俺の名前はショウ・タッカー。家族と一緒の食事を楽しむ男である。
エルリック兄弟とリゼンブールに行くことになっちゃったし、どうしたもんかと悩んでいたけど、結果的にヒューズさんに家族を保護してもらうことが出来たから良しとしよう。
同じ妻と娘を大事にする一家の大黒柱として、お互い話が尽きなかったし、軍でも微妙な立場の自分だからこそ信頼できる人に家族を守って欲しいと誠心誠意お願いしたら、最初の反対はどこへやら、任せとけって力説されました。まぁ、原作だと家族自慢をしまくる人ってイメージが強かったけど。俺が家族持ちだからか、ちょっとした相談やアドバイスなんかもしてきてくれた。無論そのすべてに家族自慢が付いてきたけどね。
汽車の旅で万が一でもマルコーさんと会えないと困るので、各駅ごとに窓の外をキョロキョロして探す羽目に、おかげで会話の主導権をアームストロング少佐に投げっぱなしにしたんだけど、なんか、むちゃくちゃ褒めてくれるんだよね。無論これが少佐の人の良さなんだろうけど、途中からエド君も、うんうん、って同意し始めて一緒になって俺を褒めちぎってくるんだよね。
マルコーさんも無事に発見できたけど、ここでも俺が生きてる影響が出始めた。原作ではいきなり銃を撃ってきたけど、どうやら俺のことも同じ生体錬金術の同業者として知ってるみたいで、最初から話し合いのテーブルについてくれた。結局その場では研究資料を渡してはくれなかったけど、駅でメモを渡してくれたから、これで今回の旅は成功と言っていいだろう。
「君にこれを託す。私もまた歩き始める決心がついたよ。いつかまた会おう」
あれ?こんな感じの別れだったけ?まぁニュアンスの違いなんて誤差だよ誤差。
リゼンブールはのんびりとした田舎って感じで車もない生活をしてるせいか、時間の流れが穏やか。ホーエンハイムがトリシャさんと一緒に暮らす場所に選んだのがなんとなくわかるような気がする。幸せな時間を少しでも長く感じたかったんじゃないかな?
ロックベル家に泊まらせてもらうことになったけど、俺は少佐みたいに薪割りなんかできないから、ご近所さんの飼ってる動物たちの健康診断を手伝うことに。ここって羊の牧畜が有名で、アメストリス軍の軍服に使用される羊毛もここで出荷されてるものみたい。羊も近くでまじまじと見たらすごい迫力だね、いつかニーナにも見せてあげたいなぁ。
いつもは妻の手料理を食べてるけど、よその家庭の味って新鮮で楽しいよね。飼い犬のデン君が食べてるドッグフードも、うちのアレキサンダーが食べてるのと一緒のメーカーだし、なんか親近感が湧くんだよね。
ウィンリィちゃんがオートメイルの神経接続について聞いてきたので、一応生体錬金の専門家として色々答えたけど、別分野の専門家との話し合いは刺激になっていいね。今までは思いつかなかったけど、合成獣にだってオートメイルは装着できるんだし。今まで錬金術や動物学の観点からのアプローチしかしてこなかったけど、これを研究テーマにしても面白そうだ。
「神経を直接つなげるんじゃなくて、筋肉の表面からの微弱な電波をオートメイルで読み取る……いままでのオートメイルにはなかった視点ですよ!なるほどなるほど、それなら神経接続の痛みを解決できるわ!重量と動作の問題はあるけど、これはこれで挑戦してみたい技術よ!まってまって、直接つなげなくていいってことは、読み取る機械を他の部分に取り付けれるってことよね?読み取る機械自体を背負う形にしたら、ある程度重量もなんとか出来るんじゃないかしら。それなら、今までみたいに一点物として作らなくても、ある程度機能を分けて……」
「すんませんタッカーさん、一度このモードに入ったらしばらくはこの感じなんで、無視してください。まったくタッカーさんや少佐がいる前で……」
「ウィンリィって僕たち以上に研究者に向いてるかもね、ほら、もう兄さんや僕の事なんて忘れてるよ」
あー、うん、なんか本当にごめんね。職人スイッチを入れちゃったみたいで、なんとか軌道修正しないとエド君のオートメイルそっちのけで研究に走りそうだ。わかるけどね気持ち。新しい可能性を発見出来たらすぐに試したくなるよね。
そんな楽しい時間も過ぎ、俺たちはセントラルに着いた。アームストロング少佐は護衛を、マリア・ロス少尉とデニー・ブロッシュ軍曹に譲り、エルリック兄弟はマルコーさんの残した資料探し、俺はここでいったん家族と落ち合うことに。久しぶりに会うニーナとアレキサンダーなんか胸に飛び込んでくるし、ヒューズさんには俺の妻からのろけ話を聞かされたから俺の話も聞け、なんて笑いながら出迎えられた。
出来ることならヒューズさんを助けたいんだけど、今セントラルにいて信用できる人はほとんどいないし、合成獣も生き残ったこいつだけ。エンヴィーを撃退することなんて出来ないし、これからどうしよう……