【完結】俺は綴命の錬金術師   作:発火雨

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読者から作者に初挑戦!初めてなので至らない点も多いですがよろしくお願いします


二つ名は綴命

 俺の名前はショウ・タッカー、しがない錬金術師である。

 

 朝起きたらなぜか鋼の錬金術師に出てくるショウ・タッカーになっていた。そう、あのショウ・タッカーである。

 

 実の妻と娘を実験台にし、エドワードとアルフォンスの兄弟にトラウマを植え付け、最後は傷の男スカーに殺されてしまう物語序盤の小悪党。

 

 それが今現在の俺の状況だ。なぜこんなことになったのかはわからないが、俺はどうやら転生したらしい。それも漫画の世界に。最初は信じられなかったが、鏡を見て納得するしかなかった。なぜならそこにはアニメで見た顔があったからだ。家や街並みだって日本とは違うし、何よりも試しに錬金術とやらを使ってみたら出来てしまったのだ。

 

 原作との相違点はまだ俺が国家錬金術師になっていないこと、そして妻と娘のニーナ、愛犬アレキサンダーの四人家族なことだ。

 

 どうやら原作開始から数年前のショウ・タッカーになってしまったらしく、前日に国家錬金術師の試験に落ちてしまい、傷心して酒を飲んだまま転んで頭をぶつけたことが原因でこうなったみたいだ。

 

「まさか、憑依転生って奴なのか、しかもよりにもよってショウ・タッカーなのかよ……」

 

 前世の記憶を思い出した時はかなり混乱したが、今は落ち着いている。とりあえず国家錬金術師になんてならないで、可愛い奥さんと娘と愛犬に囲まれながらつつましく生きていこう。ショウ・タッカーがいなくても原作的には特に問題ないだろうし……

 

 お父様の計画もエドとアルがいれば何とかしてくれるはずだ。トラウマイベントは無くなってしまうが、きっと歴史の修正力的なもので何とかなるだろう。俺は国家錬金術師になんてならないぞ!

 

「ショウ・タッカー!以下の者を国家錬金術師として認めることをここに宣言する。二つ名は綴命!」

 

 あるぇ?なっちゃったぞ、国家錬金術師……どうしよう。

 

「あなた!ついにやったのね!今夜はお祝いよ、ほらニーナもお父さんにおめでとうって」

「おとうさん、おめでとう!やったね!」

 

 家に帰ると家族が自分のことのように喜んでくれた。

 

 実はタッカー家の暮らしは決して裕福とは言えない。錬金術の中でも生物を使わないといけない生体錬成は金食い虫だし、育ち盛りの娘のことも考えたらお金はいくらあってもいい。だからまず錬金術師の道をきっぱり諦めようと奥さんに話したら。

 

「何でも協力するって言ったじゃない。家のことは私に任せて、せめてあと一年だけ、一年だけ頑張ってみましょう。あなたならきっと出来るわよ」

 

 と、家族のために自分の夢を諦めたと思われたらしく。奥さんに逆に励まされ、あと一年だけ頑張ってみるように言われたのだ。

 

 そりゃいきなり長年の夢を諦めるって言ったらおかしく思われるか。それにせっかくファンタジーの世界に転生できたんだ、一年だけ夢を見ると思って錬金術を試してみようかな。どうせ、いくら合成獣(キメラ)を作ったところで軍ではもっとすごいのを作ってるんだし、人間を使わなければスケープゴートで国家錬金術師に下駄を履かされ合格することもないだろう。

 

 そう思って色々試しながら一年間錬金術を働く合間に試してみたら思いのほか楽しくなってきてしまった。

 

 どうやらショウ・タッカーは生体錬成に対してはそこそこの才能があったみたいで、他の分野は並みの腕前だが、その分野だけは少しばかり誇れるものがあった。

 

 なので合成獣研究から一転、医療用の錬金術の勉強をし始めた。これなら軍にマークされることもないし、国家錬金術師にならなくてもケガや病気はこの世界から消えることはない、アメストリスは軍事国家だし、争いは無くなることもないから、きっと食いっぱぐれることは無い筈だ。そう思って医療の勉強をして、行き詰まったら気分転換に合成獣を作って遊んでみる。そんな生活を続けていたある日のことだった。

 

「どうも合成獣を作るだけ作ったあげく、その辺に捨てる錬金術師が結構増えてきてるみたいだぞ、あいつら元の生物よりも体がデカかったり狂暴だったりするから、きちんと管理できる奴しか作っちゃいけねえよな。おかげでこっちの商売も軍の締め付けが強くて嫌になっちまうぜ」

 

 合成獣用の動物を仕入れる業者の愚痴を聞き、何とか出来ないかと思案している時にある考えが浮かんでしまった。それは合成獣を作る時に脳にあらかじめ人間を襲わないように刷り込むというもの。元々ショウ・タッカーが研究していた資料に俺が学んでいる医療錬成の知識。この二つを組み合わせて作った錬成陣が大成功!

 

 おかげで今まで処分するしかなかった野良合成獣は軒並み俺の下に届けられ、人間を襲わないように錬成し直す。すると瞬く間に合成獣に困ってる人たちから依頼が舞い込み、我が家の家計は相当助かることになった。軍からの依頼も来るようになったがこのくらいなら問題ないだろう。

 

 どんどん合成獣が集まるおかげで研究は捗り、いつの間にか知能を上げて、簡単な命令なら聞かせられるようになったし、オウムみたいに簡単な言葉を話せるタイプだって出来るようになった。おかげで今イーストシティではちょっとした合成獣のペットブームだ。

 

「タッカーさんのとこのキメラなら安心して家で飼うことが出来るよ」

「お宅のキメラちゃん、この前迷子になった息子を家まで送り届けてくれたのよ。なんて賢いんでしょう」

「おかげさまで違法な合成獣の数がかなり市場から減ってます、ご協力感謝します!」

 

 町の人たちから軍の関係者まで合成獣といえばタッカーさんと言われるまで名前が知れ渡ってしまった。

 

 奥さんも今年こそは合格できると内心かなり気合が入っており、とてもじゃないが国家試験は受けませんとは言えず、今までの研究資料を提出してみると、なんと一発で合格出来てしまったのだ。

 

 あぁ……お金に困ることは無くなったけど、これからどうしよう……

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