は、八くん~!」

双方の悲鳴が響き真由美が前を腕で隠しながらサイオン弾を撃ってしまい八幡に当たり気絶させてしまった。

 

その後、浴室から上がり四人で協力して八幡に服を着せてその日は過ぎていった…

 

「姉さん達昨日風呂場にいた?」

 

「いないわよ?」

 

姉の気迫迫る回答に八幡は気のせいだったと自分の記憶をそう結論付けた。風呂場での記憶はよく思い出せないが良いものを見た気がすると八幡は思った。

 

「…ごめんなんともないです」

 

「「「(ほっ…!)」」」

 

余談だが八幡の一部を注視した真由美と泉美達はドキドキしてその日は眠れなかったらしい。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。