ポケモンLEGENDS スカーレット・バイオレット 作:クロウド、
タグにミライドンがあるので勘違いされてる方がいるようですが、この作品のアカデミーはオレンジアカデミーで間違いありません。
―――ハッコウジム、二階バトルコート。
そこではヒスイと、四天王ハッサクのバトルが繰り広げられていた。
「まだ終わりません! セグレイブ、【きょけんとつげき】!」
「グオォォ!!」
ハッサクが彼のエースである、ひょうりゅうポケモン、セグレイブに指示を出すとセグレイブの頭で輝くテラスタルジュエルが輝きを放ち、威力の高まった必殺技をヒスイのヌメルゴンに向かって放つ。
「ヌメルゴン! 早業、【たてこもる】!」
「メ〜ゴン!」
ヒスイの指示を受けるとヌメルゴンは素早く背中の殻に文字通り立てこもってしまう。
その殻にセグレイブ必殺の【きょけんとつげき】が激突する。だが、殻はびくともせずセグレイブの巨剣は完全に受け止められてしまった。
「なっ!?」
「終わりにさせてもらいます、ハッサクさん。ヌメルゴン、力業、【りゅうのはどう】!」
「ヌ〜メ〜……!」
「ッ! セグレイブ、回避なのですよ!」
セグレイブが【きょけんとつげき】の体制から戻ろうとするよりも早く、殻の口から頭だけを出したヌメルゴンの口元に紫色のエネルギーが蓄積されていく。先程の『早業』の影響でそのエネルギーはあっという間に既定値に達する!
「ゴ〜ンッ!!」
紫のエネルギーは竜の姿を形どって放たれ、セグレイブに直撃し爆発を引き起こした。
「セグレイブッ!」
「グ、グォォ……。」
【りゅうのはどう】が直撃したセグレイブのテラスタルが解除され、その場に力なく倒れ伏した。
【きょけんとつげき】のデメリットでセグレイブが受けるダメージは二倍、さらにテラスタルによってタイプがドラゴン単タイプになっているためドラゴン技は効果抜群となり更に二倍、計四倍ダメージに加えて『力業』による威力上昇。
いくら、四天王最強と言われるハッサクのエースといえどそのダメージの前には無力に倒れ伏すのみだった。
「ど、ドラゴ〜ン!!!」
セグレイブが戦闘不能になり、ヒスイとヌメルゴンの勝利が決まった。
「ほえ〜!」
「すっごいよ、ヒスイ氏! ハッサク氏にも勝っちゃうなんて!」
「マジでうちら全員四人抜きしおった……!」
コートの外で二人の戦いを見守っていたナンジャモ達が唖然とするのも当然だ。既にこの三人はヒスイと戦い敗北しているのだから。
何故、ヒスイがパルデアが誇る四天王三人+ジムリーダーとバトルを繰り広げているのか、それは説明するには一時間ほど前にまで遡る必要がある。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ん〜〜〜〜。」
「バフゥ……。」
ヒスイがチリ達との自己紹介を終えた後、チリはヒスイのポケモンであるバクフーンの姿をじーっと確認していた。バクフーンは特に迷惑に感じてる様子はなく相変わらず落ち着いている。
「どうなのですよ、チリ?」
「こらあきまへんわ、ハッサクさん。……バクフーンには違いなさそうやけど、こんな色の炎のバクフーン見たことないわ。毛の色も違うし、そもそもこんな静かなバクフーン、チリちゃん初めてみたわ」
ジョウト地方出身のチリはかの地の初心者用のポケモンの一体、ヒノアラシの最終進化系バクフーンの姿はよく見た覚えがあるので記憶の中のバクフーンの姿と眼の前のヒスイのバクフーンの姿を見比べていたのだ。
「ヒスイくん、この子のタイプってほのお単タイプ?」
「いえ、ほのお・ゴーストの複合タイプです」
「ゴーストもっとんのかい……マツバさんが喜びそうやなぁ……。」
「マツバさん……エンジュシティのジムリーダーですね。確か、ゴーストタイプの使い手でしたっけ」
「ヒスイくん、よく知っとるなぁ」
まさか自分の故郷のジムリーダーの名前と使っているポケモンのタイプまで的確に当てられるとは思わずチリは面食らってしまった。
「ヒスイ氏はパルデアのことはさっぱりだけど他の地方のことはボクより詳しいんだ〜。ジョウトの他にもカントーとか、シンオウとか、カロスとか。アローラのライチュウの話は結構面白かったよ」
