【完結】俺は綴命の錬金術師   作:発火雨

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しばらく出番がなく影が薄かったエド。

描写を省いてる部分は基本的に原作と同じように進んでます。基本的には。


エドとお父さんの関係

「いきなり殴るなんてひどいじゃないか、しかも右で!」

 

「あぁ、すっきりした」

 

 久しぶりの再会だというのに、エドは出会い頭に渾身の右ストレートをホーエンハイムの右頬に叩き込んだ。だがしかし、その一撃を食らってもなお、この男は笑っていたのだ。まるで、殴られることを予想していたかのように。

 

「アルフォンスが言ったとおりだ、『兄さんなら出会い頭に話も聞かずに殴るから』って。まったく、仲のいい兄弟だよ」

 

「アルに会ったのか!」

 

「あぁ、しかもお前より先に殴って来た。まったく親相手に手加減なしにぶつかってくる。本当に俺には過ぎた息子たちだよ」

 

 エドが連れて来た合成獣人間二人にホムンクルス。ホーエンハイムは数週間前のリオールでの出来事を思い出す。誰も彼もが目的も立場もバラバラだったのに、アルフォンスをよくしてくれた。エドもアルも旅の中で良い縁に恵まれている。

 

「タッカーさんにも言われてね、すまなかったエド。お前も色々わだかまりがあるだろうが、俺の話を聞いてくれないか」

 

 そこから色々な話をした。それはホーエンハイムの今までの人生だった。奴隷23号としてクセルクセスに生まれたこと、フラスコの小人との因縁、生きる意味を失った日々、トリシャ・エルリックとの出会い。

 

「お前たちが生まれた日のことは今でも鮮明に覚えてるよ。俺はあの日、父親になったんだって……だからこそ、けりをつけなきゃいけなかったんだ。お前たちの未来のためにも」

 

「ふざけんな、それが母さんを置いて出ていった理由だって言うのか!そんな理由で俺たちが納得するとでも思ってんのか!」

 

 エドの怒りが爆発した瞬間であった。わかるのだ、理解も出来るのだ。しかし感情が追い付かない。目の前の男は自分の母を見捨てたのだ。許せるはずがない。エドの言葉に反論することもなく、ホーエンハイムはただ黙ったまま俯いていた。

 

 エドは握った拳を震わせると、顔を伏せながら立ち上がって村の方に歩いていこうとする。

 

「ピナコ婆っちゃんから母さんの遺言を預かってる……『約束守れなくてごめん』って」

 

 エドは振り返るとホーエンハイムは静かに涙を浮かべていた。そして彼はゆっくりと立ち上がると、エドの前に立ち抱きしめる。

 

「お、おい何しやがる!」

 

 突然の行動に動揺を隠しきれないエドだったが、抵抗することなく大人しくしている。ホーエンハイムの腕の中はとても暖かかった。久しぶりに感じる人の温もりである。しばらくして腕を解くと、ホーエンハイムはエドの顔を見て微笑む。

 

「都合がいいことだってわかってる。いくら理由があったってお前たちのそばを離れて母さんの最後に間に合わなかったことも事実だ。ありがとう、強く生きてくれて、トリシャを愛してくれて。お前は嫌がるかもしれないが、俺の自慢の息子だ」

 

 そう言われてエドは何も言えなかった。だから何も言わず再び歩き出す。

 

 しばらく歩いていると後ろの方で声が聞こえる。

 

「よかったな、親父さんとじっくりと話せて」

 

 ハインケルが声を掛けてくれる。短い付き合いだが、こちらを気遣ってくれてるのがわかる声色だ。

 

「たぶん、アルとタッカーさんのおかげだと思う」

 

「アルフォンスはわかるが、ショウ・タッカーもか?」

 

 ダリウスが疑問を出す。兄弟のアルフォンスが家族仲を思うのはわかるが、なぜそこでタッカーの名前が出るのか。

 

「あの人お節介でお人よしだから、ホーエンハイムも名前を出してたろ。だからあの人の顔を立ててあいつの話を聞いてやったんだ。じゃなきゃ誰があんな奴の話……」

 

「まぁ、きっかけは何であれ、親父と話せたんだろ。向こうだって真剣に思いを伝えたんだ、中々出来ることじゃねぇ……あいつとそっくりだが中身は全然違うんだな」

 

 最後のつぶやきを確認しようとすると、グリードはそのまま闇夜の森へ消えてしまった。

 

「ホムンクルスにもお父様ってのがいるんだろ、あいつもなんかあるのかね」

 

「さぁな、ボスを一人にするわけにもいかねぇから追いかけてやるか」

 

 ダリウスとハインケルが後を追いかけようとする。

 

「そうだな、親父を殴る気持ち良さを先輩として教えてやるか!」

 

「おい、今おまえホーエンハイムのことを親父って……」

 

 一人森に駆け足で向かうエドの背中を見ながら、ダリウスは驚きの声を上げる。その言葉の意味を理解するのには少し時間がかかったが、嬉しさのあまりニヤリと笑うのだった。

 

「まったく、親父と違って素直じゃないな」

 

 ハインケルも顔をほころばせて呟くのだった。

 

 闇夜の森で蠢く影、その影は何を狙うのか。ぎこちなく動く鎧と女、彼らは誰を狙うのか。

 

「ラスト、ここでエドワード・エルリックを確保しますよ。ホーエンハイムもこの二人を捕らえたら動けなくなるでしょう」

 

「あんまり、気が乗らないのよね。でも、どうせグリードが邪魔するんだろうしそっちは任せてもらっていいのよね。兄弟喧嘩なら多少張り合いがあるわ」

 

「私だって人柱に関してあまりいい手段ではないと思うのですがね、お父様の命令です。義務を果たしましょう」

 

 プライドとラスト、二つの影が近づいてくる。




前話でいつの間にか30話を超えていました。1/2から投稿してるはずなのに、気づけば一日一話所のペースじゃなくなってきてますね。

これもすべて見てくださってる皆さんのおかげです。たくさんの評価のおかげで、一月の総合月間ランキングも現在4位というすさまじい数字を頂いております。

試験的に正月の暇な時間で書いた作品がこんなにも多くの皆様に支えられていることは、筆の速さに多大な影響を与えています。

これからも文章を読むことを楽しみにしてる方に、ほんの少しの楽しい時間をおすそ分けできるように頑張ります!
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