俺が七草の養子なのは間違っている   作:萩月輝夜

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えーお久しぶりです…。
ひさびさすぎて覚えていらっしゃらない方もいると思いますが輝夜です。
(最近機動戦士的な二次創作に嵌まっていた為…)

…遅れましたすみません。
どのくらいの頻度で更新できるか分かりませんが投稿していきたいと思います。
誤字脱字報告感想ありがとうございます。


師族会議③

「済まないが話を聞かせて貰った…」

 

どうやって、と問うものはこの場には居ない。

基本的に師族会議の内容は対外秘であるが会議の内容を外へ漏らすことは九島以外にも様々な手段を用いてこの場から外部に漏らしているのは九島家以外も例外ではなかった。

 

「皆が真言を責めるのは当然だ。本当に申し訳ない…」

 

その行動にこの場に集った十師族の長達が驚愕した。

何故なら謝罪の言葉と共に烈は円卓に座る当主達へ頭を下げた…九十度、ではなく()()()でだ。

九島家当主を名前で呼んだということは今彼の発言は師族会議の元メンバーではなく日本魔法界の長老と今はなにも権限の無い()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

困惑し驚愕する十師族の中で二家の当主だけは違った。

七草と四葉、二つの当主達は一瞬だけ目を合わせ誰にも気づかれることなく()()()()()()()

 

「老師なにを…ッ」

 

剛毅の言葉に弘一が割って入った。

 

「頭をお上げてください。なにも貴方程の方が頭を下げる必要はありません」

 

「既に老師は九島家の当主ではないのですから頭を下げる必要は無いかと思います。その責任は真言殿にあると思いますが…」

 

「それに()()()()()()()と言ってもその下手人は既に我が息子が討伐しております…そうですな四葉殿?」

 

「ええ。全くです。不幸中の幸い…問題は全て被害が出る前に解決したのです…先生、頭をおあげください」

 

その行動と言葉に驚く各当主達であったが七草と四葉は冷静に努めて対応していた。

頭を下げていた烈は放心している真言を一瞥し全員に向き直る。

 

「…そうか、だが私の謝罪で済まないことは承知の上…だからこそ九島家は十師族の地位から退く。それでこの場は収めていただけまいか」

 

止め、と言わんばかりに烈は先回って”十師族から退く”と告げて”九島家がお家お取り潰し”になることを阻止した。

これは数字落ちにされないための処置であると同時に烈が此までの事への”ケジメ”である。

 

発言と烈が文字通りの()()()()()()()()はそのインパクトたるや絶大で他当主達は黙ってしまった。

実際に被害を最も受けたであろう二家の当主が「水に流す」と宣言している他に今の立場から退くと言うことは最大限の責任の取り方に他ならない。

 

この問題を作り出してしまった、いや烈自身が産み出してしまった”原因”である息子の真言へ老師”九島烈”ではなく父親”九島烈”として声を掛けた。

 

「真言。お前は苦しんでおったのだな…気がつかなかった私を許せ、とは言わない。だが…お前の父親として一緒にその代償を支払おう」

 

そのやり取りは茶番ではなく本心からの言葉であったが。

 

「先代…ちち、うえ…!」

 

確かに偉大すぎる”父”の影に息子である真言は苦悩していた。

その苦悩が光宣を産み出し周公瑾と手を組むことに手を出してしまい日本魔法界の力を削ぎ掛けるという事態に陥ってしまった。

しかし、九島家を取り潰しにするのは日本魔法界の力を削ぐことに繋がる。

だからこそ四葉、七草、九島の当主と烈は手を組み()()を仕掛けることにしたのだ。

 

「先生、もうよろしいではありませんか」

 

烈を宥めたのは真夜(朔夜)であった。

 

「今回の責任九島家と老師が取る、と仰有るのであれば四葉家はそれで納得いたしましょう。此方としては被害は出ていないのですから。今後九島家には今後の貢献で不祥事を償っていただければと思います。それに日本魔法界の発展に礎となっている名家がお取り潰しとなるのは痛手であると思いますわ」

 

「四葉殿がそう仰有るのであれば当家も異論は有りません。他の皆様も如何か?」

 

