快盗戦隊VS警察戦隊に極めて近い世界線のルパンレンジャーVSパトレンジャー   作:bassher

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#1-1 世間を騒がす快盗さ

※この作品は『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』という素材を使って再構築した二次小説です。

※諸処設定等変更ございます。

※オリジナルのスタッフが小説という形で奮起される事を切に願います。

 

 

 

 そこは裏カジノ、

 

 そんなバカな!全額だぞ全額、いかさまがあるに違いない、

 

 光差さない臙脂に彩られた屋内にローソクの煌めきとシャンデリラのまだらな光が、身なりを丁寧に整えた現代の上流階級達の装飾を照り返し、ドンペリの気泡もキャビアの光沢もきらびやかさを引き立てて、人間の持つ肉感も人生も覆い隠していく。いや、現代に上流階級などいない。紳士も貴種も無く、ただアブク銭を何かの拍子に獲得して周囲にマウントする為だけに高級な衣類や宝石を身に纏い、さもスペックが高いかのように誇示する為に浪費していく、そんな集まりでしかない。その証拠に、ルーレットを数度繰り返しただけで全ての財産を喪失しカジノオーナーに土下座して許しを請う客がいる。

 

「そんな事ウチに限ってあるわけないじゃないですか。それより金はきっちり払ってもらいますよ。なーに、アナタみたいな男でも買い取るセレブはいくらでもいますから。」

 

 このカジノのオーナーは小太りで、口ヒゲもしているし、整髪料をたっぷり塗ったオールバックにしているが、どうもそのルックスに顔の童顔さがついていってない。ヤンチャではあるが、裏稼業の人生を歩んだ痕跡が顔立ちにないというべきか。オーナーは数十人いる取り巻きの内2人の巨漢に、土下座する男を室外に連れ出すよう命じる。オーナーの何か板についてない含み笑みに呼応するかのように、不思議な緑光がオーナーの胸元、正装のさらに肌着の、もっと奥から一瞬灯った。

 

「アンタか。ギャングラー。」

 

 そう青臭い、まるで変声直後の学生のような黄色い声がした。学生がこの場の客に紛れているか、バイトの配膳係であればまだ違和感が無いだろう、しかしそう言ったのは、無一文の客を羽交い締めにした屈強な男の1人から発した声だった。

 

「誰だ?」

 

 悪い方に勘が働いてギャングラーと呼ばれた男、後ずさりし、いつのまにかバーのカウンターに両腕を突く。

 

「世間を騒がす、」

 

 屈強な男は、隣の男2人が唖然とするのも構わず、ベルトのバックルを操作する、すると、その身を纏っていた像が光の格子に分解され消える、そう、男の姿はただの映像技術の産物だ、消えた立体映像の中から現れたのは、シルクハットに赤い燕尾服、そして赤いマスクの青年だった。

 

「快盗さ。」

 

「おまえが噂の、」

 

 オーナーは不敵に微笑む1人の不法侵入者にたじろぎ、そして取り巻きに取り押さえるよう声を荒げた、取り巻きの屈強な男達が一斉に青年に向かって襲いかかる、

 

「おまえの持っているコレクション、ゲームの確率を操作してボロ儲けしてるそうじゃないか。」

 

 そう重低音な声が、オーナーの背後から響く、見ればバーでグラスを丁寧に磨く男がオーナーを睨んでいる、

 

「このオレにおまえ呼ばわり・・・・てめえもか!」

 

 オーナーの眼前でバックルを操作する男、その男の姿も映像、中から現れるボーラーハットに青のスーツで極めた青いマスクの男、

赤の青年は蝶ネクタイをしているが、青の男はネッカチーフだ。

 

「正体を顕せ」

 

 青の男、バックルに収納されたカードを一枚取り出し投擲、風を切って流れ、オーナーの首筋を一閃、オーナーの身が反転するように一瞬で消え、代わりに異形の怪物が現れる、その姿はまるで黒い2本脚立ちの羊、いやアルパカの方が近いか。

 

「モフ~」

 

 カウンターを乗り越え様両足蹴りをかける青の男を、飛び退いて躱す。

 赤い青年も青い男も屈強な男達に囲まれ、乱闘になりながらもどこか余裕がある、そのはずだ、2人の身に一切男達の拳も蹴りも入っていない、擦ってもいない、半ば密着するほどの距離感で対手が総出で攻撃してくるにも関わらず、全て回避し切っている、

 

「モフフフ、大人しくしろ!」

 

 黒アルカパは対手の得体の知れなさにたじろいで2歩3歩後ずさる、すると何にぶつかったのか、背面でシャンパングラスが音を立てて足元で割れる音がする、振り返るアルカパは1人のコンパニオンがトレイを落としてドンペリを台無しにし悲鳴をあげている姿だった。

 

「ああ!勿体ない!!」

 

 この異形はしかし一本数十万のドンペリの事よりも、このストレートショートカットの細身の女、いや少女と言って良い年齢だろうその子を盾にする事を思い至る。

 

「こいつに怪我させたくなかったら、このアニダラ・マキシモフ様の言う事を聞け!」

 

 少女を羽交い締めにしたアニダラを名乗った異形は、不審者2人に人質を見せつけた。

 

 一斉射、

 

 そのアニダラの顔面にいきなり銃撃が数発着弾、コンパニオンを思わず放し、両手で顔面を押さえる、

 

「キサマら!何をする!?」

 

 慌てふためくアニダラに、快盗二人は白い小銃、奇妙なほど銃身が角張った本来なら撃鉄の部位にも握把とは別にグリップがある白い小銃を向け容赦無く連射した。『VSチェンジャー』は片手撃ちができる故拳銃の分類なのだろうが、それにしては短機関銃並にガタイがある。

 

「人質取った直後の数秒が一番油断するんだってな。」

 

 大男達を幾人も捌きながら、アニダラに向かって銃口を外さない二人だった。

 

「人質が、人質、おい?人質どこだ?!」

 

 目が開けられず手探りで近隣で震えているはずの人質を確保しようとアニダラが視界を取り戻した時、ショートヘアのコンパニオンは直近懐でやや屈み込んで密着していた。

 

「大事な金庫、みーつけたっ」

 

 ショートヘアのコンパニオン、なぜか焦る事なく、アニダラの腹部にちょうど収まる銀に光る重厚な金属物を、見た通り金庫と言い放ち、黄色いティルトローター機のミニチュアのようなガジェットを押し付けた。

 

「モフ?!まさかキサマも」

 

『2、0、7』

 

「ナンバー、いただきましたぁ!」

 

 回るように掴もうとするモフモフの腕をかいくぐり、さらに回転の勢いを殺さず対手の腕を掴んで捻り、そして一瞬姿勢を崩した対手の軸足を強く蹴って腕を強く引く、異形のアニダラが、少女のか細い腕で宙を一転、背を床に伏した、

 

「おまえらぁオレを守れぇぇ!」

 

 大男達を招聘し円陣を組ませるアニダラ、その大男達の半ば頭上を跳躍で飛び越えるように、ショートヘアは二人の快盗の横に立ち、そして映像を解除して、スカートにジャケット、斜め被りのプチハットにはレースが垂れている、マスクもマフラーもイエローの少女は、やや収まりの悪い八重歯を出して余裕の笑みを浮かべた。

