俺の名前はショウ・タッカー。なんか知らんけど人類サイドで一番最初にホムンクルスを倒した一員だ。まぁ俺じゃ倒し切れずにスカーが全部もってったんだけどね。俺の技量じゃマルコーさんみたいに上手くいかなかったわ。てか、賢者の石に特化した破壊錬成陣よりも、効率的にダメージを与えたスカーが規格外なだけなんだけどね。よくこんな人に狙われて俺生きてるよな。
その日の晩は久しぶりにお酒を飲んで過ごした。いつの間にかヨキさんが村の住民から貰って来たらしい、俺とマルコーさんはちびちび飲みながら医療談議に花を咲かせたけど、なんだか穏やかな時間が過ごせて満足。バリーも普通にみんなの中に溶け込んでるし、俺の技術も捨てたもんじゃないね。
ちなみに俺もアル君とバリーの漫談をみてニヤニヤ、いや、からかわれてるアル君面白いね。素直な良い子なのがわかるよ。
翌日俺たちは別々の道を歩くことに。メイちゃんはエンヴィーをビン詰めにして故郷のシン国へ。もう泣きながらアル君に抱き着いて別れを惜しむメイちゃん、私がいなくなった後をお願いします、なんて俺の手を握ってすごく頼まれた。まぁ元々知識として知ってたし、前から錬丹術の勉強もしてたから、メイちゃんに教わって簡単な医療系の錬丹術なら使えるようになったんだよね。
これは俺があんまりアメストリス式の錬金術に特化してない、もとい得意じゃない分柔軟に覚え直せたんだよね。逆にこの国で極めちゃったアル君やマルコーさんには一から違う仕組みを勉強するのは、今までの土台が合わなくて大変そう。
スカーとマルコーさんも、各地のイシュヴァールの人たちに協力を取り付けるためにあちこちを転々とするみたいだ。俺がまとめた今までの研究レポートもマルコーさんに渡せたし、再会を約束しながら別れた。
そんなこんなで俺たち一行はリオールへ直行しました。理由としてはアル君の発案で、国土錬成陣に繋がるトンネルがある可能性が高く、ついでに自分たちが関わった町だから様子を見に行きたいというのだ。次に行く当てもない俺たちはそのプランを承諾。んでもってリオールに着くと。
居ました、超重要人物ホーエンハイムさん。エド君とアル君のお父さんで、超凄腕の錬金術師、そしてその実態は生きた賢者の石。
再会もそこそこに、ここリオールは復興の真っ最中。ホーエンハイムさんが作業中の人達に呼ばれてしまったので、俺たちも時間が空いてしまった。こんな時こそ助け合いだよね。俺も非力ながら協力させてもらおう。ちなみにバリーこと俺の秘書マーゴットは女性陣と一緒にみんなに配る炊き出し班に。なんか肉の解体がむちゃくちゃ早いみたいで重宝されてるそう。どうでもいいけど。肉を切るときの笑顔がなんとも言えず怖いんだけど、それが逆にいいんだとかいう若い男性ファンが付いたみたい。君すごく楽しんでるね、いや、いいことだよ。
「タッカーさん、マーゴットさん、初めまして。エドワードとアルフォンスの父親のホーエンハイムです。息子たちが大変世話になったそうで」
その日の夜にアル君に呼ばれて、マーゴットと共にアル君の宿泊部屋に行くと、待ち構えてたホーエンハイムさん。えぇなんで!って思ったけど、よく考えたらこのメンバーの中で俺が一番年長者だし、アル君のことだからお世話になった人として紹介してくれたんだろう。そうだよね父親としてあいさつするよね。俺だって奥さんの友達が遊びに来たら一度は顔を出して挨拶するもん。
「いえいえ、むしろ私の方が助けられてばかりですよ」
本当にそうなんだよな、二人のセンスがなければマーゴットの体も作れなかっただろうし、もっと言うと、俺この世に居なかったよ、自信がある。本当に感謝してます。
「そんな、タッカーさんにはお世話になりっぱなしですよ、僕も兄さんもここまで来れたのは、タッカーさんの協力あってのことですもん」
「あら、アルフォンス君、私は?」
もちろん、マーゴットことバリーもここぞとばかりにアル君を弄り倒す。でも道中で慣れたのかアル君の対応も手慣れたものだ。
「はいはい、マーゴットさんにも感謝してますよ。でも、僕に感謝することの方が多いんじゃない?」
