快盗戦隊VS警察戦隊に極めて近い世界線のルパンレンジャーVSパトレンジャー 作:bassher
※諸処設定等変更ございます。
※オリジナルのスタッフが小説という形で奮起される事を切に願います。
『金庫』は元々彼がいくつか試作を重ねて作った手製のコレクションであった。
『金庫』はコレクションを保管する事を目的とし、その内部に無限の空間を持つ事で多くのコレクションを詰め込む事ができた。
「故に我あり」
だがあまりの力と知識の累積はいつしか『金庫』に知覚を与える。これを彼は喜んだ。知覚を知性にする為にさらに多くのコレクションを収納してみる。知覚はたちまち意識となって彼の言う事まで理解するに至った。
「必要不可欠なのは歩く事」
『金庫』に望みが出来た、彼と同じ身体を獲得する事。
身体を得た知覚がどれほど貪欲に知識を吸収し成長し拡充させていくか、彼はその好奇心を抑える事ができずに身体を与えてみる事にした。
原罪とでも言うのか、
しかし彼は失敗した。『金庫』は身体を得て成長し知識を深淵まで拡充させていく。コレクションの蓄積と、それに呼応した身体の結びつきは『金庫』に想定外の力を産み出し、身体へのコレクションの力の付加、『金庫』そのものがコクレションの力を吸収し、知識を身体の記憶と共に蓄積、あるがままに、素直に、次々身体を獲得し、次々身体を貪っていく。その様に彼は怖気を覚え、『金庫』から『ボヘミア諸王の敷石』を以てコレクションを取り上げた。
洗い流す・・・・
だがその反動に戦慄した。
マルチバースの一つが『金庫』に蓄積されたエネルギーの暴発で消失。『ボヘミア諸王の敷石』の解錠のエネルギーが、『金庫』のコレクションのエネルギーを誘爆した結果だった。『金庫』はその暴発すら成長の糧として手に負えない存在となり、ある意味生命活動に近い生態を覚え、文字通り彼の元から巣立っていく。
『解錠すればその巨大なエネルギーが暴発し、修復してコレクションの能力を定着する』
『金庫』からコレクションを取り返す度に成長していく、その間無数のマルチバース世界が犠牲となり彼と『金庫』の前に残骸が降り注ぐ、『金庫』内のコレクションの数を減らす事で確実に暴走の規模は縮小していくものの、『悪い奴ら』を手にする頃にはマルチバースの相転移を引き起こす寸前だった。
『コレクションの能力を減殺して解錠すれば、暴発を免れ、能力も消去する』
『金庫』の力は『悪い奴ら』によって減殺され、そして安全に『ボヘミア諸王の敷石』で取り出される。『金庫』の力は一つの世界に留まる程度に抑え込まれ、徐々に彼に追い込まれていった。
しかし一度生命活動を覚えた『金庫』は、追い詰められながら、ある意味生命力といえるものを発揮していく。
『死の際まで追い詰められれば、進化する』
そして彼、アルセーヌは、太刀打ち出来なくなった。
甲州街道と井の頭通りの交差点。
「落ち着いて!早く!非難を!」
新宿から世田谷方向に大渋滞が発生し、歩道にもはみ出さんばかりの人が気が狂いそうな程過密に逃げている。
そう、渋谷の区域内から住民が脱出、主要幹線から逃走を図ろうとちょっとしたパニックに陥っている。
「ビッグバンビーム!」
その40分前、青山通り表参道付近、突如数百単位のポーダマンが出現し、さらに最初から巨大化したギャングラー怪人が地下からアスファルトを突き破って出現、この報を受けただちに国際警察より布告された避難マニュアルに則り、渋谷区内、さらに渋谷区周辺市民に対して速やかな避難をマスコミ、ネットを介して通告され、とりわけ現場ともっとも離れた甲州街道沿いに脱出が集中した。
この時、表参道では大量のポーダマンは左右の市街地に拡散していったが、巨大化したギャングラー、ライモンは、青山通りの真ん中に地中深く大穴を空けただけで、即座に姿を消す。
「だからよ、逃がさねえって言ってらぁね!」
そして地元警官隊総出で避難誘導をしていた甲州街道沿い高架線路並び高速道、笹塚駅から数メートル西の地中から突如巨大化したライモンによってアスファルトもろとも断裂される。ライモンの姿はその出現だけで忽然と喪失し、その穴から大量のポーダマンが渋谷区境に沿って拡散した。
「早すぎる!」
驚くべき事にライモンの出現はその2箇所だけではない、青山通り出現後の5分後、六本木通り青山学園大学南土中から首都高を寸断、次いで5分間隔で広尾駅、恵比寿通りと外延西通りの交差点、恵比寿-目黒の中間線路、旧山手通りと東急線が交差する路上、旧山手通りと首都高3号線の交差、東北沢駅、井の頭通り大山交差点と来た上での甲州街道襲撃だった。
渋谷区を半周するのに1時間を要さない脅威の速さで、巨大化しては一瞬で消え去りポーダマンを大量に散布する、ライモンの目的は明確であった。
「ぎょぎょきょぎょぎょぎょーっ!」
その後さらに1時間かけて渋谷と周辺を繋ぐ主要交通路を遮断し、区境にポーダマンを蔓延させたライモンは、完全に渋谷区に住民達を封じ込めた。
国際警察戦力部隊執務室。
「高尾ノエル!オレ達はいったいいつまでアンタの待機命令を守らなきゃいけない!」
朝加圭一郎は、高尾ノエルの襟首を両手で掴み上げた。
「君達ではあのステイタス・ゴールドに太刀打ちできない。」
ステイタス・ゴールド?こいつはそんな充て名まで逐一考えているのか?
そして明神つかさはそんな2人の険悪なムードをやや距離を置いて眺めている。
「このまま渋谷をギャングラーの巣窟にしていいのか!」
「手を出せばそれだけ被害が拡大する。ここは機会を待って欲しい。これは上官命令ね。」
「くそ、そんな命令が、大体おまえは今咲也の代わりとして、現場主任のこのオレの下にいるんだぞ、命令は」
「圭一郎、おまえは巡査部長、高尾ノエルは警部だ。国際警察のルールに照らし合わせれば、命令権限は主任でなく階級が優先する。」
つかさに正論を吐かれ、大口を開けた圭一郎は直属の上司である窓際のアフリカ系アメリカ人に視線を送る、しかし、
hahahaha、
頼りの上司は大量の書類の処理に追われているが、目線を送ってきた圭一郎に思い切りの笑顔を作って親指と人差し指で輪を作ってウィンクするだけだった。
「・・・・、だ、大体おまえ!あの快盗が死んだと言ってたぞ、どうして生きてる!」
「今更か圭一郎。それ以前に、この男信頼に置けないだろ。問題があり過ぎる。いくらなんでも二重スパイですなどとよく言えたものだ。」
」
つかさもようやく怒りを顕わにした。
「ハハハ、圭一郎クン、ボクは死んだなんて言った覚えはないよ?つかさくん、ボクは君達の信頼も何も、フランス本部に絶対の信頼を置かれている。」
hahahaha、
今度はつかさが上司二人を前に絶句する番だった。
確かに高尾ノエルは大見得を切って先日快盗である事を暴露した、暴露したがしかしその後なんと、
あれはフランス本部からの命令で、快盗の懐に潜入している芝居さ、
と事も無げに警察3人組を前に言い切ったのである。3人とも顎が今度こそ外れるのではないかと驚愕した。当然だ、つまりは二重スパイである、ミイラ採りがミイラに、木菟引きが木菟に引かれる、羊を刈りにいけば髪を刈られて帰ってくる、警察隠語のエスとエムの悲劇など類例はいくらでも掲げる事ができる。そんな高尾ノエルを国際警察フランス本部は絶大な信頼を置いて潜入させているという話だ。
「それだけか!」
「シワになるよやめてくれないかな、これは警部としての命令だ、ボクが許すまであのギャングラーとの直接対峙は禁止だ。圭一郎クン、丸腰で挑んでこれ以上欠員を出さないでくれたまえ。つかさクンも単独で接敵すればどうなるか分かっているよね?」
そう言う高尾ノエルは、映像に映る獅子面のギャングラーに暗い視線を送るしかなかった。
新宿御苑は新宿と渋谷に跨る庭園である。
その名所である桜の木を容赦無く踏み倒した。
「あいつ何もしてねえのに巨大化したぞ!」
『クラァァァゲェェェェェェンン!』
「カイリ、とにかく行くぞ!」
『完成!ルパンカイザーマジックナイト!』
「とっとと片づけちゃってカイちん!早く帰えろ帰えろ!」
快盗達は、やはり高尾ノエル=エックスが制止したにも関わらず積極的にライモンに戦いを挑んだ。
「大体なんなんだあいつ、全然ダイヤルファイター受付ねえ、どうなってだよエックス!」
「エックスは整備不良じゃないと言ってただろカイリ、ウソかもしれんが」
最近3人は何かある毎に、スベテエックスノセイ、が流行りだった。
「早くやっちゃってよ!グッディのカイちん!」
「おまえら、オイラ、どうなっても知らないぜ」
今回のルパンカイザーは白と漆黒、グッドストライカーのボディにマジックダイヤルファイーを頭部と右腕、そして左腕にはシザー&ブレードの、快盗が現状所持するもっとも強力な装備で挑む。
新宿御苑を舞い上がってブレードを右手で投擲、同時にスナップ、直後左右に分身し5本のブレードが巨大ライモンに向けられた、
「フハハハハハ」
ライモンは不遜な態度を崩さない、小指の爪を向けただけだった、向けられた爪先から、小さな孔より飛び出た煙の玉のような緑光がブレードの一本に衝突する、ブレードの一本が弾け、横向けになった事でその左右に展開されていた他のブレードも巻き込み吹き飛ぶ、刺さるブレードは2本、だがライモンはそれでも動じる事がない、刺さった2本のブレードはその像を消す、
「まるで効いてないよカイリ、トオマ!」
少女の悲鳴がコクピット内で木霊する、
「だから、適わないって最初から言ったんだオイラ」
「ちょ待て、今度は盾デッカクして」
「おい、カイリ、アレを見ろ、なんだあのオレンジの」
『ハンマー』
それはブレード、だったものだった。
漆黒と銀の幅広のダガーを思わせる形状から、2連発ガスタービンを翼両端に備えて浮力を強引に推力で押し上げている雌黄の機体、ブレードがライモンの放った光線で変わり果てた姿だった。
「あれはハンマー、ブレードの姉ちゃんにそっくりだぁ」
グッドストライカーの言う事に3人はむしろ仰天した。
「コクレションに親子も姉弟もあんのかよ」
となると、あれは女体化したブレード?
