始業式だというのに通常営業する魔法第一高校はフルカリキュラムの授業が詰め込まれており俺は正月であった疲れを完全に取ることは出来ずに授業を聞き流しながら対策を練っていた。
そして午前中の授業が終わったのだが当たり前ではあるが深雪への視線は遠巻きで好奇の目を向けてきているものばかりで話そうにもどうも奥歯にモノが挟まったような、そんな感じだ。
「深雪。飯食いに行くぞ」
「行こう深雪!八幡さんがお弁当用意してくれたみたいだよ」
「深雪行こう?ほら早く」
「ちょ、ちょっと待って皆…あ、八幡さんっ」
昼食を告げるチャイムが鳴り響くと同時に俺は持ってきた荷物を左手にもって空いている右手を深雪の手を取って立ち上がらせ強引に屋上へ向かう。
後ろからの視線を晒されなかったのはほのかと雫が盾になってくれたからだ。
俺は後ろにいる深雪にボソッと呟く。
「…あまり気にするな。俺が何とかする…話したいこともあるしな」
「……え…っは、はい…///」
こうして俺たちは真冬なら絶対に来ないであろう場所…屋上へ到着すると既に先客がいた。
「あ、八幡此方よー!」
「悪いな。寒いのに待って貰ってよ」
「良いの良いの。だって食堂とか教室で達也くん達への視線が鬱陶しいのなんのって」
「確かにエリカの言う通りなんかなぁ…腫れ物を扱うみたいでしょ…気分悪いぜ」
「悪いな八幡。わざわざ呼んでもらって」
その場にはF組のエリカ、西城、そして達也が先んじて到着しており寒そうにしていたので俺が保温フィールドを展開すると快適な空間へ早変わりした。
「あ?気にするなよ俺たちの方も深雪に鬱陶しい視線を向けてたクラスメイトが多数だったからな…奥歯にモノが詰まったような感じで話しやがってムカついたから此方に来ただけだし。それに”お義兄さま”の手助けも俺の役目だしな?」
「ぷっ」
深雪が小さく吹き出すとそれに釣られてエリカが笑いだした。
達也が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。
「お前からそう言われるのはなにか…気持ち悪い。」
「あ゛?」
せっかく人が心配してやったと言うのになんと言う言い種だ。可愛くない甥である。
とまぁそんなことは俺と司波兄妹にしか知らないことなので此処にいる全員が笑い声を上げていた。
そんな中人数が足りないことに気がついて声を上げた。
「…そういや幹比古と美月は?」
そう問いかけるとレオと達也は言いづらそうにしていたがエリカが答えてくれた。
「美月はちょっとね…ほら、普通の家の子だからさ。幹比古は…」
それを聞いて俺は納得が行った。同時に幹古比がどうして避けているのかということも理解できた。
「おk…大体理解した。…エリカは悪いけど美月を此処につれてきてくれないか?そうだな…ほのかも一緒についていってくれ。頼む」
「分かったわ」
「分かりました。八幡さん。」
「俺は…」
立ち上がって扉に向かう。
「幹比古を此処に殴ってもつれてくる。」
◆ ◆ ◆
「ちょ、どこに連れていくんだ八幡っ」
「いやー飯を一緒に食おうと思ってさ。俺手作りの弁当でよ~作りすぎたんで処理して貰おうってな」
「わ、分かったから引っ張らないでくれっ」
「そうか」
「うわっ!?」
引っ張っていた手を突然放したのでつんのめりで転けそうになった幹比古は寸でのところで踏み留まり俺に抗議の目を向けてきたが俺の目を見て怯んでいた。
俺は隠すことなく【瞳】を黄金色に輝かせた。
とてつもない威圧感が屋上へ続く階段の踊り場に広がる。
「怖いか幹比古?七草八幡が」
「突然何を…」
嘘は許さない。まぁ言ったところで俺に嘘は通用しないが。
「答えろ。お前にとって”七草”という名前は恐怖か?いや正確には…十師族という存在が、だが」
「…ッ。」
幹比古は俺を見て黙って…というかどう答えたら良いのか分からないらしい。
では質問を変えるとしよう。
「…幹比古にとって達也や俺は恐ろしいと思うのか?」
「違うよ…達也や八幡が十師族の魔法師だからって理由じゃないよ」
お、回答が帰ってきたので質問を続ける。
「んじゃなんだ?俺とは普通に話せてるのに達也を避けてるのは何でだ?エリカから聞いたが今日は全然口を聞いていないみたいだが?」
「達也が四葉の魔法師だったから…じゃないよ」
「?」