「ははっ、しばらく見ないうちにすっかり一人前の男になったなアルフォンス。まさかこんな美人と小粋なトークが出来るようになってるなんて、俺の若いころにそっくりだ」
ホーエンハイムさんも朗らかに笑いながら、アル君の肩を叩いて褒める。いやー親子ですね、うちは娘だからこんな風に男同士の親子の会話に憧れちゃうね。いつかニーナもこんな風に俺のいないところで女同士の会話をするようになるのかな。
でもねアル君、真面目で素直な君だと、人生楽しんだもん勝ちのマーゴットと、ナイスミドルに歳を重ねたホーエンハイムさんのコンビネーションには勝てないよ。
「俺に彼女を紹介するのはエドワードの方が先だと思ったが、まさかアルフォンスに先を越されるとはな、まぁお前は内面はトリシャに似たから、年上に好かれるんだな。俺がプロポーズした時も結構ライバルがいてな、みんな年上の奴ばかりだったよ」
「違うよ父さん!この人は……」
「あら?親御さんに紹介してくれるんだから、彼女じゃなくて婚約者になるのかしら、私もこれからはホーエンハイムさんじゃなくてお義父さんって呼ばなくちゃいけないかしら」
「バリー!また適当なこと言って、どれだけ僕が君のせいで苦労したか」
「まさか、この歳になってこんな美人な義理の娘が出来るとは……アルフォンス、女に苦労を掛けられるのも男の甲斐性だぞ。それにしてもどこでこんな美人を引っ掛けたんだ」
ほらね、ホイホイ会話の主導権を取られて右往左往してる。まぁ二人とも本気じゃなくて狼狽えるアル君が面白いからからかってるのがわかるけど。
「魂の錬成は今までも何度か見たことがあったが、元の体を鎧にして動かすなんて、いやぁ面白いことを考える人もいたもんだ」
アル君とマーゴットが思わず目を見開く。そうだよね、見た目朗らかな気の良い親父さんって感じだけど、この人、超一流なんて言葉では表せないほどの錬金術師だから、少し見ただけでわかっちゃうんだね。さすが二人の父親。
「ちょいと失礼、最近無理して動くことがあったんじゃないかい?それに、眼が見えすぎてるから、イメージ通りに体を動かすのが辛くなる時があるんじゃないかな」
ホーエンハイムさんはマーゴットのこめかみや目の周りを親指で触りながら質問をする。マーゴットも最初は驚いていたもののすぐに笑顔で答えた。
「驚いた、なんでも御見通しなのかよ、さすがアルフォンスの父ちゃんだぜ……」
「楽にしてくれ、少し血流の流れをよくして、負担が掛かりにくいようにするから」
ホーエンハイムさんがそう言うと、いきなり腹に手を突っ込んだ。一瞬の出来事にアル君は驚いてるし、マーゴットに関しては痛みもないのか何が起きたか理解が追い付かない。俺も生で見ると猟奇殺人の現場に鉢合わせたとしか思えない。
「よし、これでだいぶ違和感がなくなったと思うよ」
「おぉ、体が軽いし、なんだか眼の疲れが吹っ飛んだ!すげぇなホーエンハイムの旦那!」
マーゴットはその場で軽くジャンプしたり腕を振り回したりする。俺とマルコーさんもかなり気を使って調整を繰り返したつもりなんだけど、まさか初見でこんなことが出来るなんて……いやいや、さすがは賢者と呼ばれ歴史に刻まれた男。医療に特化した錬丹術の祖。
「父さん、いきなりびっくりさせないでよ。思わず父さんを殴りそうになったじゃないか」
「もしかして私のこと心配してくれたの?うれしい、お義父さんにも認められて、これからは親公認の仲ってことでエドワード君にも話せるわね」
「だから、ちがぁあああううう!!!」
ホーエンハイムさんもずっと笑ってるよ。どうしようかな……俺も一緒になって明るく笑っておこう!
『ホーエンハイム』
ご存じエルリック兄弟のお父さん。一目見ただけでバリーの体の異質さを見抜き、お節介がてら体を再調整。作ったタッカーや、医療錬成の専門家マルコーさんでもできなかったことを、一瞬で出来るすごい人。
ちなみにバリーの元の性別もわかっており、久しぶりに会った可愛い息子を弄り倒すお茶目なお父さん。