「ブレんがハマーんになっちゃった。」
また勝手にニックネームをつけるうみかだった。
「オゥラァァァァ!!」
ライモン、地にあって浮かぶカイザーに向かってその長く鋭利な爪を振りかぶる、
直撃、
混乱していたところ半ば無防備に衝撃波を喰らって墜落、コクピットの中でうみかの悲鳴とグッドストライカーの嬌声が轟く、
「にゃろぉ!」
立ち上がろうとハンドルを捻るカイリ、
「オラぁ!」
いつのまにか迫って、その頭を掴み力任せに叩きつけるライモン、
スナップ、
割れるルパンカイザー、陶器のようではなく、風船のそれのように割れて表皮が縮んで跡形も無く消える、
「こいつに賭けるぜ!」
脱出マジックでライモンの後背に出現するカイザー、そこへ飛来するハンマーダイヤルファイター、ハンマーの両ブースターが機首に集約され、まさに雌黄の鎚となって、カイザーの右腕に握られる、
「翔ぶぞカイリ!うみか!」
掴みかかろうとするライモンを振り払う形でカイザー飛翔、
「ガガガぁ!」
うみかが叫びマジックの力かなんなのかハンマーの鎚が肥大化し、カイザーの上半身ほどの大きさにまで膨れあがる、眼下にライモンを収め急降下で振り下ろすルパンカイザー、
「光にナれぇぇぇぇ!!」
グッドストライカーの叫びが木霊する、
「オレ様にそれを言うか!!」
左の片腕を伸ばして迎撃するライモン、
巨大ハンマーとロングクロー、
「グーでオイラの勝ち!」
押し負けるライモンの腕がそげ落ちて桜の木を数本巻き込みへしゃげる、
地面を抉る鎚を再度持ち上げ、死角となったライモン右側面を横打ちする、しようとした、
「てやんでえ!」
背中からである、突如ライモン左肩胛骨から片腕が飛び出してくる、飛び出してカイザー右腕を力任せに掴みもぎ取った、
「マジマジ!!」
今度はカイザー右腕の方が叩きつけられる、カイザーの右肩も火を吹いた。うみかの叫びも虚しく動かないマジックダイヤルファイター、
「なめんなぁ!」
さらに右肩胛骨からも腕が飛び出してくる、2つの右腕の攻撃をシザーの防御力だけで防戦するカイザー、
「もう生え替わんのズッコいしょっ!」
さらに肩からもげたはずの左腕が体内の肉を突き破って出現、計四本の腕が振りかぶる爪にシザーの腕ももげ落ちた、
『もう帰っていいよ、グッディ』
「頼むよノエルぅ」
カイザーの背後である、両の腕を失ったカイザーの背後に突如光の膜が出現、そのまま後ずさりし呑み込まれるカイザー胴体、同時に、左右の腕の落ちている地面が発光、やはり同じように膜が地面と水平に発生し、両腕を埋没させた。
「逃げんのか、まあいい、おい!聞こえてたら今度は銀のヤツも来い!いいな!」
ライモン、巨大化した身で大号声を轟かせた。
「聞こえてるけどね、ライモン。止めても行くのはある程度分かってたけど、カイリくん達本当にやるんだよな。ま、それが彼等を選んだ理由でもあるんだけど。」
新宿御苑、一般人に公開されていない桜の木がいくつも植わっているエリア、その木陰に隠れる形で、半ば頭上で展開される2つの巨人の戦いを終始眺めていた銀の仮面、ルパンエックスが立ち尽くしていた。その手には機首が赤い銀の列車が握られている。
「ベロニク、無理をさせて済まない。君ですら『金の金庫』からコレクションを取り出す事ができないか。巨大化していてすら。」
エックスは手にする列車のミニチュアをまるで他人を労るように撫でている、
「でもデータは取った。ありがとうベロニク、アルセーヌを庇った古傷が痛むだろうによく耐えてくれた。なんとか金の金庫を開けてみせるよ。」
巨体ライモンは、なんの前ぶれも無くその姿を消す、等身大に戻ったのか、それともさらに縮んだのか、エックスすらその場で捉えきれないでいる。
「これから快盗達を説教にいかなくては。」
むしろエックスは、自ら光の膜を発生させて空間をショートカットで移動、その場から自らも消える選択をした。
「快盗達がか!!」
朝加圭一郎は、その朝区営の公園ベンチで新聞を読み終える昭和のおっさんの行動を経て、スマート端末の受動的に入ってくるSNSの見出しに仰天した。
『快盗破れる』
『もう快盗も警察も頼りにならない』
『快盗は強い事だけが取り柄なのに、結局ただの小悪党じゃん、がっかり』
『快盗は警察よりマシだと思ってたのに全滅の幻滅なのだ』
『もうダメだ、世も末だ』
『もうライモンに幸せに殺してもらうしかない』
『ギャングラー様に地球を乗っ取られる歴史イベントに参加できた事をせめて喜ぼう』
朝加圭一郎にしてみれば驚天動地の文言が飛び交っている。
「VSチェンジャーさえあれば」
文字通り歯噛みした圭一郎がふと視線を空に向けると、通りすがりの知り合いが視界に入ってきた。
「チワっす」
以前快盗容疑をかけてしまったフレンチの店員だった。
「やあ、君か。夜野、カイリ君。」
白に近い金色に髪を染めた青年が執拗に口角を上げた笑顔を向けてきた。
「ケイちゃんも大変スね」
「ケケケケ、ケイちゃん?」
「警察と圭一郎架けてケイちゃん、カッコイィー」
カイリには目的がもちろん、あった。
この男を使ってあの怪物を討つしかない、
そう考えるのは、それしか打つ手がないからである。
数時間前、
「それがなんだっツウーノ!?リベンジするっテ!」
カイリはひさしぶりに荒れた。
眼前の3人、高尾ノエル=エックスを含めた快盗仲間の眼前でカイリは吼えた。
「君達の装備ではライモンの金庫を開けるのは不可能だ。マジックもシザーもブレードも、君達の無謀に巻き込まれてボロボロだ。」
ビストロ・ジュレ閉店後、カイリはエックスをまるで居ないかのようにまくし立てた。
「おまえらもリベンジするよなトウマうみか!」
今回二人はカイリに対してあからさまに曇った顔のまま黙り込んだ。
「なんだよそれっ!オレか?!オレがオカシイっちゅうの!?」
「カイリ、ヤツは強い。それが全てだ。」
ライモンとの戦い、等身大で3人がかりで挑んで拘束するところまで至ったところ、突如巨大化をしたライモンにコレクションを奪う前にカイザーで挑む事になった快盗達、その再生能力に手を焼いた、いや舌を巻いた。
「おそらく、『医者医者』の能力が発動してどんなダメージも意に介さない超回復しているとの事だ。他の能力はあの金の金庫が蓄積して潜在していた能力が現出している、4本の腕も性転換も他のギャングラーの能力だった。」
エックスは、カイリにそう説明しながらもなにか遠くを見つめる眼をしていた。
「なんだっつうの?」
カイリはその視線が自らに固定されている事に違和感を覚えた、人に聡いカイリだった。
「昔、君と同じような目つきでボクに怒鳴り散らした人を思い出してね。それはいい、今ちょうどマジックとシザー&ブレード、そしてグッディを使って対抗策を考えていたところだ、あの金の金庫の攻略はボクに任せたまえ。その内君達にも助力してもらう。それまで待ってくれたまえ。」
カイリの眼がさらに引き痙った。
「冗談ショ!!」
さらに描く事すら憚られる程の罵声をエックスに浴びせるカイリ、それを右耳から左耳に平然と聞き流すエックス。
「そういう反応すると思っていたよ。VSチェンジャー、レッド、ブルー、イエロー、音声認識、マスターコマンドプロンプト・エックス。機能停止。」
「「なんでこっちのまで!」」
とんだとばっちりのトオマとうみか、慌てて自ら携行するVSチェンジャーを取り出す、どんな操作も受け付けず、沈黙する2丁の銃だった、カイリは怒りを通り越して思考停止したかのように自らの得物を眺めた。
「マジか。アンタこんな事までやんのかよ、どんだけ嫌がらせなんだっつうの!!」
「それは、ボク等が信頼関係に無いからさ。」
ズバリ、互いの切り札となるワードを切られて唖然とする3人の快盗だった。
「イエモン!イエモン!」
うみかは自身のダイヤルファイターすら反応が無い事に驚愕した。
「おまえ、コレクションの機能を止められるのか、エックス!」
トオマもさすがに吼えた。
「まあ、銃と3機のダイヤルファイターは、メイド・イン・ボクだからね。本物のコレクションはボクでも干渉できない領域があるが、君達に与えたものならある程度、ね。」
「えっ待って、あの鏡餅ロボと兄弟・・・・」
そんなうみかを余所にカイリは黙したままエックスが立ち去る姿を見送る、その眼光はめまぐるしく瞬きを繰り返しながら。
「ケイちゃんサボタージュっスか?」
そうしてカイリが辿り着いた結論が、今この目の前にいる男を転がすという手だった。
対して朝加圭一郎、力の無い苦笑いで金髪の青年に応えた。
「まあ、そんなもん、なんだろうな。言い訳はしない。」
カイリの目は一瞬つり上がったがしかし、いつものように卑屈な笑みに立て直した。
「なんすかなんすか、何があったっスか、いつものように猪みたいに元気なケイちゃんなのに。」
「正しい事が、できないんだ」力無く呟いた。
カイリは自分でもどうしようもなくなった。
「なんすかそれ!」思わず圭一郎の持つ新聞を上から掴んだ。
「上司から武器も取り上げられている、手も足も出ない。」
「武器がなんだっツーすか、オレ知ってますよ、ケイちゃんが快盗やあの化け物相手に、あんな変身する姿になる前、素手に近い時から立ち向かってたのを。ケイちゃんが正しい事しないでなんでケイちゃんナんすか!」
「カイリ君、君がそんなにムキになる事も」
「もうイイっすよ!」
そう言って勝手にやってきて勝手に言いたい事を並べ立て、そうして勝手に身を翻して離れていくカイリだった。
「そうだな、武器を抑えられる事が戦わない理由にならない」
そう呟いてやや鼻がツンとしてきた圭一郎だった。
「カイリ君、オレのファンかな・・・・」
ややにんまりとする圭一郎はしかし、快盗というパワーワードに徐々に頭が染まっていく、
オレ達は、これしかないから快盗やってんだ!!