「僕は…達也が何も打ち明けてくれなかったことに腹を立てているんだ。」
その事に俺は呆れた…といわんばかりに溜め息を吐いた。
「お前なぁ…達也や深雪が好き好んで隠していたと思うか?…きっとエリカもおんなじこと言うかも知れねぇけど…『伝統派の看板背負ってるミキの方がそれはよく分かってるんじゃない?』ってな」
それを告げて黄金色の【瞳】でビクついている幹比古の目を見ながら告げた。
「お前、仮にその事を達也達の口から聞かされて真っ正面から受け入れる器量はあんのか?今まで通り付き合えたか?達也の立場で俺が七草の名前を隠していたとしてもか?…今のお前を見てるとそうは思えないんだよなぁ…?」
俺は確信を突いた言葉を告げた。
「幹比古。お前は”四葉”の名前にビビってるだけだ」
「ッ八幡はどうなんだよ…!僕たちよりも身近で七草と四葉の確執は魔法師達の間じゃ有名だ…!君だったら…僕の立場ならどうなんだ!?」
叫ぶように答えを求める幹比古に俺は鼻で笑った。
「はん?…んなもん決まってるそんなこと言われたらビビるだろ。あの四葉だぞ?とって食われかねん」
「だったら…!」
「俺が、人嫌いの俺が心からこいつは良い奴だと思えたから友達やってんだよ。たかだか一つ二つの隠し事で崩れるような関係なら友達なんかリセットしちまえ。俺は人様に笑われるような交友関係を築き上げるほど余裕がねぇ。悪意に晒された人間ほど真実を見抜くってな。」
散々な目に有ってきたんだ。見抜く力ぐらい培ってきている。
「……」
「だからだ。達也本人も俺たちに”嘘をついている”って罪悪感がゼロだった訳じゃない。あいつも人間だからな幹比古、それよりも単純に友達だった人間に裏切られて平気な奴がいるか?お前達のやってることは昔俺がやられたことと一緒だ。」
「…ッ!?」
「分かったみたいだな。」
「達也達が言い出せなかったのは関係を崩したくないって言うアイツのワガママだ。だけどよーー。」
俺は硬直している幹比古に近づく。
「それを受け入れてやるのも”友達”なんじゃねぇの?いや、俺は友達少ないから分からんが。」
「なんだよそれは…」
「悪いが今俺は深雪の婚約者で達也は俺の義兄だからな…あれだ身内の情って奴よ」
そう告げると幹比古は顔をさっきまで下を向いていた顔を上げるとその表情は先ほどまでの暗いものではなくスッキリとした悩みが晴れた表情だった。
「…僕も達也の事を友人だと思っているよ。だから努力する。来週の月曜日にまでちゃんと顔を合わせられるようにする」
「そうか…まぁ今から向かうところに全員集合してるからそんな悠長な事を言わせないだが?」
「え、ちょっ、八幡!?」
「ほらいくどー」
「八幡ぁああああああっ!?」
その後幹比古を強制連行して先んじて美月を連れてきていたエリカ達の説得と幹比古が先んじて改善しようという心持ちがあったのでその日の内に関係は元通りになっていた。
二人してメチャクチャ達也達に謝っていたのを見て全員で苦笑いをしていたがまぁ、雨降って地固まる的なあれだしクラスの連中も俺たちが普段通りしていればそれに釣られて改善されるだろう…と考えて俺は自分で作った弁当のおにぎりを頬張っていた。
◆ ◆ ◆
「つか、深雪は何時もより遅い時間に出席したのはなんだったん?」
一通り食べ終え深雪から手渡されたサーモボトルに入れていた温かいお茶を啜りながら問いかけると苦笑いを浮かべていた。
「実は校長から呼び出しを受けまして…」
「呼び出し?」
入れ替わるように達也が説明してくれた。
「ああ。俺達が四葉家の縁者…それもその当主の実の姉の家族であることを隠していたことを咎められてな」
「ふーん…」
俺はその事を聞きながら人の事言えねぇ…と思っていた。
七草ではあるが俺も四葉八幡と名乗ることが出来るっちゃ出来るのでこの事は墓場?まで持っていくしかないだろうし余計なことを口走るつもりもない。
「(まぁ俺も四葉直系の実子なんだが…貧乏くじ引かせちまったかな?)それはまた…」
お茶を飲もうとしたら西城が心からの疑問に思ったことを口にしたのでその関係者は何かしらの反応を示した。
「そういや八幡。今お前の婚約者って何人いるんだ?」
「「「「ちょっ!?」」」」
「ファッ!?」
「ぶほっ!?げほっ、げほっ!」
俺は飲んでいたお茶を明後日の方向に吹き出してしまった。喉が痛いッ!?熱っ!!
