不死人は“死神”と出会うようです。   作:クラ―グ様のお胸様、エリちの太もも

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Encounter

 

 昔、大きな戦争があった。

 

 万物の願いを叶えるとされる“聖杯”を巡って、七人のマスターと契約した七騎のサーヴァントが争って他の六組が排除され、最後に残った一組のみが“聖杯”を手にし、願いを叶える権利が与えられる戦争、そう、“聖杯戦争”だ。

 

 私が生まれる前には、世界各地でこの“聖杯戦争”が同時多発的に発生して、その勝者が更なる“聖杯戦争”に巻き込まれていって……、と連鎖的に“聖杯戦争”が続いた為に、世界が大きな変動を迎えてしまったらしい。

 

 結果として、主だった都市以外は人の住めない荒野と化し、そこを徘徊する殺戮ドローンの所為で、他の都市への移動さえままならない有様になってしまったという。

 

 最終的には、ある一人の魔術師とサーヴァントがこの戦争を終わらせた。

 

 “聖杯”によって町は都市単位で再編され、新たに生まれ変わり、再編が行われた都市群は纏めてモザイク市(・・・・・)と呼ばれるものになった。私が住むのもその内の一つだ。

 

 地球の温暖化によって海面は上昇し、臨海都市“秋葉原”の神田川と呼ばれていた場所も、今では海水が流れるだけの運河になっている。

 

 “新人類”と呼ばれるようになった人類は誰もが心臓に“聖杯”を持ち、自身と相性の良いサーヴァントを召喚し、病気になる事も、自然死する事も無くなった。人類は文字通り不老不死(・・・・)を獲得した、という訳だ。

 

 そして、世界は平和になった。

 

 

 

 

 

 ―――だけど、私は違った。

 

 生まれながらにして“聖杯”を持たず、それ故にサーヴァントも召喚出来ない。今の人類の当たり前が、私には当たり前ではない。これからも普通に生きて、普通に年齢を重ねて、普通に死んでいくのだろう。

 

 そしてもう一つ。

 

 私は生まれつき悪霊に憑かれる体質らしく、英霊でも反英霊でもない“邪霊”を使役する能力を有している。身体から滲み出てくる黒い泥水の様なそれらは、怨念を重ねた死者の魂だ。決して“座”には受け入れられない、(よこしま)な霊達の拠り所。

 

 それらや教わった魔術を駆使して、私はモザイク市に害を為すサーヴァントを殺す仕事をしている。

 今や多くのサーヴァント達からは、“死神”と呼ばれて恐れられるようになっていた。

 

 それが私、宇津見エリセだ。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 ―――意識が、ゆっくりと、現実へと引き戻されていく。

 

 「おい、聞こえてんのか大馬鹿エリち!起きろ、おーきーろー!」

 

 心地良い眠りから目覚めるように、徐々に意識が覚醒していくのを感じていたところへ、いきなり耳元で大きな声がした。思わずうげっと顔を逸らしてしまう。

 

 「あ、おい!?起きたか!?起きたな!?ヨッシャ、流石だモミィーッ!」

 

 ピンクの髪を腰まで伸ばした少女がハイテンションで、近くの異形の存在とハイタッチしているのが見えた。

 

 彼女はカリン。“聖杯戦争”後に生まれた“新人類”の一人だ。まあ、一応私の友人、ということになるのだろうか。

 

 そんな彼女とハイタッチしてる異形の存在は、彼女のサーヴァント、狂戦士(バーサーカー)鬼女紅葉(きじょこうよう)

 

 『紅葉伝説』に登場する鬼女である彼女は、白無垢の着物を羽織り、長い黒髪と二本の大角を持つ恐竜のような外見をしている。

 

 どうやら彼女は、クンドリーのロンギヌスによって大穴を開けられていた私の脇腹に対して治癒を試みていてくれたようだった。紅葉さんはその外見から武闘派サーヴァントと思われがちだが、実は治癒魔術もお手の物で、私は今まで何度もお世話になっている。

 

 「ああ、また紅葉さんに助けられちゃった……。本当にありがとう」

 

 私の言葉に安堵したのか、ぐるる……と喉を鳴らす紅葉さん。そんな彼女を見て私も笑みを返すと、

 

 「お~い、感謝ならあたしにもしろよぉ~。だぁれがアンタの先生から事情聴いてここに駆けつけてきてやったと思ってんだぁ、エリ助ぇ~?」

 

 紅葉さんの隣で頬を膨らませながら、カリンが私に文句を言ってくる。

 

 「ハイハイ、もちろんカリンにも感謝してるよ。お礼と言ってはなんだけど、今度たこ焼きでも奢るから」

 