「違う違う、手段を選ばなくなったら、快盗といっしょだ。」
朝加圭一郎は、新聞を片手に天を仰いだ。
一方の夜野カイリ。朝の公園を飛び出して近隣の高速高架下、工事半ばで中断され金網で囲まれた空き地に辿り着いていた。
「なんでだよ、なんでだよ、なんでなんだよ!どうしてこんなにあいつに腹が立つんだ!見損なった!」
カイリは荒れた、なぜ思惑を一切自分から放棄して御破算にしたのか分からない程に荒れた。
「なんでなんだよ、ケイちゃんが弱音なんか吐くなよ、兄貴だったらどんな時だって弱音なんか言わなかったっツウの」
と言って気づくカイリだった。
「なんで兄貴なんだよ、兄貴と重ねて、兄貴になり切れないケイちゃんに腹立てるってオレってなんなん?」
無人なのを良い事に大声を出し、自分の頭に自分の拳を数回叩きつけて、さらにその金に染めた髪を千切れんばかりに掴んだ。
「ライモンだろライモン!あいつなんとかして兄貴取り戻すんだろオレ!どうにもなんねえ事どうにかしなきゃ兄貴取り戻すなんてできる訳ねえじゃんか!!」
上がった息が徐々に整っていく、早かった瞬きがペースダウンし瞳孔の充血もやや治まった。
「クールに行こうぜオレちゃん。ギャングラーも、ケイちゃんも、国際警察も、エックスも、トオマもうみかも、全部ひっくるめて纏めて転がしてやるっテヨ。」
夜野カイリの今日のサボタージュはここまでであった。
「入院見舞いなら、果物の方がいいぞ。」
店仕舞いしたジュレの厨房、今夜はトオマが1つ1つ食器を手入れする日だった。その暗がりに紛れて、少女がマンガのような忍び足で玄関先まで辿り着いたところだった。
「デヘヘ、アタ、アタシ病院なんかいかないいかない、ちょっと散歩してますですハイ。」
トオマはうみかの態度に感情の無い眼を向けた。
「やめておけ、警察の男に恋をしても自分が傷つくだけだぞ。」
「恋?鯉キングなんかしてないしてない、ホントだって、ただちょっとアタシのせいで傷つけたから」
トオマは気づいていない、自らの言葉ではっきりとうみかの感情を恋愛方向に傾けてしまった事を。これがトオマであり、これがうみかだった。
「化粧が崩れてるぞ。」
うみかの流した一筋の涙に、トオマのそれはフォローになっていなかった。
「だって、アタシのせいだから、」
トオマはあきれるように言い放った。
「せめて、情報を引き出してくるんだ。それだけだぞ。」
トオマがそう言うと泣きながら笑顔を作るうみかだった。
「カイリにはナイショね。」
「ああ」
「そうだ、今度お料理教えて。あの男、退院したら君の手料理が食べたいってゴネるんだ、図々しいヤツなんだよ。」
真鍮の音を鳴らして飛び出していく少女だった。
「全く」トオマは顔を歪めた。「俺はあいつら二人の保護者じゃない!俺だって誰かに愚痴をこぼしたいさ!」
パスタ鍋に思い切り金属タワシを押し付けるトオマ、
「おまえも暴れるな!」
そうしてトオマは前掛けのポケットからライムカラーのそれを取り出した。
「うみかからクスねたおまえだけが俺達に残されたたった1つの手立てだ。」
それは2層ローターのサイクロンダイヤルファイターだった。
「警察を揺さぶって奴等の力で金庫とコレクションの力を弱めれば、あるいはこいつでも、」
それをカイリにもうみかにも言わないでいたトオマ、トオマの思惑は奇しくもカイリの思惑と重なる。
「予告カードでも出してみるか」
だがしかしカイリのそれより、分かりやすく直線的だった。
「おまえサイちんで良かったな。このライムカラーからライもんだったらまる被りだからな。オレ上手い事言うな、センスあるかもな。」
などと絶対他人に見せられない下らない事でモチベーションを保とうとしていたトオマに、否定語の吹き出し投影をするサイクロンだった。
「ゲヘヘヘヘ、動くんじゃねえぞ、てめえら」
大量の煙が立ち上っているそこは正式名称渋谷駅前交差点、通称渋谷スクランブル交差点、
最強ギャングラーの1体となったライモン・ガオルファングは、その5又の交差点から北上する路上に向かって数百名の人間を立たせ、それを掻き分ける形で闊歩する、掌の指の又に1本ずつ、片手に4本たばこを持って火を灯し、それを両腕で計8本交互に咥えて煙を絶やさない。ライモンの極至近でその煙を浴びる老若男女、少しでも眉間に皺を寄せようものなら、
「オラァ!文句あんのかてめえぇ!」
さらに4本たばこを抱えた手が背から生えて12本の煙が肺の弱った老婆に向けられる、
「動くなつってるだろうが!」
咳込む3歳児、
「オラオラオラぁ、もっと煙になじまねえからだぁ!!」
ついには16本にたばこを増やし、極至近に人の群れを立たせたまま悪臭を態と垂れ流す。
ライモンは公園通りに沿って敢えて過密にした人並みを掻き分けていくのだった。
「だから言ったじゃないですか。貴方が態々手を汚す必要がないと。その為に快盗3人と警察3人を選んだ訳ですから。」
頭髪がそよ風で危うげに揺れる小暮はチョッキに着替えた高尾ノエルに背後から声をかける、
「それにしても、金の金庫の出現はボクの予想をはるかに越えて早い。もう百年はかかると踏んでいたのに、いったいどうしてあんな急成長を。アルセーヌのメモにもあれの出現条件は載っていない。」
「アルセーヌが命と引き替えに残したノート。」
今二人は国際警察に程近い丸葉柳が印象的な公園にいた。公園内には河川が流れており、ちょっとした橋が架けられて半ば水上を渡り歩けるかのように造成されている。なにより二人にとって都合の良いのは、夜になるとほぼ街灯が差さない事だ。
「ボクはね小暮さん、4つのコレクションを揃えた時点で快盗も警察も使わないで、いままで与えたコレクションも口実をつけて取り上げこの下らない茶番からみんなを解放するつもりだった。」
「承知していますよ。全てはアルセーヌ様を取り戻す為です。」
「アルセーヌがノートに6つのナンバーと2つのマスターキーが必要と書き残している。ボクはその為にVSビークルをコピー&ペーストして、ダイヤルファイター達を仕上げた。6桁のナンバーを読み取るサポートアイテムも組んだ。金の金庫を打ち破る為、グッディに様々な措置もした。いやそれでもまだ金庫自体の破壊はまだまだ遠い。やはりあのコレクションを見つける為、まだコレクションが足りない。しかし、」
小暮は口元をへの字に曲げた。
「私は今からでも遅くはないと思いますよ。前線から手を引いて全てを彼等6人に任せ、コレクションを回収し続けて統制すれば、」
「小暮さん、アルセーヌのノートをひさしぶりに読んだんですよ。アルセーヌらしい、字体が雑なくせにやたら細やかなところまで描き込まれている。」
水面に映る高尾ノエルの顔はさざ波に揺れている。
「ノエル君、ですが忘れないでください。元々『ドグラニオの金庫』がああなってしまったのは、アルセーヌの子供じみた好奇心が招いた結果だと言う事を。」
小暮の髪も水面からの微風で揺れていた。
「ホレ、食え。」
「ん?イエローちゃん、りんごがちっちゃい?」
剥いたりんごの皮の容積の方が、残った実のそれより大きいのはうみか=イエローのクオリティ。
「文句、言うな、せっかく来てやったんだ、食え。」
「おいしいよイエローちゃん。」
「うむ、有り難がれ」
王子の救急病院から、国際警察に程近い埼玉の国立病院に転院した陽川咲也は、夜陰に紛れて個室に入ってくるきっと素顔はカワイイに違いない彼女を心待ちにする毎日だった。対してイエロー、この小娘いったいどういう風の吹き回しかマウントを取ったキャラ設定で男と相対した。
「小娘言うなうるせえ」
「どうしたのイエローちゃん?」
「気にするな」
「分かった気にしない。イエローちゃん、どこ?もうちょっと近くにいてよ、少しくらい手を繋いでいいだろ」
宛がわれた咲也の病室は電動のベッドが備えられた個室である。決して国際警察も陽川家も上級市民といたずらに誇る訳ではなく、セキュリティ上の問題で他の患者と隔離する為である。でなければカーテンだけで仕切られた4人部屋の1つを宛がわれていただろう。
「全くおまえは図々しいな、少しだけだぞ、ホレ。」
陽川咲也の両掌が、自分のベットの傍らに腰を落ち着ける娘を手探りで捜す、手の甲が頬に触れ、それを元に娘の両の頬を両の掌で捉え、次いでその掌で髪の毛を撫でるように娘の顔の輪郭を捉える、娘はされるがまま動かなかった、特に女子はそうであるが毛根は触感が過敏らしい、娘は髪を撫でる男の右掌を自分の右掌で握った。
「ああ早くイエローちゃんの顔が見たい」
「治るの?」
「うーんどうだろう・・・・、お医者さんはボクにはっきりいつ治るか言わないんだ、ノエルさんが持ってるコレクションはビルとか街とかなら修復できるんだけどなぁ」
「コレクション、ルパンコレクションで思い出したけど、今度のギャングラー、ものすごい勢いで自分の傷治すんだってさ。エックスが言ってた。」
このエックスと高尾ノエルが同一人物であると未だに二人は理解していなかった、そして何より、未だに気づいていない。
「んん、傷を治すコレクションがあったらなぁ、そんな魔法みたいな力、ん?」
「ん?待てよ、そのコレクションを手に入れればえーと、そうだ!」
「そうだ!そのコレクションがあればボクの眼見えるじゃん!」
「じゃんじゃん!」
二人の脳はこの段階までテキストを積まなければこの知恵に辿り着かない、実に脳のレベルがどっこいの二人だった。
「じゃんじゃんじゃーん!」
「くしゃくしゃのじゃんじゃーぁん!」
互いに互いの両手を握り合ってハイテンションになる二人。この部屋が防音対策されている事は実にラッキーだった。
「現場です、依然我々はこのコクエイホールにてバリケードを築いてギャングラーなる怪物集団の襲撃に備えて」
と中継をするのはイケメン6人組のスーパーアイドルグループ、その名もチョー新宿。グループ平均11歳にしてCDデビューシングルチャート1位の記録を樹立して以来、15年もの間「ハグしに行ける」女子アイドルグループと芸能界のあらゆるランキンクを二分してきた、白面の下顎を緩めたマスクで0から100歳を越える女子達が眼を血走らせて狂喜するという彼等、今年の世界弾丸ツアー敢行を控え国営放送局直営のイベントホールにてファンミーティングの最中だった。ギャングラーライモンによる渋谷封鎖で否応なくコクエイホールへ立て籠もって、世界に向けて定期的に動画配信し続けていた。
