「はっはっは!やはり彼らは手強い。まさかラスト、グラトニー、エンヴィーの三人がかりでも捕まえることが出来ないどころか、敗退、消滅、捕虜となるとは。まったく、離反したグリードも合わせたら我らの半数を削って見せたのだな人間どもは」
「笑い事じゃありませんラース。約束の日が近いというのに4人の人柱たちはみな、私たちの手を離れてしまいました。それどころかあと一人の人柱も用意できていません」
大総統邸、セリムの寝室では二人の影が話をしていた。親子としてではなく、共にお父様から生まれたホムンクルスとして。
「それほど問題なかろう、彼らはここに集ってくる。それにあと一人の人柱も人体錬成を使わせればすぐに揃う。候補としてはマスタングかマルコーか、最悪強制的に人体錬成を起こすことも視野に入れねばならんな」
「それは最終手段ですね、ラスト、グリード、グラトニーの再生のためにかなりの数の賢者の石を使いましたし、計画のためにこれ以上石を削るわけにはいきません。どのように考えてますか?」
一度消滅寸前まで追い詰められ、再び賢者の石を補充されたホムンクルス三人。その核となる賢者の石の補充にかなりの数を使ってしまい、最近新たに作り出した分もキンブリーに与えてしまった。
「そうだな、不死の軍団に回している分があるだろう。あれはラストに与えて戦力にカウントしよう。本人もまだこんなところでは終われんだろう」
「正気ですか、2度も彼らに負けたラストはお父様が新しく作り直すことも視野に入れていたじゃないですか。それに不死の軍団もそのような使い方は指示されてないのでは?」
「今更新しく作り直されてグリードのように不具合を起こされても堪らん、それに最近の彼女は人間を理解してきている。不死の軍団などと名ばかりの考えることも出来ぬ愚かな生命体よりもよっぽど役に立つ。それに表向きは私が、裏では君が不死の軍団の決定権を持っているはずだ」
ラースに言われ、考え込むプライド。あの日自分が彼女を助けた日から、ここ何十年も変わらなかったラストに変化が訪れている。いや、成長と言うべきであろうか。人間を見くびるのではなく、観察し、そこから理解しようと足掻く彼女はプライドの目線から見ても強くなったと言わざるを得ない。
地下で何度かラースとラストが模擬戦をするのを見ていたし、自分も誘われて何度か参加した。ホムンクルスとして授かった能力だけではない、そこに経験と考察が加えられ、間違いなく成長と呼べるものに昇華されていた。
そして何より驚いたことは、彼女の戦闘スタイルだ。今までの戦闘は全て最強の矛を使ったものであった。しかしそこに剣術がプラスされた。あと数年鍛えれば自分さえも危ういなどとラースから聞かされ、プライドは自分の耳を疑ったものだ。
何十年も変わらなかった彼女が自分の意思で、何かを掴み始めている。確かにこれは大きな変化であり、同時に危険な兆候でもある。だが、それでもプライドはその変化を受け入れようと思った。何故ならそれは、自分にも当てはまることなのだから。
「そうだ、セリム。私たちは変わりつつある、お父様から生まれ出た日から、様々な出会いと別れを繰り返し、いくつもの人間を見てきた。ホムンクルスの私たちでさえ完成された存在ではない、不完全だからこそより高みを目指し進化し続けている」
「お父さん。あなたもここ数年で変わりましたね。まさかその歳になって成長期ですか?」
セリムは苦笑しながら答える。彼の言う通り、キング・ブラッドレイの成長は止まらない。ロイ・マスタングという新たな国を思う可能性に出会い、彼は更なる成長を遂げている最中であった。
ホムンクルスとして与えられた罪は憤怒。しかし、この国のトップ、大総統としての顔もまた彼の一面なのだ。そして。
「ははっ、まだまだ現役のつもりだからな。それに最近は紅茶の淹れかたもかなりのもんだと先生にお墨付きをもらったからな。この歳になってもまだまだ学び足りないな」
セリムは知っている、仕事に前以上に熱心に取り組みながらも、家での時間を大切にし、ここ最近ではお母さんに教わって紅茶を淹れるのが本当にうまくなった。最近のティータイムは親子三人でそれぞれが準備をし、共同作業を楽しむ時間になっているのだ。
そんなことを思いながらクスリと笑うセリム。そんな彼につられてか、ブラッドレイも笑い出す。
「あらあら、二人とも何笑ってるの?部屋の外まで笑い声が聞こえたわよ」
部屋をノックして入って来た夫人が訪ねると、セリムは満面の笑みを浮かべ答える。
「今度はお母さんと一緒にクッキーに挑戦して、お父さんに食べてもらうって約束してたんです!」
「あぁ、その時は私の淹れた紅茶でティータイムにしようと思ってな、クッキーはまだまだ勉強不足で、手伝いはセリムに任せっぱなしになってしまうな」
「あなたも一緒に今度作ってみませんか?大丈夫、私が教えてあげますから」
親子三人の幸せに満ちた時間がそこにはあった。そこにあるのが偽りだと誰が言えようか。
「そうだな、一緒に作るのも楽しいかもしれんな。今掛かりっきりの仕事が終わったら三人でお菓子作りに挑戦してみようか」
「いいんですか、結構時間がかかるから貴重なお休みを丸々使ってしまいますよ」
「かまわんよ、まだまだ現役を辞めるつもりもないが、私が仮にいなくなってもこの国を任せられるくらい、後進が育ってくれたからな。それに仕事ももうすぐひと段落する予定なんだ。もしかすると大総統として最後の仕事になるやも知れん」
笑顔でセリムの頭を撫でながら、夫人にそう告げるブラッドレイ。その言葉に夫人は驚き、顔を覗き込む。
「そうですか……それでしたら、今度は一日とは言わずに長いお休みが取れそうですね。昔みたいに二人でデートでもしましょうか」
「えぇずるいです、僕も一緒に連れてってくださいよ、お母さん!」
「あら、ごめんなさいね、そうよねセリムも一緒で私たち家族ですものね。みんなでお出かけしましょう」
家族の団らん、それは幸せな光景。だがそれは、いつ壊れてもおかしくない砂上の楼閣。それでも彼らは家族を続ける。いつか訪れるであろう、本当の終わりの日まで。
皆さんにお聞きしたいのですが、何時ごろ投稿するのが見やすかったり楽しめたりしますかね?
今まであんまり気にしてこなかったけど決まってるほうが楽しみが出来ていいのかなと思って、ご意見お待ちしてます。