 

「二人とも、助けないの、分かってたよ。」

 

「それがオレ達のルールだからな。」

 

「たとえ誰が倒れても、残った奴が絶対願いを叶える。約束したろ?」

 

 ようやく起き上がったアニダラ、取り囲んだ大男達が一斉にその映像を解除し、異形の姿を晒す。奇妙に黒く細い四肢、ところどころまるで弾丸で撃ち抜かれたようなピットがいくつも空いているベレー帽の姿が現れる。

 

「このオレの金庫はオレ以外には開けられねえ!やれ、ポーダマン!!」

 

 わめくアニダラに連動して、ポーダマンと呼ばれた集団が一斉に二連想銃を3人の快盗に向けた。

 

「予告する!」

 

 赤い快盗が叫ぶ。

 

「アンタのお宝いただくぜ!」

 

 続けざま3人は、銃尻の握把を掴み、そしてそれぞれ赤いジェット戦闘機、青いプロペラ機、さらに先の黄色いティルトローター機のミニチュアガジェットを振りかざす。3つのガジェット上部には奇妙にも共通して0から9まで円周に数字を描いたダイヤル錠が備わっている。『ダイヤルファイター』。

 

「「「快盗チェンジ!」」」

 

 左手でVSチェンジャー後部グリップを握り、銃全体を韓国刑事ドラマのように寝かした上で、ダイヤルファイターをそれぞれ銃身にセット、

 

『レッド』

 

『ブルー』

 

『イエロー』

 

 VSチェンジャーのアナンウスが轟く、続いて3人はセットされたファイターのダイヤルを3度合わせる、

 

『0、1、0、マスカレイズ』

 

『2、6、0、マスカレイズ』

 

『1、1、6、マスカレイズ』

 

 アナウンスと共に銃身をグリップに対して右掌でなぞるように90度回転、それぞれのガジェットは小銃の照星から照門にかけて装着される形になる、

 

『快盗チェンジ』

 

 銃のアナウンスと共に3人は右手にピストルグリップを握り、前方に向け片手撃ち、撃ったのは一枚のカード状の光膜、一旦前方に射出された後ヒラヒラと舞い、光が3人に蒸着してスーツとなる。

 

「ルパンレッド」

 

 赤いタキシードの青年が指を鳴らす。その姿はやはり赤、マスクは目も鼻も口も顔のパーツを全てそぎ落とし、まるでシルクハットを模したようなゴーグルも果たしてゴーグルなのかどうか得体が知れない。

 

「ルパンブルー」

 

 青いスーツの男が指を鳴らす。その姿はやはり青。その背には3人ともマントが靡いている。

 

「ルパンイエロー」

 

 黄色いフリルの少女が指を鳴らす。そのスーツは全身の体格がストレートに出るタイツルック。

 

「「「快盗戦隊!ルパンレジャー!!」」」

 

 ルパンレッドを名乗った青年はさらに怪人、アニダラ・マキシモフを指差す。

 

「予告する!アンタのお宝いただくぜ!」

 

 

 

「ルパンレッド」

 

 青年の名は『夜野カイリ』。19歳。夜が名前に含まれる。

 兄1人弟1人という家族構成になったのは兄が中学を出た頃。両親が残した多少の金と生命保険の給付金に加え、兄は新聞配達からユーチューバーまでなんでもやって金を稼ぎ、自身の大学費用と生活費、そしてカイリの学費まで工面し、そしてユーチューバーから一切足を洗って都庁の公務員となった。そんな地の底から安定した人生を獲得した、完璧超人であるこの兄を見上げてカイリは育った。

 

「いいかカイリ、集められるだけ集めた金だ。これで彼女に貰った金を返して、彼女と縁を切れ。見ていていたたまれない。」

 

「なんで兄貴の金なら良くて、あいつの金ならダメなんだよ!いいじゃねえか、あっちが勝手に恵んでくれるんだから!いたまれないなんて、オレをバカにすんのもいい加減にしろ兄貴!」

 

「オレはおまえの肉親だからいい。おまえじゃない、おまえを自分からヒモにしてくれる彼女の顔が、おまえにねだられるとどんな無理でも聞いた母さんの顔を思い出して彼女がいたたまれないんだ。口先と顔の良さだけで人を丸め込んで女のヒモになって、どんな理由かあろうと、おまえは間違えている。」

 

 はじめて兄に殴りかかり、そして簡単にいなされたあの裏路地、ゴミまみれになった顔面に札束を叩きつけられ、雪の降りはじめた夜の闇でしばらく放心していた。

 

 あァァァァ!

 

 兄の声だとすぐに直覚した、釘を踏んづけた時同じ声を出した、あの時は救急車を呼んだりおびただしい血を浴びたりとロクな思いをしなかった、あの時以上のヤバさを感じた弟は、兄の声がした路地を出て左を見た。

 

「なんだこれ・・・・・」

 

 路地を曲がった段階でまず頬の痛覚が反応した、鋭利な針で毛穴の全てを刺されているような感触、眼前に見えるのは季節柄の寒さがあっても日本ではありえない、人間1人がスッポリ入る氷のそれは塊だった。永久氷壁などマンガでしか見た事がないカイリはしかし、氷に閉じ込められ身をかがめた人間を認めざるを得なかった。この不可思議な光景の真ん中に、いつも見慣れた兄の顔が光の屈折に歪んで映っていた。

 

「あにき」

 

 駆け寄るものの、右脚が性急に駆け寄り、左脚が怯えて戸惑い、もつれて重心を身体がが見失いながら、氷漬けにされた兄に触れようとする、掌が冷気に激痛を感じたその刹那、強風が吹雪いた、一瞬にして失われる質量、氷塊が瞬時にカイリの前で砕かれ、破片が見えないほどの塵となって拡散していく、

 

 ぉぁぁぁぁぁ!

 

 胃酸を口内に感じるほどのそれが絶叫だった、半狂乱となったカイリは、自分がどういう動きをし、どういう声を出しているのか何も自覚無くただ、兄をこの瞬間失った事をなぜか知った。

 

 口笛、

 

 いつのまにか膝を折ってアスファルトに中座している、もしかして頬の砂利は一度寝転がったせいでついたかもしれない、カイリの耳に凍るような口笛の音色が入ってくる、見上げるとサンブレロにポンチョをしたやや下顎の自己主張が強い奇妙な男が口笛を吹いて通路の先を横切るところだった。もっとも異様だったのは、この雪が降り、赤と緑とLEDがこれでもかというほど街を彩っている季節であるにも関わらず、氷を1つ右手に抱えてかじりついている事だった。カイリにはなぜか、彼を中心に霧が、いや湯気がわき出ているように見えた。水でもかぶってこの寒空を歩いているのか?

