よく分からんアヒル?を連れて 作:クワのすけ
パルデア地方。それは山岳に荒野、砂漠に雪山など様々な環境にある雄大な自然が広がる半島に位置する地方。人々はそ大自然に寄り添い色彩豊かな文化を各地で育みながら生活している。
そんなパルデア地方には創立800年を超える世界有数の伝統あるアカデミーが存在し、あらゆる地方出身の学生が集まり日々一般教養から不思議な生き物であるポケモンのことを学んでいる。
とかく言う私も北にあるガラル地方から一年ほど前にはるばるやって来た留学生。このアカデミーは生徒の自主性をこの上なく重んじているらしく、学びのメインは講義ではなくなんと「自分だけの宝探し」という名の壮大なフィールドワークなのだ。
去年の春は入学早々「宝探し」を命じられ、全寮制にも関わらず自分の寮部屋で一夜を過ごすことのないまま慣れない広大なパルデア地方に放り出された。一応ポケモントレーナーとして本当に初心者の人はいくらか基本講義を受けて出発することが多いそうだが、私はもとから自分のポケモンを持っておりある程度扱いも心得ていた。そのため「宝探し」という青春感あふれる響きに誘われるまま旅に出た訳である。
ポケモントレーナーを養成するという目的が強いアカデミーであるため、入学の際には希望であればポケモンが一匹支給される。なので私は貰えるものはと水タイプのこがもポケモン”クワッス”を受け取り、相棒とクワッスの二匹で旅を始めた。
旅の道中は予想以上に波乱万丈だった。例えば……
友だちを作ろうと思い同じく宝探し中の学生に話しかけると想像以上に平均年齢が高かったり。中には20年留年の猛者もいた。
ピクニックに誘われご一緒すると笑顔でサンドイッチに豆腐を挟む地元民。
野を走ると踏んでしまった数は知れず、その度に罪悪感を味わうハメとなる小さすぎるフラベベ達。
アカデミー付近で「未来ある若者の経験になりたいんだ」と語り貰ったばかりのクワッスに最終進化ポケモンを対峙させてきた初心者狩りタクシードライバー。
突然ポケモンを宝石化させる謎技術があり、たまに野生のポケモンも謎エネルギーで輝きだす。まあそれに関しては私の地元も凄いのがあったけど。
可愛いピンクのポケモンを見つけたと思うとそのポケモンは手に持っていた自身の体より大きい鉄製であろうハンマーをぶん回し岩を上空へ飛ばした。するとその岩は上空を飛んでいた鳥ポケモンにクリーンヒットし、その哀れなポケモンは地上へ撃ち落される。そのポケモンは私の相棒と同種だったのだ。思わず腰のホルダーにぶら下げていた相棒のモンスターボールを隠した。あれが一番の恐怖だった。
まあ、なんやかんやありながらも各地のジムを巡ったり、新しいポケモンを捕まえたりしながら「宝探し」は終えれた。
えっ?「自分だけの宝」は見つかったかって?
……まあ、まあ。それなりだ。
秋学期は講義の単位を取りながらも旅の途中で捕まえたポケモンを育成して学生同士で切磋琢磨実力を試すランクマッチに挑み我ながらアカデミーの学生として満点な学生生活を過ごしてきた。
相棒は元々最終進化ポケモンだったのでバトルでは常にエースとして活躍してくれている。貰ったクワッスも「クワのすけ」と名付けコツコツと育てていき、最近やっと最終進化したのだ。
こいつはバトルがあまり好きではなかったので育成には苦労した。そのため期待を大きく進化を見届けた。
クワのすけの身体は光に包まれて、伺えるシルエットはどんどん縦に伸びていく。
ついにパッと光が消えてクワのすけの姿が露わになった時。
私は絶句した。
背丈はゆうに私を超え、なんとも煌びやかな飾り羽を広げスラっと長くも強靭な脚。
とっても立派な姿だ。うん、とっても立派な姿なんだけど……
何故か彼は飾り羽と腰を振りながら異国情緒溢れるステップをその立派な脚で披露していた。
「???」
どこで覚えたんだろう、これ。
狂ったように踊り続ける彼に私は唖然となる。
もとから確かにリズムある動きは好きだった。
だけどそれは水面をなでるような優雅な身体運び。いつか故郷で見た『スワンナの湖』というバレエ舞台を思い出したものだ。
急に
急にどしたん?
呆ける私にクワのすけは機嫌良くけたたましい鳴き声をあげる。
アカデミーの図書館へと駆け込み今までネタバレNGと避けていたクワッスの進化系についての本を開ける。
『ウェーニバル ダンサーポケモン
ひと蹴りでトラックを転がす強靭な脚力を駆使してエキゾチックな踊りをみせる。異国情緒溢れるダンスで見るものを魅了し水でできた飾り羽を振り回し切り裂く』
……えらい破壊力が高いダンスなことだ。
いや、生物の進化についてどうこう言っても仕方ないのは分かってる。ポケモンはまだまだ分からないことが多い不思議な生き物。生態だって謎だらけだ。
分かってる、分かってるけど
「思ってたんと違う」
という一言に集約される。
ほんとずっとステップ踏んでる。正直視界の端で常にチラチラ揺れる飾り羽は非常に鬱陶しい。落ち着かんか。
衝撃が抜けきらないも今日の授業は期末テストなので欠席するわけにはいかない。職員さんのいるカウンターに行き手続きを受ける。
「あら、チャンピオンランクのショウビさん。今日は秋学期最後の授業ですね。どの授業を受けますか?」
「ああ…えっと……」
一限は何だっけと視線を揺らすと職員の隣にいるコダックと目が合う。
「コッパアー?」
首をかしげ鳴くコダックに興奮冷めないらしくボールに戻らないクワのすけがステップを踏んだまま近づきくるっと回ってウインクを投げかける。
「コッパアー?」
さらに首を傾けるコダック。
常に首をかしげているコダック。今だけはコダックが頭を悩ます理由が分かった気がした。
「よく分からん」
ニャオハ以上の衝撃だったと思うんです。ニャオハ普通にかっこよかったじゃないですか。ウェーニバルってかっこいいのか?いや、愛着はあるんですけど……ショックを受けたのは作者だけでしょうか?