割りと早いペースで投稿。と言うわけで新章【師族会議編】スタート。
新年荒波を立てまして…って俺が悪いのか?
新年が明けた西暦二0九七年の一月一日。
連盟で公表された十師族四葉家・七草家の書面は魔法協会を通じて報せ…それは魔法関係者にとって大きな衝撃を与えるものだった。
発信者は四葉家当主・四葉真夜と七草家当主・七草弘一の二名。
これだけでも四葉と七草の確執を知っている関係者にとっては卒倒するレベルでの出来事だ。
その内容はというと共に両家次期当主指名と婚約者の発表…それは両家が次世代へ継承をするために動き始めたとのことを意味し四葉次期当主に指名されたのは司波深雪…改め四葉深雪、対して七草家次期当主に指名されたのは養子である七草八幡であった。補足ではあるがこれは七草家が八幡を認めたと言うことに他ならない。
そして…その深雪の婚約者として八幡が選ばれた八幡の婚約者として深雪が選ばれた。
これは当主での合意との事であり生まれた子供が四葉又は七草の当主になるのだろうが…それはさておき。
未だ話には続きがあったのだ。
七草八幡には次世代魔法師の能力を高める特殊遺伝子の【覚醒因子】を持つことが”判明してしまい”魔法協会はそれが日本魔法界の発展に大きな影響を与えるだろうとして一夫多妻を認める…といった文言でありそれを裏付けるように同じく婚約者として七草真由美の名前が記載されていたのだ。
そのニュースは日本魔法界を大きく賑わせるモノとなった。
それを見た同年代の魔法師は完全に隠蔽されていた達也・深雪に対しては対抗心を燃やしたり友情、あるいはそれ以上の感情を持っていた少年少女は「青天の霹靂」となっても仕方がないことだった。
困惑する当人…七草八幡は婚約者が次第に増えていくことに頭を抱えていた。「可笑しい」と。
と、同時に同じく一条家一条将輝もまた、大きなショックを受けているのだった。
そして同時に七草八幡に対して同性の魔法師はこう思っていた。
『現実で
◆ ◆ ◆
少し時間は遡る事十二月三十一日。
七草家本邸。
八幡と小町は四葉本邸から【次元解放】によって直ぐ様戻り二人は別れて自室へ向かおうとするが八幡と小町は義父である弘一の書斎へと向かった。
『入ってきなさい』
「「…ッ」」
ドアの前に立ち扉をノックしようとするとそれよりも前にまるでこのタイミング帰ってくることを予知していたかのように声を掛けられた二人は驚いたが直ぐ様ノブに手を掛けた。
空気が抜ける音が響いてカチャリと金属の音が鳴って扉が開かれるとそこには書斎の執務机に両肘を付いて手を組む弘一の姿があった。
二人並んで弘一の前に立つと顔を上げる。サングラスを掛けているため視線での表情が分かりにくいが…判断のしづらい表情を浮かべているのが八幡には理解できた。”困惑”というのが一番しっくり来るだろう。
「戻ったのか」
「ああ。用事が済んで年明け前に戻ってきたよ。」
「ただいま戻りましたっお義父さん」
「お帰り二人とも。向こうは寒かっただろう?そこに掛けなさい」
そうして弘一は書斎のソファーを指差し座るように促してくるので二人は並んで着席した。
同時に弘一は立ち上がりHARを操作して人数分のお茶を淹れる。
淹れ終わったお茶はそれぞれの前に置かれたタイミングで八幡は今回の件をどう説明したものかと考えを張り巡らせたがそれは弘一の一言によって阻まれた。
「今回お前達が向かったのは四葉本邸だろう?」
「ッ…なんでそれを父さんが知ってるんだ…?」
質問に質問で返す形に成ってしまったが父は気にしていないのか笑っている。
「お前達の祖母…というよりも朔夜さんが来てね。『息子達に手伝って貰いたいことがあるから二、三日貸して欲しい』と言われてね…最初は荒唐無稽だと思っていたが彼女と私しか知らない物があってね…信じる他なかったんだ。」
「父さんは俺たちが四葉の直系って言うのは知ってるのか…?」
「ああ。お前達が朔夜さんと師匠の子供だってことはね。」
引っ掛かりを覚えた八幡は弘一に再び聞き返す。
「母さんと…ん?師匠?」