弘一の問いかけに次々と他当主が賛同していく。

”九島家が自主的に十師族から退くことでお家取り潰し”は無くなった…と同時に九島家への追求を逸らすことに成功した。

 

「感謝する。…真言、行くぞ」

 

烈に命じられふらふらと十師族の席から立つ真言は会議場を退出した。

扉が閉まり静寂が訪れたが五輪勇海が少し焦った言葉を出した。

 

「そ、それでは九島家に代わる十師族を選定せねばなりませんな」

 

「明日は選定会議だ。そのときでもよいのでは?」

 

三矢元が反対の言葉を唱えたが…。

 

「十師族の面々を欠けたままにしておくのは良くないでしょう。次の選定会議まで師族会議で選ばれたメンバーが務めを果たすことになっています。」

 

二木舞衣が勇海の言葉を指示した。

 

「そうだな…誰が良いであろうか?どなたか候補は?」

 

仕方がない、といった風に剛毅が問いかけると弘一が反応した。

 

「それでは七宝殿は如何か?当主である拓巳殿は思慮深く、配下の魔法師は少ないものの財力は中々のものです。」

 

弘一がそう告げると剛毅、克人、勇海が頷く。

 

「七宝殿ですか…他に推薦がございませんか?」

 

舞衣が問いかけると否定する者は居なかった。

 

「では、十師族の新メンバーには七宝殿に決定いたします。1日限りのメンバーとなりますが直ぐに七宝殿へお伝えしましょう」

 

十師族新メンバーについての連絡をするのはこの中で一番若い十文字家の克人がおこなうことになったのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

翌日二月五日。

二年A組に登校し自分の席に着いた八幡は考え事をしていた。

 

(老師にはああ言ったが真実を告げるのが得策だったか、と言われると自信無いが…)

 

師族会議が始まる前に父親に九島家当主がおこなったとされる周公瑾と接触し引き起こした事件の証拠を引き渡した上で九島家との付き合い…というよりも”九島烈との付き合い”を失うのは得策ではないと弘一に伝えた上で朔夜にうまい具合に話を振ってくれと頼んでいた。

 

(上手くやってくれてると良いが…)

 

正直九島家がやったことは許していない。それで妹達が危険に晒されたのだ当然だろう。しかし、光宣や烈に対してはそんなことを思っていないのでこの件でお家取り潰しになる可能性すらあったため”保険”だ。

そして自分勝手なものだが八幡個人としても光宣や烈との”切り捨てる必要を感じなかった”為であった。

 

(昔だったら鬱陶しくて切り捨ててたけど…変わったもんだな)

 

自分で考え方が変わったことに少し驚いていると不意に誰かが此方に近づいているのに気がつきそちらへ体を向けると予想外の訪問者だった。

 

「どうしたの七宝君?二年生の教室になにかご用?」

 

それに気付くより先にほのかが声を掛けた。

 

「いや、七草先輩にお礼を、と思いまして…」

 

琢磨は居心地悪そうにそう答えた。

四月の乱闘紛いの出来事は記憶に新しくその当事者である八幡は敵視している”七草”の家の者でありその跳ねっ返りは上級生に知られていた。

その後改心したのも知られていたが快く思っていないのも一定いるのも確かで今の段階で雫と深雪は乾いた視線を向けて関係ない筈の真夜も意地の悪い視線を向けている。

 

「あ?俺に礼…?お礼参りじゃなくてか?」

 

八幡はその事に根など持っておらず全く気にしていなかった。むしろ九校戦や論文コンペにて活躍したことを逆に評価していたぐらいだ。

意地の悪い返答をすると琢磨はわたわたと手を振り否定する素振りを見せた。

 

「ち、違いますッ…その七草殿が家を十師族の補充メンバーに推薦してくれたと聞きましたので…」

 

「え、そうなのか?」

 

九島家が十師族から外されるのは()()()()()()()()()()のだが…その外れた一家に七宝家を推薦したことに意外に思ったが当主同士で別にいがみ合っているわけでもないので人格と財力で判断したんだろうなと八幡は思うのとあれだけ俺に噛みついていた七宝が大人しい犬のようになっているのは面白かった。

 

「その…補充ですから今日までの地位でしかありませんが…それでも俺は嬉しかったです…その…ありがとうございましたッ!」

 