「オラオラオラッ、てめえら今日からオレ様のペットだぁ!」
まずグループリーダーの端末がその声の音源に向けられ、防音処置された壁が衝撃で炸裂する光景が世界へ配信、めまぐるしくアングルが映り変わり持ち主の悲壮な表情を映し出したのを最後にブラックアウト、音声だけは怪物の怒涛の叫びと破壊的衝撃音、そして圧倒数の女子とアイドル達の嬌声が鳴り響き、ついにはひたすら広告映像がリピートされたまま現地映像が映し出される事は二度となかった。
「のえるクンヲマチタマエ、きみヒトリデハてニアマルゾ」
と上司は制止したものの、快盗の予告状、
『今宵 駒場東大前にて待つ 快盗』
というカードの一文に動かざるえないつかさだった。
「快盗を捕まえるのは我々国際警察の仕事です。奴等を使って咲也の回復も可能になるかもしれません!」
「クレグレモふかいりシナイデクレタマエ」
言い切ったつかさはヒルトップ管理官を振り切って出動した。
いつぞやの咲也と同じくVSビークルバイカーを等身大に起動し、跨って環七を南下、山手通りの煩雑さが東大敷地を間に挟んだだけでウソのような閑静な住宅街と化す奇妙な空間へ出る。たった2キロで渋谷が伺える土地と思えないそれが駒場東大前である。
「1人?」
駅の階段上に伏せて、ヘルメット脱ぎ様ロングの頭を振るつかさのそのつむじを、トオマの眼は見る事ができず視界が濁る。その時、あるいは自らの計算違いを自覚すべきだったろう。だがこの手しか無いトオマは決断するしか無かった。
階段上から落下して後部座席へ。
「キサマ!?」
「このままコクエイホールまでポーダマンの群れを突破してもらおう。」
突如後部座席に震動が起こり、振り返る間も与えられず、背に銃口の感触がした。突き付けられた銃口が実はブラフでしかない事をつかさは知るよしもない。
「キサマ!公務執行妨害追加だ!」
軽犯罪に累積制が果たしてあっただろうか。
軽く自ら進んで又割きをしてしまったトオマは苦痛を表情に出さずに用件だけ言った。
「あの渋谷のギャングラーの金庫を開く事に協力してもらおう。」
「私がそんな脅しに」
「ヤツの収めているコレクションは身体回復、おまえ達の仲間の眼を回復する事も不可能ではない。」
咲也とうみかが何度もテクストを重ねて行き着いた答えをトオマは単独無言で辿り着く、いや普通の人間なら当たり前レベルで思い至るだろう。そしてそれはつかさも既に思い至っていた。
「やはりそれしかないのか」
今回のライモンの渋谷区封鎖では、境界線が街道に沿っている場合あまり効果的ではない、およそその為にかつて無い程の大量のポーダマンを渋谷区境界に徘徊させており、そこで接敵する事が渋谷区解放の最初の行動となる。つまりトオマにとって敵の封鎖を突破し、ライモンと最短で戦うには山手通りからの強引な実力行使がもっとも効率的だった。
「なぜ単独なんだ?仲間の単細胞はどうした?!」
「煩い!圭一郎は単細胞だが、おまえに言われる筋合いはない!」
等身大バイカーでポーダマンの群れを中央突破、それでも数体のポーダマンがバイカーボディーに絡まり付いて運転困難になる、半ばゼロ距離射撃でつかさはそれらを掃討し、降車しつつVSチェンジャーにビークルを装填、
「警察チェンジ」
3号はいつのまにか姿を眩ましているトオマを気にする暇も与えられず周辺の数十のポーダマンを独りで対手どらなければならなくなった。
「くそ、囮にされたという事か!?」
だが今回の3号、敵に囲まれながらも手応えを敵から感じられなかった。
「すごいな、銃の威力が上がっている?高尾ノエルか?」
つかさは3人の中でも銃撃の得手ではない、もちろんそれはコンマ何ミリの差のブレの世界の上での話だが、そのブレで撃った弾丸が今回良く敵に効いてくれる、1発で偶然2体までならこれまで何度かポーダマンを撃退した経験のあるつかさが、今4体の敵を1発の弾丸で消失させた。
「やいやいやい、オレ様のシマで何してくれてんだぁ、はぁ?!」
山手通りの少し小路を入った中学校に傾れ込む形になった混戦で目と鼻の先に居たギャングラーライモンが突如空中から降下してきた。軌道からすればおそらく近場の高層ビルあたりから一跳躍でここまでやってきたのだろう、パトレン3号は単身この強力な敵を対手しなければならなくなった。
「あいつ、どこに行った!?」
対峙した3号は消えた青の快盗にあきれ果てながらもライモンの金庫に威嚇を与え、ポーダマン数十体を掃討。
「くそ、おもしれえ」
ライモンは副腕を出そうとするも、金庫に命中するトリガーマシンの力が効いてるのか中々形成できないでいる、
「てめえら!手ぇ出すな、オレはこいつが気に入ったぁ!」
ライモンの号令で、ポーダマンが徘徊するグラウンドのセンターにぽっかりサークルが出来る、
衝撃波を爪から放つライモン、
3号、大きく側転して回避、そのまま金庫に制射しながら駆け出す、
「いいぜ、楽しもうぜオラぁ!」
近接されむしろ格闘戦を嬉々として受け入れるライモン、鉄の爪とゼロ距離射撃を幾手も重ね拮抗しているかのように見える、
遊ばれている、
しかし祖父より学んだ護身術の全てを動員しても明神つかさ=パトレン3号は敵がこちらの焦る姿を楽しんでいるとしか見えない、このままでは敵のたった一撃本気の攻撃で絶命するだろう、おそらくその一撃は、ライモンが咥えた骨を右手に持ち替え今振り下ろさる一撃である、
「ナ!?」
しかしそれは空振りに終わる、それどころかライモンは姿勢を崩して俯せに転倒、それは足、両脚に足枷がいつのまにか架かっている、
「これは、私の手錠?ヤツめいつのまに、」
どうして変身していない、つかさの頭を過ぎったがそれもつかの間だった、
「早く片づけろ、口の中だ、至近から撃て」
ライモン背後、そこに立っていた、青いスーツ、目元だけ隠す青いマスク、頭に乗るだけのハードフェルト、バイカーの後部座席に跨った時にスリ盗った手錠をライモンの足に投擲し両脚を封じたトオマがそこに立っていた。
「てめえらズルいぞ一対一だろうが!!」
俯せから立ち上がり骨を3号に振り上げる、
「そんなルールを呑んだ覚えはないな」
さらにライモン右腕にワイヤーが巻き付けられる、本来ならたかだか人間1人の腕力で対抗できるはずのないライモンの剛力だが今回は足が揃えられ体幹が狂っている、容易にバランスを失い再度仰向けに転倒するライモンだった、
「貰った!」
『バイカー』
いつのまにか元の掌サイズに戻っているビークルを装填し、ライモン口内に銃口を圧し突ける3号、
『警察ブースト!』
バイカーの放った片輪はいつまでもライモンの口内を躍り狂い、絶叫するライモンの顔面を上下に歪ませていく、ライモンが沈黙するのと片輪が消えるのはほぼ同時だった。そのまま残ったポーダマンの掃討にかかる3号、
「今だ」
トオマはここぞとばかり金の金庫へ駆け寄ってサイクロンダイヤルファイターを宛がった、
『エラー』
「なに?!」
『エラー』『エラー』『エラー』
「どういう事だ?」
「どうした?」
「金庫のナンバーが読み取れない」
3号は呆然とする共闘者に困惑せざる得なかった。
アルセーヌがノートに6つのナンバーと2つのマスターキーが必要と書き残している、
高尾ノエルの言葉を2人は知らない。
「一瞬気ぃ失ったぞ、オラぁ!」
仰向けながら片腕を振るライモン、
「ボーっとするなバカモノ!」
警察として咄嗟に身体が動いて生身のトオマを押しのける3号、ライモンの一撃をまともに食らったはずみでチェンジャーとビークルが分離、敵の眼前で生身を晒すつかさは痛みで動けない、
「無理なのか」
そのトオマの足下につかさのVSチェンジャーとビークルが転がってくる、
「早く、それをこっちへ」
呻きながらつかさはトオマに手を差し伸べた、必死で助けを求めた、トオマは拾い上げながらやや迷った、
「くそ」
『ゲット セット レディ?』
「逃げるしかない」
『サ、サ、サ、サイクロン!』
トオマは拾い上げたつかさのチェンジャーにダイヤルファイターを差し巨大化させる、サイクロンの風圧が、トオマに群がろうとするポーダマンを寄せ付けない、トオマはサイクロンにワイヤー飛ばして釣り下がった、
「逃がすかよ!」
ライモン、金庫が輝いて突如鎖を出現させる、2本の鎖はそれぞれ意志を持っているかのように飛び、トオマはそれを弾いたものの、つかさの首に巻き付いた、
「待て、待ってくれ」
手を伸ばすつかさにトオマは血の気が引いた、
「すまんな」
「見捨てるのか!?」
トオマは伸ばした手を力無く下ろし、サイクロンが上昇するままライモンや敵から逃亡する、つかさから距離を置いていく、
オレのせいで、
そんなトオマの歯噛みした顔は明神つかさには見えなかった。
「6人の中で、君達二人がリアリストな方だと思っていたんだけどね。人間というものは、良くも悪くも影響し合うという事かな。」
「トオマ、なんでオレに一言言わなかったの、そんなお祭によ。」
着替える事すらできないほど落胆したトオマはジュレで棒立ちになり、エックスとカイリから嫌味を言われたい放題だった。
「すまなかった。」
それだけカイリに向けて言ったつもりのトオマだった。
「金の金庫を開ける為には6つのナンバーを解析し、強力なダイヤルファイター2つで解錠する必要がある。」
聞いたトオマはむしろエックスに逆上した。
「キサマ!それを早く言え!知らなかったからオレのせいで」
エックスの襟首を掴んで激高するトオマにしかし、エックスの眼差しは冷ややかだった。
「そうか、つまり君はつかさ君が捕まった事を自分のせいと思っているのか、君の恋人と同じように。」
「・・・・、その通りかもしれん」
図星を突かれて肩を落とすトオマ、
「だから君は迂闊にもつかさ君のトリガーマシンを抱えてここに帰ってこようとした、発信器付きだと知っているはずのものをね。ボクが先に君を抑えなきゃ、快盗の正体が危うくバレてしまうところだった。」
「それに関してはすまんと言っているだろう」
エックスから目線を逸らすしかできないトオマだった。
「とにかく、VSチェンジャーとトリガーマシン3号はボクが快盗から取り戻したと言って持ち主に返却しておこう。」
「てめえなんで」
エックスの言動に逐一引っかかるものを感じたカイリは口を開いた、警察の前であれだけ大見得を切って裏切り宣言したのに何故なお警察に留まれる?拉致された明神つかさへ返却?