 

「あいつが・・・・」

 

 やったのか?そう絵空事の妄想に近い直感がカイリの脚を動かし男を追おうとしたその時だった。

 まばゆい光がカイリの背後を照らす、振り返って思わず目を手で塞ぐ、だがカイリはなんとか逆光のシルエットを注視する、

 

「ギャングラーにやられたのだね、」

 

 タキシードの威厳を顔立ちの貧相さが相殺し、頭髪のわびしさを白手袋の上品さが相殺し、口元の幸薄さが眼鏡の高級感が打ち消す奇っ怪な老執事だった。逆光は彼の乗用車の前照灯だった。

 

「あんた!何があったか#@*OJU%T!!」

 

 と呂律を失うほどカイリが激高したのは、この絵に描いたような老執事、らしい怪人を見てくれで弱いと思ったからに他ならない。

 

「君の願いを叶える方法がある。今あのギャングラーを追いかける危険を冒すよりまだマシな方法がね。」

 

 怪老人がいつのまにか両手に抱えていたそれこそが『VSチェンジャー』と双発ジェット戦闘機型の『ダイヤルファイター』、

 

「なんでだよ、なんであんな居なくなった方がいい兄貴の事が、頭からこびりついて離れねえんだよ!」

 

 ルパンレッド誕生の瞬間だった。

 

 

 

「ルパンブルー」

 

 男の名は『宵町トオマ』。24歳。宵が名前に含まれている。

 10代はもっぱら趣味の模型作りが高じて、夏冬のイベントではその名を知られる程のモデラーとなる。模型誌の企画で『赤い彗星専用MS-06C』、略称『ツノなし』で賞を取り、授賞式で赤いコスプレをして称賛を受けたのが彼の第一のピークだった。

 

「そういえば、父親も祖父もほとんど見えてなかった。」

 

 遺伝的な疾患が高校を卒業したあたりから彼の人生に影を差す。10代にして重度の白内障を煩い、眼鏡だろうがコンタクトだろうが焦点が合わずに、名人にもっとも近いと言わしめた繊細な技術が、ギリギリのところで凡庸なレベルに堕ちた。二流でやっていけるが一流ではやっていけない、トオマはそんな自分が許せなかった。まずは落ち込んだ自分を見せたくない為に親元から出た。

 

「オレは、この世に向いてない。オレがこの世にいない方が、それだけオレが食う分が他の人間に回って世の為になる。そうに違いない。」

 

 宵町トオマが浅川のカルガモの遊泳を数時間橋の下で眺めていた時だった。

 

「やめてください。私、いっしょになる人がいるので!」

 

 振り返ると、見覚えのあるOLが半グレを絵に描いたような男に絡まれて迷惑そうな顔をしていた。

 

 なんでもいいか、

 

 と男とOLの間に割って入ったトオマは、無表情で男が持つ折り畳みナイフの前に身を乗り出した。上手くいけばこれで楽になれる。

 

「分かったでしょ!私にはこの人がいるの!!」

 

 とOLが言い放つ。男と同じように困惑したトオマはしかしこの女子大生に合わせる機転を効かせた。

 

「よくもオレの女を困らせたな。」

 

 トオマの悟った眼に怖じ気づいた男を辛うじて躱して、彼女の自宅まで駆け込んだ。

 

「ほら、二人で新世紀宣言したじゃないですか。あの時のララァです。」

 

 しばらくOLの家に閉じ込められる形になり、

 

「ホント、プロみたいにオイシイ!」

 

 申し訳無いのでバイト先で習ったあり合わせのまかないパスタを披露した。

 

「あの男が消えるまで、偽装の同棲相手になってください!」

 

「それじゃ、君の送り迎えと、掃除と食事を、それで少しの給金を貰えればそれでいい。まあ、ちょっとした人生の寄り道という事か。」

 

 こうしてOL大平彩との偽装同棲を演じる事になったトオマだったが、

 

「いつもオイシイ朝ご飯、お昼の弁当、お夜食をありがとうございます。」

 

 半グレがつきまとう事が無くなっても主夫を続ける形になり、

 

「いえお風呂は大平さんが先にいただくのが決めたルールではないですか。」

 

 そしてコミック5巻分ほどのやりとりの上で、

 

「言ったでしょ、一見ムダな寄り道が可能性を広げるんだって。」

 

 少女マンガの昨今の潮流通り、偽装が本当にシフトしていく。

 

「ああ彩のおかげだ、『シェル・ブル』でコミからドミシェフに上がった。だがコミュナーやった時、もうソーシエから文句を言われる事が無くなった。彩の半分くらいしか稼げていないが、これ買った事を許してくれるか。」

 

 ついに婚約指輪を渡すところまでこぎ着ける。

 

「うむ、許してやるぞ。」

 

 両親への挨拶も済み、明けたら挙式というところまでこぎつけた年の暮れ、

 

「一人きりのクリスタルキング、はぁ・・・・」

 

 と小さい頃に耳に残った歌詞を季節柄口ずさみながら、無表情に浮かれて待つトオマに、彼女から通話が入る、

 

「そっちが来てよ、もうウェディングのお店到着してるから。本当に料理人になっちゃったんだね君は。実は最初に食べたパスタ、そんなにおいしくなかったのね、少し煽てたら本気になっちゃって。」

 

「おい、彩、オレはおまえが薦めるから料理を。」

 

「暗示にかかりやすいぞ、君。」

 

「おい今更」

 

 と恋人の名を叫ぶ前に、スマートフォンの向こうからノイズ割れする重低音と恋人の悲鳴が響く、既に足を店に向けていたトオマは早足になり、そして全力で走っていた、

 

「どうなってんだ?」

 

 大量の氷塊がトオマの眼前、街の大広間に広がっていた。テラスに腰掛けそのまま氷漬けになったカップルもいる。中年などは、仰天して足が地につかない状態で氷漬けになっている、トオマは最悪の想像を打ち消しながら約束のブライダルショップに駆けつけた、やはりトオマの最悪の想像は現実になる、全く濁りのない氷壁だった。光の屈折が僅かながら像を歪ませているが、彼女の美しさはこの上なく保存されていた。彼女の怯えた表情も、二人の幸せの象徴の指輪も全てが保存されていた。

 

「オレには無いのか幸せは」

 

 あるいは、そのトオマが近づけた掌の体温が引き金だったかもしれない。

 罅が入る彼女の表情、2つに裂ける指輪、崩壊を食い止めようと差し伸べた手も虚しく、一瞬にして立体を喪失する、もはや触れる事すら適わず、トオマの幸せは、2つに裂けた。

 

「ルパン?コレクション・・・」

 

 その時、いやトオマはその時その場で数時間立ち尽くしていた事を、タキシードを着た見窄らしい中年が話しかけてくるまで、体感できなかった。

 

「全て取り戻してくれれば、君の願いを叶えよう。」

 

 『VSチェンジャー』と単発レシプロ機型の『ダイヤルファイター』を差し出されたトオマは、この危険な臭いすらする申し出を素直に受けた。縋らざる得なかった。

 

「せめて、せめて彩の仇を撃たなければ、死んでも死に切れん。」

 

 ルパンブルーの誕生の瞬間だった。

 

 

 

「ルパンイエロー」

 

 少女の名は『早見うみか』。18歳。やみが名前に埋まっている。

 小学生の頃からフリルやレースで服装を飾りたてるのが得意な子であり、その一周半回り込んだセンスは、小中学の人生を「変人の子」「病気持ち」「黄信号」「脳天気」というレッテルを貼られて終始する事になる。

 