「朔夜さんは言ってなかったのかい?…お前の実父である四葉逢魔さんは私の魔法の師匠なんだ。先生と同じくね。」
「そ、そうだったんだね…」
小町は目をぱちくりさせている。
まさかここでも横の繋がりが有るとは思わなかったからだ。
「…無論。私はお前の”特異性”…魔法も全て朔夜さんに教えられたよ。」
「ッ…隠すつもりは…なかったんだけどな」
「いや、気にするな。あれだけの力を持てば隠したくも成る。だが、無闇に隠したんじゃなくてその強大さを危惧して…私たち”家族”を巻き込まれないようにするためだろう?」
「…ッ!?そ、それは…」
「私は嬉しいんだよ。八幡。お前は私たちを本当に”家族”だと思ってくれていることにね。向こうであったことを教えてくれ八幡、小町。」
「…………ああ。」
「…うんっ」
こうして3日間に及ぶ自分達の出生と四葉本家で起きた出来事を簡潔ではあるが説明し八幡が過去の出来事…真夜の”傷跡”を癒したことを告げると弘一は天を仰いでいたのは感謝の溢れる涙を見せないようにしていたからか。
それか自分の過去の至らなさを恥じた涙なのかは本人のみ知ることだろう。
八幡は父の義眼を治療しようかと切り出したが断られた。
その”過去”は証として取っておきたいのかもしれないが…これも本人だけが知るのみである。
八幡達が自分の部屋に戻った後ーー。
弘一はビジフォンを起動し誰かと会話をしていた。
その会話の内容には”婚約”とか”娘はあまり乗り気ではない”、”相性が良くない”等と結婚に関する会話が繰り広げられていた。
「…では正式な婚約破棄は書面にてお送りいたします。申し訳ございません”五輪殿”」
『ーーーーーーーー。ーーーーーー。ーーーー。』
「ええ。次回の師族会議にて。では。失礼いたします。」
通話を切ると時間は二十二時を少し過ぎていた。
ビジフォンを切るそのタイミングで受信ランプが赤く点滅する本体を確認し掛けてきている相手は『四葉朔夜』と記されていた。
弘一は「寝るにはまだ早いらしい」と呟いてそれに応答する。
その”会談”を終えると時刻は二十三時になっていたが弘一は書斎から愛娘達の自室へ向かうと起きている気配があったので丁度良い、と三人を書斎へ集め少しの時間を貰って話をする。
それを受けた真由美達は顔を真っ赤にしていたと言う。
◆ ◆ ◆
その翌日、年明けて二0九七年一月一日元旦。
朝起きて家族との新年の挨拶を終えて恒例行事である挨拶回りで七草家姉弟は忙殺されていた。
「めんどくせぇ…」
「そういうこと言わないの八くん。…それにしても今回は多かったわね」
七草関連性企業の社長や専務、分家当主達へ挨拶回りを終えた…と言うか来客の相手をしたところで一旦八幡は真由美と共に休憩していた。
二人の衣装は紋付き袴と振り袖と言った装いであり真由美に至っては髪を纏めているので普段の装いとは違う。
「なにもしたくない…熊になりたい。」
「何それは…ほらそんなこと言わないの…もう。今日は分家の皆様と一緒に午後から会合でしょう?」
「ああ。…もうそんな時間か一体何の大切な話なのやら…」
八幡が呟くと真由美は顔を朱くしていた。
「………///」
「姉さん?…どうしたんだ顔が赤いけど?」
「う、うん!?何でもないわ。それよりしゃんとしないとほら。お髪が崩れちゃってる」
「おぉ…ありがとう」
真由美が振り袖の袖口から櫛を出して八幡の跳ねてしまっている髪を整えて上げていた。
◆ ◆ ◆
時間が少し経過し七草家には関係各所…分家家長並びに子供達が集結し新年の挨拶や食事会が行われていたが今回はそれがメインではなかった。
七草家に有る大広間にて。
「皆さん、改めて新年おめでとうございます。」
そう弘一が告げると集った分家一党は頭を下げて新年の挨拶をする。
人数が人数なので大きな輪唱となった。
「「「「「明けましておめでとうございます」」」」」
「この新年に相応しい喜ばしい事を二つ発表させて頂こうと思う。」
そう告げると視線は弘一の隣に座る八幡に視線が誘導された。
(何だろう…すげぇ嫌な予感が…っ!?)