そう言って琢磨は駆け足で教室を出ていく。その光景を見てクラスメイト達は微笑ましいモノを見る目で出ていった下級生を見送る。

十師族の地位に拘っているのは初めてであった時から感づいていたがそれほどまでとは…と八幡は思った。

 

◆ ◆ ◆

 

四年に一度の十師族の選定会議の日だ。円卓に座る十師族を取り囲むように師補十八家達も顔を揃えており九島家を覗き欠員はない。

 

「それでは十師族選定会議を始めます」

 

二木舞衣の宣言に全員が立ち上がった。

 

「まず恒例により、現在の十師族の顔ぶれに異議がある方はそのままご起立ください。異議の無い方は一分以内にご着席ください」

 

選定会議の一時投票であり異議のある場合は専用用紙に記名し即時開票が行われ得票順に十師族が決められるが舞衣の言葉に中心の十名が席に座った。

意外なことに師補十八家の九鬼家と九頭見家が着席した。

その光景に昨日解任された九島家を推すと見られていたが投票を目論む他師補十八家の目論見を崩し他の当主達も顔を見合わせて着席した。

一分前には誰一人立っているものはおらず秒針が回りきった時二木舞衣が立ち上がり宣言し九島家を外し七宝家を含めた新たな十師族が決められると取り囲む師補十八家が拍手で迎えられた。

 

それから新たに十師族に迎えられた七宝家の当主が京都方面の任に”九”の力を貸して欲しいと言うのをお願いした後に九鬼家と九頭見家は快く了承した後師補十八家が退出して十師族の会議が始まった。

 

議題は”人間主義対策”…となったが伊豆に停泊中の不審船の話となる。

 

「一条殿…昨日の今日ですよ?」

 

「もしテロリストの船ならば向こうが待ってくれるとは限らない」

 

「構いません五輪殿。そうですな、四葉殿のご指摘を受けた貨物船に魔法師の反応はありませんでした。武器弾薬も船内には残っていない」

 

「船内には?」

 

「ええ。爆薬が輸送された可能性があります。当該当の船が逃走用に用意されている可能性もありますので監視を引き続き行うつもりです」

 

「USNAの同行は?」

 

剛毅に変わって克人が弘一に問いかけた。

 

「現地工作員…USNA側に寝返った者は見つかりましたが練度は高くありませんでした。到底本国から仕事を任せられる程の実力はないかと」

 

「つまりは本命がいる…と?」

 

「四葉殿にお聞きしたクルーザー…それが領海外に確認しました。そちらに隠れているかもしれませんね」

 

勇海が思案の表情で答える。

 

「海の上なら此方でお調べしましょうか?自然災害で片付けられるかもしれませんが」

 

それに対して温子が反対意見を出した。

 

「それよりも国内に入り込んだテロリストの行方を探すべきだろう」

 

「確かにそうですな。いると言う確証は無いが居ない、と言う確証もない。何処に潜んでいるのか分からないと言うのが一番質が悪い。」

 

雷蔵が温子の意見に賛成する。

 

「案外…この師族会議を狙っているのかもしれませんぞ?」

 

嘘か真か。しかし現実として雷蔵の発言の後会議室は激しい音と振動に襲われた。

 

◆ ◆ ◆

 

「ん?……ッ!!」

 

「八幡さん…これは…!」

 

二限目と三限目の休憩時間と言う名の実習教室の移動の最中持っていた二人の端末が”緊急通信”の音を鳴らす。

端末を開いて送られたメッセージを確認して()()()()()()()()()()が的中してしまった事に内心舌打ちをする。

隣にいる深雪の端末にも届いたのか戦々恐々とした表情を浮かべていた。

反対側にいる真夜にも届いている筈だが関係を知られては不味い…そのため顔を見て頷く。

魔法を使って真夜に伝えた。

 

(俺が父さん達の様子を見に行ってくる)

 

そう告げる真夜の表情は固い。

 

(大丈夫だ。きっと母さんの事だし笑って事故現場からでてくるさ)

 

そう告げると少しだけ表情が和らぐ。

 

(ええ。分かったわ…こっちは上手くやるわ。気を付けて)

