それに伴って過去の話も手が加えられてます。主に以下の部分を訂正しました。
通信用合成獣から軍用合成獣へと一部訂正
ペットとして買われている合成獣は元は捨てられた野良合成獣で人間を襲わないようにタッカーが尽力し、人間の言葉を多少理解できるが、言葉は話せない。
話せるうえ高度な知能を与えられたのは軍用合成獣のみと描写をわかりやすく書き直し
スカーを攻撃した軍用キメラは催涙弾で足止めを狙ったと描写変更
吾輩の名はアレックス・ルイ・アームストロング。『豪腕の錬金術師』の名を持つ国家錬金術師だ。
ここ最近セントラルで続いていた、国家錬金術師連続殺人事件。ついには軍隊格闘の第一人者『鉄血の錬金術師』バスク・グラン准将までもが帰らぬ人になってしまった。吾輩は上官のマース・ヒューズ中佐と共に犯人探しに躍起になっていたのだが……
「なんと、それでは次に犯人が現れる可能性が高いのはイーストシティだというのですか!」
「あぁ、これまで何度か目撃されてる怪しい男。それがイーストシティ方面に向かう汽車に乗ったって情報が入った。あそこはロイと『綴命の錬金術師』ショウ・タッカーがいる。あのあたりで定住して居場所が判明してる国家錬金術師はこの二人しかいない。さっき東方司令部に確認を取ったが、今は『鋼の錬金術師』エドワード・エルリックも滞在してるらしい」
我ら国家錬金術師の中には、研究や軍の要望による査定や視察、場合によってはその人間兵器としての技量を求められ、各地を渡り鳥のように移動する者も少なくない。セントラルでは4つの軍研究所があるために定住する研究者や、根を張った軍の国家錬金術師が多いために、殺人犯に狙われたと考えられている。
これまでに殺害された国家錬金術師10名、その半数がセントラルにいた者たち、残る半数は地方に定住した国家錬金術師たちだ。国家錬金術師の行動スケジュールは軍によって規制が敷かれ、一般人が把握するのは容易ではない。これまでの捜査から犯人は国家錬金術師がいる場所にある程度当たりをつけて行動してると考えられる。
エドワード・エルリックが直接狙われる可能性は低い。しかし、タッカー氏とマスタング大佐の二人は一般人もその所在が分かり、もし狙いをつけるとするなら東方司令部に在籍し、常に部下が近くにいるマスタング大佐ではなく、戦闘技量に乏しい研究専門職のショウ・タッカー氏だ。
「少佐、今すぐにイーストシティに向かうぞ、本命ショウ・タッカー、対抗マスタング、大穴エルリックの大勝負だ。次の犠牲者を出すわけにはいかねぇ」
これまで、地方では次のターゲットが絞れずに後手に回り、セントラルでは護衛する対象の数が多すぎて包囲網が間に合わなかった。だが、今度こそは! こうして、我々はイーストシティへと急行したのである。
東方司令部に着いた我々は、マスタング大佐からエドワード・エルリックがショウ・タッカー氏の自宅に通っていることを確認する。なんでも生体錬成の知識を得るために、通い込みで勉強してるのだとか。
「吾輩、エドワード・エルリックとは面識があるのですが、ショウ・タッカー氏のことは噂でしか聞いたことがありません。お二人から見てどのような人物なのですか?」
これから護衛する対象のことを知るために、マスタング大佐とホークアイ中尉に質問を投げかける。我がアームストロング家に代々伝わりし護衛術には対象のことを理解する愛の心が必要不可欠なのだ!