八幡は感じ取っていた。そう、学校でつるし上げで学級委員とか文化祭の進行係を押し付けられるあの嫌な空気を。
が、それよりも重大な案件だったのだが。
「まず一つはここにいる皆様が関心を寄せているであろう事…それは七草家の次期当主についてです。皆様もう察しておいでだと思われますが次の私の当主はーー」
弘一が告げた。
「ここにいる我が息子である七草八幡に任せたいと思います。」
「(おおう…マジかぁ…はぁ…………)………。」
それは父弘一より仄めかされていた『八幡を次期当主候補に』と言う言葉が現実になったことを示した。
頭の痛い現実だったが受け入れる他無く八幡は軽く会釈をすると分家当主達からは快い拍手が広がりそれはその息子娘達も行っていた。
(これで『お前なんかふさわしくねぇ!』って言われたらどうしようかと思ったが…マジでそう思ってる…んだよな?)
八幡は【瞳】で見渡すとある意味で親戚…である分家達の好感度が高いことが視界に入り分家筆頭である菜々崎の姉妹である佐織と光咲、敦子も陽葵も同じく笑みを浮かべて拍手をしていた。
心からの祝福に八幡は少し座りが悪かった。
拍手が続くなか弘一が次の発言を進める。
「暖かい拍手ありがとうございます。そして二つ目のお知らせになりますがーーー」
その発言に会場は驚きの空気に包まれた。
「次期当主である八幡はこの度私の娘”達”で有る七草真由美、香澄、泉美と婚約する事と相成りました。」
「……ッ!?」
「…/////」
「…///」
「…////」
その言葉に八幡は思わず声を出しそうになったが口をつぐみ隣をみると真由美達は驚くこと無く顔を朱くして少しうつ向いている。
小町はニコニコして八幡達をみており香澄と泉美はその目尻に涙さえ浮かんでいる。
一方で分家一党は驚きと困惑の声を上げる。
「なっ?」
「今なんと…?」
「三人とですと!?」
「そんな馬鹿な…っ!?」
「だが八幡殿は養子で血の繋がりはないから問題ないのでは…?」
「外聞、と言うものがあるだろう…?」
「未だ一夫多妻など聞いたこともない…」
困惑する声色が多数であったが弘一が言葉を続ける。
「困惑するのも当然であろうが実はこれには事情がある。正式に魔法協会より通達があるが……」
弘一によって”後に判明する”事の経緯を知らされると一人の声を中心に次第にそれは祝福される声色に変わっていく。
「唐突なことで驚いてしまったが実に喜ばしいことだ!現にお嬢様方はとても嬉しそうしているのが見て取れる…法律的には問題なかろう。そして今回の婚姻は未来の七草家を繁栄に導く大きな一歩だ。いや、実にめでたい!」
「確かに……」
「いやぁ!こりゃめでたい!」
「おめでとうございます!!」
拍手を受けて壇上にいる八幡達は頭を下げる。
集まった分家同士で歓談しながら料理を楽しみ七草家とその分家の慶春会はつつがなく終了した。
その後弘一は子供達を書斎に集めていた。
開口一番八幡が声を上げた。
「父さんどう言うことだよ!?そもそも俺は姉さんと婚約状態になる何て聞いてないんだが?」
「ん………?」
弘一は「言っていなかったか?」と言った表情を浮かべている。
「聞いてねぇよ!!!!」
「あはは…お義父さん言ってなかったんだね」
「え、小町ちゃんなにその反応?父さんから聞いてたの?俺だけハブなの?ボッチなの?」
「細かいことを気にするな。ああ…次期当主に恋慕するものが複数いて代表するのが真由美だった、と言うだけの事だ。それを同家に複数います、と説明するのはタイミング的に外聞が悪い。と言うよりお前は真由美達の事嫌いか?」
そう問われて八幡は息を詰まらせた。
「う………っ…い、いや、義姉が婚約者ってのもなかなか…あ、いや別に嫌…嫌いじゃ…ない」
「野暮なことは言わないが…そう言うことだ八幡。私は可能ならば娘達の願いを叶えてやりたい。となれば複数人と結婚できるように改訂するしか有るまい。」
「え!?それを…したってこと!?」
真由美が驚きの声を挙げる。当然だろうこの国では一夫多妻は認められていない。が、魔法師の婚姻形態は普通の法律ではない。
「ああ。あの場では詳細は話していなかったが…そうだな。八幡が持つ特異な体質、次世代に産み出される魔法師の能力を強化する【覚醒因子】が日本魔法協会にとって有益だと判断されたのだ。」
「「「「【覚醒因子】?」」」」「なんだそりゃ…?」
姉妹揃って首を傾げている。聞きなれない言葉だったからであり八幡も「何の事だ…?」と反応を見せている。
弘一が言うには八幡には特別な遺伝子…魔法師に作用する能力を強化、両親の能力を確実に受け継ぐ【覚醒因子】なるものが”搭載”されていると言うことを”調べて分かった”とのこと。
実際に母親である朔夜が弘一に教えたとのことだがそれはこの場では言わなかったが八幡は勘づいていた。
そしてその因子の結果を出しているのが八幡…と言うことになる。
八幡はまたしても頭を抱えた。
(多分だけど恐らく三十年前のあの時母さんが願ったからだろうな…やだ、想いの力強すぎ…っ!)
