【完結】俺は綴命の錬金術師   作:発火雨

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ランファンから見た綴命の錬金術師

 若様と共に作戦会議に参加した後、私は共に戦うことになるエドワードに確認を取った。

 

「あのタッカーとかいう男、あいつも戦力になるのカ?お前たちと同じ錬金術師なんダロ」

 

「うん、タッカーさん?いやあの人は僕たちと違って戦うのは専門じゃないよ、あの人は合成獣って二つの動物を掛け合わせた新しい動物を作るのが専門なんだ」

 

「あの人は合成獣学の権威なんだ、この国で一番合成獣に詳しい人ってことだ。後方支援担当だな」

 

 悔しいがエドワードもアルフォンスも、一度戦ってみてその強さは身に染みている。それに大佐と言われる男も纏う雰囲気から只者ではないとわかるし、他の部下たちもきっと強いだろう。しかしタッカーと名乗る男はどう見ても戦いに参加できるような男ではない。

 

「わしはこの国の錬金術に明るくないガ、先ほどの会話からするニ、敵はより高度な合成獣を作り出せるのだロウ」

 

「エドと同じ国家錬金術師というやつなんダロ、どのくらいの戦力として数えていいのダ?」

 

 爺様と若もエドワードに確認を取る。これから戦う敵は強大だ。若を守りきるためにも敵と味方の戦力は正確に把握しておきたい。

 

「タッカーさんの錬金術師としての腕前ってことになるのか。なんていやいいかな」

 

「鋼のと比べるんだったら、錬金術師としての腕ははるかに劣る。あまり戦闘方面に期待しないほうがいい」

 

 言いよどむエドに対して、マスタングという男は驚くほどはっきりと告げる。

 

「大佐!そんな言い方ないだろ」

 

「本当の事だ、本人も自覚しているし、私の目から見ても同じ回答だ。二人だって感じているだろ」

 

 エドワードとアルフォンスも言葉を失う。それがタッカーという男の錬金術師としての腕を物語っていた。

 

「彼が権威と呼ばれているのにハ、また違った意味があるのではないカ、おぬしらのニュアンスから察するニ、腕とは別の何かがあるのだロウ」

 

 爺様が指摘をする。

 

「確かに俺たちにはタッカーという人物についての知識はないに等しイ。ただ、あの場でのやり取りで気になったことがあるとすれバ、タッカーを大佐もエドも頼りにしていたことダ」

 

 若の意見は、錬金術師三人の反応を見る限り、間違いではなかったのだろうが、私にはいまいちピンと来ない。

 

「ふむ、王子とそちらのご老人には納得頂けてるようですが、お嬢さんはいささか呑み込めていないようだ。そうですな錬金術の才能というものを身長だと仮定してみてください」

 

「あんだと大佐、喧嘩売ってるのかこの野郎!」

 

「兄さん落ち着いて、例えだよ例え」

 

 怒鳴るエドワードをアルフォンスが宥めているが、大佐は続ける。

 

「彼の身長を表すなら背が我々よりも確実に低い、鋼のの実際の身長よりも低いだろう」

 

「誰がチビ豆粒ドベだコラァ!!」

 

「兄さん落ち着いて、たとえ話の途中だから」

 

 今にも掴みかかろうとするエドワードはアルフォンスに押さえられ、大佐は説明を続ける。

 

「彼は確かに他の人よりも背が低いかもしれないが、誰よりも先に松明を拾い、そして掲げ、先を行った。背が低いゆえに照らせる範囲は狭かっただろうが、それでもその未知の暗闇に光を当てて先導したのは確かだ。であるからして、やはり彼は合成獣学の第一任者であり、パイオニアなのだよ」

 

「そういうものなのカ?」

 

「そうそう、あの人のすごさは、錬金術の単純な腕だけじゃないんだ。たまにはいいこと言うな大佐!」

 

「同じく背が低い君には共感できる話だったろ、鋼の」

 

「グァルルラアアッッ!!!」

 