「西城…てめっいきなり何を聞きやがるっ」
「いやぁだってなぁ…気になるだろ。えーとなんだっけサブカルチャーとかでこういう状況を見たことがあるんだが…なんだっけか」
その疑問に答えたのはまさかの人物だった。
「『ハーレム』って奴だよレオくん」
雫が的確に今の俺の状態を一言で告げる。
その言葉にレオが手を鼓のようにポンっと手を打った。
「おお!それだそれ。まさかリアルでそれを見られるなんて思わなくてよ」
「雫…その『ハーレム』というのは複数の女性に囲まれ、好かれている状態、男性が複数の女性から恋愛対象とされているような状態などを意味する語。の事か」
西城が雫に問いかけると頷いた。
「今現在も根強い人気を誇っているライトノベル、『俺妹』『俺ガイル』とか…通称ラノベのマンガやアニメの中で1対多の恋愛関係になるようなハーレム状態の作品を「ハーレムもの」と言うこともあるよ。今の八幡はまさにそれ。ん、私は囲われてる婚約者の一人。」
臆面もなく雫が言いきった。つかそのラインナップは意図的か?何かは知らんけど。止めなさいその言い方…。
俺が吹き出したお茶を拭うためにほのかからタオルを貰って顔を拭いていると未だ会話は続いていた。
「んで八幡。今何人と婚約してるんだ?」
「やけに食いつくなお前…まぁ別に良いけど…先ずはーーー」
そうして俺は今俺と婚約者としているのが姉さんと香澄、泉美。雫とほのか、千葉家からエリカに一色家からは姉妹のいろはと愛梨、そして四葉家からは深雪…とこのラインナップです。全員美少女SSRで俺は恐らく来世分の運を使ったかもしれんね?カルマ吸われてない?運前払いとか聞いたことないんだが…エ駄死っ!
と伝えると在るものは恥ずかしがったり口を開いたままとなっているのがいた。
それを聞いていたエリカ達は「たはは…」とはにかみ誤魔化していて美月に至っては顔がリンゴのように真っ赤になって湯気が出ている始末で俺も言った後に後悔した。
「まぁ…色々俺を取り込もうといろんな所から縁談が来てるんだが…ってうぉお!?」
「「「「それ詳しく」」」」
ずいっと顔を近づけられて四人の婚約者に問い詰められたのだ。
結局昼休み終わりギリギリまで詰問されるのだった…温かいコーヒーが飲みたい。
◆ ◆ ◆
帰宅…というか俺は達也達に連れられて司波家にお邪魔していた。
お邪魔する際に香澄、泉美、小町を先に帰して寄り道しているのは未だに妹達(小町を除く)は深雪の事が敵視(一方的にであり深雪は仲良くしたい)している。
それはともかくとして”秘密”を知られるわけには行かないのでやめさせたといった方が正しいかもしれない。
達也に連れられ久々の司波家に到着した俺は熱烈な歓迎を受けた。
「おかえりなさい八幡くん♪」
「お邪魔しま、ってお帰りってむごごっ!?……ふはっ…深夜さんっ!?」
「お、お母様っ!八幡さんが困っていますから離れてくださいっ」
玄関を開けて入り口で靴を脱いでスリッパを履いた瞬間に深夜さんが俺に抱きついてきた。
なんかもう柔らかいのが当たっているのでどうにかなっちまいそう…って離れてくれっ!