「【覚醒因子】は魔法界にとって有益な能力だ。それを込みで私は四葉殿と連名で魔法協会に『八幡の重婚許可』を今申請している。もう暫くしたら認可が降りるだろう」
「「「「?!?!?!」」」」
「ええ…?つか未だ認可されてないってこと?」
「ああ。」
「ああ。…じゃあるかい!ダメじゃねーか!!」
「そうなれば香澄達も八幡と法律的に結婚できる、と言うことだ。なに同じ姓ではある意味では”他人”だからね」
あっけらかんに言う弘一に八幡は頭を抱えた。
(それを聞かされてどうしろってんだ…!!今姉さんと婚約したっての聞いて驚いているのに香澄と泉美ともなんて……)
”妹”と”姉”としてみていた三人だったが今は”婚約者”というフィルターが掛かっているからか”異性”として認識してしまった。
その事に頭を悩まし異変に気がついた八幡だったが…
(確かに三人とも美人で可愛い…本当に俺なんかが相手で良いんだろうか…?あれ、俺…なにかが…)
”何かが変化している”と言うことに気がついた八幡だったがそれがナニか、ということが分からなかった。
そう思っていると弘一は更なる”爆弾”を投下した。
「それに真由美との婚約を魔法協会に提出する前に…後に正式発表が有るが四葉殿の方も次期当主として司波深雪…四葉深雪として指名されその婚約者として八幡に婚姻の申し込みがあってそれを受け入れた。」
「はぁ!?ちょっ、え!?えぇ…!?」
思わず八幡は声を上げた。深雪が次期当主に決まったことに驚いたのではなく”自分の婚約者”になるということにたいしてであった。
「「「えぇ~~~~~ッ?!」」」
真由美達は深雪が四葉の関係者と次期当主、そして兄の八幡との婚約者ということに弘一の書斎には三姉妹の驚愕の声が響き渡っていた。
◆ ◆ ◆
その日の夜。
俺は自分の部屋にて対面していた。一人一人の”婚約者”と。
「………」
気まずい。この沈黙が非常にキツく俺は香澄に視線を向けると顔を朱くして逸らされてしまう。
何でだ。
「あの、香澄?」
「は、はいっ」
唐突に声を掛けたからか肩をビクッと震わせていた。
いや、ごめん俺がいきなり声を掛けたからだよなごめん…
「あ、いや…その…ちょっとビックリしちゃっただけだから大丈夫だよおにぃ…」
「そ、そうか…」
「……」
そして再びの沈黙に俺たちは気まずさを覚える…どうしたら良いんだこれ?教えて小町ッ!!とアホなことを思っていると香澄が口を開いた。
「気持ち悪い、って思った…?」
「?どう言うことだ…?」
「実の兄妹じゃない、とは言え僕とおにぃは兄妹だし…それで突然婚約者…なんておにぃを義兄じゃなくて”男”としてみているなんて気持ち悪いでしょ…?」
苦しそうに胸の部分に手を当てて俯く香澄はその目尻に涙を溜めようとして潤んでおり今にも泣き出してしまいそうであったその姿を見た。
「…………」
「お、にぃ…?」
俺は泣き出しそうな香澄の近くに赴き俺が使用しているベッドに座らせていたいたのだがその横に腰掛け香澄を抱き寄せた。
「……」
香澄は驚いた顔を浮かべていたがそれを振りほどこうとしなかったのは俺に少しの安堵感を与える。
…どうして安堵したのかは分からないが。
「香澄、聞いてくれるか?」
「…うん」
香澄は俺の胸に顔を埋めながら頷いた。
「最初、父さんからお前達が俺の婚約者、って聞かされてビックリしたんだ。だってそうだろ?今まで義妹として接してきたのにそれを突然…さ。でも不思議と悪くない、って思ってる俺と俺じゃ香澄と釣り合わないだろって思った俺がいたんだ」
そう告げると香澄は顔を上げた。既に目尻に涙が溜まり溢れていた。
拒絶される、と思ったからだろう。
「そんなことないっ、僕は…僕は…本当におにぃの事が大好きなんだッ…初めてあった僕たちを助けてくれたあの時からずっと暮らしてきて…一緒にいて…!」
