せっかく更新を楽しみにしていたのに、本編ではないことにがっかりしてしまったり。
ハーメルンの規約の関係上、小説以外の文章を載せることのリスク。
でも、用語集自体を楽しみにしてくれた人もいらっしゃったので、全部をなんとかうまくまとめれないかと思い。急遽実験的に書きあげました。
本来は予定にない視点からの話な上、実験的な投稿なので、皆さんご意見あれば感想でお伝えください。
書いているのは私ですが、作品を作り上げているのは皆さんのお力です。
「よかったのですか、大佐、タッカー氏のリゼンブール行を認めてしまって?」
「仕方がないだろ、スカーがどこに潜んでいるかもわからんのだ。アームストロング少佐の護衛付きで、一時的に田舎に身を隠すのは理に適ってるし。家族も東方司令部で保護先を手配してるうちに、ヒューズに先回りされてセントラルの奴の家で保護する取り決めになってる。普段の共同研究でもこれくらい貪欲に動いてくれるならいいのだが……」
指令室でスカー捜索状況を確認していると、中尉が私に聞いてくる。勿論この状況下で私の目の届くところを離れてしまうのは不安が残る。しかし、ここで私が反対しても事態が好転するわけでもないのであれば、本人の意思を尊重することも一つの手だ。
「そんな言い方して、本当は珍しくタッカーさんがわがまま言ったから、叶えてやりたくなったんでしょ?あの人は研究者としてはやり手かもしれないけど、軍属にしとくには脇が甘い上に、欲がなさすぎますからね」
「そうそう、東方司令部主体の合成獣研究プロジェクトのリーダーなんだから、もっと偉ぶっても罰は当たんないのに。先月の避難訓練の時なんて、俺と一緒に合成獣に追いかけまわされてましたよ」
ブレダは普段から、タッカーの自身の立場に対する頓着のなさを気にかけているらしく。平和のための合成獣の運用が、軍事国家であるアメストリス軍の上層部が求めるものと反対方向に進んでいることの影響を危惧しているらしい。確かにそれは一理あるだろう。だが、タッカーの軍属の国家錬金術師らしからぬ、思想や信念は私が目指す改革の先を見据えた時に、一つの柱になるだろう。
ハボックの奴は普段からタッカーとの距離感が近く、避難訓練の時も、突然テロリストが現れたというシチュエーションで、テロリスト役をするはずだったのに、土壇場でタッカーも付き合わせて一緒になって合成獣に追いかけまわされ、翌日筋肉痛でタッカーが東方司令部に出てこれなくなった原因を作った男だ。
「でも、特別予算が割り当てられた研究の査定はどうにかなったんでしょ?今までかなり上からプレッシャーを掛けられてましたからね、それがようやく形になるところだったのに、こんなところでケチがついたら、暴動が起きますよ」
「お前だって合成獣との通信網の構築に、電気通信との相性がどうとかって、非番の日もタッカーさんに付き合ってたろ。まぁ、大佐の肝入りのプロジェクトチームだからな、ここに居るみんな、結果としてタッカーさんよりも大佐にこき使われましたけどね」
フュリーには、電気通信が使えない時の合成獣による通信の利点や問題点をレポートにして提出してもらった。しかし、休日も付き合えとは命じてないぞ。
ファルマンも、大量の合成獣たちを管理するときにその記憶力で大いに役立ってもらった。しっかり残業手当も出してるんだから、私が文句を言われる筋合いはない。
「わかったわかった、お前たちの協力で無事査定を突破出来たんだ。部下に恵まれて私は幸せ者だな」
どうにかして軍の特別予算をもぎ取り、東方司令部全面バックアップの下、数年がかりで進めていた軍用合成獣プロジェクト。それをタッカーに任せたのは間違いではなかったようだ。中々結果が思うように出ない日が続いたが、腐ることなく実直に研究を続ける姿に、部下たちも刺激を受けていたことは知っていた。
「でも、本当によかったんですか?軍用合成獣はタッカー邸にいた一羽を除いて全滅。あれだけの数をそろえて使えるようになるまで仕込むとなると、ホークアイ中尉の仕事が倍に増えますよ」
ブレダの言葉に中尉の顔が眉間にしわを寄せる。彼女には合成獣たちを使った戦術から、合成獣たちに使わせる武装のチェック。いつの間にか合成獣たちの調教までしてもらっている始末だ。今更ながら、自分の部下の有能さを思い知る。
「合成獣たちに教え込むうちに、ホークアイ率いるホーク部隊なんてあだ名まで付けられたんだ。今後同じように合成獣たちをそろえるとなったら、中尉とタッカーの二人に余裕がある時じゃないと難しいな。部隊は無くなってしまったが、提出論文は残ってる。これを元にセントラルでさらに詳しい研究をする足がかりにしたいとこだ。いつの間にか私の名前も共同研究者として乗せられたしな」