 こういう時は変にごねると面倒臭くなるため、素直にカリンにもお礼を言う。

 

 「お、たこ焼きっ!?かぁ~、やっぱ分かってんなあたしの求めてるモノが!流れ石と書いて流石だな、エリち!」

 

 「ハイハイ……」

 

 でもお願いだからもう少しテンションは下げて欲しい。頭が痛くなってきたし……。

 

 「でさ、いきなり話は変わんだけどさ……」

 

 お、ありがとう神様。うるさいのが少し収まった。

 

 先程の様子から一転、何故か警戒状態に入ったカリンは紅葉さんと一緒に、私とは別の方向を向いて指差ししながら問うてきた。

 

 「あれ、何?知り合い?」

 

 「へ?」

 

 彼女が指差した方向へ目を向けると、そこには先程消滅してしまったはずの上級騎士がいた。ちぎれていた左腕は何故か元通りになっていて、傍らには剣が突き刺さった篝火があった。

 

 「え!?あ、あの人……」

 

 思わず勢いよく身体を起こし、上級騎士へ近付こうとするのを紅葉さんに優しく押し留められながら、私は二人へと説明する。

 

 「二人とも、大丈夫。多分あの人は敵じゃないよ。ついさっきも、私をサーヴァントから助けてくれようとしたんだから」

 

 私の説明に二人はまだ納得出来ないというように上級騎士の方を見ている。

 

 「多分て……。まあ変な動きするとこ以外は……、ってぇそれだそれ!その動き止めろ、コラァ!」

 

 カリンがまた激昂している。自身のマスターに従って、紅葉さんも剣呑な様子を示し始めた。

 

 一体何をしているのだろうと上級騎士の方を見てみると、見るからにガタがきていて壊れかけた円い木の盾を、構えたかと思いきやすぐに戻してという動作を何度も何度も繰り返していた。

 もしあの人がサーヴァントだとしたら、敏捷どれくらいなんだろうというくらいには素早い動きだった。

 

 「挑発してんのか、オイ!出てきた瞬間にはちゃあんと一礼してくれたと思ったら、モミが姿見せるなりそんなふざけた動きしてきやがってぇ!売られた喧嘩は百倍で買う女だぞあたしは!」

 

 「待て待て、紅葉さんもお願いだから落ち着いて!あの、私の方は大丈夫だから……」

 

 今にも襲い掛かりそうな二人をどうどうと宥めつつ、上級騎士へと声を掛ける。

 

 目が合った、と思う。

 

 すると、何故だか上級騎士は崩れ落ちるようにこちらへ土下座をしていた。

 

 「お?なんだよ、ようやく自分の非を認めたかぁ?言ったろぉ?あたしはコイツの友達で、モミがすんごい術で怪我治してんだよって」

 

 ふふん、と勝ち誇ったように胸を張るカリン。彼女に褒められたのが嬉しいのか、心なしか紅葉さんも自慢気である。ちょっと可愛らしい。

 

 少女二人に異形のサーヴァント、そして何よりこの場に不釣り合いな上級騎士。あまりにカオスな状況に、逃げるように手の甲を見てみる。

 

 分かっていた事だけど、“令呪”は現れてはいないようだった。

 

 

 

 

 

 *

 

 「はい、ここが私の家ね。お客さんをもてなす為の用意とか特に何もないけど、文句は受け付けてないから」

 

 殆ど人の寄り付かない“秋葉原”の過疎地区。“聖杯”によって再編された雑居ビルは既に廃ビルとなっていて、私の住む一室はそこにある。

 

 どうやら昔は“メイド喫茶”なる怪しげな飲食店を経営していたそうだ。そのお陰でと言ってはなんだけど、家具等は今でも比較的良い状態で残っている。

 

 住みやすい訳ではないが、寝室も浴室もしっかりと完備されているし、海が臨めるベランダもある。私一人が生きていくのには十分だった。

 

 仕事柄、軽率に他人を招くなんて事はリスクがあるから滅多にしないけど、この謎めいた上級騎士という存在を一人にしておく訳にはいかないし、停船中の船から漏れ出した廃油が溶け込んだ海の中で沈んでいたから、一刻も早くシャワーを浴びてお風呂に入ってしまいたいという理由もあって、私は上級騎士を自室へと連れてきていた。

 

 何よりもまずは、この上級騎士のことをなんでもいいから知る事が先決だ。さっきはクンドリーとの戦闘の真っ最中でそれどころじゃなかったし。

 

 フレンチ風の内装が施された浴室に着いた私は、熱いシャワーを出してバスタブに貯めていく。

 しかし、それを見た上級騎士は何故だか狭い室内で出口へ向かってローリングしようとして失敗し、勢いよく後頭部を打ちつけていた。

 