俺の目を見ながら泣きながら告白してくる香澄を見て俺は覚悟を決める、いや決めるしかない。
俺は再び香澄を優しく抱き止め告げた。
「正直…未だそんな感情を抱かれるに相応しい男なのかも未だ分からないけど…」
「そんなことないっ…おにぃは僕の最高の”婚約者”だよ…正直おにぃ以外の男の子なんて考えられないし…」
見上げる香澄は先程までのどんよりした表情ではなく快晴としたはにかんだ笑みを浮かべている。
うん、やっぱり香澄は笑っている顔が一番可愛いな」
「か、可愛い…///エヘヘ…ねぇ…おにぃ…八幡、さん…お願いがあるんだけど…」
どうやら口に出ていたらしい。顔を朱くしているが嫌がっていないようで安心した。
「改めて”八幡さん”って言われるのなんかむず痒いな…」
「慣れてよそこは?あ…じゃなくて…目を瞑って?」
「…?なんで」
「良いからっ」
急かされるようにそう言われて俺は目蓋を閉じる。
「ああ。……………………んぐっ!?」
香澄に言われるがままに目蓋を閉じること数秒だったのだが香澄の吐息が近いと思ったら俺の唇に柔らかいものが当たった。
言わずとも分かるがそれは…
「これからは妹として…婚約者として…宜しくね”おにぃ”♪」
何時ものような笑みを浮かべて俺を見つめていた。
◆ ◆ ◆
「なぁ…泉美?」
「は、はひぃっ!?」
「あ、すまん驚かせる気はなかったんだが…」
「い、いえその…すみませんお兄様…その気持ちの整理が」
「そうか…」
香澄と分かれて泉美を呼んできて貰うようにお願いすると普段と違っておどおどしている泉美が部屋に入ってきたのを確認してベッドに腰かけさせるとチラチラと俺と部屋の地面を視線が行ったり来たりと忙しないのは当然かもしれない。
事前に父さんに聞かされていたとはいえ大勢の前でそれも魔法師関連には”婚約者”として伝わっているからだ。
視線を行ったり来たりしていた泉美は俺を呼んだ。
「お兄様…こちらに来ていただけますか?」
「ああ。」
断る理由もないので俺は椅子から立ち上がって同じくベッドに腰掛け隣り合うと泉美は遠慮がちに袖口を掴んできた。その光景が愛おしくて俺は頭を撫でると泉美は「あっ…」と声を上げたが暫くすると不満げに俺を上目使いで見つめてくる
「…香澄ちゃんは抱き締めたのに私には抱き締めてくれないんですか?」
「なんでそれを…」
「此処に来る前に香澄ちゃんから聞きました…私はお兄様の婚約者にはなれませんか?」
「…泉美?なにを…っ」
頭にのせていた手をゆっくりと引き剥がされ手を握られて体を寄せられてカなり密着している状態になり泉美の優しい甘い香りが俺に流れてくる。
理性を失っていないのは俺が泉美を”義妹”と認識しているからだろう…なかったら危ない光景だが。
が、その認識が次第に崩れ去っている気がしてならない。
くっついていただけだったが泉美が握っていた手を誘導し腰に回させ抱きつくような形となる。
そこで俺は泉美の本心を聞くことになる。
「三年前…誘拐されて…辱しめられそうになったときにお兄様が私達を救ってくれた…それから七草家で一緒に過ごしてきた日々は私の想いは…お兄様、泉美は…八幡さんの事を兄として…異性としてお慕いしています…」
「…泉美」
「あっ…」
俺はそれを聞いてなんとも言えない…だが決して嫌ではない、寧ろ嬉しくなっている自分がいることに驚きつつその感情のまま空いている手で泉美を抱き締めると声を上げる。強く抱き締めすぎたのかもしれないがそのままの状態で思っていることを告げた。
「ぶっちゃけると俺が…泉美に相応しい男だと思っちゃいない…俺より良い男は沢山いると思うし泉美なら引く手あまただろう、ってさ。」
「そんなことはっ」