案の定深雪から引き剥がされる形で俺は深夜さんから離されると親子喧嘩?し始める。
「お母様っなんとはしたないことを…それに八幡さんは私の婚約…」
「私と八幡くんだって従姉弟同士なんだからこのくらいのスキンシップは普通でしょう?それに別に減るものじゃないじゃない」
いや、減るんだよ。矜持とか羞恥心とか俺の何かがな。
微笑ましい?親子喧嘩を見守っていると達也が俺に声を掛けた
「八幡。俺は種違いの兄妹は欲しくないぞ?」
「アホかっ!!」
「俺と母さん…四葉朔夜との関係は既に聞いているんだよな?」
「ああ。」
「はい。」
リビングに誘導され温かい練乳入りコーヒーを出されて会話を始める。
「それだと…俺の魔法技能についても聞いてるんだよな?」
「聞いている…と言っても大叔母上の【物質構成】と大叔父上の魔法技能を引き継いでいる…と聞いただけだ。」
「…そうか。」
俺は母親が全部を伝えているわけではないと聞いて少し安心した。
【黒衣の執行者】…それに付随する各種戦略級魔法の詳細を知られると軍属に所属している達也といえども刃を交えかねないからな…そこは感謝した、と同時に後ろめたさもあるのだが。
とそんなことを考えていると俺は此処に来た理由をふと思い出して対面に座る深雪に問いかけた。
「…まぁ改めて聞くことじゃないんだが。俺深雪と婚約状態になってるの元旦に聞いたんだよな。それで…深雪はどうして俺と婚約しよう、って思ったんだ?」
「へっ?」
「あ、いや別に深雪との婚約が嫌、って訳じゃないんだ。だって深雪にはもっと相応しい男がいるとーー」
そこまで言い掛けて俺は自分の体温が下がっていることに気がついて口をつぐんだ。
ヤバイ、墓穴掘ったかもしれん…
「八幡さん?寝言を言っていらっしゃるのかしら?」
「そ、そう言う訳じゃないんだけど!?ただ、俺との血縁的に俺は従叔父だし深雪は姪だからその…」
「私は叔母さまと大叔母さまの前で『何があっても八幡さんと結婚します』と誓いましたのよ?それを『深雪には相応しい男がいる』…ふざけていらっしゃいます?」
あまりの迫力にそう深雪から目を見られて問われてしまえば何も言えなくなってしまう。
降参、と言わんばかりに俺は謝罪した。
「…すみませんでした。いや一昨年の夏に言われたことが本当だと思わなくてさ…本当にごめん」
「え…?あ、その…ッ////」
「……ごめん」
お互いに一昨年の夏…風呂場であった出来事を思い出して深雪の顔が赤くなっている。うん、不味かったかもしれんと考えていると深夜さんが仲介してくれた。
「はいはい~そこまでよ二人とも。まぁ八幡くんの言い方も悪かったけど深雪の言い方もキツいからおあいこね。でも八幡くん?深雪は全てを捨ててでも貴方と一緒になりたかった、と言うことだけは忘れないでね」
「…はい。」
俺は改めて深雪が俺に対する想いを確認することになった。
リビングで少し話した後に結局夕食をいただくことになり帰ったのは二十二時前に帰宅した。
帰宅し風呂に入って寝る準備をしているとビジフォンに受信を告げるランプが点灯した。
「誰だ…って母さんか」
その電話主は『四葉朔夜』。
俺は立ち上がってコールをオンにした。
壁に備え付けられている画面が起動するとソコには母親の姿と真夜の姿があった。
「八幡?今時間は大丈夫かしら?」
「ああ。今風呂から上がったばっかであと寝るだけだったからな…んでどうした?」
「実はね…」
そこから母親からの報告に俺は眉をひそめた。内容が内容だったからだ。
「『俺の重婚許可に対して一条家が異議申し立て』ねぇ…」
「本当に…余計なお世話、と言ってやりたいわね。別に近親婚するわけでもあるまいし」
「まぁ…俺と深雪の関係が知られてればそう言いたくもなると思うが…言い分的に『七草家に嫁ぐ者が多すぎて将来的に近親婚になりかねない』…ってそれ可能性の話だろ。」
「それに一条のお坊っちゃんが深雪に婚約を申し込んできているのよね?」
「はぁ?」
