ポケモンLEGENDS スカーレット・バイオレット 作:クロウド、
「相変わらずハッコウシティは眩しいなぁ……真っ昼間やのに電光掲示板が眩しいわ」
「ポピーはキラキラした感じで好きですの!」
「こらこら、二人共。今日は遊びに来たのではないのですよ」
ヒスイがハッコウジムに居候することが決まった翌日、ハッコウシティを歩く三つの人影があった。
緑色の長髪を後ろに纏めた端正な顔立ちのスレンダーな女性、チリ。
チリの隣をトコトコと歩く、大きな鍵型のストラップを首から下げた少女、ポピー。
そして、二人の後ろを歩く長身の壮年の金髪の男性、ハッサク。
―――全員が黒い手袋を嵌めており、それはこの地方においてポケモンリーグの一角を担う四天王の称号を預かる証だ。
何故、パルデアで五本の指に入る実力者が三人もハッコウシティにいるのか、その理由はこれから彼女らが向かう先にある場所。ハッコウジムにある。というか、言わずもがなヒスイの件だ。
「それにしても記憶喪失の謎のポケモンを使うトレーナー、かぁ……。ナンジャモちゃん、厄介な拾いもんをしたなぁ」
「チリ、不謹慎なのですよ」
「わかっとりますって、どんな事情があるにしてもリーグの人間を助けてもらったんや、こっちも礼を尽くさなあかんってことですやろ? だから、うちら四天王が三人も出てきたんやし」
チリ達がヒスイを尋ねる理由は今彼女が話した通りの理由が一つ、もう一つロースト砂漠に現れた【鉄の轍】に付いての情報を話してもらうためでもあるが。
「ナンジャモおねーさんから送ってもらった白いゾロアさんの写真、すっごく可愛かったですの!」
「せやなぁ、もふもふで可愛かったけど……見たところリージョンフォームっぽいけど、ゾロアのリージョンフォームなんて聞いたことありますハッサクさん?」
「いえ、小生も聞いたことないのですよ」
リージョンフォームとはその土地の地理や、天候などの環境の影響から原種と呼ばれるポケモンとは違うタイプや特性を持ったポケモン達のことである。
パルデアならウパーやケンタロスがいい例だろう。
「どっかの地方で調査員をしてたってことくらいしか覚えとらんって話やったけど、何処のリージョンフォームか分かればどこから来たのかわかる手がかりにはなりそうやなぁ」
「そうですな」
「ポピー、見たことないポケモンさん達に会うの楽しみですの!」
各々の考えを述べながらハッコウジムへの道を進んでいく四天王三人。
―――因みにここにはいないもう一人の四天王は、今ここにいる四天王三人分+自分の分の仕事を押し付けられハイライトを消してデスクに向かっていた。
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「ナンジャモちゃんと約束してるんやけど、今おる?」
「はい、四天王の皆さんですね。話は伺っています、ジムリーダーは二階のバトルフィールドでヒスイさんのポケモンを確認してます」
ハッコウジムに到着した三人はジムの受付でナンジャモとヒスイに会えるかの確認を取る。当然、事前にリーグの連絡網からアポイントメントは取っているのでいないということはないはずだが、チリはポケモンの確認という言葉に引っかかった。
「その、ヒスイくん? が持ってたボールって六つだけやなかったんか? それくらいなら昨日のうちに終わってると思ったんやけど」
「それが、ヒスイさんのスマホの預かりシステムを開いたらすごい数のポケモンが入ってまして」
預かりシステムとは各地方のトレーナーがポケモンを好きなタイミングで預けたり、引き出したりできるシステムだ。とあるポケモン研究者によってポケモンをデータ化して保存できる画期的なシステムである。
最近ではスマホのIDと直結しており、それぞれ個別のボックスを持っていて、記憶を失ったヒスイでも普通に使える。当然、ヒスイが記憶を失う前に捕まえたポケモンも。
「ポケモンの調査をしていたという話でしたし、多くのポケモンを捕獲していてもおかしくないでしょう」
「せやね、チリちゃんもちょっと楽しみになったわ。んじゃ、二階いけばええんね。おおきに」
受付に礼をいい、チリを筆頭に三人は階段を登って二階のトレーニング用のバトルフィールドに出る。
そして、三人はとんでもない光景を目の当たりにすることになる。
「うっひょー、見たことのないポケモンだらけじゃん! これは間違いなく、視聴率シビルドン上りだよヒスイ氏ー!」
「ナンジャモさんは元気だねぇ、ゾロア」
「アウッ……。」
階段を上がりバトルフィールドに目を向けると、そこにはテンションが爆上がり状態で袖をぶん回しているナンジャモとその姿をゾロアの頭を撫でながら静観するヒスイ。
そして、その奥の存在達に三人は息を呑む。
「ちょいちょいちょい、何やねんこのポケモンたちは……!」
「うわー! ポケモンさんが沢山ですの!」