「でも…泉美に”好きだ”って言われて…昔なら嫌な気分になっていたけど今は…違う。寧ろ……”嬉しい”?のかもしれない」
「ふふっ…なんですかそれは」
どっち付かずな回答をすると泉美は小さく吹き出して笑う。
「本当に…どうするんだろうな俺は…」
「捻ねくれて面倒くさいのがお兄様ですから…そんなお兄様も大好きですよ?」
「ははは…正面切って言われるの中々来るものが…あるよー泉美?」
「そこはちゃんと私に”愛しているよ”と言わないお兄様が悪いのです…そんなお兄様…いや八幡さんは私の…”婚約者”ですから」
その柔らかい笑みに”ナニか”を垣間見てしまった。
「っ、ああ…(なんだろうすごい泉美にドキッとした…!)」
「…目を閉じてくださいませ。お兄様」
「……んぐっ!?」
香澄と同じように泉美の吐息が鼻先に伝わり唇に柔らかいものが当たる。
言わなくとも分かるそれは好きなものしか行わない行為…
お淑やかな雰囲気を纏わせ優しく…艶やかな笑みを浮かべる泉美。
「これからは…義妹としてではなく”婚約者として”宜しくお願い致します。”お兄様”♪」
◆ ◆ ◆
そして一月三日、魔法協会より正式に『提示された情報を精査して七草八幡に関する婚姻、重婚を特例的に認める』との通達に再び日本魔法界は激震した。
それを期に婚約を申し込む有力な魔法師の令嬢たちの存在に八幡は頭を抱えたのは”どれも知っている知り合い”であったからだ。
そしてその事に真由美達は少し不機嫌になり小町は笑みを浮かべていた。
◆ ◆ ◆
時間は少し遡る。
西暦二〇九七年一月二日旧石川県一条家本邸。
年始周りから戻ってきた将輝は正に”寝耳に水”という情報を聞かされ驚いていた。
「司波さんが四葉の次期当主でその婚約者が七草八幡!?ほ、本当なのか親父」
「ああ。」
「そ、そうなのか…」
その事に自失騒然となる将輝であったが次なる父親の言葉を聞くために現実に戻ってくる。
「将輝。お前は司波…いや四葉深雪嬢のことが好きなのか?惚れているのか?」
「な、何を突然言うんだよ?」
「良いから答えろ。お前は四葉深雪嬢が好きなのか?」
剛毅の射貫くような視線が将輝に突き刺さる。
海の荒くれものでさえも萎縮するような強い眼光であったが将輝は恐れること無く本心を告げる。
「ああ。俺は司波さんに惚れている。一目惚れだ。」
「そうか…それだけ聞ければ十分だ。ならば親としてその想い叶えてやらないとな。」
「だが…七草と司波さんの婚姻を横槍居れることなんて出来ないだろ。此方が叩かれる。」
その懸念を告げた将輝であったが剛毅が続ける。
「阿呆。話は最後まで聞け。実はだな…」
剛毅は息子にもう一つの話をすると見本のような驚きのリアクションを挙げた。
「一人の男に複数の少女が嫁ぐなど将来的に”血が濃くなる可能性が高い”となれば今回の婚約を止めねばならん」
「ちょ、ちょっと待ってくれ親父!」
「待っている暇などあるか。向こうは既に外に向けて婚姻を発表しているんだぞ?それに七草殿の息子の【特異性】が承認されてしまえば重婚は認められる…待ってなどいられん!お前も動けこのヘタレ!」
父親に叱責?を受けて動き出すがそれよりも早く追加の文章が魔法協会から提出されたのである。
◆ ◆ ◆
年明けの二〇九七年冬休み明けの一月八日。
俺は…俺たちは兄妹揃って第一高校へ出勤…じゃなかった通学していた。
いつものように並んで通学路を歩いているのだがチラチラとこちらの様子を伺うのが見て取れて非常に居心地が悪いだけで悪意とか殺意と言うのは感じられない…と言うのは嘘だ。うん。嘘。
ぶっちゃけると同性の魔法師からは羨望及び妬みの視線が向けられており俺がそれを街中で見てカップル達にぶつけていた「リア充爆発しろ!」と同じ感情がぶつけられてた。