しかしそんなカイリの疑問は玄関の鈴の音に掻き消される事になる。
「邪魔をする、ここで高尾ノエルが食事を摂っていると聞いたが?!」
なんと一介のフランス家庭料理店ジュレに堂々と制服姿で武装したままの朝加圭一郎が乗り込んでくる、彼の目にはfermeの文字がまるで入っていない。
燕尾服のトオマは着替える暇も無くカウンターを飛び越えて厨房に座して隠れ、カイリとエックスもまた店員と客の体裁を整える、それが圭一郎の視界に入るまで瞬きする間に行われるのだからさすがだ。
「圭一郎君、今ボクはディネイを食べるところなんだが」
と言い終わる事を待たないで鉄拳が飛んでくる、左頬から入り、思い切り首を反時計回りに捻る、
「つかさがなぜギャングラーに捕まったぁ!警部ならどうしてつかさを視ておかなかったぁ!」
支離滅裂な理屈で殴りつけた朝加圭一郎は右拳の激痛に耐えながら高尾ノエルを睨みつけた。
「まあ、そうだな、すまない。ボクと管理官で救出計画を練っているところだ。君はVSチェンジャーが修理されるまで待機だ。いいね。」
「それより、先程回収したというつかさのチェンジャーを渡してくれ、そうすれば、」
「ダメだ。君等のように暴走するタイプの人間は、ボクにとってイレギュラー過ぎるからね。正直今回困るんだ。」
既に高尾ノエルは座席から立ち上がって、朝加圭一郎の真正面に対峙していた。
「キサマ、手をこまねいて」
そんなキツネ目が瞬きする程の合間であった、背後に回り込むノエル、そして徐に首の付け根を揃えた指の握力で摘む、意図もあっさり白目になってその場に伏せる圭一郎、それを片腕で受け止めた高尾ノエルは、床に静かに横たえた。
「圭一郎クン悪いね。」
「スゲ、オレも今度やっちゃお、ちゅうかエックス、どさくさに紛れてケイちゃんと一緒くたにしてオレディスってたろ?」
終始眺めていたカイリは、エックスが軽く披露したピッチが人間業で無い事に気づいてない。
「カイリくん、後で圭一郎クンのVSチェンジャーを渡しておいてくれたまえ。」
と堂々と懐から一丁銃を出して料理店ウェイターに渡す高尾ノエルだった。
「いいのかい?オレが使っちゃうかもよ。」
「持ち主のDNA認証を導入した。つかさくんのも改良してある、引き金を引いても操作できない。後はボクがやる。」
「あっそ」カイリはおもしろくない。「どうすんの?エックス、これから。」
カイリが問う前に既にその答えを置きにいっいてる高尾ノエルだった。
「だから、ボクがやる。」
それ以上答えなかった。
「名付けて、ライモン劇場!」
けたたましい歯ぎしりの混じった快笑が配信される、アップされるなり、100億再生を突破した配信動画は一匹の怪物の披露したごくごく短時間、1分に満たないものでしかない、この世界でも現時点でネット人口20億程度だから、やはり2度見、3度見のリピーターが多かったという証左でもある。
風を切って 飛び立て ライモン軍団
闘う闘う舞台は 大空だ
ライモンの背後で首輪を装着された6人のバックコーラスは、あのコクエイホールで拉致されたチョー新宿の男子達であった、瞳孔に意志がなく、怪物の圧倒的物理力に屈した絶望感が肉体を動かしていた。心身奴隷の身に落とした証としての首輪、鉄のブリーフとブラのみの半裸という出で立ちは彼等だった者達以外にも絶望感を与えるに十分だった。
男子達であった、彼等だった者達、過去形である。鉄のブラを装着した彼等のプロポーションは美少年アイドルでなく、もはや豊満で見るからに弾力を想像してしまうバストとヒップ、抱きしめたくなるウエストをした女子のそれであった。
ライモンの小指の爪から発する『アルナイン転換』は生物器物問わず性別を転換する。
「う・・・・・見るな、見ないでくれ・・・・」
ライモンの足下、やはり首輪で繋がれた者がほとんど上半身を寝かせた横座りで絶望に涙している、それは明神つかさの変わり果てた姿だった、上半身全裸である事も、下半身鉄のブリーフのみである事も驚きなのだが、アルナイン転換によって彼女は、およそ四肢も胸囲も倍加して体躯の容積が四倍、2メートルの巨漢に成り果てていた。いったいどこの緑の巨人が親戚なんだ、とでも言わんばかりの彼女の姿に、絶句を通り越して世界がバズった。
「悪趣味にも程があるなライモン。」
「ようやく来なすったかい」
その音声の横槍で世界への配信が途絶えブラックアウト、ほのぼのとしたリラクゼーションショップの広告動画が流れるまで世界が凝固した。
「悪趣味にも程があるなライモン。」
ホールステージで配信動画を披露していたライモンに、絶妙に下品な銀のタキシードをした高尾ノエルは1階ラウンジで対峙した。
「ようやく来なすったかい」
ライモンは歯ぎしりしながらむしろ悦んでいた。何より、
「君の目的はこれだろ」
高尾ノエルは一つの、扉が大きく裂かれた金庫を抱えていた。
「そうそうそう、警察でもどこに保管されているか不明、ならばてめえが仮想空間にでも隠してるんだろうってザミーゴがな。」
「あの金庫なら、そのくらい言うか。」高尾ノエルはいぶし銀に光る金庫を推し出した。「交換だ。つかさクンや彼等を放し渋谷を解放したまえ。」
ライモンは高笑いしかしなかった。
「見ろ、この脆弱なニンゲン共を。こいつらはオレ等のバケの皮になるくらいしか使い道がねえって事にいいかげん気づけって事を。」
「ライモン、君と口論するつもりも、君の時間稼ぎに付き合うつもりも無いんだ。」
「じゃあハショって行こう、それがホンモノじゃなきゃ、こいつらがどうなっても知らねえぜ」
手から放出された何本ものチェーンで奴隷達の首を引っ張るライモン、苦悶の表情はマッチョ男子つかさからも伺える、
「君も『ドグラニオの金庫』から生まれたモノなら、兄妹である事が臭いで分かるはず。」
「なるほどな、確かにその通りだ、貰ったぁ!」
ライモン、空いた掌からチェーンを投擲、絡め取って金庫が高尾ノエルの手元から放れる、
「どっちだ、」
高尾ノエルは銀光りする銃をライモンと金庫を繋ぐ黒いチェーンに向けて放つ、断ち消えるチェーン、それを確認したノエル、続いてつかさの首を拘束していたチェーンを消失させる、金庫は転がったまま、ライモンに近づかせず、ポーダマンを片づけつつ、そして2メートルの巨躯を起きあがらせた明神つかさへ歩を進めた、
「元に戻せ、高尾」
「ヤツを倒せば元に戻る、まずはチェンジしてライモンとボクが一対一になる場を作ってくれたまえ。」
首を抑えて息を整えるつかさの胸にVSチェンジャーとトリガー3号を押しつける、
「全く、キサマと言い、あの青快盗といい、本当だろうな!」
高尾ノエルの援護を受ける形で、チェンジしたパトレン3号の姿は2メートルの巨躯そのまま、ポーダマンを片腕でなぎ倒し、銃で圧倒し、ついにはその剛腕に自信を得てライモンに真っ向掴みかかる、
「私の怒りは爆発寸前だ!」
「てやんでやるじゃねえか!」
がっぷり4つに組む剛力と豪腕、なんとあの快盗ロボが総力かけても制止できなかったライモンの力を性転換した3号の腕力は拮抗している、実に勿体ない。
「油断して遊んでくれてる内に」
とうそぶいて高尾ノエルは自らの銃を2回転、
「快盗チェンジ」
『快盗 エックス チェンジ』
『ルパン エックス』
両肩にアーマーを備えた銀の快盗が降臨、
「孤高に煌めく快盗、ルパンエックス」
キッチリ身を一回転までした。
「キサマの名乗りの時間稼ぎをしている訳ではない!」
「てめえとの遊びは終わりだ」
ライモンの両肩胛骨から副碗が出現、上回しで両肩を掴まれ、為す術なく放り出される3号、同容積の対手をあっさりと地面に叩きつけたライモンは、ルパンエックスへと目先を変え、衝撃波を放つ、
「金の金庫の攻略は6つのパスワードとマスターキーと同等の力を2つ、」
エックス、衝撃波を胸で受ける、体表皮に波紋を広げて防御するエックスはお返しに銃を3連、
「ようやく本腰入れてやり合う時が来たようだな、ドグラニオは快盗でも警察でもねえ、てめえしか見てねえ!、」
銃撃を食らっても無関心なライモンは、無造作に接近して床に転がった銀の金庫へ片足を乗せる、
「だからてめえ倒しゃよ、ドグラニオもオレ様を認めざるえねえだろ、そしてあいつの目の前でてめえの首をチラつかせてやるんだ、あの野郎きっとオレ様に震え上がるだろうぜ。」
エックス、自身の眼前とライモンの後背にシールドエッジを展開、
「その承認欲求の強さは、前人格の影響をもろに受けてるな、おもしろいな、この世で2つ目に誕生した金、その人格を蓄えて金になるのは先例がない、観察してもいいが、優先は君の攻略だ。」
そして2つの空間座標をシールドエッジの虚空間でショートカット、
「てめえは臭うんだよ!」
だが副碗は、そんなエックスの奇襲をあっさり防ぐ、後背至近の攻撃に腕を掴んでエックスを拘束、
「ライモン、君は油断が過ぎる」
「ヌオーッ!」
そこに粗方ポーダマンの掃討を済ませた3号(男)が横合いからチャージ、
「オレ様がそんな程度で」
3号(男)の突進を片腕で防御、同容積の対手に体幹をまるで崩さず受け止め、そして3号(男)の顎を圧し上げる、
「手がおろそかになっているよ」
3号(男)にかまけるライモンの副腕が緩んだ、銃より透明な刃を現出させ、ライモン左サイドの腕を寸断、
「苦しみやがれ」
3号(男)を振り払ったライモン、振り返って今度はエックスの首と銃を残った2本の腕で握って抱え上げた、
「一度の油断は取り返しが付かない。覚えておくといい、ライモン。」
やはり天井である、
「今度こそ貰った」
降下してくる青い影、マントでライモンの目を一瞬塞ぐ、ライモンの晴れた視界から外れる形になる、右手に携える折り畳みケータイのようなアイテムをライモンの胸、金庫の扉へ押しつける、
『1、1、0、0、3、0』
次いでライモン軸足をブレイクダンスまがいに刈り入れる、ライモン転倒、3人がライモンから距離を置く、
「ブルーくん、今度はよく言う事を聞いてくれたね。」
天井から現れた影、それは快盗ルパンブルーであった。エックスからはどうやら許しを貰ったようであり、今回は生身でなく青のスーツとマントの出で立ちである。
「借りは返す、それだけだ。」
「キサマ!見捨ておって、おまえのせいでだなこんな」
成り行き上居並ぶ形となった3号(男)、それと対面したブルーは改めて足先から頭のてっぺんまでをマジマジと見上げた。
プ、
「笑ったか、笑ったのかキサマ!」
掴みかかる3号(男)にルパンブルーはこみ上げる失笑をどうしても抑えきれなかった、災難だと哀れみ罪悪感を覚えるよりも先にその隆々な肩幅と躍動する大胸筋がどうしても前頭葉を刺激する、
「君達、頼むよ。」
そう言われて2人共にエックスからシザー&ブレード、クレーン&ドリルのビークルをそれぞれ受け取る。
『1、1、0』
「行くよ、ブルーくん同時攻撃だ、3号くん、まずは奴の回復能力を奪う、ボクが『医者・医者』を奪取した後で開いた金庫めがけてそれを撃ち込んでくれたまえ。それで姿が戻るはずだ。」
『0、3、0、いただきストライク!』
「ゲットできればなんでもかまわん」
既に盾と巨大ブーメランを背負ったブルーはダイヤル回しもエックスからあらかじめレクチャー済みだ。
『クレーン 警察ブースト!』
「本当だろうな高尾ノエル!」