 

真夜に送り出され深雪と共に走り出す。

 

「わりぃ!早退する!」

 

「ごめんなさい二人共っ」

 

「え、八幡さん!?深雪!?」

 

「八幡?深雪?」

 

一緒に教室へ向かっていたほのかと雫をおいて教室にトンボ返りして担任に事情を説明し深雪と共に一目散に昇降口へ向かう最中に達也と合流した

 

「達也」

 

「…八幡の所にも緊急通信が?」

 

「ああ…急ぐぞ」

 

達也の問いにも短く答えたが後ろのからの声に足を止め振り返るとそこには香澄、泉美、小町と七宝そして水波の姿があり一人を除きここにいる全員が十師族の血縁者だ。

 

妹達は俺の元へ駆け寄ってくる。達也にアイコンタクトして先に向かうように指示すると頷き達也は深雪達を引き連れ駅へ走っていった。

 

「お兄様…これは誤報ではないのですか!?」

 

俺が頷くとガタガタと震えだす。その姿を見て俺は泉美の手を取った。

 

「きっと父さんも大丈夫だ…落ち着け。俺たちは現場に向かう。それとも姉さんと一緒に家で待っているか?」

 

きっと姉さんにもこの連絡は届いている筈で家の者を落ち着かせるために大学から七草の家に戻っている筈だ。

この状況で”最悪の事態を想像する”…その状態で現地に行かせるのは危険だと判断して問いかけたが下二人は強かった。

 

「私たちも行くよ」

 

「僕たちもいこう!」

 

そう言って震える泉美の手を香澄と小町が握ると震えが収まったのか。覚悟を決めた表情で頷く。

 

「私も…参ります!」

 

こうして七草家四兄妹は事故現場である箱根に向かう。

現場に到着した俺たち”魔法師”にとってある意味で最悪の光景が広がっていた。

当人達、十師族の長達は無事でありその事に泉美達は安堵を浮かべていたが俺はそうじゃなかった。

 

(面倒なことになりそうだな…)

 

ホテル構造内部を確認し()()()()()()()()が居ることと()()()()()()()()()()()死体を確認しその追求が俺たちへ向けられ責任追及されるのは逃れられないだろうな、と苦々しい顔で思い起こすしか今は未だ出来なかった。

 

一先ず妹を落ち着かせ俺は救急隊に混ざって怪我をしているホテル利用者を魔法を使い治療することにする。

周囲にはホテルから脱出できた利用客が怪我で呻く子供の姿があったからだ。

 

「良く頑張ったな。すぐ良くなるよ」

 

「お兄ちゃんは…誰?」

 

《物質構成》を用いて子供を治療していく。苦痛に染まって泣き顔を見せていた表情は和らいでいく。

最初は突如混ざったことに救急隊員は戸惑っていたが俺の手際の良さと魔法治療の技術も相まって関係なく怪我人の治療を協力を申し込まれた。

 

(この惨状を作り出した犯人…おまえの思いどおりにはさせねぇぞ…?)

 

仕込まれたこのテロ…打算無くこの治療行為を行っているわけではないのだが。

今は目の前の怪我人を治療することに尽力した…が俺はその行動を誰がか撮影している事を気づかなかった。

 

案の定、その日の夕方のメディアにて今回の箱根自爆テロが大きく取り沙汰された。

死傷者十名、重軽傷者四十六名と言う大惨事となり無傷だったのは三十三名中二十七名は魔法師だと伝えられ魔法師の利己的な態度は世論で非難を浴びている。

 

…と表記される一方でこの事故現場での場面写と共に文章がある。

魔法を用いた必死の救助活動で瀕死の重体であった子供(六歳)が一命を取り留める。

病床の身でありながらインタビューを快く受けてくれたそのご両親と少年はこう語ってくれた。

 

「痛くて辛かったけどお兄さんが魔法を使ってケガを治してくれた。パパとママもあのお兄さんとお医者さんが”魔法”でケガを治すのを頑張ってくれたから。お名前は聞かなかったけど今ここでありがとうを伝えたい」、とーー。

 

”悪意”が萌芽していたが別の場所でまた”希望”も芽生えていたこともこの時俺は未だ知らなかった。

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