赤豹の幼なじみ   作:暴走機関車

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三人称視点って意外と難しい


2話目

 

 

 

『なんでお前はサッカーを続けられるんだ?』

 

いつかの日に千切が泥まみれの遠山に聞いた問い。

そんな千切の真剣な顔で紡がれた言葉に遠山は顎に手を当て考えていた。

 

『まあ、1番はお前に誘われたから』

『……それだけ?』

『きっかけはそれだけど今はメチャ楽しいよ。特にお前とやるのは。だからやってる』

 

なにか夢もなく、ただただ楽しいからという理由でやり続けるサッカー。

でもと千切は思う。

 

『……お前、才能は無いじゃん。パスもドリブルも、周りから下手くそって言われててよく続けられるよ』

『そらねー。そんなん1番俺が知ってるし。でも、別に良くね?シュートさえ入れば』

 

そんな飄々とした態度を続ける遠山。

 

『サッカーなんて点を多く取った方が勝ちのスポーツなんだし相手が10点取ったならこっちが11点取ればいいだけ。シュートさえ入れば勝ちだよ勝ち』

『……でも、そのシュートを入れるためのボールを運ぶためにドリブルとかパスがあるんだけど』

『それはほら、ヒョーマたちが持ってきてくれれば。それかめちゃめちゃ離れた場所からシュート入れにいけばいいじゃん?』

『……お前のためにプレイしろってか?』

『イエス。その代わりに俺が完璧にシュート決めてやるってわけよ』

 

そう言って笑う遠山に呆れた視線を送る千切。

しかし、呆れはするが遠山の言う動きははっきり言えば最適なものであった。

 

パスもドリブルもヘッタクソな遠山ではあるが、しかし、反面シュートに関してはプロも顔負けレベルのものだった。

 

千切に初めてサッカーを誘われた幼少の頃から毎日数百本ものシュート練習を毎日し続けている彼のシュートはあらゆる状況、体勢からでも打てばほぼ100発100中のもの。

それを実現させるためのコツは、本人曰く【楽しむ】との事らしい。

 

『全く……、そういうところホント自己中(エゴイスト)だよな…』

 

そう言って千切は笑う自身の親友を呆れたように眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか!」

「……そうだな」

 

──日本フットボール連合

 

そんな表札が掲げられたビルの前にやってきた千切と遠山(2人)

 

「よーし、んじゃ行こかー」

「……ああ」

 

そうして2人は歩を進めた。

中は綺麗に整備されていて、高級感を感じさせるもの。

案内板に従い敷かれたワインレッドのカーペットの上を歩いていく。

 

「……それにしたって遠山(オマエ)、ジャージで来るのはアレなんじゃないの…」

「だって動きやすいし、一々服選ぶのめんどくね?ヒョーマと違って俺はシャレオツ男子じゃないの」

 

そんな何気ない会話をしながら2人はついに目的の部屋の前まで来ていた。

息を吐き出し少しの緊張を和らげる千切とは打って変わって遠山は意気揚々と扉を開け放った。

 

「たのもー!」

 

そんな声を上げながら入ると中には数百人の人で溢れていた。

当然そんな中でのこの大声は目立つもので注目を浴びる2人。

 

「……お馬鹿」

「あて」

 

後頭部に張り手が飛ぶ遠山。

千切もこんな状況には既に慣れている様子だった。

 

「めちゃ人いるじゃん」

「……そうだな。よく知る有名人もいるみたいだ。青森のメッシ西岡、洗膿のエース大川、高校生NO.1身長の石狩……他にも皿斑、志熊。錚々たるメンツだな」

「ふーん。……つかそいつらって全員FW(フォワード)じゃなかったっけ?」

「え?……あ」

 

遠山の言葉でなにかに気づいた千切。

辺りに組まなく視線をさ迷わせるとその気づきが確信へと変わった。

 

「……FWの選手だけ?」

「え?まじ?なんそれ?大乱闘する感じ?最強のFW決めよう的な?」

 

そんなことを首を傾げながら遠山が言った次の瞬間、会場のライトが全て暗転した。

その事にどよめき出す会場の人たち。

 

そして、ステージ上。そこにスポットライトが当てられるとそこには1人の人物が立っていた。

 

『おめでとう、才能の原石共よ。お前たちは俺の独断と偏見で選ばれた優秀な18歳以下のストライカー300名です。そして俺は絵心甚八。日本をW杯優勝させるために雇われた人間だ』

 

そう言って現れたのは眼鏡をかけた痩躯の長身の男。

 

「なんか目がイッちゃってない?薬やってんのかな?」

「知るか」

単刀直入(シンプル)に言おう。日本サッカーが世界一になるために必要なことはひとつ──革命的なストライカーの誕生です。俺はここにいる300人の中から世界一のストライカーを創る実験をする』

 

そこまで言うと絵心の後ろにあるスクリーンが光出した。

そこに映るのは五角形の建物が五角形に並ぶ様。空いた中央のスペースにあるのはサッカーのグラウンドだった。

 

『これがそのための施設、【青い監獄(ブルーロック)】。今日からお前たちにはここで共同生活を送ってもらい、おれの考えた特殊なトップトレーニングをこなしてもらう。家には帰れないし、今までのサッカー生活とも決別してもらう。でも断言する。このブルーロックでのサバイバルに勝ち抜き、299名を蹴散らして、最後に残る一人の人間は世界一のストライカーになれる。説明は以上、よろしく』