両腕にオーバーアーマーを装着した3号(男)は両掌を組む、
「頼むよ君達。」
エックス、利益が合致していればどうにかなるはずと自分を納得させる、
「スペリオルエックス!」
立ち上がったライモンめがけてルパンエックスは突進した。
「気づいたか、警察チャン。」
「キサマ!快盗!ここは、ジュレ!」
そこはジュレの中、いきなりあの赤の快盗に自身が持つ銃と同型のそれを突き付けられる朝加圭一郎だった。
「店員はまだ無事だ。カウンターでちょっと眠って貰っている。」
まさにそのタイミングでカウンターの奥から壁や食器を叩くような音と、布かなにかで口を塞いだ時のような吃った声が圭一郎の耳に入ってくる。
「キサマ!ジュレの3人にもしもの事があったら」
圭一郎は当然、この眼前の燕尾服の赤い男がジュレの店員と同一人物でないという固定概念が出来上がっている。そしてカウンター裏でサイクロンダイヤルファイターがアリバイ作りに奔走し、あらかじめ録音したICレコーダーが作動している事も分からない。
「なーに、あんたとこうやってサシで話するにはこれが一番だってね。」
「オレに何をさせたいんだ!」
圭一郎は良きにつけ悪しきにつけ単刀直入だった。
「1つ、オレは今エックス、アンタの仲間の高尾ノエルちゅうの?ってヤツから行動を制限されている、アンタを人質にしてその制限を解く、2つ、アンタの武器でライモンの能力を封じて欲しい、3つ、高尾ノエルをギャフンと言わせる為に、あいつからルパンコレクションをいただく。その為アンタにはオレの人質のフリをして貰って高尾ノエルを騙して、最後にオレの援護をして欲しい。」
「なんだそれは、快盗の独りよがりの為に国際警察がなぜ従わなければならん、」
ケイちゃんがグズグズしてっから口実与えてやってんでしょーが、
カイリにとって180度違うそれが価値観だった。朝加圭一郎にとって周囲の承認しうる事こそが目的であり、夜野カイリにとって周囲に承認させる事は手段である。
「じゃあカウンターの向こうの人質がどうなっても知らないぜ。」
「キサマ!そんな事をするヤツと思わなかった、見損なったぞ!」
「命まで奪わないけどさ、こっちも手段を選んでられねーってね、いろいろあるんだぜ、2人に分けたり、一生夢の中に閉じ込めたり、洗脳して恥ずかしい事をさせたり、」
「くぅ、そんな咲也みたいな真似を一般市民にさせる訳には・・・・、いやしかし、仲間も捕まったままだし、だがオレは快盗とは違う・・」
もどかしさを覚えたカイリは、自分のとは違う銃を一丁本人の前に放り出した。対手にこの段階で銃を渡すリスクを呑んだのは、圭一郎の不甲斐なさ故である。
「これはオレのか、まだ修理している最中じゃないのか、高尾ノエルの元から盗んだのか」
「なーに、このくらいはあいつのいない間に奪えるさ。いいのかい?仲間がどうなっても。」
「使える、あいつまたオレを騙していたのか。」
カイリは人に聡い。圭一郎の仲間という単語を聞き逃さなかった。他人への攻め口を見つけるのは昔から得手だった。
「アンタの女の仲間も危険なんだけどさ、あの高尾ノエル?死のうとしてるぜ。」
カイリはもちろん適当な事を言った。
「死ぬ?」
「オレとアンタってさ、けっこう戦果上げてる方でしょ、それを使わないで自分の手でなにもかも仕切ろうとしてるアイツ、スゲー危険な賭けに出てんだぜ。たぶん命がけで。」
動転したように眼球を左右に振る圭一郎だった。
「高尾ノエル、オレが危険な真似をしないように態と」
「そう考えると辻褄が合うぜ。アイツ自分の身投げ出してオレ達を今後の為に温存しようとしてんだ。」
そう考えると辻褄が合う、
言ったカイリは思わず口元を塞いで見ているフリをした。高尾ノエル=エックスが今後どんな未来図を描いているのかも、この場にいる二人に何を想っているのかまるで見当もつかないが、あるいは、などとカイリ自身口から突いて出たデマカセに自分の脳が振り回されていた。
「分かった、俺は高尾ノエルのところに行く、しかし以前にも言ったがおまえらたとえ軽犯罪を犯していようと」
「笑っちゃうね、そんな口ほざいていいの、この間の手強い緑のギャングラー、助けたのオレっしょ。」
朝加圭一郎はしばらく沈黙した、
「くそ、今度だけだぞ、だが俺もおまえら快盗に危険な真似をさせる訳にはいかない、危険な行為に至ったら、その場で気絶させてでもおまえ達を拘束する。いいな。」
カイリは口元からとびきりのデビルスマイルを顕わにした。
利益が合致していればどうにかなるはずとエックスは、自分を納得させる、
「スペリオルエックス!」
立ち上がったライモンめがけてルパンエックスは突進した。
ボォォォォォ、
ライモン、口角を大きく広げて喉の奥から炎の息を、いや強力な熱線を吐いてエックスの猛突を阻止しようとする、しかし、エックスはそのブレスを鋭利な刃の膜で中央から切り裂いて突進、
「金の金庫をボクが伐つっ!」
エックスの視界は巻き上がる炎の熱気で天も地も分からなくなる、煙幕がエックスとライモンを包んだ、
「高尾ノエル!」
「エックス!」
チェーンの金属音が撓った、
煙幕はしかし一瞬、影が二人の警察と快盗の視界に拮抗した両者の姿を浮き彫りにしていく、
「不完全なフィジカルチェーンだったのか」
「残念だった、なっ!」
エックスの薄刃は、既に再生されたライモンの、その4本の腕が張る2本の交差した鎖によって扉寸前で届かない、ライモン、豪声で吼えると金庫の側面から左右4本ずつ棘が生えて放出、
「ボクじゃダメか」
否それはもはや発射、4本の棘状の液体炸薬弾頭が左右に散ってUターンで抑止されたエックスめがけて火熱を炸裂させた。
「いくぜオッサン!煙吹いてるぞ!」
「オッサン言うな!コクエイホールの天井が!」
サイクロンで渋谷区上空を強行した二人のレッドは、目的地の激変を明確に読み取った。
シンプルな立方体の組み合わせからなる会場の天井部分の一部から爆煙が立ち昇っている、即座にその煙に突入降下、
「あれは金庫?剥き出しかよ、」
「人が倒れている?!」
噴煙で視界不良のコンサート会場、壇上には金庫が転がっており、客席のセンター通路に朧気に人が倒れているのが伺える、
「君達は、みっともない、ボクの、見込み違いだった、ライモンは6人全ての力を、」
「エックス」
「高尾ノエル、その姿は」
エックス=高尾ノエルの姿に快盗と警察の二人の男は、絶句した。
倒れるノエルは既に除装し、左腕と右脚は爆破に呑まれた際喪失した、しかしミンチ肉を露出している訳でも大量の血液が通路の床に染み込んでいる訳でもなかった、その代わり鋭角的に折れた金属フレームと千切れた配線のスパークと僅かずつ漏れるオイルの滴りが絨毯に染みている。
「エックス、てめえ、その身体はなんだよ、何オレ等に見せてんだよ、」
「ロボットだったのか高尾ノエル、」
「圭一郎クン、ロボットでなくてアンドロイドだよ。厳密にはポジトロニックアンドロイド。ボクは彼から金庫を制御する為に作られた、けどボクではダメだったようだ、」
「なんにも言うんじゃねよ!この間、心臓が止まったのは本当だったのか、元々心臓も脈も無い、だから」
「高尾ノエル、早く避難しろ、快盗、おまえが連れて行け、後はこのオレがあの金庫を」
「ダメだ、ボクの原子力バッテリーがオーバーヒートしてメルトダウンをはじめた、もうすぐボクは爆発する、」
口だけは流暢なのが違和感がある高尾ノエル=エックスだった。
「ふざけんな、このまま見捨てろってか、冗談じゃねえ」
目元のマスクの角度を直してチェンジャーに自らのダイヤルファイターを差すカイリ、その行動にいつものゆとりはない、そして反応の無いチェンジャーと赤い戦闘機のミニチュア、
「快盗、今はおまえの命を」
そんな快盗の細いウエストに片腕を回し、力づくで退かせようとする朝加圭一郎、高尾ノエルに背を向けているその目が充血しているのをカイリの視界には入っていた。
「うっせえな!こいつめ言う事聞けよ、」
カイリは相変わらずVSチェンジャーを必死に捻ろうとするもその無反応に焦りが募るばかり、
「いい加減にしろ!いたずらに命を捨てたいか!そんなヤツかおまえは!」
圭一郎もまた感情の捌け口を見失っている、そんな警察の片腕を柔軟性だけでスリ抜ける快盗だった、
「どうでもいいだろ!命なんか逐一考えてたら、泥棒なんかやってられっかって!」
「バカ野郎、キサマの命を大切にしない者が、邪だろうがなんだろうが目的を遂げられると思って」
頑なにその場から引き離そうとする圭一郎と、頑なにその場から動こうとしないカイリがいた、
「オレ、オレは!最近ちょっと楽しんでたんだぜ、エックスとのさ、化かし合いを、さ!」
『1、0、1』
その時客席中を巻き込む爆炎、赤い両者を呑み込んでホール内を一瞬火と風が巻き起こり、そして穴の空いた天井方向に一瞬で舞い上がった、
「圭一郎!何が、」
「あの金庫、いつのまにか手足が」
実を言えばパトレン3号とルパンブルー、共にライモンとエックスが激突した時の爆発に揉まれ、数秒だが卒倒していた、頭を振って起きあがった両者が見た光景は、生身の圭一郎とカイリが半壊したエックスの傍にあってなにやらわめいているところだった、ふと両者から視線を外して舞台上に転がっている金庫を眺めると、エックス諸共自滅したはずのボディから時間をかけて四肢の1本が伸びてきている、その直後に再びエックスの自爆に巻き込まれ視界を失った。
「無事か!快盗ぉ」
いつのまにか屈んでいる圭一郎だった、伏せた顔を上げ、徐々に瞼を広げる、自らにやや影が差していた、見上げるとまずマントの揺らめきが光と影を交互に眼に入れる、眼前に人が立っているのを認知するのにそう時を置かなかった、既に快盗はスーツを纏い、あるいはその身で爆風から圭一郎を守っている、
「おっさんも早く準備しろよ、あの金庫から絶対盗み取ってやる、そして完膚無きまでっての?粉々にしてやるツウの。」
その勇姿を眺めて呆然とする圭一郎の掌に、何かが転がってきた感触がした、床を見ると手元に一度見た事があるVSビークルが2台転がってきていた、1台は以前高尾ノエルから渡された真紅の消防車型のトリガーマシン、もう1台は飛行船型のダイヤルファイター、圭一郎は2つ共に掴みしばらく眺めていた。
「聞いているのか圭一郎!ヤツの再生を食い止めるぞ!」
ふと聞き慣れた同僚の声に顔を上げる圭一郎、その視線は異様な驚愕で彩られ、口元が力無く開いた、
「誰だ・・・・・キサマ・・・」
「何も言うな圭一郎!ワタシもだな、ええい屈辱は倍にして返す!」
パトレン3号(男)は公私混同とも取れる激しい感情を載せてクレーンを鎖鎌のように投擲、その激しい攻撃は金庫に届く事はない、なぜか、ホール内におびただしい数のポーダマンが乱入し、快盗と警察の眼前に立ち塞がっているからだ、
「・・・・・ぷ」
本当になら攻撃するそのタイミングで、手を緩めてしまうのは快盗の赤と青。
「笑ったな!笑っただろ、赤いの!!」
・・・・・ぷぷ。
「見るな、見ると気が散るぞレッド。」
「2度目だぞ、しかも2回だぞ、元々おまえのせいなんだからな!」
「それよりオッサン、早くそのダイヤルファイター渡せよ。」
「いや、ここは我々警察で、こんな危険物をだな、」
ウルサーーーーぃッ!!