「そうだな、世間的な評価では合成獣学の権威だというくらいだろうが、生体錬成の専門家にしてもかなりの穏健派だ。生体錬成はその性質上、命ある者に実験を繰り返すし、手っ取り早く成果を出すなら人体実験が近道になってしまう。現実問題として各地の内戦や抗争で大義名分を得た錬金術師たちの中には、進んで人体実験をしようとする輩も珍しくない」
「タッカー氏は一貫してそんな現状に反対の声を出しています。生体錬成における人体実験の有用性を認めながらも、取り扱いには細心の注意を払い、また倫理的観点から見ても慎重を期する必要があると主張してますね。そのため、権威と呼ばれながらも結果を重視する軍上層部には受けが悪く、彼の発言力は決して強くありません。中央からの予算配分も反対派の煽りを喰らって減らされているようです」
ふむ、どうやらかなりの人格者であるようだな。セントラルで聞く噂では、結果こそ出しているがあれだけの予算があれば当然。国家錬金術師としてはお世辞にも有能とは言い難い人物であると揶揄する声も聞こえる。それだけ反対派の声が根強いということは、軍の中でも人体実験容認派が多い証拠であろう。
なんと嘆かわしいことか。『錬金術師よ、大衆の為に在れ』錬金術師の基本にして理想たる倫理観だが、我ら国家錬金術師は『軍の狗』と呼ばれることも多い。それでも理想を捨ててしまえばそれはただの狗であり、もはや錬金術師とは言えない。国家錬金術師たちは己の研究に誇りを持ち、常に高みを目指すことを求められる。だからこそ確かな信念を持たなければならないのだ!
「だけど、見てる奴はちゃんと見てるもんさ、軍法会議所の職員の中ではかなり受けがいいぜ。大総統がしっかり反対派を抑え込んでるから研究にちょっかい出す奴はいないし、お前さんたちだって色々手を回してるんだろ?」
「まぁな、さすがに直接援助は出せないが、結果もしっかり出してくれるから東方司令部からの依頼ということで、合成獣に関する困りごとの時には優先的に頼ってるよ。おかげさまで野良合成獣に頭を悩まされることは少なくなったし、今はイーストシティだけの試験運用だがこの軍用合成獣たちもゆくゆくは軍の新たな通信網の構築に一役買って……」
ヒューズ中佐とマスタング大佐が話を進めているその瞬間。窓ガラスを破り何かが部屋に飛び込んできた。全員が一瞬のうちに戦闘態勢に入る。これは……鷹?
「この子、タッカーさんが作った軍用合成獣よ。いったいどうして?」
「おいおい、勘弁してくれよ、スカーの奴が襲撃したかと思っちまったじゃねぇか。これ本当に軍の通信網に組み込めるのかよ」
ホークアイ中尉が銃を構えながらも窓の外を警戒し、ヒューズ中佐が床に叩き付けられた合成獣にナイフを構えながら近づく。
「シンニュウシャ!シンニュウシャ!タッカーキケン!タッカーキケン!」
その合成獣はぎこちない声を発しながら必死に起き上がり、窓の外へと飛んで行ってしまった。
「見てください大佐!タッカー邸の方角へ町中の軍用合成獣が向かっています!」
ホークアイ中尉の言葉にマスタング大佐の顔が一気に険しくなる。マスタング大佐が指示を出し、我々はタッカー氏の自宅へと向かうことになった。
「包囲網を敷き次第内部に突入する。周囲の民間人の避難状況は?」
「そっちの方はもう終わってますぜ。どうやらタッカーさんの合成獣たちが一足先に警告をここいら一帯に流してくれたみたいですよ。大佐が提案した緊急時の避難勧告を合成獣たちに流してもらうプラン、ちゃんと機能してるみたいですね。俺らも避難訓練に付き合わされた甲斐がありますよ」
ハボック少尉が大佐に答えながら包囲網の最前列に加わる。
「なんと!話には聞いていたが、合成獣の通信網というのはここまでの精度を誇るものなのか!」
「少佐、その話は後だ。少佐には正面出口反対から壁を壊しての奇襲をしてもらうぞ」
それから吾輩たちは国家錬金術師連続殺人犯、通称『傷の男』と対峙したが、あと一歩というところで地下に逃げられてしまった。その後オートメイルの腕を破損したエドワード、脇を壊され歩くこともままならないアルフォンス、外傷はないが念のため病院で精密検査を受けるタッカー氏の護衛のため、吾輩も病院の一室に待機している。