「いいじゃん、好きな服着て何が悪いの、」

 

 とそんな周囲に対してムキになって味方してくれたのが一ノ瀬詩穂だった。

 

「一ノ瀬さん、無理しなくていいんだよ、」

 

 少女時代の友情関係は利害関係である。マイノリティであるうみかに対して、マイノリティである事に自分の価値を見いだそうとする詩穂は、マイノリティがマジョリティに踏み潰される事を防がなくてはならない、

 

「へえ、これシホちんが描いたの?すごい!」

 

 即ち詩穂のマンガ家志望の夢を保全する為に、うみかのデザイナー志望は並行されなければならない。既に市販ブランドで満足できずハンドメイドの技術を向上させ、何着もワンオフの服を飾りたてた部屋。その部屋に内心度肝を抜きながら、詩穂は自作創作をうみかに見せた。うみかのマイノリティなセンスで褒めて欲しかった。

 

「どうかなうみか?コンクール出してみようと思って、主人公のスーツちょっと変じゃない?」

 

 とストレートに褒めて欲しかった。

 

「う・・・・・・ん、これでどうじゃろう?」

 

 あっさり表紙の魔法少女のデザインが詩穂の想像を一周半する、

 

「すごい!うみかホント天才!」

 

「うみか、応援する、MORIMORI応援する!」

 

 天才は、生まれて見てすらいない『夢がMORIMORI』を直感ひとつで関連づけるのである。

 だが、2学期の終業式、突如詩穂はうみかを遠ざけるようになる。

 

「うみか、何か悪い事したの・・・・?」

 

 うみかは人の気持ちに鈍感である。他人と共感する部分が少ないからであり、他人がどう痛むか知らない。察するのは、周囲の冷酷な視線くらいである。もやもやした気分を抱えて数時間、雪がチラつく街の噴水で偶然にも詩穂を見かけると、思いのまま駆け寄った、

 

「どうしたの?顔がすぐれないよ、お腹痛いの?」

 

 そんなバカみたいな言い訳を緊張のあまりほざいてしまううみかに、詩織は顔を向けられなかった。

 

「そうじゃないの、全部ボクが悪いから。」と足早にうみかから遠ざかろうとする詩織。

 

「ねえ、コンクールどうだった?」

 

 天才はいついかなる時でも核心と共にある、そして人の心を逆撫でる。詩織は噴水の勢いが冬空でも止まらない大広場で凝固した。

 

「ごめんその事は後で言うから。」

 

「受かったの?それだけでも」

 

「落ちたの!」

 

「そっか、ごめん、うみかまたやっちゃったね、変な事聞いてごめんね。」

 

「違うの!」

 

「ねえ、変だよシホちん、何があったのか言ってよ!」

 

「コンクールで、落ちたけど、自費でならって出版社に呼ばれたの、」

 

「するの?お金?」

 

「違うの、出版なんかできない、だって、自分で分かってるもの、実力が無いって、言われたの、話も絵もありきたりだけど、この主人公の服装はすごく光ってるって、」

 

「え?」天才はまだ他人の気持ちが分からなかった。

 

「自分で分かってるもの、本当に実力がないって、何を描いても誰か描いたものだし、何を捻っても誰かやった後なの、」

 

「シホちん落ち着いてよ、いったい、」

 

「うみかと違うの!うみかみたいに何もかも簡単に飛び越えて作れないの、ボクはうみかと違うの!!」

 

「そんな事、言われても、」

 

 友達もしょせんは世間の一部だった。世間から最後の梯子が取り除かれ理解されない孤立感は、17歳のうみかにとって受け止めきれないものだった。俯いて動けなくなるうみかだった。

 

 あぶない、

 

 突然うみかの視界が動転する、遠くから詩穂の声が聞こえておそらく強く押されたような感覚を後から位置関係で理解した。そして眼前の氷の塊はうみかの理解を超えた。

 

「シホちん、うみかを庇って」

 

 氷壁は澄んでいた、澄んで両掌を前に向けてうみかを逃がした一ノ瀬詩穂の必死な表情がそのまま映っていた。

 一瞬で消え去る氷壁、気体になって拡散し、立体も質量もゼロになった、

 うみかの記憶だけに詩穂の顔が焼き付いた。

 

「バケモノ・・・・・」

 

 いつのまにか膝を折って噴水に腰をついている事を自覚したうみかの眼前に、口笛が鳴り響く、うみかの想像する世界を完全に超越した異形が姿を晒し、うみかを品定めするように立ち尽くしている、凍てつく体皮の、まるで貝に宿った生き物のようであり、どこかソンブレロにポンチョを着ているように見え無くない。

 

「寒っ」

 

「うみかも凍らせるの、金庫のバケモノ、」

 

 だがうみかの目に印象を残したのは容姿の異形ぶりよりも左膝にいぶし銀に光る金庫だった。後にうみか達が『ザミーゴ・デルマ』という名を知るのに一年以上の年月をかける事になるこの異形は、氷で作ったかのような銃器で、こめかみを何度か叩いて思案に耽っていた。

 

「おまえにしよう、ギャングラーの恐怖、この世界に知らしめるがいい。アディオス。」

 

 そう言ってやはり一瞬で異形もまた、噴水広場から気体になって消えた。

 

「アルセーヌ・ルパンの子孫である我が主が、君の願いを叶えよう。」

 

 頭の収集がつかずにいったいどのくらい噴水広場にいただろうか、うみかは、見窄らしい執事に『VSチェンジャー』とサイドバイサイドローター機型の『ダイヤルファイター』を手渡される。

 

「うみか、シホちんともっとちゃんとケンカするんだもん!」

 

 ルパンイエロー誕生の瞬間だった。

 

 

 

 闇の中で 不敵に笑うシルエット

 この正体 知りたけりゃ Catch me if you can

 

 DESTINY 予告する

 

 本当の値打ちを 理解する者だけに

 光放つ 門外不出のコレクション

 

 ルパン 華麗に舞う

 Chase you up! 奪い返す

 失いし 時を溶かすため ダイヤルを回せ!

 ルパン 迫ってくる

 Chase you up! ヤツらに「アデュー」

 鮮やかに ルパンレンジャー

 it’s showdown

 

 

 

「オレ達ギャングラーを怒らせて、生きて帰れると思うな!」

 

 ポーダマンに取り囲まれてルーレットテーブルに乗り上げ反対側に逃れたルパンレッド、振り返り様VSチェンジャーを扇回しに流し撃ち、

 一斉射して前面の敵を一掃するルパンブルー、背後からもポーダマンが群がってくる、シャンパンタワーが右後方にある事を見て取り、それをテーブルごと蹴りを入れる、大量気グラスとシャンパンに塗れ、隊列を乱すポーダマンにゆっくり照準をとって制射、

 とりあえず側転してみたルパンイエロー、たまたま着地したところでポーダマン一体の頭に蹴りが入り、もんどりうったポーダマンが他の者を道連れにする形で倒れ込む、すかさず立て続けにVSチェンジャーを叩き込む、

 

「余裕で、生きて帰れちゃったりして。」ルパンイエローがVSチェンジャーの銃口をむける。

 