はるか上空からであった。
ミニスカートをひらめかせて女子が、横で必死にしがみつく男と共に降下してくる、2人はワイヤー一本に吊されている状態であり、ワイヤーを垂らしているのは2機のビークル、共にダイヤルもトリガーも備えているミニチュアは形状も黒と赤のリペイントな程度似ている。
「よっこらしょ」
「センパーイ、どこですかぁ」
男女は警察と快盗の残りの2人であり、ビークルは快盗と警察に陰日向に協力してきたあのグッドストライカーとそのほぼ同型機である赤い機体。2機ともミニチュアサイズで男女2人を吊し飛んで来た。
「なぜ来たぁ、おまえは病院に」
「みんな聞いてっ!」
黄色い声が残り5人の挙動を一瞬で封殺する、
「やる事は簡単だよ」
天才は、この時この場の全てを認知しえないはずなのに天の赴くままに口を動かす事のできる生き物である、
「みんなであいつを倒してこいつを治す、それだけ!」
5人は早見うみかの言葉に硬直した、その間も金の金庫は刻々と再生し四肢が生え始めている、ポーダマンもワラワラと増え続けており、3号やブルーの攻撃で一掃どころか保ち堪える事すら危うい、
「簡単だとおい」
宵町トオマがまず反応した、
「でっしょ、要は簡単、」
夜野カイリはワンハンドショットで気晴らしのようにポーダマンを一掃し始めた、
「圭一郎、この際、利用すべきだ。」
明神つかさは依然敵に視線と射線を外さないものの、声だけは同僚に向けた、
「なぜだ、快盗にだけはいつも節を曲げさせられる、・・・・・、いいか快盗、必ずコレクションを取れ。」
そして朝加圭一郎が起立し、自らのチェンジャーに自らのビークルを差した。
「せんぱ~い、どこですか、ボクも混ぜてくださいよ~」
正直、陽川咲也の事は忘れていた。
ルパンレッド、カブリを正した。
「了解オッサン!ライモン!アンタのお宝、いただくぜ!」
闇の中で 不敵に笑うシルエット
Flash 眩しいライトで
この正体 知りたけりゃ Catch me if you can
Search 捜し出してあげる
DESTINY 予告する
本当の値打ちを 理解する者だけに
フェイクの正義をふりかざすの?
光放つ 門外不出のコレクション
ルパン 華麗に舞う
Hold up!Lpin!Run
Chase you up! 奪い返す
Gonna chase you up! Anywhere you are
失いし 時を溶かすため ダイヤル回せ!
この世界 秩序守る為
ルパン 迫ってくる
Hold up! Lupin!
Run if you can
Chase you up! ヤツらに「アデュー」
サラナラは 言わない
鮮やかに ルパンレンジャー
逃がさないわ パトレンジャー
It’s showdown
「不思議だな。」
上空から眺める、2機の機影。
「オイラも手伝うのかい?大親友?」
録音でもしていたのか、『VSチェンジャー、イエロー、音声認識、マスターコマンドプロンプト・エックス。再起動』を高尾ノエルの音声で発した赤いグッドストライカー、即ちジャックポッドは、隣で同じように宙を滑空しているグッドストライカーを見向きもせず6人の人間達を観察していた。
「たった一言で足並みが揃った。あれほどバラバラだったのに。不思議な6人だ。」
「いつもながらオトコの色気たっぷりね大親友括弧ハート、今日はとびきりグッと来ちゃおうかしら」
「安心しろ、ボクがおまえのケツを護るよ。」
「いや~ん」
6人の眼前でもはや多少の攻撃を意に介さず四肢を取り戻しつつある獅子の怪物、時に身体を欠損しながらもそれを上回る回復で元の形状に戻りつつある、
「ふざけんなてめえら、ふざけんな!てめえら!!」
最初からのミサイル射出、
エックスに奥の手で撃ったトゲの射出を初手から放ってくるライモン、既に咲也もうみかもスーツを纏って居並ぶ6人に集中豪雨となって降り掛かる、
『シザー、快盗ブースト!』
『スプラッシュ、警察ブースト!』
一方シザーの盾を構えるブルー、
そして並ぶもう一方はパトレン1号、あの真紅の盾を左肩に、2メートル超の長竿を右手に抱えたパトレン1号のそれがトリガーマシンスプラッシュを初装着した姿、
その2人が、6人の中にあって一歩進み出て身構える、
同時炸裂、
ライモンの視界満面に拡がる炎は、6人どころか自身を守っていた圧倒数のポーダマンすら焼き尽くしたかに見えた、
「どれほどの辱めか知れぇ!」
その炎の中央を割って出てくるドリルの巨拳、それはパトレン3号(男)が装着したドリルの左拳、
「知るかてめえ!」
殴りつけるドリル、受け止めるライモン右の腕、さらにクレーンの剛腕を繰り出す3号(男)、これにもなお左の腕で受け止めるライモン、そして先と同じくライモン肩胛骨から2本の副碗が飛び出してくる、
「予習済みなんだよ!」
それはルパンレッド、未だ埃が立ち籠める劇場客席から舞台へバック宙で躍り出てライモン頭上に到達、
『サイクロン、快盗ブースト!』
そうして翠の回転刃をライモン頭上から喰らわせ、両副碗を寸断、
「うらぉをら!」
3号(男)、ライモンの両腕を振りほどいて思いの丈ラッシュ、ライモンは後ずさるも口角の内部に光を灯す、
「死にさらせやっ!!」
ライモン最大の火砲が自身の生存本能を無理に抑え込んで自滅する程のエネルギーを口内に溜め込んで圧搾していく、頬が罅割れて光が漏れ、割れた罅がコレクションの力で復元し無理矢理崩壊と平衡させる、このスペックを超越した力がライモン最大の武器、即ち回復力の真の力である、
「どこ、うっすらとしか見えないよイエローちゃん、どこに」
「ブルーの言う通り変身したら少し見えるようになったでしょ!私の肩にちゃんと両腕を固定して!私があと誘導する!」
『バイカー、警察ブースト!』
ライモンが咆哮を轟かせようとする直前、バイカーのタイヤ状の光弾が前転スピンで発射、3号(男)それを見計らって立ち退く、口元が塞がり、顔面全身が崩壊するほど光芒が拡散、
「オレ様は終わらねえぞ!」
顎から上が崩れ落ちても構わず咆哮を発射、
「させん!」
『一撃ストライクっ!』
直線逆ベクトル、立ち塞がった1号が2メートル越えの長竿で対抗、バイカーの光輪をさらに後押しするようにスプラッシュを発射、
「くぉわっっっ!」
顔面の上半分が暴発でハチ切れるライモン、
「ォォォォ!」
1号もショルダーシールドでその爆圧を防ぐ、浮つく足場を何かが背から逆向けに力を加えて立っていられる1号、首を向けると快盗イエローと同僚2号が自らの背を支えているではないか、
「なるほど、こと火炎の耐性はシザーの盾よりそっちの赤い方が上なのか。」
などと同じく暴発を盾で防ぎ切ったブルーが3人の横で立ち尽くしていた。
「オッサンまたやりやがったな!」
トリガーマシン2発分喰らったライモンを見て、およそ経験のある人間はレッドのように金庫までも破損している事が頭を過ぎる、詰め寄るレッドをその時制したのはブルーの抱える盾だった。
「見ろ、金庫は無事だ。」
そのブルーの言葉は6人全員どういう意味か理解できた。敵を倒して安堵した訳ではない、むしろ逆に途方に暮れた。
「うっそ、あの緑のヤツすらやっつけたスプラッシュの長竿だぞ、こりゃ本当にエックスのやった通り、まずは金庫からお宝をいただく他ねえってか。」
レッドは軽妙な口ぶりで面喰らった自らを誤魔化した。
ライモン、半ば上半身を欠損し仰向けに倒れながらも、そのタダレた肉片から既に拳のようなものが見えはじめている、
「なんだその態度は」
「という訳でだ!おまえら聞けや!」
1号が応じてレッドに掴みかかろうとしたその時、頭上から野心的な声が轟く、それはトリガーマシンでありながらダイヤルファイターである赤い機体。
「赤いグッディ?」
「ジャックポット、あの時助けてくれたあいつだ」
赤いグッディ、『ジャックポットストライカー』はユラユラと降下しルパンレッドの手元に。
「オイラもいるぜ」
やはりユラユラと降下してきたグッドストライカーは1号の手元に収まってトリガーマシンモードへ姿を変えた。
「おいてめえら、あいつの最後の伝言を伝えるぜ。」
6人の間にはそれだけで緊張が走った。あいつ、という代名詞をこういう時どういう訳か誰もが一人のイメージで共有される、
「金の金庫をうち破れるのは君達6人だけだ、だってよ。今回は特別大サービスでよ、オレ様が手ぇ貸してやる。オレ様ならダイヤル6つ合わせられる」
「死んでまで偉そうに。二回死んだのもクドけりゃ、二回カタルシスやらかそうとするのもクドいぜ。」
『ジャックポット、7、7、7、マスカレイズ』
「今回だけだ快盗。上司の、命令だからだ。」
『グッドストライカー』
二人の赤い戦士が互いをチラと眺め、同じようにVSチェンジャーを捻った。
『快盗ブースト!』
するとブルー、イエローの肉体が光を帯び透き通っていく、ブルー、イエローだった光がレッドの左右に折り重なっていく、いや融合する、レッドの肉体の左サイドが青に染まり、右サイドが黄色に染まった、
『警察ブースト!1号、2号、3号、一致団結!』
すると2号、3号の肉体か光を帯びて透き通っていく、2号、3号だった光が1号の左右に折り重なっていく、いや融合する、1号の肉体の右サイドが緑に染まり、左サイドがピンクに染まった、
『ルパントリコロール』
『パトレンU号』
「え?なんだっつうのこれ聞いてねえし!」
「騙された!」
「触んないで!」
「「「どうした?傑作だなおまえらその恰好」」」