「えぇ!リゼンブール行きは認められない!?」
「いかんぞエルリック兄弟、スカーがいつ襲ってくるかわからないのだ、錬金術が使えぬそなたら二人を護衛なしにここから離れさせるわけには行かぬ」
「そうだ、今スカーに対抗できる護衛をここでは確保できない、悪いがしばらくの間大人しくしててくれ」
出来ることなら吾輩がリゼンブールまでの護衛をしてやりたいが、そうすればタッカー氏の守りが手薄になってしまう。二人には悪いがここは我慢してもらうしかないか……
「アームストロング少佐、私がエド君たちと一緒に居なければ護衛が出来ないのですよね?」
「はい、護衛対象を分散させるわけにはいかないのです、お二人の安全を考えてのこと、なにとぞご理解ください」
「それでしたら私もリゼンブールまで同行するというのはどうでしょうか?」
この発言に吾輩たちが驚いていると、ヒューズ中佐とそのまま話し合いを進めてしまう。それどころかヒューズ中佐からスカーの殺害対象は国家錬金術師のみで、その家族が襲われたケースはないことを引き出すと、自分と家族が一緒にいないほうが家族の安全につながることや、帰る家が無くなったので妻と娘を一時的に保護してほしいとヒューズ中佐に頼み込んでしまった。
「いいのかよタッカーさん、査定だって近いんだろ、俺たちに無理して付き合うことないんだぜ」
「そうですよ、僕たちは別に急がないといけない理由がないんだし、少しくらい遅くなったって大丈夫なんですから」
エルリック兄弟も申し訳なさそうに首を振るが、意外なことにヒューズ中佐が助け舟を出す。
「それなんだが、査定の方は何とかなりそうなんだわ。今回の事件で軍用合成獣は自宅の鳥籠にいたのを除いて全滅、研究資料も家と共にかなりの数が紛失しちまったしな、こんな非常事態なら査定の方もある程度融通が利くだろう。それに軍用合成獣が俺たちにスカーの情報を伝え、避難誘導で市民を守り、何よりも、お前たちを救うために活躍したことを東方司令部が全面的に支持することになってる」
吾輩も耳にしていたが、マスタング大佐を筆頭に東方司令部が一致団結し、タッカー氏の功績を上層部に認めさせたらしい。今回の事件担当になったヒューズ中佐宛に大総統から直接、『オフレコだが査定に関しては心配いらぬ、マスタング君とタッカー君を安心させてあげなさい』との通信があったことは先ほど伝えられたばかりだ。
「そっか、あの合成獣たち、みんな死んじゃったんだね……」
アルフォンス・エルリックが悲し気な声を出す。兄のエドワード・エルリックもその表情は暗い。
「おいおい、そんな顔するな。確かに合成獣たちはタッカーさんの命令でお前たちを守るために命を落とした。だがな、あいつらは軍用合成獣だ。軍にいるからには大切なものを守るために命を懸けなきゃならねぇ時もある。そしてその為に犠牲を覚悟で命令しなきゃならない時もある。俺は同じ軍属としてあいつらに敬意を表する、人も合成獣も変わりはねぇ。あいつらは自分の職務を全うしたんだよ」
吾輩もヒューズ中佐もイシュヴァール殲滅戦でこの世の地獄を見た。しかし、その中で己の職務を全うした軍人たちの姿を知っている。だからこそ、軍人は誇り高くあらねばならないと思うのだ。吾輩はあの日逃げたことを一生忘れないだろう。吾輩が今できることは……
「あいわかった!この『豪腕の錬金術師』アレックス・ルイ・アームストロングがタッカー氏とエルリック兄弟を無事リゼンブールまで護衛して見せようぞ!」
「いいのか、少佐!」
「大船に乗った気で任せるがいい!我がアームストロング家に代々伝わりし護衛術で三人には指一本触れさせぬぞ!」
最後になりますが、皆様のおかげで日刊ランキング二次創作部門で1位を取ることが出来ました。
評価バーも赤色でございます。悲鳴を出して喜んでしまいました。
今後ともよろしくお願いします('◇')ゞ
あちこち適宜訂正もしてますが、見逃したり訂正が追い付かない部分もあるやもしれません、ご了承ください。