「だがそれは今すぐじゃない。」ルパンブルーもVSチェンジャーを向けた。

 

「おまえをぶったおしてからだ!」ルパンレッドもまたVSチェンジャーを構えた。

 

『『『2、0、7』』』

 

 3人のチェンジャーを揃え、アニダラ・マキシマモフの金庫に照準を定め、

 

「「「いただきストライク!!!」」」

 

 チェンジャーのトリガーをタメで放つ、3つの光芒が淡い輻射を発散しながら一直線、

 

「モフっっっっっっ」

 

 貫通する光芒、凝固するギャングラー、貫通し繋がる銃口と金庫、貫通した光芒を金庫から出でて逆進する何かが見える、サイコロ状のそれが金庫の中身『ルパンコレクション』、逆進しルパンレッドの手元に収まったところで光芒も収まり、刹那、金庫を中核に暴発的なエネルギーがギャングラーの身を爆圧で膨れあがらせていく、人間大から2メートルを軽く越え、天井を突き破って、そろそろその身が爆炎となるだろうと思いきや、ギャングラーの肉体は人型の形状を保ったまま、文字通り、10数メートルに『巨大化』していく。

 

「うみか達だよねやっぱり」

 

「言うな、オレ達はコレクションを盗む事が第一だ。」

 

「オレ達が、巨大化させている。」

 

 ルパンレンジャーの放ったVSチェンジャーのエネルギーは、ギャングラーの金庫より中身を争奪する事ができるものの、金庫に吸収され、エネルギー体としてギャングラーを再生する。

 

 

 

『豊島区環状六号線要町付近でギャングラーとおぼしき集団が出現、快盗達と乱闘騒ぎを起こしています。』

 

 ランエボベースに改良した公用車、ナンバープレートはもちろん8ナンバー、直列4気筒2Lツインターボ4WD、舗装路、悪路、雪路の3パターンに対応するABSを装着し、ブレーキオーバーライド等最新の安全装置を敢えて外し、馬力を抑えて中速域のトルクを太らせ公道のレスポンスを最優先した『国際特別警察機構戦力部隊』専用パトカー。

 

「なあ圭一郎、あいつらの呼称はどうも公式に快盗になったみたいだな。」ハンドルを握る悟のジャケットは緑のラインが入っていた。

 

「任務中は朝加主任巡査部長だぞ、東雲巡査部長。本質はただの火事場泥棒に過ぎん。あいつらがギャングラーに余計な介入をする事でいったいどれだけ被害が拡大するか。」助手席に座る圭一郎のジャケットには赤のラインが入っている。

 

「だがモノは考えようだぞ圭一郎、いや主任、奴等快盗の出現はギャングラーの大規模破壊行為の抑止力になっている統計もある。ヤツ等の法外な装備がギャングラーにとって驚異になっているのは事実だ。」紅一点、後部座席に座っているつかさのジャケットにはピンクのラインが入っている。

 

「バカを言うな!明神巡査部長、いいか奴等が放つ武器の副作用で、ギャングラーは50メートル近くに容積を拡大する、それは一時的にでも周辺被害が20倍以上になるという事だぞ!」

 

 『朝加圭一郎』はキツネ目をつり上がらせる。

 

「主任、しかしだな、1件の被害はともかく、被害件数は一気に減った、問題は我々がそれを想定して1件の被害を低く抑えるかどうかじゃないのか?それに奴等の武器を参考にしてパリ本部から『VSチェンジャー』が開発されたんだろう?我々もいずれ快盗以上に装備を充実してギャングラーという災害を犯罪として取り締まる事ができるように」

 

 『明神つかさ』はロングストレートの髪をかきあげ、片耳を露出してヘッドセットを備え付けた。

 

「お二人さん、そうカッカするな。似たモノ同士だな。そんな事でオレが居なくなっても大丈夫か?」

 

「オレとつかさは似ていない!それから東雲巡査部長、勤務中に音楽を聴くな!」

 

「圭一郎と似てるなんて生理的に受け付けん!頼むから早く『VSチェンジャー』の研修を修めて帰ってきてくれ、私一人でこいつの御守は荷が勝ち過ぎる。」

 

「オレなりの精神集中なんだがなこれ。」

 

 『東雲悟』は私物のヘッドフォンを外し、ハンドルを切って山手通りに入った。

 

「もう巨大化している、アルカパのくせにイカつい?!」

 

 つかさが先に見つけたのは、右の車窓へ僅かに視線を向けたからに過ぎない。山手通りのセンターラインを跨ぐように立ちはだかる50メートルを越す金庫のバケモノ、電柱よりも周辺ビルよりもなお高くそびえる巨大な塔の質量がなんと2本連動する、動く度に大気が流動し、アスファルトを伝って四六時中震動が止まない。見上げると怪物の背後の風景は夜空だけ、鉄塔の1つすらない。周辺の街並みは怪物の腰の高さ程度に収まってしまっている。

 

「モフぅぅぅぅ!」

 

 そのふざけた叫び声がビル群の窓ガラス全てを激しく震動させる、当然3人の乗る公用車もまた小刻みな微動がくる、

 

「豊島区警邏中のパトカーに国際警察の権限で命令する、要町周辺市民の避難を最優先、巨大ギャングラーに対しての防衛行動は我々国際警察で受け持つ、避難地区の選定、避難計画のスケジュールラインは追って国際警察本部より通達する!」

 

「圭一郎、本部の『ジム』には今連絡した。避難計画が速やかに作成される。オレが使わせ貰うぞ支給品。」

 

 東雲悟は足元のボックスから小銃を一丁取り出す。なんとそれはあの快盗達の使うそれと全く同一だった。あるいは白と黒のカラーリングは、警察サイドのイメージが近いかもしれない。

 

「主任と呼べ、悟、勝手な判断をするなっ、いや東雲巡査部長!」

 

「私も悟が適任だと思う、映像射撃訓練の成績から自明だ圭一郎。周辺住民のGPS情報からもっとも密度が低いのは今奴の足元、奴が立つあの位置へ拘束すればいい。それから圭一郎、VSチェンジャーと同じエネルギー反応が奴の背後10メートルの崩壊した建物からする、奴等だ。」

 

 明神つかさは自分の端末をポケットにしまい込んで、フランス本部と共通の9ミリパラベラム弾15発の弾倉を確認した。

 

「おまえら・・・・、オレと明神巡査部長はあのデカブツの足下を突破して泥棒共を抑える、その間東雲巡査部長はあのデカブツを威嚇しろ、無理するな悟。」

 

「大丈夫だ、訓練では判断力においても悟が一番高い数字をマークしている。おまえとはちがうぞ。」

 

「上官に対しておまえとまで言うかこいつら!」

 

 朝加圭一郎は、悟の降車と共に運転を変わった。渋々だが。

 

「これがVSチェンジャー、少し重いな。圭一郎はちょうどいいと言っていたが。」

 

 悟は降車したところでウィーバー・スタンスで構え巨大アルカパの顔面を狙う、圭一郎達のパトカーが怪物の股間を潜り抜けるまで制射を緩めない。アニダラ・マキシモフは得物の棍棒をアンダースローで家屋のいくつか破砕飛散させた。

 

 

 

「オレ達が巨大化させている。」

 