「へぇ! お兄さん、ポピーにも他の地方のこと教えてほしいですの!」
「いいですよ。今度ポピーさんの時間が空いたときにでも」
「わ〜い!」
喜ぶポピーを微笑みながら見るヒスイ。その姿を見たハッサクは少なくとも彼が邪な人物ではないということには確信を持てた。
また、チリもヒスイのことは物腰も柔らかで、歳不相応な人格者といったイメージだ。
「しかし、そうなると。やはり専門の方に調べてもらうのが一番手っ取り早いと思うのですよ」
「ジニア先生のことやな」
「ジニア、先生? 博士じゃなくて?」
「そう、小生と同じオレンジアカデミーで生物学の講師をされている方なのですよ」
「オレンジアカデミー?」
「ナンジャモちゃ〜ん、アカデミーのことくらい教えてあげときや〜」
「いやぁ、面目ない……。」
「では、小生から説明させてもらうのですよ。オレンジアカデミーとは―――」
ハッサクの説明を要約するとこうだ。
このパルデア地方の中心地テーブルシティにはオレンジアカデミーという、創設800年以上の歴史を誇る大規模な学園があるという。
そこでは生徒達がポケモンとともに学問に励んでいるのだという。
「小生はそこで美術の講師を、ジニア先生は生物学の講師をしていて、ジニア先生はかつてはポケモンの研究者だったのですよ」
「スマホに入っとる図鑑アプリを開発したのもジニア先生なんやで〜」
「そんなすごい方が、ハッサクさんも四天王と兼業をされてるんですね」
「えぇ、どちらも小生にとって誇りある仕事なのですよ。まぁ、今は生徒達は長期休暇中なのですが。
ジニア先生にも話は通しているのですよ」
「何から何まで、ありがとうございます」
「いえいえ、パルデアで何かあれば解決するのも我々の仕事の一環のようなものなのですよ。ヒスイくんが気に病むことではありません」
「となると、あとは……ヒスイくん、バトルは得意か?」
「えぇ、ポケモン勝負ならそれなりにこなしてきた……と思いますけど」
記憶がないからハッキリとは断言できないがポケモンとともに戦った回数は少なくはないという感覚がヒスイの中で確かに残っていた。
「ハハハ、覚えてへんから言い切れんか。ジニア先生に手伝いを頼むに当たって、戦闘時の映像もあると助かる言われててな」
ポケモンは戦闘時の動きや技からも生態への特徴が出ることがある。ヒスイのポケモン達は原種ともおそらくタイプが違うのでバトル中に使った技なども記録する必要がある、とつまりはこういうことだ。
(まっ、あのポケモンたちを育てたのがヒスイくんだとしたら、弱いなんてことはありえんやろ)
チリたちは四天王。バルデアでも指折りの実力者として選ばれた四人だ、見たことのないポケモンだがじっくり見れば、そのポケモンが放つ気配で強さはなんとなくとはいえ感じ取れる。
「この子達で戦える子って何体おる?」
「進化前のポケモンは戦えないので16体ですね」
「となると……ヒスイくん。うちら四人と四対四でバトルってお願いできるか? ヒスイくんには連戦になるから、結構キツくなるかもしれんけど」
「おおっ! 四天王対謎のポケモントレーナーヒスイ氏! これは、再生回数新記録行っちゃうかも〜! ん? アオキ氏いないから、一人足りなくない?」
「四人目はジブンや、ナンジャモちゃん。アオキさんの代わりってことで頼むで〜」
「うわっ、アオキ氏の代わりとか責任重大じゃん」
「それと、ナンジャモくん。わかってるとは思いますがバトルの映像はトップの許可なしに配信してはなりませんよ?」
「流石にわかってるよ、ハッサク氏〜」
今、ヒスイのポケモンの戦闘時の映像などナンジャモの番組で配信などしたら各地方からヒスイのポケモン目当ての研究者やら、下手したら珍しいポケモンを狙ってその手の犯罪者がパルデアに現れるおそれがある。
正直、すぐに配信できないのはナンジャモにとって痛手だが、ヒスイがパルデアにいる限り隠し通すのは不可能なのですぐに許可は降りると考えていた。
「それで、ヒスイくんは行けるか? 途中、休憩挟んでもええけど」
「大丈夫です。ナンジャモさんへの恩も返したいですし、ここまで四天王の方たちに動いてもらってるんです、断るなんてしません」
