試行錯誤しながら書いてますがよければお付き合いください。
俺の名前はショウ・タッカー。約束の日を迎えて、いよいよ最終決戦に挑む国家錬金術師だ。
なんて言っても、することないんだよね。国家錬金術師だけど戦闘力とか全然ないし、後方支援組としてラジオ局に待機。市内の制圧が終わるまで下手に外に出たらすぐに流れ弾で死ぬ自信がある。
「お久しぶりですねタッカーさん。あらら、そっちは本当にホークアイ中尉にそっくりで、本人怒ってなかったですか?」
ハボック少尉もお久しぶりです。なんでこんな優秀な人がラジオ局待機なんだと言えば俺の護衛なんだよね。マーゴットことバリーもいてくれてるけど、事情を知ってる上に機転が利く彼が一緒だと心強い。
マーゴットも最初は演技して接してたけど、耳元でタバコの兄ちゃんなんて言って揶揄ってた。
「一応双子の妹ってことに後でする予定だから、そんな感じでお願いね。マスタング大佐がかなり苦情を受け止めてくれたよ」
ひそひそとラジオ局の中で会話する二人。今この時間もあちこちでドンパチしてるだろうが、俺も出来ることをしてる最中。
この日のため、リオールでアル君とホーエンハイムさんに手伝ってもらって量産した軍用合成獣たち。敵さんに空を飛ぶ鷹を相手にしてる暇なんてないから、市内の細かい様子を探り放題。ここに情報を持ってきてもらい精査。そこで集めた情報を逐一各部隊に通達。勿論情報をまとめて指示を出すのは……
「よしよし、順調だな。セントラルが攻め込まれたときの対処法や、軍の動きなんぞ、俺にかかればこんなもんよ」
地図の上にチェスのコマを置いて状況を把握しているのはヒューズさん。生存してシン国に逃亡した後、ヤオ家と人脈を繋いで今日もトラックいっぱいの武器や弾薬を届けてくれた。武器の当ては心配ないって事前にマスタング大佐が言ってたけどこのことだったんだな。思えば、心配ないとみんなに説明する時の顔が、僅かにほころんでいたのはそういうことだったのね。
出会い頭に娘さん自慢を食らい続けるハボック少尉、愛娘エリシアに「ニーナちゃんのパパを手伝ってくる」って言ったら、もうエリシアもニーナも力の限り応援してヒューズさんを送り出したそうだ。
「……順調すぎるな、タッカーさん。悪いがセントラルの周辺にも合成獣を飛ばしてくれるかい?」
そう言うヒューズさんの目は真剣そのもの、俺だってここまで順調に進むとは思ってなかった。何もかもが予定通りに進んでいるときは逆に怪しい。
言われた通り、合成獣たちをセントラル近郊に飛ばす。その間もラジオブースでは、ブラッドレイ夫人がマイクに向かって自身に起きたことを国民に伝えている。実は放送するちょっと前に話したんだけど、向こうは俺のことを知ってたみたい。
なんでも、俺が作った合成獣を家で飼ってるんだってさ。ある日職権乱用で大総統がどこからか連れて来たらしい、最初の内はセリムが全然懐かなくて心配してたんだけど、車の事故からセリムを守ってからはずっと仲良しで一緒に散歩したりするほどになったとか。大総統は目を離すとすぐにお菓子をあげちゃうから、餌の管理はセリムと夫人で一緒にしてると言われて思わず笑ってしまう。
「いつかちゃんとお会いしてお礼を言いたかったのだけど、まさか国がこんなことになるなんて。数日前に主人が大事な役目があるって言って大総統府に連れて行ってしまったの、もしかして今回のことと関係があるのかしら?」
移動中に俺の事を知ると、不安からかよく話しかけてきた。そうですよね、ある日突然クーデターが起こり主人と息子が行方不明。気丈に振る舞っているけど不安になるよね。
大総統が乗った列車が爆破された話を聞いて、夫人は泣き崩れてしまった。それでも彼女は自分の仕事を全うするべく、涙をぬぐって放送を続ける。でも一つ気がかりなことがある。
「ヒューズさん、確か大総統が合同演習を視察しようと列車に乗ったのは昨日の事なんですよね」
「あぁ、俺もそこが引っかかってる、合同演習はセントラルに戦力を集めるための大掛かりな仕掛けだから、向こうから上層部の息がかかった人間が来ていたはずだ。それなのにこのタイミングで大総統自らが視察に来るのは不自然だ」
「列車爆破自体は本当にあったんですか?」
「グラマン中将自ら確認したらしい、橋は爆破され列車も川底。何人か死体も上がってきてるが肝心の大総統は発見できずだ」
俺たちサイドが起こした爆破じゃないとしたらいったい誰が……考えても答えは浮かばず、今は少しでも合成獣たちが情報を持ち帰ってくれるのを待つばかり。なんか嫌な予感しかしないんだよね、すんなりこのまま作戦が進みそうにないような……
その時、一羽の合成獣がラジオ局の窓を突き破って来た。
「おいおい、なんであんたが作る合成獣はちゃんと開いた窓から入ってこれないんだ!」
「いや、この個体は今回の作戦用に錬成した奴じゃないですよ」
「待ってください、その子はうちの子です!」
ブースから飛び出した夫人が合成獣を抱きしめる。よく見ると足に手紙を括りつけられている。急いで外して開けてみると、中には無線の周波数が書かれていただけだった。
「これはあの人の字だわ、すいません、この無線に繋いでもらえますか」
慌ただしく無線の周波数を合わせて応答を待つ、予定外のことに戸惑っている俺とヒューズさん。放送を止めて一度確かめたいが、生放送中なのでマイクは繋げっぱなしなので、ここで止めるわけにもいかない。俺たちに大義名分があることを国民に理解してもらうためには、夫人自らの意思で話してもらわねばならないからだ。
そのさなか、一人のラジオスタッフがドアを乱暴に開けて飛び込んできた。何が起きたのかヒューズさんが聞くより先に、彼は血相を変えてこう叫んだ。
「列車爆破の犯行声明が出ました、犯人は東部過激派『青の団』です!」
そして無線が繋がると同時に、その場にいた全員が息をのむ。
《我が家の合成獣は役目を果たしたようだな、そのまま私の話を放送に流してくれたまえ》
おいおい、なんでキング・ブラッドレイ大総統の声が聞こえてくるんだ!?