 ルパンレッド、カイリは首を水平から直上にゆっくりと傾ける、天井が全て無くなった地下カジノから、巨大化した敵を眺め軽い絶望感を覚える。

 

「レッド!ダイヤルファイターで今度こそ倒すぞ!」

 

 ルパンブルー、トオマが奮起しているのは、むしろ咄嗟の復讐心からに過ぎない。

 

「今度こそ、巨大化させた責任をきっちり取らないとねっ、カイリ、トオマ!」

 

「「ここで名前を言うな!」」

 

 と男2人から呵らされるルパンイエロー、うみかだった。

 

「動くな!国際警察だ!」

 

 崩壊しつつあるカジノから避難しようと客が入り口に向かって津波のように押し寄せる、その押し寄せる人圧を強引に押し入って突入する2人の男女がルパンレンジャーの前に現れた。オートマチックとライト警棒で武装した国際警察戦力部隊の2人だ。

 

「おまえ達だな、世間を騒がせている快盗!」

 

 男女の叫びに首だけ動かしたルパンレッドは、身構えるでもなく、ただ人差し指で2人を指した。

 

「サインならお断りだけど?」

 

 レッドはそう目も口も鼻も分からないマスクで意に介してないそぶりを見せ、ブルーはさらに無言であり、イエローだけはしっかり警察2人に視線を向けて両耳に両掌を広げてベロベロバーしている。

 

「ふざけるな!」

 

 ここでおまえたちを逮捕してやる、

 と言いたかった警察の男、圭一郎はしかし、言い切る前に、避けねばならなかった。

 

『ゲット セット レディ』

 

 レッドは『VSチェンジャー』の銃身を捻って、さらに元へと戻す。

 

『とべ!とべ!とべ!』

 

 銃身上に装着されレッドダイヤルファイターが警察2人に向かって射出、滑空しながらその容積を瞬く間に数十倍に、

 

「くぉ!」

 

 圭一郎はよって言い切る事はできなかった。

 

『レ、レ、レ、レッド!』

 

 眼前に既に同程度の容積と化したレッドダイヤルファイターが腹を見せ急上昇、圭一郎とつかさは仰け反らざる得ない。

 

『ブ、ブ、ブ、ブルー!』

 

『イ、イ、イ、イエロー!』

 

 同じく2機のダイヤルファイターが巨大化、そのまま急上昇、それぞれの射出した機体に、ワイヤーを飛ばしてぶら下がる快盗3人、

 

「アデュ~」

 

 眼前に吹き飛びそうな爆圧を食らって髪の毛も制服も乱れるのを構わず唖然とする警察官2人、お互いを見返し、なんとか髪の乱れだけは正す2人だった。

 

「見ろ圭一郎!」

 

 ふと顔を上げると、つかさは上空から一枚カードが降ってくるのを見つける、掴んで眺めるつかさは激高した。

 

 お宝はいただきました

  ありがチュ

   快盗戦隊ルパンレンジャー

 

「おのれル~パン、レンジャァァァ!」

 

 ひったくってカードを自分の目に入れた圭一郎はさらに激しく取り乱した。

 

 

 

 膨張したダイヤルファイターが飛び去ろうとする刹那、バックル状の万能ツールからルパンレンジャー3人がワイヤーフックを繰り出し、手繰ってそれぞれのコクピットに搭乗する。3機揃って夜空の池袋を急上昇、東にサンシャインビルの蜂の巣のような室内燈の明かりが見える。

 3機が花が開くように散って、敵であるアニダラの巨体に3方向からの攻撃をかける、

 

「モッフフフフ」

 

 気晴らしに周辺のビルを棍棒で打ち払っていたアニダラは、直上から降り注ぐ、レッドダイヤルファイターのミサイルにたじろぐ、そこをすかさず降下からブルーダイヤルファイターが2門の機関砲を放ちながら右から左へ流れる、逆サイドからもイエローダイヤルファイターが機関砲を放って旋回、

 

「モフ!」

 

 棍棒を横に振り払って3機を近寄らせないアニダラ・マキシモフ、機関砲の砲火もダメージどころか、痒み程度に腹部を擦るだけ、

 

「効いてねえぞくそ!」

 

「同時にやるぞ!」

 

「ポコポコにしてやるから!」

 

 ルパンレンジャーはファイターのコクピットに跨る形で座し、ハンドル、実は右サイドにはVSチェンジャーがグリップ代わりに刺さっている、ハンドルを操作して急旋回、3機並んで巨大ギャングラーの正面から突撃を敢行、

 イエローが頭1つ突き出て、尾翼が機体下部に反って蜂のようになって飛び、針ならぬバズソーを向けて敵の肩口を切り、体毛の一部が露出、

 ブルーが続いて、同じく尾翼が反り返って蜂のように突き出したガトリング砲を散布、敵の胸部に弾丸が埋もれ、チリチリと敵の体毛を焼く、

 最後にレッドが機首を傾げて砲口を露出し、強力なビーム弾を放つ、

 

「毛を痛めるなキサマら!」

 

 その時、アニダラ・マキシモフの全身が緑に輝く、レッドの放ったビーム弾数発がことごとく軌道を曲折させアニダラ周辺のビルを倒壊させた、

 

「命中率なんていくらでも変えられるモフ」

 

 アニダラの巨大化した音量は、すれ違い様のカイリにとって不快そのものだった。

 

「あいつ金庫からコレクションが無くてもまだコレクションの力を使えるのか!?」

 

 カイリの疑問句は、全く遠い場所、異世界の館によって答えを告げられていた。

 

 

 

 彼等はその洋館を『エイギュイユ・クルーズ』と呼んだ。

 異形の住処だった。

 家屋そのものは古風なスクエア型の洋館であるが、この世界特有の闇に包まれている。この世界は太陽が昇って沈むまでが闇、沈んでまた昇るまでが闇である。彼等異形がそうした。洋館に窓があるのはこの世界に昼があった頃の名残だ。

 極めて人間に合わせたテーブル、照明、絨毯の感触、そして1枚の木から彫り上げられた椅子、そこに1人だけ座する異形は、自分の寸法に合っていない椅子にしかし、非常に満足していた。戦利品だからだ。手にするワインもまたこの世界の住人から奪った戦利品だった。

 

「ドグラニオ様、どうです私の今回の改良は。」

 

 と主の異形に向かって女声を発した者は、金庫が背中に見える、全身縹の肌艶に紫の衣装、女の体型をしたその洋梨型の顔は、色気の漂う唇はあるものの残念ながら目も鼻も耳も無く、その代わりに深海生物のそれのような触角が顔の八方に伸びている。腕から背中を繋いでいる帯は弾帯にも蛇腹の骨にも見えなくない。両前腕の鋼パーツは奇妙に攻撃的に見える。

 

「ゴーシュ、金庫は全てドグラニオ様のモノだ。何を勝手に」

 

 と宣う野太い男声の者は、金庫が右肩にある。網目模様の巨腕巨腿、単眼、上から着込んだ重厚な緑のアーマー、絶えず主の傍近くに立ち、得物のハンマーを常に握って主を守る事をやめない。

 

