【完結】俺は綴命の錬金術師   作:発火雨

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今日で正月休みも終わり明日から仕事のため更新頻度が下がることが予測されます。

書き貯めとか一切しておらず毎回即興で書きあげてるんですよね。

皆さんの感想を見ながら書いてるのですぐにご意見を取り入れることが即興書きの魅力なのでこれからもこんな感じに続けていきます。

皆さんの感想が創作のエネルギーになりますので、感謝の気持ちを込めて返信します


エドから見た綴命の錬金術師その二

 イーストシティからリゼンブールに向かう汽車に乗り込んだ俺たち4人。アルは中身が空洞なのが他の乗客にばれたら面倒なことになると、少佐が気を利かせて貨物室に席を取ってくれたらしい。それはありがたいのだが寂しくないようにと輸送中の羊たちと相部屋にしたのは絶対に間違ってる。俺の弟をなんだと思ってるんだ。

 

「のどかないい天気だね、駅弁なんて食べるの何年ぶりだろう。いつも出かける時は妻が弁当を作ってくれるし、家族での移動ばかりだから、年甲斐もなくワクワクするよ」

 

「確かに、汽車での移動とは心躍るものですからなぁ。じたばたしても目的地にかかる時間は一緒なのだから、楽しまなければ損というもの。エドワード・エルリック、我がアームストロング家に代々伝わりし冷凍ミカンの皮をむいて作る切り絵を見るがいい!」

 

「なんであんたら二人はそんなにリラックスして旅を楽しんでるんだよ!てか、いつの間に弁当なんか買ってたんだ」

 

 タッカーさんと少佐の厚意で、俺たち二人はリゼンブールに向かう許可を取ることが出来た。そのことには二人に感謝してるし、こうして一緒に旅が出来ることを嬉しくも思ってるけど……この二人の行動にはついていけない。

 

「安心したまえ、吾輩がいるからには大船に乗ったつもりでいるがいい!」

 

「エド君が片手でも食べられるようにサンドイッチも買って来たから、よかったら食べるといいよ」

 

「あぁ、ありがとうございます……じゃなくって!本当に俺たちに付いてきてよかったんですか!?奥さんやニーナたちの事だって心配だろうし、それに査定だってあくまで来年に持ち越しただけで、研究成果の軍用合成獣だってそいつ一羽しか残ってないんでしょ?」

 

「うむ、実地での試験データは東方司令部のお墨付きがあるが、肝心の合成獣が軒並みスカーにやられ、残った一羽がいただけ不幸中の幸いと言うべきか……」

 

 あの日スカーの足止めをするために東方司令部のバックアップの下、研究が進められていた軍用合成獣は、鳥籠に入っていた一羽を除いて全滅してしまった。俺とアルは汽車に乗る前に合成獣用に作られた共同墓地にて黙祷した。

 

「あぁ、特別予算を組んだ研究だったのが幸いしてね、東方司令部の方にも研究資料が残ってたし、みんなが上層部に署名を出してくれたおかげで首の皮がつながったよ」

 

「むろん、吾輩も『豪腕の錬金術師』として署名にサインさせてもらいましたぞ。それにしても特別予算を組んだプロジェクトに国家錬金術師としてサインするなんて吾輩も初めての経験である」

 

 俺たち国家錬金術師は個人で使える膨大な予算が国から与えられるが、それとは別に人数を集めて大きなプロジェクトを進める場合、国に申請し認められれば、別の枠で特別な予算が下りるケースがある。その分査定も個人のより厳しくなるし、後ろ盾になってくれる偉いさんや、複数の国家錬金術師の協力が必要不可欠だ。

 

 しかも軍が求める研究内容じゃないと当然審査は通らないから、それを主導でしてる奴なんて滅多にいない、ほとんどが軍の上層部お抱えの国家錬金術師のための制度だ。

 

「実は個人で研究してる時からマスタング大佐には色々お世話になっててね、最初は人々の暮らしに寄り添う介助犬や盲導犬の役割を担う合成獣の研究をしてたんだが、中々予算が足りなくてね。ある時緊急時に市民の避難誘導をしたり、平時はパトロールや迷子の手助けをする合成獣を研究してみないかと誘われてね」

 

 あの大佐がそんな人のためになるようなことを進んでするなんて。

 

「エドワード・エルリック。何か失礼なことを考えておらんか?」

 

「い、いやぁ、そんなこと全然ないっすよ!でも軍の通信網を新しく構築するための合成獣だって」

 

「もちろん、そのままの名目では予算は下りないからね、建前は通信のためや、暴徒の鎮圧を掲げているが、パトロールはもちろん、避難誘導から迷子の子を見つけたら近くの憲兵に伝えるくらい出来るようにしてるんだよ。暴徒の鎮圧だって怪我人を出さないように特製の催涙弾を使ってるし、カラスから錬成する時に催涙弾に耐性が付くようにしてるんだよ」

 

「カラス!?こいつどう見ても鷹でしょ」

 