「あれだけ協力したんだから普通の事じゃないですか?」
ハボックが言うことは、論文を書くことがない人間の意見だな。
「私がやったことは、合成獣の活用法や、軍が必要とする治安維持に必要な要素の提示だ。あくまで合成獣を錬成し、核となる部分を作り上げたのはタッカーだ。協力者ならいざ知れず、共同研究者として名前を残す必要はない」
この辺りもタッカーの欲のなさが表れている。錬金術師とはいえ軍属になったのであれば、出世欲がないというのは問題だ。おかげで反対派の声を抑えるのにも苦労する。もっと功績を一人で誇ればいいのに。おかげで今では内外共にすっかりマスタング派の錬金術師だと認知されている。まぁ、おかげでこちらからも色々と便乗をさせてもらっているが。
合成獣の件ではタッカーに随分と助けられたものだ。おかげで私の軍内部での立ち位置も穏健派筆頭として確固たるものになりつつある。これでようやく私も本来の目的のために動き出すことが出来る。あのイシュヴァールの殲滅戦に関わった者として、この国の未来を変えるために。
『特別予算』
国家錬金術師個人に割り当てられる予算とは別に、研究のプロジェクトに使える予算。複数の研究者が合同、または研究規模が大きく、軍にその有用性が認められた場合に認められる。複数の錬金術師の方向性が近いとき、共同研究を促し、効率的に軍に貢献してもらう目的で設立された。プロジェクト参加者に国家錬金術師が複数いれば、他の協力者も認められる。なお、規模が大きい分、毎年の査定もかなり厳しく、申請も中々通らないことで有名。研究結果も個人物のより軍の管理が厳しく、重要な情報は秘匿される。その性質上不正な研究や、不当な金の流れが起こることもある。申請や査定の時に署名を集めることもあるが、その時のサインが国家錬金術師の物なら影響が大きい。
本当の目的は、軍の資産を合法的に危険な研究につぎ込むための、軍上層部の資金運用システム、個人で提供する資金は足が付きやすいため、軍の金を正当な理由で臨む研究に向けさせる。セントラルで行われてる大きなプロジェクトはほとんどがこれに当たる(特に重要度が高い賢者の石や、違法合成獣に回す予算はいくつかのプロジェクトを経由しマネーロンダリングしている。そのため、軍法会議所勤務のヒューズも金の流れから国全体を巻き込んだ違法研究に気付くことが出来なかった)
ほとんど真っ黒のチームが5割、知らずに利用されているチームが4割、認めざるを得ないチームが1割の割合で存在し、タッカーさんのチームは1割に分類されます。国家ぐるみだから出来る大犯罪です。名家出身で錬金術の高い技能があるはずの、アームストロング少佐がサインを書いたことが初めてだと言ってたのはこの辺の理由も絡んでる。
『アメストリスの通信技術』
主に電気通信だが、伝書鳩も現役
『野良合成獣』
錬金術師が作り出したが無責任に捨てたり、逃げだした個体。世間の評判を下げた理由の一つ。
『ペット合成獣』
野良合成獣を錬成し直し、人と共存できるようにした合成獣。東方司令部が窓口になり回収し、タッカーさん監修で錬成してる。誰でも飼えるわけではなく、東方司令部の審査を合格した人に渡される(現実世界での保護犬みたいな感じ)将来的には盲導犬や介助犬のような合成獣を人々に受け入れてもらうための布石でもある。
『軍用合成獣』
カラスをベースに他の鳥類を混ぜて作り出す。高い知能を持ち、速く飛べ、正確に手紙を届ける。事前に調教すれば簡単な言葉で受け答えが出来る。タッカー家の鳥籠にいたのは、受け答えに加えモールス信号を覚えさせた特別性。特製の催涙弾で武装し、市民の安全を守ることも出来る。催涙弾の中でも何食わぬ顔で飛べるように耐性が錬成時に付与されている。
『合成獣学』
二つの生物を掛け合わせ新しい生物を作る学問。掛け合わせる二つに目が行きがちだが、錬成陣にも工夫が数多くされている。質量保存の法則から小型化には不向き。軍用合成獣もカラスベースなのに、見た目が鷹と見間違えるくらい屈強なのはそのせい。
『特製催涙弾』
軍用合成獣の基本装備。鳥でも使える射出機構で、人体に後遺症が残りにくいようにに作られてる。軽くて合成獣が長時間もっていても負担がかかりにくいようになっている。ちなみに催涙弾の設計には、ゾルフ・J・キンブリーが軍に提供した、「効率的な軍用手榴弾の開発」の形状や誤爆しづらい構造が応用されている。
『国家錬金術師の研究報告書』
