【完結】俺は綴命の錬金術師   作:発火雨

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合成獣人形

 俺の名前はショウ・タッカー。絶賛ピンチの国家錬金術師だ。

 

「何だこいつら、銃弾は避けるし、いくら打ち込んでも平然と立ち上がってきやがる!」

 

 大総統の演説後、存在が明らかになった合成獣とテロリストたち、最初はどちらも上手く対処できていた。

 地下を守っていた合成獣たちがいくら強化された生物であろうが、テロリストたちがいくら武装しようが、この日のために準備してきた俺たちに加え、指揮下に入った中央軍の援護もあり、こちらの被害は最初の混乱時にこそ出たものの、今は最小限に抑えられているはずだ。

 

 各地の地下空洞から新手の合成獣たちが出てくるまでは……

 

 今だってハボック少尉のショットガンを食らっても平然と起き上がってきて、こちらに襲い掛かろうとしてくる。ちなみに普通のハンドガンだと避けてくるんだよね。今だって屋内に立てこもって狭い出入り口で応戦しているけど、いつまでもつかわからない。

 ヒューズさんのナイフが眉間に刺さっても何事もなかったかのように動いてるし、一番ビビったのはブレダ少尉が投げた手榴弾を素手で掴んだと思ったら投げ返してきたときだ。幸いバリーが掴もうとした瞬間を見ていて、投げるモーションをしたときに足をブツ切りにして自爆させたけど。

 

 すさまじいのは足を切られて、手の中で手榴弾が爆破したはずの合成獣人間がまだ動いていて、こちらに這いずって近づこうとしてること。

 

「先生!なんだこいつら、俺たちが会った合成獣人間と全然別物じゃねぇか」

 

 こいつらと唯一戦えているバリーが俺に投げかける。人型ではあるが明らかに違う生物が混ざりこんでいるような外見、そしてどことなく不死の軍団の面影を残すこいつらはきっと……

 

「潜入してるアームストロング少将が事前に入手してくれた情報に出てくる不死の軍団、それをベースに動物を掛け合わせたんだ。ジェルソさんやザンパノさんとはコンセプトが違う。人間に動物の力を足すんじゃなくて、動物に人間の力を組み込んだ強化生物ってとこだろうね」

 

 しかも普通の人間を組み込んだんじゃなくて不死の軍団を組み込んだのがいやらしい所、精神が元から定着してないから元となった動物が無差別に人間を襲ってくるし、不死人形の高いスペックをリミッターが外れて本能で動くように調整されているはず。

 

「んじゃ、賢者の石で動いてんだな、俺が手足ぶった切って転がすから先生お得意の錬成陣で石を破壊しちまえよ」

 

「さっき試したけど、こいつら賢者の石で動いてるわけじゃないんだ。賢者の石で動く予定だった不死人形を合成獣に改造してるみたいだ。その証拠にどいつもこいつもまるで獣みたいな動きと攻撃ばかりしてくるだろ。恐らく思考回路のメインは獣なんだ。さしずめ合成獣人形ってところかな」

 

 だからどれだけ傷つけても痛覚がないから怯まないし、恐怖もない。ある意味元の不死の軍団より厄介かもしれない。こちらが賢者の石の対策の錬成陣を開発したこともラスト経由で知ってるだろうからそれの対策も込みなんだろうね。

 

「準備はまだかタッカーさん!あんまり長くはもたねぇぞ」

 

 困ったことにここに居る錬金術師って俺一人しかいないんだよね、戦闘力が断トツで低い俺一人。

 戦いながら錬成するなんて器用なことはできないし、錬成陣を用意してる間は無防備だから一番最初に死ぬような役回り。本当に錬金術師の中でもエド君やマスタング大佐の規格外っぷりには驚かされるよ、さすがは国家錬金術師として実力でその地位を得た才能。

 二人みたいに高速で思考して錬成を完成させるなんて出来ないけど、時間を掛けたらそれっぽいことは出来るのよ。しかも俺はメイちゃんから教わったシン国の錬丹術の技術も多少あるからこんなことが出来る。

 