「そもそも、ボスのコレクションは膨大なエネルギーを絶えず発散しています。それを我々のコアである金庫は吸収する性質があります。その過剰なエネルギーをポーダマンの増産で時に排出し、時にあのようなエネルギー相転移で巨大化し、そして3分の後、励起して元のサイズに相転移します。コレクションには、エネルギーそのものにその能力が宿っています。吸収したエネルギーを励起する前にバイパスして金庫の外に放出する事で、あの巨大化した状態で能力を発動する事ができるようになりました。あの快盗共がコレクションを獲る獲らないに関わらずです。いかがですかボス?」

 

「・・・・・・」

 

「ボス?」

 

 ゆっくりワインを燻らせる『ドグラニオ』と呼ばれた主は、依然黙している。自分の巨大化した部下とそれにたかる3機の飛行体を2次元の映像で眺めていた。

 

「ん、いいんじゃないか。」

 

 その姿は腹部に金庫、鎖のカーテンのようなコートから、金庫にまでその鎖が伸びている、全身から刃がいくつも生えているその容姿は、物理的にも精神的にも人を寄せ付けない。この主だけが人間の為に作られた椅子に座している、これがこの世界、この異形集団ギャングラーの主の姿だった。

 

「それだけ?ボスぅ」

 

 『ゴーシュ』と呼ばれた女の怪物は猫撫で声で『ドグラニオ』の肩、そのサークルソーのような肩アーマーに寄りかかった。

 

「キサマ、ドグラニオ様に無礼だぞ!」

 

 と1つ目の怪物が馴れ馴れしいゴーシュを主から引き剥がそうとする。

 

「いいじゃないかデストラ、」

 

 そんな側近を余所に女怪物に腕を回す怪物達の主、『デストラ』と呼ばれた単眼はその指先がどこに行き着くのか凝視し、そして『ゴーシュ』の手の甲を撫でたのを見て、ようやく安堵した。

 

「ねえボス、満足いただけたなら、ご褒美が欲しいわ。」

 

 そんな『ゴーシュ』に『ドグラニオ』は呵々大笑した。

 

「デストラ、こいつはこういう向こう見ずなところがカワイイのだ。今は、アニダラ・マキシモフがどんなゲームをするか見ようじゃないか。」

 

「ウグ・・・・」

 

 『デストラ』は体に纏わり着く刃先の全てに用心した。主はいつどんな時気まぐれを起こすか分からない。

 

 

 

「くそっ、あっちは全然当たらねえのに、こっちばっかり当たるぞチートだろ!」

 

 アニダラ・マキシモフが毛糸玉のようなミサイルを数発胸から発射、回避しながら3機のダイヤルファイターはなんとか懐に入り込み、それぞれ攻撃に入るが、なぜか全てが回避される、イエローのバズソーすら、敵が発光しながら一回転で躱す、それどころか離脱際にミサイルを放たれ、最初に撃墜された。ブルーもまたミサイルに追跡され、四発ほど尾翼のガトリングガンで迎撃したものの、残りのミサイルが全弾命中し墜落した。搭乗していた二人は辛うじてビルにワイヤーを飛ばして脱出、ダイヤルファイターのサイズを戻して落下、アスファルトに大きな穴を空けるに留まった。

 

「モフぅ!」

 

 アニダラ・マキシモフ、テンションを上げて、右手に持つ棍棒を残るレッドに向けて投擲した、もちろん身体を緑に発光させ、命中確率は100%、必中の棍棒がレッドダイヤルファイターを追尾する、

 

「マッハ2を越えるのか、あの棒は!?」

 

 どういう訳か音速を超える速度で棍棒が追尾し、レッドの操舵をモノともせず気流に乗って正確に追尾する、もはや数メートルの間合いに達し、最後に残ったダイヤルファイターも風前の灯火だった。

 

「ならば」

 

 ルパンレッド、突如馬乗りになったコクピットから跳躍1つで大空にその身を投げ出し急降下、自然ダイヤルファイターも失速して急降下、棍棒ははるか前方をオーバーテイク、ダイヤゲートビルが貫通、衝撃波で木っ端微塵にし、雑司ヶ谷霊園に溝を作って突き立った。

 

「くそ、ヤレヤレって奴かよ。」

 

 ルパンレッドは落下様、ビルの屋上にワイヤーを飛ばして引っかかり、同じく容積を縮めながら落下するダイヤルファイターが掌に収まるサイズになったちょうどその時片手に掴む、ワイヤーが伸びて張力の限界で地上スレスレで停止して反動で今度は上昇、ビルの屋上に一回転で着地した。

 

「いない!」

 

 レッドは即座に眼前にあるだろうあの50メートルある巨大な敵に、視認するより先に銃口を向けた。そして後悔した。

 

「遊びの時間は終わりだモフ」

 

 快笑しながらアニダラ・マキシモフ、光を帯びて徐々に容積が縮んでいく、レッドが見止めた時には既に10メートル近くまで背を縮め、もはやレッドから建築物が遮蔽してまともに射線を取れなくなっていた。これが、エネルギー準位の励起によって起こるギャングラーの等身大への再生だった。

 

「待てよ!待てってばよ!」

 

 ルパンレッドはもはや見失った敵に感情の声を上げるしか無かった。

 深夜の池袋の街、救難と消防の車両のけたたましいサイレンがあちこちから鳴り響いていた。

 

 

 

「圭一郎、やはり、オレはここまでだったな、そんな予感はあったんだ、」

 

 悟は圭一郎に私物のICプレーヤーとヘッドフォンを手渡した。

 

「悟、もうしゃべるな!」

 

 圭一郎は手渡されたICプレーヤーが血に汚れているのを見てとった。

 

「悟、待ってろ、私達でなんとか瓦礫をどける・・・・・悟・・・・」

 

 東雲悟は巨大化したアニダラ・マキシモフに対して、国際警察で唯一対抗できる武器を出し惜しみする事なく連射した。だがしかしその動きは止まらない、棍棒で破砕されたビルの瓦礫が悟に豪雨となって降り注ぐ、その瓦礫を咄嗟の判断で掻い潜る、敵への狙いも目、耳、鼻の穴、足の裏、指先、ピンポイントでヒットアンドアウェイを繰り返し、足止めをする事にはなんとか持ち込んだ。

 

「快盗の戦闘機か」

 

 見上げると、ギャングラーは今度は自分を無視して3機の戦闘機をムキになって相手にし始める。

 

「あれは・・・・?逃げ遅れた奴等があんなにいたのか。」

 

 巨大ギャングラーの足元から、逃げ惑う一般人を見つける悟、それはギャングラーのカジノ客である事を悟は後から知る事になる。

 

「くそ」

 

 悟はギャングラーが戦闘機に注意を逸らしている間に彼等の避難を優先した。

 

「早く所定の避難所に!そこに救助要員と警察が待機しています!」

 

 そういえば車内に銃と同じく支給されたメガホンがあったな、と奇妙に落ち着いた心境の悟は、この辺りでもっとも大きな高校のグランドを指し示し、妙に艶やかなスーツで極めた集団を誘導する、

 その自分を含めた縦列に対して、無慈悲に落下するビルの瓦礫、レッドダイヤルファイターを追尾していた棍棒が衝突したビルのそれだった。

 