(昔の俺が見たらどう思うのか…いや同じことを思うんだろうなぁ…)
そんな感情を読み取りながら両サイドを陣取る義妹…もとい”婚約者”を見るとそんなことなど知りません、と言わんばかりに控えめ?に見せつけるように密着してくる。
「お熱いですなぁ…お兄ちゃん?教室についたら深雪さんとほのかさんと雫さんと構って上げなくちゃダメだよ?あとエリカさんにもね~」
小町が後ろを指差すと此方を見つめる俺の婚約者達がジト目で…と言うかハイライトがオフってる人もいるのでびびった。嫌だよ俺学校でNiceboatされたくないぃ…!中に誰もいませんよは洒落にならんからな!?
「お兄ちゃんの魅力を分かってくれる人がいて小町は鼻高々ですよ。」
小町の一言に俺は頭を抱えた。モテる、ってつらいことばかりなんやな…って今さらになって思うがリアルでラノベ主人公になるのは間違っている、と。
◆ ◆ ◆
妹達と分かれてから教室に戻ると当然…というか好機の視線に晒され鬱陶しく思って睨み付けようと思ったが波風をたたせるわけには行かないと自重し荷物をしまい自分の席に着席した。が普通に挨拶されるので「おはよう」と返答し着席する。
俺への関心というかスタンスはクラスメイトの中では変わっていないらしい。
余計な敵を作らないのならそれに越したことはないので。
「お、おはようございます八幡さんっ明けましておめでとうございます」
「おはよう八幡。あ、新年明けましておめでとう?」
入って直ぐ挨拶…普段通り、というわけには行かないようで現実問題ほのかはその色白の肌を紅潮させているのは恥ずかしがっているからであり雫は変わらない…と思っていたが少し視線を俺から離しているので表情には現れにくいが恥ずかしがっているようだ…つか、俺も恥ずかしい。
「あ、明けましておめでとう…で良いのか?六日経ってるけど」
「ん、新年を迎えて初めてだから…問題ないはず?」
「だよな…あはは…」
「「「…………」」」(会話が)(続かなくて)(気まずい…!)
このなんとも言えない空間をぶち壊したのはほのかだった。
「授業が終わったら八幡さん…お時間いただけますか?」
「それが良い。此処では…少し込み入った話になると思うから…」
雫が反応し視線を後ろへ指したのは野次馬が沢山いる場所では到底話せるないようではないからだ。
そりゃそうだ。といっても達也達のグループを呼んで今後の話をしておく必要もある。
…特に達也達のアフターフォローをしてやらないと行けない”四葉の関係者であることをひた隠しにしていた”というある意味で後ろ暗いと取られても仕方がない事情があったからな。
まぁ俺も全部話せる訳じゃないんだが…
「そうだな。授業が終わったら深雪達含めて屋上へ行こう。さすがに食堂や生徒会室は厳しいだろうしな。それに達也達のこともある」
「はい」
「そうだね」
「…つか深雪は?」
と此処まで喋って深雪の姿がないことに気がついた。
「そう言えば…未だ出席してないのかな?」
「本当だ…この時間なら出席していてもおかしくないのに…どうしたんだろ深雪」
そうこう話していると正面の入り口から深雪が入ってくるがその向けられた視線は腫れ物を扱うような感じで非常に俺は不快だった。本能的にそう思ってしまっているのだろう”四葉”という名前はそれ程までに威力があるようだ。
これをどう解決するべきかを考えると同時に教師が入ってきた。
…一先ず退屈な授業でもBGMにして俺は達也に連絡をいれた。ふむ、対策を考えるとしようか。
香澄、泉美の告白がまだだったので此処で回収。
こんな落とし込みで大丈夫か?問題ないと良いな。
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