 床に描いた錬成陣とバリーに頼んで投擲してもらったナイフで刻んだ錬成陣が光を放ち始める。

 合成獣人形は相変わらず獣のような俊敏さと反射神経で襲い掛かって来ようとするが、突如自分の足元が脆く崩れ去り一階に落下していく。

 合成獣人形が落ちたと同時にハボック少尉が対ホムンクルス用の拘束銃を連射し、バリーが体勢を立て直そうとする合成獣人形の手足を切り捨てていく。

 

「三匹相手にこの始末かよ、とりあえず出入り口にバリケードを作れ、いったん体勢を立て直すぞ……っておいおい、冗談じゃねぇぞ!」

 

 ヒューズさんが窓から外を見て声を荒げる。外の通りにはすでに合成獣人形たちが集まってきており、ラジオ局は完全に囲まれてしまっていた。

 これってもしかして絶賛ピンチ継続中だよね、俺の実力じゃ狭い建物の中ならともかく広く開けた所で効果的な錬金は出来ないし、唯一戦えるバリーもこの数相手じゃどうしても対処しきれない。どうにかできるであろう国家錬金術師たちはみんな中心部に集中している。

 

 全員が口には出さずとも諦めかけたその時、一台の車が合成獣たちの間を強引に突破し、こちらに向かってくるではないか。

 車はラジオ局の前で急ブレーキをかけ止まると、そこから飛び出した二人組が地面に手を付ける。地面から壁がせり上がり、あっという間に合成獣たちを一か所に閉じ込めてしまう。壁の向こうではすさまじい爆発音が聞こえ、合成獣たちの音が聞こえなくなる。

 

 俺たちが唖然としていると二人がこちらに近づいてきた。

 

「タッカーさん、大丈夫でしたか?あぁ、ヒューズさんもお久しぶりです!セントラルに戻ってきてたんですね」

「やれやれ、なんですかあの美しくない合成獣たちは……こちらにブラッドレイ夫人がいるとお聞きしてここまで来たのですが、夫人はいらっしゃいますか?」

 

 ヒューズさんに駆け寄って懐かしそうに声を掛けるアル君に、ラジオ局の二階に向かって声を上げるキンブリー。

 

「アルフォンス、なんで爆発野郎も一緒なんだ!?」

 

「話せば長くなるんだけど落ち着いてバリー、後ここに来たのは僕たちだけじゃなくて……」

 

 窓から夫人が顔を出すと、キンブリーがにっこりと笑いながら車に向かって声を掛ける。

 

「ヨキ中尉、夫人を発見しました。セリム坊ちゃんをこちらまで」

 

 車の運転席から降りた軍服姿のヨキさんが、助手席を開けると中から飛び出した小さな影。

 

「お母さん!」

 

「セリム!」

 

 夫人が二階から降りてくるとセリムを抱きしめて泣き出す。離れ離れになった親子が感動の再会を果たす場面なんだけど、色々とわからないことが多すぎ!

 

「ブラッドレイ夫人、私は国家錬金術師のゾルフ・J・キンブリーと申します。大総統から勅命を受けセリム坊ちゃんを保護してセントラルを目指していたのですが、途中でテロリストたちの妨害にあい、その道中をこちらのアルフォンス・エルリックとヨキ中尉にサポートしてもらいながらここまでたどり着きました。お会いできて光栄です」




『合成獣人形』

研究途中だった不死の軍団を合成獣化した軍の新兵器。
賢者の石を開発段階では使って肉体を強化しているが、魂の定着は混ぜ込んだ動物で代用している。そのため賢者の石を核としていない。不死性は失われたが高い戦闘力を誇る。

原作と違い精神が崩壊した人間の魂を定着させたわけではないので、ある程度の命令は可能。これも原作よりも進んでしまった合成獣技術と、タッカーが提出している研究成果に興味を持った軍の錬金術師のアイデアが作り出したイレギュラー。

単体の戦闘力では合成獣人間に劣るが、その真価は恐怖と痛みを感じず本能のままに動く精神に、群れで狩りをする動物の本能が組み込まれたこと。

腕が切られたり銃弾を受けたくらいでは止まらない。ただし爆発で木っ端みじんになればその限りではない。
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