「頼むぞ」

 

 得物頼みに乱射し、手当たり次第に上方の瓦礫を掃討にかかった、そして、

 

「おまえのおかげで避難民は全て軽傷で済んだ、悟、しっかりしろ!」

 

「自分に降り懸かる瓦礫を後回しにして、避難民の危険を取り払おうするなんて、自分が潰れた後も避難民に瓦礫が降り懸かったらどうしたんだ悟!」

 

 同僚の男女2人の声を聞いた時、瓦礫を撤去されても身が動かない事に悟は違和感を覚える。その答えをくれたのは同僚の女からの遠い声だった。

 

「気づいたか悟、脊椎をやられていると同乗しているドクターの診断だ。動くなよ、動けば後々取り返しのつかない事になる。」

 

 頭から脚先まで完全に拘束され奇妙な震動の持続がヘリのプロペラローターの音だという事に気づくまで差して時間がかからなかった。

 

「私達を置いて行くな悟、私は、おまえといっしょでなければ圭一郎について行く事ができない、頼む、私はこのまま足手まといになりたくないっ」

 

 ヘリに同乗した女の同僚に辛うじて答える悟だった。

 

「つかさ、圭一郎は弱者を守る為なら誰よりも強くなれる奴だ。だが強くある事と強がりを混同する、あいつの限界が来て倒れた時、助けられるのはおまえだけだ。オレじゃない。」

 

 つかさは溢れ出るものを堪えた、今堪えなければもう警察官ではない、

 

「分かった、悟、私は圭一郎の前ではオンナを捨てる!」

 

 つかさが気づいた時には、もう既に悟の意識は無く、昏睡していた。ヘリに同乗した黒髪の女医に引き離されたつかさは、悟が最後まで聞いていたかどうか計りかねた。

 国際警察戦力部隊、『豊島区カジノ災害』、1名の欠員発生という散々たる結果だった。

 

「あの快盗め!」

 

 ドクターヘリが避難所の高校グラウンドから飛翔した直後、校門の柱に鉄拳を叩き込んだ圭一郎だった。

 

 スゲ・・・・、

 

「荒れてんな、朝加のとっつぁん。」

 

 それを棒立ちで直視してしまっているのはカイリだった。既にデニムとパーカーと底のまっ平らなスニーカーの出で立ちでさも仕事帰りを装っていた。電信柱に隠れて様子を伺う方が勘ぐられるだろう。

 

「君は、あのジュレの、ええと確か夜野君だったか?」

 

「かっこいいっスね、おまわりさん。」

 

 カイリは圭一郎越しに今回の被害者達の顔、血まみれの腕を出しながらストレッチャーで運ばれる子供の顔、それを救助する人間達の悲壮感を眺めていた。

 そして気づかれないように眼前のおまわりと口だけは合わせていた。

 

「いや、そんな事より早くここから立ち去りたまえ!野次馬根性だろうが、ギャングラー犯罪にどんな形で巻沿いになるか分からないんだぞ!早々に自宅に戻りなさい。君がいなくなったら、心配する人間もいるだろ!」

 

 説教かよ、

 

 カイリは一言一言カチンとくるこの警察官を嫌悪でしか見られなかった、見られなかったが、表情だけは人なつっこく見えるように振る舞った。

 

「ハイ、気遣ってくれてありがチュ、また店にご注文してくださいよ。なんでもテイクアウトいたしますから。」

 

 あらゆるものが不快でどうしようもなくなったカイリはなにもかも中途でありながらも事件現場に背を向けた。

 

「だからとっつぁんなんだよ」

 

 もちろん小声で聞こえないように気をつけた。

 

「最近の若者は、ちゃんとした挨拶もできないんだな。」

 

 一方の圭一郎、しばらく避難誘導にかまけていた隙に顔見知りがいなくなっていた事に気づく。そしてなぜこんなところに来たのか理由を考える内警察官の勘が働く。

 

「犯人は、犯行現場に戻る習性がある。」

 

 

 

 『BISTROT Jurer』と赤く描かれた釣り看板の店がある。フランスのアパルトマンにありがちな壁でありながら、屋根は純和風な瓦をいくつも敷き詰めている。この1階全体をビストロ、即ちフランスの大衆料理店を営んでおり、そして2階から3階にかけて、3人の共同生活のスペースがある。看板と同じ赤く塗りつけた玄関から入り、備え付けたドアベルが安っぽい真鍮の音をたてる。

 カウンター、2人席、4人席が無造作に配置された店内は今は暗い。暗いくせに、カイリは同僚2人がセンターの4人席に座しているのを見つける。テーブルにはあのVSチェンジャーが2丁転がっている。

 

「遅かったなカイリ。・・・・おまえまさか現場に戻ったんじゃないだろうな。」

 

「こっちは大変だったんだから、ダイヤルファイター壊されちゃうし、帰りはずっと屋根伝ってスパイダーなんとかみたいにしなきゃいけなかったんだから、そっちが合流してくれたらダイヤルファイターで帰れたじゃん。カイリのいじわる。」

 

「たとえ誰かが倒れても、残った奴が必ず願いを叶える、だから、オレ達はそんな馴れ合いをしないんだろ。それよりダイヤルファイター壊すなちゅうの、分かってんのオタクら、ダイヤルファイターだって『ルパンコレクション』なんですよ、直せなかったらそれでオレ達のやってる事全部パーになっちゃうんですよ、分かってるんですか?はぁ?」

 

 カイリは2人の曇った顔を見て後悔した。

 

「修理は『小暮さん』が『エックス』に頼んでみると言っていた。それより、荒れてるな、やはり、現場の状況を残って見ていたんだな。オレ達のせいで被害に遭った人達を。」

 

「ギャングラーもここ最近巨大化してばかりだからね、でもコレクション取らないと、私達大切な、」

 

「ハぁ!」カイリは2人が言い終わるまで黙っていなかった。「何言っちゃってくれちゃってるの?!的外れもいいとこだぜ恥ずかし、オレはそんな軟弱じゃないぜ、ちょっと国際警察が慌てふためく姿見てからかってただけだって、ギャングラーなんていくらでも巨大化すりゃいいさ、逃げたらどうせまた新しいコレクション腹に収めてやってくんだろ、それをオレ達がまた盗めばいいだけの話じゃんか、オレ達にとっちゃオイシイだけの話じゃんか、なっ!」カイリは言うだけ言って2人の反応を見ること無く背を向けた。「便所いってくらぁ!ああ、あと寝るわ、あでゅ~」

 

 トオマとうみかは不機嫌なカイリにはもう慣れっこだった。そしてそんなカイリの本音も渋々承知していた。

 カイリは、2階にある自分達の共同トイレに入り、そこを1日の終わりに磨く習慣があった。うみかもトオマも同じ洗剤、同じブラシを使いながらここまで新品同様にできなかった。ギャングラーより赤カビを憎んでいるのではないかと思えるほどだ。

 

「オイシイ?」カイリはブラシの動きを凝視しながら独り言を呟いた。「んなわけねえだろ!オレ達はどうしてこんなに中途半端な力しかねえんだチクショっ!!」

 

 ビストロジュレの夜は深けていく。

 

 

 

 

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