 アームストロング少佐の肩に器用に止まってる合成獣は、大人しそうにしているが見た目はどこからどう見ても厳つい猛禽類だ。

 

「ははっ、初めて見た人はみんな勘違いするんだ。人語を理解して言葉も話せるようにするには、カラスが最適なんだよ。それに戦闘用ってわけじゃないけどこの見た目だろ、前に一度ひったくり犯を捕まえたことがあるんだが、催涙弾を落とされて合成獣に睨まれた男は、憲兵に助けを求めてたよ」

 

 抑止力として機能してるってわけか、俺は生体錬成が専門じゃないからわからないが、合成獣学も奥が深いんだな。

 

「人語を話せる合成獣なんて聞いたことなかったけど、タッカーさんにしか作れないんですか?」

 

「そうだね、今のところ他の国家錬金術師が成功したって事例は聞かないね。尤も合成獣を専門で研究してる国家錬金術師がほとんどいないってのもあるだろうけど」

 

 照れくさそうに頭をかくタッカーさんの話を少佐が補足する。元々合成獣学は生体錬成の中でも人気がない分野だったらしい。予算がかかるし医療錬成と比べて需要が少ない、おまけに一般の人たちからすると、異形の怪物を作り出す怪しげな分野だと差別的な意識も数年前は酷かったらしく、専門で研究する人はほとんどいなかったそうだ。

 

「しかしタッカー氏が発表した人とコミュニケーションを取り安全性を前面に打ち出した合成獣たちのおかげで、今ではそのような差別的な感情を持つ国民も減って来た。まさにアメストリスの新しい合成獣の可能性を切り開いた、合成獣学の権威なのだよ!」

 

 いつの間にかタッカーさん以上に熱く語る少佐に、俺とタッカーさんが若干引いていると、汽車の汽笛が鳴り響いて駅に一時停車する。

 

「ここだけの話、軍の中には合成獣に戦闘能力を期待し戦争のための道具としてしか見ないものも多い、しかし、タッカー氏は一貫して平和のために力を発揮できる合成獣の研究を続けているのだよ」

 

 俺はタッカーさんをじっと見つめる、本人はさっきから照れくさそうに窓の外ばかり眺めてこっちに目線を合わせようとしないが、この人の凄さをようやく理解できたような気がする。

 

 俺だって錬金術に対する知識や技量、それを手に入れるために今まで積み重ねてきた努力は誰にも負ける気はしないが、そういったものじゃない、手にした力でどんな未来を見据えるのかが今まで出会った錬金術師たちとは一線違って見えた。

 

「これほどまでのお方はセントラルでもそうそう見ることはできませんぞ、かつて在籍していたドクター・マルコーも、それはやり手の生体錬成の専門家だったが……ん?あの顔は、間違いない。ドクター、ドクター・マルコーではありませんか!?」

 

 窓から顔出し、少佐が声を張ると、年配の男はこちらを振り向かずに走り出してしまった。

 

「知り合いか?」

 

「セントラルにいたやり手の錬金術師だ。錬金術を医療に応用する研究の第一人者で、イシュヴァールの内乱の後、行方不明になっていたが」

 

「エド君、そんな人なら生体錬成について私にはない着眼点を持ってるはずだし、きっと私の研究よりも君たちが求めてる答えに近い筈だ」

 

 確かにタッカーさんの研究は生体錬成の分野だが専門は二つの生き物を混ぜ合わせる合成獣学。最初から人間の医療目的で研究をしていた人とは辿って来た研究の過程が違うはずだ!

 

「少佐!タッカーさん!すぐにあの人を追いかけよう」

 

 俺は新しく出会った可能性を求めて汽車から飛び出した。




これまでの登場キャラのタッカーさんへの印象

エド 生体錬成の頼れる先駆者。国家錬金術師としてプロジェクトの署名にサインをした。
アル 手を貸してくれる大人。ここ数日でかなり好感度を稼いでる様子
マスタング大佐 優秀な研究者。自分が大総統になった暁には力を貸してほしいと思ってる。
ホークアイ中尉 錬金術師のお手本。動物を実験体にしか思わない錬金術師は爪の垢を煎じて飲めばいいと思ってる。
アームストロング少佐 確かな愛を持った錬金術師。何かあれば全力で力を貸す所存。
ヒューズ中佐 愛妻家仲間。同じくらいの娘がいて奥さんを大切にしてるのもポイント高し。
ブラッドレイ大総統 それなりに利用価値がある男。お父様の邪魔にはなりえないし、使えそうだから利用してる。ある意味ホムンクルスサイドから一番評価されている。
奥さん 頼りになる夫。ほぼオリキャラになるので名前を出さずに作者に書かれている。今後ともお名前は出ない予定。
ニーナ 大好きなお父さん。しばらく会えなくなるが頑張ってるお父さんを見てるからきちんと我慢できるとってもいい子。
アレキサンダー ワンワン!
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