「兄さん!人の言葉を喋れてないよ!」

 

 獣のように暴れるエドワードをアルフォンスが必死に取り押さえる。結局エドワードの怒りを収めるために時間がかかり、この話はここで終わりになった。私としてはいまいち理解が出来ない部分もあったが若と爺様は納得できたようだ。

 

 それから私と若、エドとアルは、スカーと呼ばれる男を利用して、ホムンクルスをおびき出す作戦を立てたのだが、結果は三つ巴の混戦となった。

 

 触れたものを破壊するスカーと、後継者争いで敵対するチャン家の女。目につくものを片っ端から飲み込むグラトニーと、混戦の中他人に成り代わり隙を見て攻撃して来ようとするエンヴィー。こいつらと激戦する中、事態は急速に動いた。

 

「不味いグラトニー、止めろ!」

 

 混戦の最中、スカーがグラトニーを破壊する。それに便乗する形でエドワードが作ったワイヤーで再生中のグラトニーを拘束したまではよかった。助け出そうとする他のホムンクルスたちを足止めし、チャン家の女に狙いを定めた時だ。

 

 突然膨れ上がったグラトニーが私とエドワードを食らい尽くそうとしたのだ。咄嗟に私は若に蹴とばされ、何とか難を逃れることができたが、エドワード、若、そしてエンヴィーまでもがその場から消えてしまった。

 

「おい、吐けよ、二人を吐けよ!」

 

「くそぅ、若、返事をしてくださイ、若!」

 

「無理だよぉ~、呑み込んじゃったもの」

 

 いつの間にか消えていたスカーとチャン家の女のことなど忘れ、私とアルフォンスは消えた若とエドワードを救出しようとするが、方法がわからない、すると。

 

「もしかしたら~お父様ならどうにかできるかも~、お父様は何でもできるから~」

 

 グラトニーが言うお父様はホムンクルスたちを創り出した男で、賢者の石もそいつが作るように命じてるらしい。

 

「人柱は連れて行ってもいいけど~、そっちの女は食べてもいい?」

 

「だめだよ、ランファンも連れて行ってくれないと僕行かないからね」

 

 アルフォンスがうまいこと説得し、親玉のいる場所に案内させる。そこは国の地下で、奥に進むほど禍々しい気配が濃くなっていく。そして最深部にたどり着いたときだ。そこには巨大な気配が立っていた。まるで人間のような姿だが人間ではない。いくつもの気が濃縮され、暴風のように吹き荒れる気持ちの悪い気配。自然と背筋が震える。

 

 そんな時、いきなりグラトニーが苦しみだし、突然巨大な生物が現れたかと思うと、エドワードと若も同じ空間に放り出された。

 

「若!ご無事でしたカ!」

 

 思わず駆け寄ろうとするその時だった。私の腕に激痛が走る。

 

「だめじゃない、油断しちゃ。弱い人間のくせに、唯一の長所の臆病さを無くしちゃ、酷い目に遭うわよ。こんな風にね」

 

 私の肩を貫いたのは爪、それは事前に教えられていたラストという名のホムンクルスだった。

 

「さぁ、異国の王子さま、可愛い部下が人質になっちゃったわ、大人しくしてくださる?」

 

 最悪だ、若を守るべき私が、人質になり、若の動きを止めてしまうなんて。どうすればいい?若を助けるためには、若を逃がすには。考えろ、考えるんだ。私にできることはなんだ。私を見捨てて逃げてほしい、そう願うも若は私のために奴らと取引してしまった。グリードというホムンクルスに体を明け渡す。目の前に居ながら、私が若のお命を守ることが出来なかった。

 

 その後スカーとチャン家の女がこの場に乱入した。私もその隙を突き、ラストの眉間に一撃食らわせることに成功したが、この場は撤退するしかできなかった。

 

 結局、私は何もできなかった。情けない、悔しい、申し訳ない。自分の無力さに絶望しながら逃走する。エドとアルが殿を務め、私はまたも生き延びてしまった。私はどこまでいっても役立たずだ。