軍に提出された研究結果はすべて軍が管理しているが、その中でも機密性がランク化されている。上層部しか見れないものから、国家錬金術師なら許可を取れば閲覧できるもの。一部は市民に提供される論文も存在する。爆発関係にはすべてキンブリーが関わっているし、マルコーは優秀な医療系錬金術師なので、医療関係にマルコーの名を見ることも多い。
市民に情報を提供する目的は、国家錬金術師の試験に備えてもらうため。そして国家錬金術師になれば多くの資料にアクセスできることを餌に、国家錬金術師のブランド力向上のためにも一役買っている。本当の目的は新たな人柱を生み出すために優秀な錬金術師が生まれることを期待しての情報提供。
『人体実験賛成派』
いわゆるタッカーさんの思想反対派、人体実験に反対してるタッカーの反対側にいる人たち。倫理観が欠如した人や、大いなる科学の進歩に犠牲はつきものと言いながら、その犠牲に自分が入ることを考えてない人が多くいる。どうしてもタッカーさん視点から見ると悪く映る人が多いのだが全員が悪人なわけでもない。人間に応用する技術ならどこかで人間に試さないといけないので、本人の許可を取り、万が一の時の保証を手厚くして治験という形に出来ないかと考える人もいる。タッカーさんもすべてに反対なわけではなく、人体実験の有用性は理解できてるので、きちんとバランスが取れていたら、一部条件付きで賛成することもある。
しかし、残念なことにきちんと時間をかけて歩み寄ろうとするより、声でかくとにかく反対を突き付ける人が多いのも事実で、強引な人体実験で結果を残してきた人も多いので、軍から見れば結果を残してきた人も多い。
大総統も彼らの意見をすべて抑えることも出来ないので、認めることは認め、だめなものは許可を出さない、絶妙なバランスで双方をなだめている。というのが表向きだが、実はかなり大総統(ホムンクルスサイド)に都合のいいようにコントロールされている。
『タッカーの奥さん』
原作・アニメでは未登場だったが、映画特典のコミックス0巻にて姿が確認できる。ニーナを大人の女性に成長させた感じ。名前がないので、この小説では名前で呼ばれない人。いわゆる刑事コロンボのうちのかみさんがね、の名前バージョン。
『東方司令部』
ご存じマスタング大佐の職場、根回しによりマスタング派が多い。最近では合成獣と言ったら東方司令部だよねと思われてる。タッカーさんもマスタング派に属してることになってます。理由はタッカーさんが軍属の研究者にしては危なっかしいから。軍事国家なのに平和利用のための研究してるし、戦闘用合成獣の開発は断るし。タッカーさんもちょくちょく出入りしてるので顔見知り多し。ブラックハヤテ号の時も一番最初に相談されますが、アレキサンダーがいるから手一杯ですって断りました。
『人間兵器としての国家錬金術師と合成獣』
軍用合成獣をどれだけ作っても、戦闘力という面では国家錬金術師にはかないません。マスタング大佐のようなタイプは相性最悪で、100羽集めても5分かからず全滅です。ただしこれは国家錬金術師個人と戦う場合の話です。マスタング大佐率いる軍と戦うなら、一人しかいないマスタングを可能な限り無視し、他の部隊に嫌がらせし、補給線を断ったりできます。他にも監視や索敵にも使えますので組織として運用するならかなり有能です。
ただし軍でありながら国家錬金術師という個人で戦況をひっくり返す人たちがいるので、中々組織としての運用出来てすごいってのが評価されづらいです。
『本気で合成獣を戦闘に活用しようとすれば』
実は軍用合成獣を最も戦いに活かせるのはゾルフ・J・キンブリーです。本人のどこにでも火力を継ぎ足せる能力により、空中からの爆撃や、疑似追尾ミサイル、疑似空中機雷として使えます。キンブリーと合成獣がお互いの長所を伸ばし、短所をカバーできるのですさまじいです。仮にイシュヴァールの内乱でこの組み合わせが存在したら。キンブリーと合成獣たちだけで国家錬金術師10人分の成果を叩き出せるでしょう。
尤もそんなことに合成獣を利用させることをタッカーさんは良しとしませんし、キンブリーも自分の美学や信念に反するので、命令してきた上官を先に爆破します。
この組み合わせが起こす被害の危険性を一番現実的に考えてるのは、内戦に参加し、キンブリーの力量を把握し、自身も遠距離高火力を叩き出せるマスタング大佐です。爆発物と合成獣さえ用意すれば代用できる戦法なので、そんなことを合成獣たちにさせないためにもマスタング派が先陣切って合成獣の研究をしているのです。
合成獣を悪用させないための研究も進めていますし、万が一の時の対策を練るのも仕事です。