「これは……小生でも初見のポケモンばかりですな」
驚愕の表情を浮かべ冷や汗を流すチリ、あまりにも壮観な光景に喜色の声を上げるポピー、チリと同じように驚きながら年の功なのか落ち着いた様子のハッサク。
彼らの視線の先には、見覚えがあれども、彼らの記憶の中の姿と大きく違う点を持つ様々なポケモン達だった。
ロースト砂漠でナンジャモを助けた紅葉色と枯葉色の翼を持つ鳥ポケモン、ジュナイパー。
首元からユラユラと怪しい紫色の炎を揺らしている、何処か落ち着いた雰囲気のバクフーン。
本来は黄色いはずの頭部の巻き貝が黒ずんだ、凶暴そうなダイケンキ。
翼が赤と紺色ではなく、白と黒のカラーリングになった頭部に炎のように揺らめく紫の羽根のついた大柄なウォーグル。
ヒスイが抱いたゾロアと同じく白とグレーのカラーリングの毛が逆立った、明らかに自分達の知るゾロアークよりも禍々しいゾロアーク。
茶色がかったオレンジ色の毛並みで長い髪で目が隠れ頭部に小さな角の生えたガーディと、そのそばに寄り添う鬣が黒い立派な角をはやしたウインディ。
ツルツルとした体ではなく木目のタレ目模様のビリリダマに、同じように木目のこちらは鋭いツリ目模様のマルマイン。
トゲドケみがまし、上半分が真っ黒に染まったハリーセンに、体が膨れトゲが異様に鋭くなったハリーセンの進化系らしきポケモン。
体が白く、爪や顔などの毛が白っぽい紫のニューラと、そのニューラの手足が大きく伸びた進化系らしきポケモン。
ドレスを着ているような姿ではなく、スラッとした手足のバレリーナのような姿のドレディア。
あおすじでもあかすじでもなく、白い筋の入った穏やかな雰囲気のバスラオとその隣に浮く、二体のあかすじとあおすじのバスラオを巨大化したような二体のさかなポケモン。
金属質の殻からひょっこりと頭を出すタレ目のヌメイルと、その隣りにいる巨大な殻を背負ったヌメルゴン。
体が土に覆われた氷のようになった彼女達が知っているクレベースより少し小柄で鋭い顎の付いたクレベース。
ゴツゴツとした体に巨大な岩の斧を携えた虫ポケモン。
四足歩行で歩く、全身に灰のような泥を被ったリングマによく似たポケモン。
顎や尻尾に純白の毛を蓄えたオドシシのようなポケモン。
そのポケモン達の輪の中でゾロアを片手に抱えたヒスイが一体一体ポケモン達の頭を撫でていく。
その姿をスマホロトムで撮影していたナンジャモがカメラの端で固まっている三人の姿を見つけた。
「あっ、チリ氏達来たんだ。おはコンハロチャオ〜!」
「おう、おはコンハロチャオ〜、やないやろ」
気さくに話しかけてきたナンジャモにノリツッコミしつつ、周りのポケモンを見回しながら疲れたように話しかける。
「ホンマに見たことないポケモンばっかやないか……。」
「だよねぇ。……これ皆、ヒスイ氏のポケモン達だよ」
「なるほどなぁ」
ナンジャモの返答にチリは四天王である自分が派遣された理由がなんとなくわかった気がした。そして、未だにゾロアの頭を撫でて静観しているヒスイを見つける。
「このポケモンたちジブンのって、マジか?」
「―――確かにこの子達は僕が捕獲したポケモンですけど」
「何処でゲットしたのか覚えとらんの?」
「えぇ、なんでか全く……ただ、僕のポケモンってことは覚えてるんですけど。なぁ?」
「ジュウ!」
チリの質問に答えながら近くのジュナイパーの頭を撫でるヒスイ。
因みにヒスイの今の服装はジムの職員用のスーツに、元々身につけていたマフラーと赤い帽子をつけた服装だ。
「はぁ……。トップがうちらを派遣したのはこのことを予感したのかもしれんな……。」
「そうですな、これだけ見珍しいポケモン達がいると大騒ぎになりますですよ。動画が配信される前で良かったです」
「あ〜! 写真のゾロアさんです!」
「アゥゥ……。」
来てそうそう見たことのない沢山のポケモン達の姿に驚き疲れてげんなりするチリとハッサク。そして、ヒスイの手の中で抱かれるゾロアに興味津々のポピー。
「あの、ナンジャモさん。この方たちは?」
「なんや、ナンジャモちゃん。チリちゃんたちがが来ること話してへんの?」
「あ〜……次の動画の構想考えるので忘れてたかも……。」
「あんなぁ……しゃあない! 自己紹介や」
連絡を怠ったナンジャモに呆れるチリだが丁度いいと、ヒスイに名乗ることにした。
「どうも、チリちゃんや。こっちの二人は同僚の」
「はじめまして、ポピーですの!」
「ハッサクなのですよ」
「うちらリーグの四天王でな。ジブンにようがあって、きたんや」
「四天王の方たちでしたか……初めまして、ヒスイと名乗っているものです。ハッコウジムでお世話になってます」
―――ここに、ヒスイとパルデアの異文化交流。その最初の一歩が始まろうとしていた。
ボックスの預かりシステムはこの作品の都合のいいことになってますので、突っ込まないでください