それを聞いて俺は呆れたような声が出た。
人が婚約していると言うのに割り込んで申し込んでくるってのは聞いたことがない。人の結婚相手に関して一条は商品の予約券かなにかと勘違いしているのか…と思っていると母親もそう思っているらしい。
「人の婚姻相手に割って申し込んでくるとか…商品の取り置きか予約かと勘違いしているのかしらね?」
「…それ、深雪に言ったのか?」
「ええ。深雪ちゃんと深夜ちゃん本当に怒っていたわね。深雪ちゃんに至っては『お断りください!』って激昂してたから」
「そ、そうか…」
その話を聞いてなんだかむず痒くなってしまった。
正面切って「貴方が好きです。結婚してください」と言われているものなので「んな訳ねぇ!」と否定する道すがら全部潰されてしまっているからな。
「まぁ可愛い姪の為だから一旦回答は保留するわ。弘一くんも同じようなアクションを起こすと思うけど」
「その辺りは父さんと母さんに任せる。それより今深雪達が四葉であることが判明して面倒なことになりそうなんでな。まぁ予測できていたことだけど。」
今日あったことを説明すると母親は「うーん」と頭を悩ませていたが少し考えて俺に向き直る。
「その件に関しては八幡に任せるわ。貴方は深雪ちゃんの婚約者ですし?」
「全投げかよ…まぁ良いけど。」
「ふふふ…流石は私の息子。さすはちね?」
そんな造語作るな。それよりだった俺は達也をなぞって「さすがですお兄様!」略してさすおにと達也にぶつけるぞ。あ、やったら倍返しにされそうだから止めとこ。
少し会話していると母親は思い出したかのように爆弾発言をした。
「あ、そうそう真夜ちゃんだけど明日から学校に通うことになったからフォローして挙げてね?真夜ちゃん?八幡と変わるわよ?」
「は、え、ちょっ!?」
そう言うだけ言って母親は奥へ引っ込んでしまうと入れ替わるように真夜が姿を現す。
「…久しぶりね八幡」
「…ああ。一週間ぶり…か?」
「…ええ。」
「……」「………」
突然変わって会話しろと言うのは難易度が高すぎる。どう会話を続けたものか、いやもう切って良い?と問いかけようとしたら突如真夜が口を手で押さえて吹き出す。
「ふふっ。本当に口下手ね八幡は。本当に貴方お姉さまの息子なの?」
「次口を開いたら罵倒かよ。なに?久々にあった従姉弟に罵倒しないと生きていけない人種か?」
「そんなことないわ。こんなことをするのは八幡だけよ」
「なお悪いんだよなぁ…」
クスクス、と笑みを浮かべる真夜に俺も思わず小さくではあるが口角が少し上がる。
「それよりもお姉さまのお言い付けで明日から一年間通うことになったから」
「おう。頑張れ」
そう告げると真夜はこちらを睨み付ける。俺はなにか見当違いなことを言っただろうか?
「貴方ね…お姉さまの話を聞いていたの?『真夜のフォローを』…って言葉を忘れた?貴方の脳内要領はフロッピーディスク以下なのかしら?」
「…そんなこと言ってたな。」
「都合の悪いことを忘れるのはよくないわよ?八幡。それだと深雪達の結婚生活がおもいやられるわね」
「知ってるか真夜。結婚における重要点は妥協と程よい喧嘩だそうだ。なら俺たちは相性抜群抜群じゃねーか。ベストマッチ!ってな」
「…え?」
「あ?」
「………」「………////」
え、なんで黙っちゃったの?つかなんで画面越しの真夜は顔を赤くしているのか。コレガワカラナイ。
静寂が支配する部屋に再起動した?と見られる真夜が画面越しに指を指してきた。
「と、ともかく一年間お世話になりますから覚悟しておいてくださいっ。良いですね八幡!…それと…お休みなさい」
最後に柔らかい笑みを浮かべたのは少しドキッとした。こうしてみるとほんとに顔立ち整ってるなこいつ…
「え、あ、おう…お休み真夜」
挙動不審で言葉を返すしかなかった自分自身少し不甲斐ないと思ったのは気のせいだ。
真夜が悪い。つか一年間お世話…ってまさかな。
◆ ◆ ◆
(なんだか最近可笑しい…私は本当にどうしてしまったのでしょうね?)