 

「そこに誰かいるのか!?」

 

 私は逃げる途中で、囚われた男を発見する。

 

「私はマルコーという者だ、奴らに捕まってここに居る。すまないが外の情報を教えてくれないか。ん?怪我をしているのか、私は医者だ。君の傷も診よう。見張りの連中はしばらくやってこないはずだ」

 

 傷を治してくれた男に私は状況を説明する。なんとこの男エドやタッカーのことを知っている者らしい。

 

「そうか、私以外にも気づいた者たちがいたのか、どうやら奴らの狙いは国土錬成陣以外にもあるみたいなんだ。すまないがここから出るのに協力してくれないか、私は私が犯してきた罪と向き合わねばならんのだ。イシュヴァールの時のように見て見ぬふりはすることは出来ないんだ」

 

「その話、詳しく聞かせてもらおうか」

 

 突如私が部屋に侵入した通気口からスカーが現れた。私は武器を構えるが、マルコーが止めに入る。

 

「君はイシュヴァール人か、まず怪我を治させてくれ、全部話そう、私の罪を……」

 

 マルコーが話し始める、彼は国家錬金術師としてイシュヴァールの内乱に参加し、非道な実験を強要されていたようだ。その話を聞くうちにスカーの表情は歪み、手を震えさせている。

 

「私のことを殺してくれて構わない、君にはその権利があるのだろう。だが、これだけは届けてほしい!私が研究した賢者の石の破壊法だ。これをエドワード・エルリックか、ショウ・タッカーに、彼らならきっとこの国の人たちを救うことが出来る」

 

 スカーが怒りに任せて壁を殴りつけ、呼吸を荒くする。

 

「いいだろう、貴様には俺についてきてもらう、まだ聞きたいことがあるし、俺の兄が残した研究資料を解読してもらうぞ。それから小娘、このことをタッカーに伝えろ、北で待つとな、一人でも専門家は多いほうがいい」

 

「そうだ、もし君がタッカー君に会えるなら、このレポートを渡して欲しい、きっと彼の力になるはずだ」

 

「まて、スカー。グラトニーとやらは匂いでこちらを捕捉するようダ。タッカーが作っタ、匂い消しの薬品がアル。これを提供する代わりニ、一つ頼みたイ」

 

 私は己の腕を囮に、奴らを撒くことを提案する。マルコーは難色を示したが。

 

「本当にいいのだな?」

 

「構わなイ、私は若を守ることも出来ズ、護衛として失格だロウ。しかし、可能性があるのナラ、次につなげなくてはならなイ、そのためにならなんだってしてやるサ」

 

 腕で掴んだスカーが錬金術を発動すると、今までに味わったことがない激痛に襲われる。しかし、これで若が助かる可能性ができれば安いものだ。気配を感じるに、ホムンクルスたちはまんまと私たちの作戦に引っかかってくれているようだ。それでも道中では無数の合成獣が襲い掛かってくる。スカーはともかく、腕が無くなり戦闘力が低下した私と、マルコーがいるせいで足が遅れてしまう。

 

「私が合成獣たちを引き付けル。その間に速くマルコーを連れて逃げロ」

 

「無茶だ、治療したとはいえ体力は戻ってないんだ、危険すぎる」

 

「適当に相手したらすぐに逃げル、さぁ、早ク」

 

 その後私は合成獣から逃げ回り、命からがら外へ飛び出す。もう、体力の限界だ。意識が遠のいていく、せめて、奴らに見つからないように、どこか遠くへ。私は最後の力を振り絞り、物陰のゴミ箱へ身を隠す。

 

 なんとかタッカーの下へ、そう思いながら見上げる空には、一羽の鷹が空を飛んでいた。




マスタング大佐の身長を才能に例えて、最後にエドを煽るセリフは感想欄から使わせて頂きました(許可も取りました)

素敵なコメントでマスタングがいいそうだなぁと思い使わせて頂きました。

いつも感想を書いてくれる皆さま、ありがとうございます。
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