【完結】俺は綴命の錬金術師   作:発火雨

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本来はバリー編をお送りする予定でしたが、感想を拾いすぎたプロットが崩壊しそうだったので、急遽アニメを見ながら再錬成。

おかげで昨日は投稿できませんでした。連続更新途絶えたので、皆さんにご心配かけたかなと思いましたが、よくよく考えたら、一日3話も投稿してた、どうかしてる日もあったのであんまり変わらないかな。

弟に更新頻度の話をしたら「あんまり早い急に消えそうで怖い、一週間一話の定期ペースの方が安心するじゃん」と言われましたが、私の即興でまとめるスタイルと合わないから無理です。


マスタングから見た大総統

「ははっ、どうしたのかね?名目は市街地での無許可の交戦についてだが、そんなのは建前だ。どうだ、紅茶でも飲まないかね、妻が作ってくれたクッキーもあるんだが」

 

 アメストリスに巨大な錬成陣を描き、国民すべてを賢者の石に作り変える。テロなんてレベルじゃない、犯罪と呼ぶどころか、法の番人たる国そのものが敵だった。私がイシュヴァール殲滅戦を経て大総統の椅子を目指したのは、争いで利益を得、歯止めが利かなくなった国を変えるためのはずだった。私が国を変えると、信じて共についてきてくれた者たちに報いるためにも、いつかは大総統と対峙するつもりだった。

 

「元々はコーヒー党だったのだが、妻の影響でね。仕事中はもっぱらコーヒーなんだが、リラックスしたい時は紅茶をよく飲むようにしてるのだよ、ジンクスという奴かな、最近では息子のセリムも妻に習って紅茶を淹れてくれてね。私も自分で試してみたが、どうもうまく淹れられん。道具や茶葉も同じものを揃えたはずなのだが、なかなかどうして奥が深いものだ」

 

 まさか呼び出されてお茶を振る舞われるとは思いもしなかった。昨日、軍上層部の違法実験やその背後にいるホムンクルスたちに揺さぶりを掛けようと作戦を起こした。まさか、これほどまで早く相手方から接触してくるとは……目の前の男を見つめながら考え込む私の心中を知ってか知らずか、男は楽しげな口調のまま話し続ける。

 

「安心したまえ、毒など入っておらぬよ、仮に君を殺すつもりなら、私が軍刀を振りぬく方が早いだろう。これからこの国の未来を語ろうと言うのだ、喉は潤したほうが話もスムーズに進むと思うがね、マスタング君」

 

「そうですね、では、頂きましょうか、大総統閣下」

 

 私は差し出されたティーカップを手に取り、ゆっくりと口をつけた。ほんわりとした香り高い湯気が鼻腔を刺激した。ふむ、悪くない味だと素直に思った。向かい側に座ったキング・ブラッドレイ大総統は、私が一息ついたところでようやく本題に入る。

 

「君がこの国の在り方に疑問を呈してることはわかっている。そして、君は優秀だ。未来を見据えて、自らの足元を固め、はるか先のために今何をすべきかを考えている。だからこそ、君には期待しているんだよ」

 

 穏やかな笑みを浮かべたまま、静かに語り始めた。その言葉の端々からは強い意志を感じる。そして、一瞬のことだった。

 

「賢者の石の材料、国土錬成陣、ホムンクルス。よくぞここまで調べ上げ、それどころか軍すべてが敵だと知ってなお、私に戦いを挑んできたことは称賛に値する。しかし、残念なことに君の実力はまだ足りないようだ」

 

「えぇ、今回のことで身に沁みました。今使えるすべてをぶつけたつもりだったのですが、一歩及ばず、あの妙な影もホムンクルスだったのですか?」

 

「あぁ、名をプライド、傲慢を司るホムンクルスだよ。君たち相手ではラストとグラトニーでは足りえなくなるんじゃないかと思ってね。老婆心ながらサポートさせていたんだよ。君たちがなすがままにされていたら姿を現さないはずだった。保険だよ」

 

 あの日ラストと呼ばれるホムンクルスを追いつめた。エルリック兄弟、ヤオ家、私の部下たちが集めた情報を元に、私とタッカーで煮詰めたカウンター作戦のはずだった。相手の牽制を利用し、あわよくばホムンクルスを打ち倒すはずだった。

 

「素晴らしいとしか言えまい、限りある不死性を逆手に取り、体の一部を拘束してからの君の超火力での波状攻撃、もう少しでラストは完全に消滅させられていただろう。不死相手に戦い慣れ過ぎている。君一人のアイデアではないのだろう?」

 

「さぁ、どうでしょうね、私を慕ってくれる者たちが優秀であるとだけ言っておきましょう」

 

「はっはっは!それは素晴らしい、人の上に立つのにはカリスマ、または人徳がなければやっていけん。君の話を妻にしたら、後継者にしてはどうかと言われたよ。もう歳なんだから早く後進に席を譲れとな」

 

「それでしたら、大総統の席は空けて頂けるので?」

 

「無論、この私を引きずり下ろした時に認めようではないか」

 

 瞬時に空気が変わった。首元に剣先が突きつけられたかのように、背筋が凍るような殺気を感じた。

 

「さて、残る血の紋は北のブリッグズのみ。どうするかね?」

 

「無論止めさせて頂きます、国を思う軍人として」

 

 私は迷わず言い切った。ここで怯めば、この国は腐っていく。そんな私の言葉を聞いて、満足げに笑う大総統は、またもや紅茶を口に含んだ。私もつられてカップに手を伸ばす。しばらく続いた沈黙を破ったのは大総統だった。カチャリ、という音と共にソーサーの上にティーカップが置かれた。

 

「リザ・ホークアイ中尉、彼女には大総統付補佐になってもらおう、もちろん君に対する人質だ。他の部下たちにも今頃人事異動が出ている。無論君にはこれからも中央でこれまで以上に働いてもらうがね」

 

「彼女は飛び切り優秀ですよ、なんせ、私の補佐だったのですからね」

 

 私は立ち上がりながら言った。これでいい、私のやるべきことはすべて終わったのだ。

 

「そうそう大総統に一つご忠告が」

 

「ふむ、何かね?」

 

 こちらを向いたブラッドレイの顔を見つめながら、笑みを浮かべ答えた。

 

「紅茶を淹れる時は100℃くらいの温度で正解ですが、あらかじめカップも温めておいた方が美味しく飲めると思いますよ」

 

 盛大に吹き出す声が聞こえた。

 

「ははっなるほど!そんなところにまで気を回しているのかね、もっときちんと妻が紅茶を淹れてくれるのを見なければいけないな、見てるつもりというのが一番いけない。早速今夜あたり家族に振る舞ってみるとするか」

 

 部屋を出て、廊下を歩く。私の今後の行動は制限されて、自由に動かせる駒もかなり減らされてしまった。

 

「まったく、タッカーの予想通りになってしまったな、私自身は生かしセントラルに留め、行動を制限。おとりというのはガラではないが、せいぜい奴らの目をくぎ付けにしてやろう」

 

 たとえホムンクルスを倒せても、奴らの戦力を削れても、すぐに勝負をつける戦力がない以上、持久戦になってしまう。時間が味方だと思っているようだが、そうはいかない。

 

「かき集めてやるさ、この国の未来を願う者たちを」




『ラスト生存』

大総統(末っ子)のお願いを息子(長男)が聞いた結果。
ラストのサポートだが、失敗した時にだけ手を貸すようにとのお願い。
敵の排除が目的なのではなく、長女にも失敗を糧に成長する機会を与えてやるための、末っ子の方針。それはかつて、長女が自分のためにしてくれたことでもあった。
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