先程まで朔夜がいたが本邸近くの丘の上にある元々の一軒家に引っ込み真夜の部屋には真夜しかない。
ベッドに座り込んで体を寝かせると腕を額に乗せて顔を隠すようにしていたのは顔が熱かったからだ。
(あの日…八幡から助けられたあの”変えられた過去”…それ以来八幡をみる目が変わっている。)
絶望から引き上げられて未来を変えられた真夜はひがな八幡のことを考えていた。
(バカらしい…私と八幡は従妹弟なのよ?それを…そんなの…可笑しいことよ)
まるで自分が八幡に………と到達する答えに頭を振って霧散させた。
第一高校に”転入”と言うことなっておりタイミングがずれてしまったが明日から出席することになっている。
朔夜…と言うよりも八幡の魔法を一部が使えるため【次元解放】でこれから通う学校へ向かうことになっているので睡眠をとらなければ寝坊してしまう。時刻は既に二十三時を越えていた。
荷物は後から送られてくる。
(この身体になってから夜更かしが少し楽しい、と思えるのは精神が肉体に引っ張られているからかしらね?)
使用人達には今朔夜の魔法…と言うよりも八幡が作った道具によって”極東の魔女である状態の四葉真夜”として認識されているため家の中を歩き回っても問題はなかった。が普段ならこの時間既に眠りについているのであまり動き回ってもよろしくないだろう、と判断して既に寝る準備を整えていたので真夜は調度されたベッドに潜る。
そして暫くしていると眠気が襲ってきてそれを受け入れ目蓋を閉じる。
(ふふふっ…)
その幸せそうな寝顔は失った学生生活を送れるからか”従姉弟に会えるからか”なのかは…本人のみぞ知ることであった。
◆ ◆ ◆
新学期の二日目に変化が見られた。
取り巻きにみていたクラスメイト達であったが八幡とその仲間達が関わったお陰で少しだけ改善された。
が、元通りと言うには未だ少し時間が掛かるようだ。
深雪に至っては元々一校内で偶像視され神格化されている傾向にあり容姿に実力…とそれだけで近寄りがたいそれは家柄も加わったことで気後れしているのだろう。
一方で達也は「恐怖」が表層に現れているので心に秘めていない。
達也があの四葉の関係者と言うことをその感情が膨れ上がっていた。近づくのは恐ろしい、怖くて無視できず何をされるか分からないと言ったそれが余所余所しい態度としているようだが…そこは西城達がフォローをしてくれているようだ。
年若い高校生と言うものは二人に向ける興味はそれだけでないようでスターやアイドルのスキャンダラスなゴシップと言うものはいつの時代も注目の的になる。
こっちは七草の義兄と義妹が同じ屋根の下で生活している…そして三姉妹が全員婚約者…となれば下世話な話に興味を持つのは仕方のないことであった。
その下世話な話に関しては小町が機転を聞かせて”根掘り葉掘り聞かせないよう”にしたためこれ以上の追求はされないだろう。
…が一方で問題が解決すれば問題が起こるのが必然である。
八幡達が所属する2ーAでは季節外れの”転入生”がやって来ていた。
姿を現した転入生は女子でありその容姿は純日本人であるが目鼻がくっきりして整った顔立ちに幼さを残しながらも妖艶な雰囲気を漂わせ手入れがされているのか腰まである艶やかな黒髪はするり、と動きに合わせて揺れ動いている。
「な…!?」
「すごい…きれいな人…」
「いったい誰だ…?」
登壇する美少女にざわめき始めるクラスメイトの中で”その正体を知っている身内二人”は周りに悟られないように息を殺していた。
教師が自己紹介を促すと折り目正しく腰を折って挨拶をして見せると男女から「おぉ…」と言った心からの感心の声を上げている。
それを聞きながら八幡は内心どうすれば良いのか分からない状態になっていた。
(え…?どうして…え?)
(は…え?なんでお前が此処にいるの?学校に通う…って言ってたけど”第一高校”ってコトぉ!?っべーやっべーまじやっべーよ…って深雪は分かってない感じかこれ?)
お辞儀をして顔を上げ妖艶な血色の良い朱の差し込んだ唇が開き滑らかな声が自己紹介…名を告げた。
「
そう告げた後ニコリと微笑み八幡と深雪をみる。
八幡はこう思った。
(絶対悪巧みしてやがる顔してんな真夜の奴ぅ………!!?つかなんだよ狐坂って…!)
新たなる火種に頭を抱える八幡だった。
はい、と言うわけで真夜さん参戦です。
八幡には好意をモッテイナイヨ?