 「……あの。何やってんの?」

 

 思わず溜め息とともに上級騎士を睨んでしまう。それを全く意に介さず、上級騎士は私に対して早くこんな所から出ようというように腕を掴んでくる。

 そのまま上級騎士に引きずられるように、ビクトリア朝の内装が施された広い部屋へと移動する。

 

 (一体何を慌てているんだか……。別に()にかかった訳でもないだろうに)

 

 この上級騎士は何故か、こちらの世界のありとあらゆるもの一つ一つに警戒の色が強かった。

 紅葉さんのようなサーヴァントにもそうだし、海にも、そしてこのシャワーに対しても。

 

 もし上級騎士が誰かに召喚されたサーヴァントならば、“聖杯”から与えられた最低限の知識と、意思疎通に必要な言語はしっかりとあるはずだ。

 

 けれど様子を見る限り、どうやら知識の方は持ち合わせてはいないようだった。

 

 とすると、

 

 「ねえ。不躾だけど、貴方は誰かに召喚された使い魔なんじゃないの?それと、さっきはどうして私を助けてくれたの?」

 

 「……」

 

 返答はナシ。少し首を傾げてくれたくらいで、こちらの言葉も通じているんだかいないんだか全く分からない。

 

 (ああ、もう。どうするかな……)

 

 「あ、の、ね。貴方、私の、言葉、分かる?私の、名前は、宇津見エリセ」

 

 「……」

 

 片言でゆっくりと上級騎士に話しかける。すると、上級騎士はコクコクと首を縦に振った。

 

 良かった。取り敢えず意思疎通は出来るようだ。

 

 「私、貴方、知りたい。オーケー?」

 

 私の確認に再度首を縦に振った上級騎士は、

 

 

 

 

 

 ―――いきなり腰巻き一枚となって、何故か兜だけはそのまま残して裸になった。

 

 

 

 

 

 「いやいやいやいや、何やってるんだ貴方は!?」

 

 思わず目を逸らしてしまう。

 

 いや、だってそれは仕方がないだろう。今の今まで全身鎧姿だった存在がいきなり腰巻き一枚になったら誰だってこうなるはずだ。

 

 目をそらす前にチラッと見えてしまった限りでは、上級騎士には女性にあるはずのものがないため、取り敢えず男性であることは分かった。

 

 (まさか……。私が彼を理解したいって言ったから!?)

 

 だから自分の鎧を脱いでほぼ全裸になったというのか。どういうコミニュケーションの仕方だ。蛮族か。

 

 いつの間にか彼の両手には、厚手の革に鉄の鋲を埋め込んだグローブのようなものが装備されていて、上級騎士はかかって来いと言わんばかりにファイティングポーズをとっていて、いまにも強力なパンチを打ってきそうだった。

 

 「って違う違う!理解したいっていうのはそういう意味じゃない!」

 

 慌てて両腕を×の形に組んで彼の方を向いて声をかける。その為、先程は良く見えていなかった彼の素肌が目に入った。顔が見えないよう兜を少しずらしてから舌も出して見せてきたため、それも。

 

 「え……?」

 

 そこには、舌も、喉も、身体も、腕も、脚もズタズタに切り刻まれ、抉られた後のような痛ましい傷の数々があった。

 

 (歴戦の戦士が戦いで負った傷というよりも、罪人が惨い拷問を受けた後みたいだ……)

 

 まるで、生まれるべきではなかった(・・・・・・・・・・・・)者として扱われたかのように。

 

 サーヴァントだけじゃなく他にも色々見てきたつもりだったけど、それとは別ベクトルのおぞましい何かを見てしまった感覚に襲われる。

 

 人間(ヒト)の悪意。

 

 彼の身体に刻まれているのは、そういう類の傷痕だった。

 

 「うっ……」

 

 その痛ましさに思わず顔をしかめると、彼は何処からかごそごそと何かを取り出し、こちらへと投げて寄越した。

 

 (木で彫った人面?)

 

 どことなく申し訳なさそうな古い木彫りの人面だった。

 

 すると、

 

 「申し訳ない(I'm sorry)

 

 と、その人面は野太い声で喋ったのだった。

 

 (ああ、頭の中がパンクしそう……)

 

 頭を抱えて(うずくま)る事しか出来なかった私を、一体誰が責められるというのだろう。

 

 

 

 

 

 





 不死人の皆さんは恐竜状態のモミさん見たら、ホストから引きはがそうと挑発でもなんでもしますよね?

 Fate/strange Fakeのアニメは今年の夏放送とのことですが、私のお気に入りサーヴァントであるヒッポリュテさんは出ますよね?出ないなんてそんなまさか……。
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