 

そこまで一気に言葉を紡いだ絵心。

それに首を傾げたのは遠山だ。

 

「……つまりどゆこと?」

「お前がさっき言ってたFW大乱闘は当たらずとも遠からずって事だ」

「なるほどよく分かんないけど理解した」

 

それは理解したと言えるのかと思う千切だったが横の遠山の顔がワクワクに満ちていたことでその口を閉じた。

 

そんな中絵心に向かって声を上げた一人の青年。

名は吉良涼介。U-18日本代表候補とも呼び声の高いサッカープレイヤー。彼曰く、自分たちには自分たちのチームがある。全国大会控えてる奴もいる。だからそんな説明じゃ納得できないとの事だった。

 

それも当然だろう。

いきなり呼び出され。いきなり家に帰れなくなり、いきなり施設での共同生活をしろと言われ、299人の人間を蹴落とせと言われて納得出来るやつはまず居ないだろう。

 

しかし、そんなことは知らんとばかりに絵心は口を開いた。

 

帰れ(ファック・オフ)。帰りたいやつは帰っていいよ。チームが大切?お前たちは自分たちが世界一のストライカーになるより、こんなサッカー後進国のハイスクールで1番になることが大事か?あ?お前らみたいなやつが日本の未来背負ってるとか絶望だわ』

「……おいおいお口悪悪だぜあのとっちゃん坊や」

「はいはい、お前はお口にチャックしてような」

 

絵心の言葉に変にリアクションする遠山の口を手で塞ぐ千切。

しかし、会場にいる面々はそんなことが気にならないほどに絵心の言葉に耳を傾けていた。

 

『いいか?日本サッカーの組織力は世界一だ。他人を思いやる国民性の賜物と言える。でも、それ以外は間違いなく二流だ。お前らに聞く。サッカーとは何だ?11人で力を合わせて戦うスポーツ?"絆を大事に"、"仲間のために"……違うんだよ。だからこの国のサッカーは弱小なんだ。いいか教えてやる、サッカーってのはな相手より多く点を取るスポーツだ。点を取ったヤツが一番偉いんだよ。仲良し絆ごっこしたいなら帰れ(ファック・オフ)

 

そんな言葉に口を押えられてる遠山は深く何度もうなづいた

点を取ったヤツが偉い。そうだよな。つまり俺は偉かったんだ。そんなことを思っていた。

 

そんな中でもあの吉良涼介は不快感を顕にしていた。

日本サッカーに憧れた、あんなSUPERスターをめざしていた。撤回しろとのご意見を絵心にぶつけた。

それに対して絵心。W杯で優勝してないからカスでしょと一言。

流石にこの言葉には遠山も引いていた。

 

「……人の心とかないんか?」

 

そこから始まる絵心の例え話。

ノエル・ノア。世界一のストライカーの呼び声と高い彼の言葉にこんなのがあった。

 

──味方にアシストして1-0で勝つより俺がハットトリックを決めて3-4で負ける方が気持ちいい

 

他のストライカーたちの言葉も

 

──チームのことなんてどうでもいい、俺が目立てばいい

 

──世界一のFW、世界一のMF、世界一のDF、世界一のGK。どれを聞かれても自分だと答える

 

これらの言葉には共通するものがある。

 

それはエゴイスト(自己中)だということだった。

絵心は言った。

 

『世界一のエゴイストでなければ、世界一のストライカーにはなれない』

 

そんな言葉を聞いて遠山は体が震える感覚を覚えた。これは臆してるわけじゃない。歓喜だ。

 

遠山のサッカーのプレイスタイルはまさに自分がシュートを打つことしか考えていないものだった。それ故にチームでも除け者扱いされ、だからと言ってパスやドリブルをしてもすぐに相手に取られる。

 

そんな戦いについて来てくれたのはいつだって千切だけだった。

だからこそ自分を理解してくれるヤツらがいる。そう思うと嬉しさのあまり千切に抱きついていた。

 

「ちょ、おま何して……」

「楽しくなりそうだぞ!ヒョーマ!」

「……っ」

『……想像しろ。舞台はW杯決勝。8万人の大観衆の中、お前はピッチにいる。スコアは0-0の後半A・T(アディショナルタイム)。ラストプレー、味方からのパスに抜け出したお前はGKと一対一。右6mには味方が1人。パスを出せば確実に1点が入る場面。全国民の期待。優勝のかかったそんな局面で迷わず撃ち抜ける、そんなイカれたエゴイストだけ、先に進め』

 

そうして絵心の隣に現れた外へと通じる扉。開かれたそれはこの会場を強く照らしていた。

 

「よっしゃ!行くぞヒョーマ!」

「え?…あ」

 

間髪入れずに千切の腕を掴み走り出す遠山。

 

「もう行っていいよな!?エゴちゃん!?」

「……フッ、ああ行け」

「俺たちが一番乗りだぜぇぇぇぇぇえッ!!!!」

「……っ、全く」

 

呆れたような声を出す千切。こうして振り回されるのは何度目か。そんなことを思いながら彼らはその扉の先へと突っ走りだした。




モチベをください
それで多分私はまだ戦える
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