「ホントに人間できとるなぁ……。」
チリ達の要望を聞き届け、ヒスイは一度、ポケモン達を
「おや? ヒスイくんのボールは古いタイプのものと聞いていたのですが?」
「あっ、それなんだけどさ。ヒスイ氏のボールって預かりシステムから出したらそのボールになってたんだってさ。最初の六つのうち五つも一回預けて出したらそのボールに変わっちゃったんだよね」
「なんやねんそれ。預かりシステムにそんな機能ついとったか?」
「ボクに聞かれても困るよ〜」
「まぁ、僕はこっちのほうが小さくできて持ち運びが楽だからいいんですけど」
「ヒスイくんがええなら、ええか」
ヒスイの周りで起こる不可解な現象の数々に更に疲れてきたチリ。ヒスイ本人がいいと言っているなら後回しでもいいかと、チリはバトルフィールドでヒスイの向かい側に立つ。
「このままじゃ埒があかんし。そろそろ始めよか」
「はい。ゾロアは少し下がっててね」
「アゥゥ」
ヒスイもバトルフィールドの反対側に立ち、ゾロアを近くに降ろしてバトルに巻き込まれないように下げさせる。
「ナンジャモちゃん、バッチシ撮影頼むで!」
「オッケー!」
ナンジャモはいつもと同じようにスマホロトムを撮影用にして、バトルコートを映し出す。
「一番手は四天王の露払いこと、チリちゃんや! 記録のためとはいえ、本気で行かせてもらうからせいぜいきばりや!」
「お願いします、チリさん」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
こうして、バトルが始まったのが約一時間前。
ヒスイはチリに続いて、ポピー、もう一人の四天王の代理のナンジャモ、そして、最後の一人ハッサクの最後の一体セグレイブを倒したことでヒスイの完全勝利が決まった。
「お疲れ様、ヌメルゴン」
「ゴ〜ン〜!」
「ハハハ、くすぐったいよ!」
バトルが終わりヌメルゴンに近づいて労うヒスイ。ヌメルゴンはそんなヒスイに自分の顔を嬉しそうに擦り寄せた。
もう一度労いの言葉をかけるとヒスイはヌメルゴンをボールに戻した。
「素晴らしいッ!!」
「うわっ!」
「また始まったわ……。」
「始まっちゃったですの!」
「始まったね〜」
そんな彼にいつの間にか近づいていたハッサクが声を上げるのを見て、ナンジャモや四天王達は彼の悪癖が出たと頭を抱える。
「セグレイブの攻撃を見るや否や素早く防御上昇の指示を出すヒスイくん! そして、それに答えるヌメルゴン! そこから一撃でセグレイブを打ち破るその姿に、君達の間にある信頼という言葉が形を持って目に見えるようでしたぞ!」
「は、はぁ……どうも……。」
ハッサクからの熱烈な称賛に気圧されるヒスイ。先程までの冷製で大人びた雰囲気からのギャップのせいか余計に彼を困惑させた。
「すまんなぁ、ヒスイくん。うちの大将、感動すると周りが見えなくなるタイプなんや。ただ、これはまだいいほうでな」
「これで、ですか?」
「ああ、本気で感極まると号泣するからな……。」
なるほど、と。号泣されるよりはマシかと考え直してナンジャモ達の方を向く。
「いや〜、お陰でいい映像が取れたよ! ありがと、ヒスイ氏!」
「ナンジャモちゃんにチリちゃん、ポピーだけじゃなくてハッサクさんもヒスイくんに黒星一つつけられんとはな」
「四天王としては恥ずかしい限りですが、それ以上にヒスイくんの強さに感心してしまうのですよ!」
「お兄さんとポケモン達、本当に強いですの!」
「ありがとうございます」
四天王達とナンジャモからの称賛を素直に受け取りながら、ゾロアを抱き上げるヒスイ。
「そんじゃ、ヒスイくんに聞きたいことは色々あるけど。一回ポケセン行って、ポケモン達元気にせんとな」
「そうですね、僕のポケモン達も疲れたと思いますので」
「それにそろそろ昼時やし、なんか奢ったるわ」
「いいんですか?」
「かまへんよ、ええもん見せてもろうたし」
「じゃあ、チリ氏ゴチになりま〜す!」
「誰がジブンの分まで払ういうた!」
こうして、一同は一度バトルで疲れたポケモンの回復と自分達の腹ごしらえのために一度ハッコウジムをあとにすることになった。
本当は後編まで行く気だったけど眠いんで寝ます