などU号初登場と同じ段取りの寸劇を一通り消化した6人は、なお復元するライモンが倒れたまま片腕を伸ばし爪を立てている事に気づく、
斬撃破、
それを受け止めたのはU号、3人合体で2メートルを越す幅広の巨体となったU号の十字ブロックはライモンから放たれた衝撃波を不動のまま受け止めた、
「「「オッサン等いつもよりデカ過ぎないか?」」」
「そう言えばなんだかゴツいな今日は、しかも視界が薄ぼんやりする」
「せんぱ~い、今日はいつもにも増して二倍以上臭いですぅ~」
「煩いおまえら!私のせいじゃないぞ、あのギャングラーに言え!」
そうカオスな独り言で突進するU号、
「テメエラゼッティー!」
というライモンとがっぷり組み合う、力は拮抗し、両者の立ち位置がまるで動かない、例によって副碗を繰り出してどうにかしようとするライモン、
「「「悪いがおっさん、アンタ等ごといくぜ」」」
『1、1、0、0、3、0、いただきストライク!』
赤青黄の光弾が曲射しながら宙で縦横に交差しその都度緑や紫の光が分散、虹色の光弾が宙を埋め尽くしてU号を巧妙に躱しながらも金庫一点に集約していく、断続的に命中していく光弾、圧倒的な威力はライモンとU号を引き剥がし、ライモン上半身を半ば欠損させる、
「「「ダメだ」」」
しかし、金庫からコレクションがバックされてこない、ライモンは4本の腕を欠損しながらもなお立ち尽くし、さらにその身を再生させていく、
「早合点すんなって、6つのダイヤルを合わせられるが、オレ様1人じゃダメだ、この姿の本領は」
VSチェンジャーに差されたジャックポットが言うか言わないかの時、低音の豪声がカブってくる、
「てめえら、やりたい放題やりやがって、ゼィティーゆるさねえ!」
「「「どうした!?そんなものかおまえは!」」」
欠損した箇所が再生し、より強靱な筋繊維が隆起するライモン、吹き飛ばされたU号に多少のダメージを堪えてなお突進していく、
「「「ぐ!」」」
上角からのフックがワンツーでU号に見舞われる、ライモンの副碗はリミッターを外した腕力によって自壊、U号のマスクに多数の罅割れが入る、
「「「おっさん大丈夫か」」」
「来るな!我々はいい!おまえは早く金庫をどうにかしろ!それからおっさんと言うな!」
「せんぱ~い、このマスク割れたらどんな顔出てくるんでしょう?」
「バカモノ!こんな時そんな事をだな、待て想像するな!私の頭にも浮かんでくるだろ!力が抜け」
一人コント状態のU号が脱力してライモンに力負けする、大きくエビ反りしてしまうU号、
「今度こそクラえ!」
ライモンの口内が再度光を放ち、そして口元が負荷に耐えきれず裂けていく、
「「「ぐおおお」」」
仰け反り過ぎて足下がついに崩れ後頭部を打ち付ける形で転倒するU号、しかし明神つかさの20数年蓄積された体術は反射的に巴投げの構えとなり、ライモンを180度宙を舞わせて背を強かに強打させる、反動でライモンの火砲が天井方向に射出、コクエイホールの天井がほぼ喪失、顔面が一時的に崩壊するライモンが自動的に頭部を再生させるまで制止した状態となる、
「おい快盗共、トリコロールの本領はあと2丁のVSチェンジャーを1人で同時使用できる事だ、そして金の金庫は2つのダイヤルファイターの同時攻撃が必要だ、」
「な~る」
一丁のVSチャンジャーを腰に、もう一丁同型銃を取り出す、
『0、2、9、快盗ブースト!』
トリコロールが選んだのはマジック、発射した光の膜を潜ったトリコロール、そのマントの内側から3節のメカニカルなマニピュレーターアームが左右1対現出、
「マジック、ハンド?だと」
「唐突に弓矢になるよりはって事?」
小娘は余計な事を言うな。
「こりゃいい、」
『シザー、快盗ブースト!』
さっそく2本のアームだけでチェンジャーとダイヤルファイターをイジってみせて盾を召還するトリコロール、
「「「遊んでないでさっさと金庫を開けろ!」」」
仰向けになりながらも4つの腕で上体を起こすライモン、なおそれを格闘で抑止するU号、ゼロ距離射撃で回復力を抑止してもライモンの動きを止めるには限界が見えてきた、
「死なば諸共だぁ!」
ライモン、大口を空けて相討ち覚悟で捨て身の咆哮を撃ち放つ、ライモンにとって相討ちは即ち無限の再生力を行使しての1人勝ちを意味する、
「「「全力で防ぐ!!!」」」
己が背後にトリコロールが位置する事を承知しているU号、自らの肉体全身でライモン最大の攻撃を受け止める、両足の靴底が尾を引く、
「快盗共!いいか、2つ同時にダイヤルを合わせろ!」
『いただきストライク!』
ダイヤルを合わせたのはマジックとジャックポット、するとマジックだったボディがジャックポット瓜二つになる、それを右腕とマジックハンドの右腕で構え、上下2連の銃口で狙いつける、
「「「終わりだぁ!!」」」
赤青黄の光の渦が2本発射、互いに錐揉み状に絡んで渦の中心に向かって圧縮、臨界密度に達した光芒は無数の光弾となって拡散、この世の全ての色を描きながら金の金庫にそれぞれ軌道を描く、
貫通、
無数の光弾がライモンの金庫一点に集約しそして透過、金庫の扉が解放し、全光弾が一筋の光芒となってUターン、トリコロールの手元へコレクションを導いていく、
そう、トリコロールとライモンの間に何者も立ちはだかるものは既になかった、
「「「警察!生きてるか!!」」」
パトレンU号はライモンとトリコロールの間に在って、突っ伏し倒れ動かないでいた、トリコロールがうつ伏せのU号を仰向けに返して顔面を揺する、
「「「心配ない、それよりヤツの巨大化を」」」
仰向けに倒れたU号の手に盾が一つ握られていた。
起き上がるパトレンU号、むしろ全身を近距離からライモン最大砲を喰らって五体満足なのは奇蹟である、であるがしかし奇蹟には演出があった、いつの間にかトリコロールが召喚した盾、シザーダイヤルファイターが投げ渡されていた、
「巨大戦はもう慣れっこさ。それより」
トリコロール、VSチェンジャーからジャックポットを引き抜く、途端、1体だった肉体が3つに分離、その内の1人であるルパンレッドの片手にはコレクション、ブレスレットのようなそれをU号へ放り投げる、
「「「視界が晴れる!」」」
盾で床を突いて立ち上がるU号、ライモンの咆哮を喰らったダメージももはや見受けられず、スーツのダメージすら修復された。
「油断するな!代々木公園からヤツを出させんぞ!」
「あ!なんかすごくはっきり見える!」
「ある!ある!ないぃ!!こんなにも戸籍と性別が一致する事が嬉しいとは!!・・・、おい快盗!」
U号の身もまた分かれる、3号が持つブレスレット『医者医者』のコレクションを横から掠め盗るルパンレッド、もう一方の手で掴むジャックポットストライカーが小うるさく挙動した。
「いいか、今回はオレ様もコンチクショーもグッときちゃうからよ、快盗、オレ様と合体だ!」
「アアン、オイラの大親友といっしょに戦えるなんてシ・ア・ワ・セ括弧ハート、警察とっととオイラと合体だ!」
そんな6人に巨大な影が差す、
「ドーザ・ウル・ウガロ!!」
一方の飽和したライモンは、その咆哮も巨大化に比例して大音量となって23区中に轟く、もはやコクエイホールを半ば崩壊させて起立するライモンが50メートル近い全長で身を揺り動かした。
『ゲット セット レディ?』
『位置に就いて ヨーイ』
頭上を見上げながらルパンレッドとパトレン1号、居並ぶ両者が共にVSチェンジャーの銃身を捻る、
『とべ!とべ!とべ!』
『走れ!走れ!走れ!』
そうして両者同時に射出、
『出動!』
『ジャ、ジャ、ジャ、ジャックポット!』
『一、撃、必、勝!』
射出されたダイヤルファイターにしてトリガーマシンである唯2つのコレクションは同じように人間の拳に掴める容積から徐々に人間をその拳で掴める程の大きさに拡充し、井の頭通りへ向かおうとするライモンを牽制し時に当て身を喰らわせ離脱を繰り返して敵の体幹を揺さぶる。
『『『とべ!とべ!とべ!』』』
『『『走れ!走れ!走れ!』』』
『『『『『『出動!』』』』』』
続いて6人同時にそれぞれのパーソナルマシンを射出、それぞれが掌から搭乗できる程に容積を拡充、ダイヤルファイター3機は空を、トリガーマシン3機は代々木公園野外ステージ周辺を疾駆、総勢8台の巨大コレクョンの壮観なそれはパレード、
『快盗!ガッタイム!!』
ジャックポット、号令と共に背面飛行、ダイヤルが回り、背面装甲の一部、両翼ブースターがパージ、翼が畳まれ、機首が先割れ、ボディの3箇所に立体ビーコンを発行、
イエローダイヤルファイター、ダイヤルが回り、機体が中折れ、ビーコンに従ってジャックポットに接続、
ブルーダイヤルファイター、ダイヤルが回り、機体が中折れ、ビーコンに従ってジャックポットに接続、
レッドダイヤルファイター、ダイヤルが回り、機体が中折れ、ビーコンに従ってジャックポットに接続、
それは巨人だった、
レッドが頭、右腕がブルー、左腕がイエロー、そして胴と両足をジャックポットで構成され、パージしたブースターが両肩、背面にあった細く長い装甲はそのまま剣状の武器として装着、最後にダイヤルを囲っていた冠状のアーマーがパージしてレッドダイヤルファイターのダイヤル、敢えて頭部と呼ぼう、頭部に装着する、る質量2千百トン、全長50メトール近い巨人が宙にあってライモンを見下ろした。
『完成 ルパンレックス!』
『警察!ガッタイム!!正義を掴み取ろうぜ!』
グッドストライカー、号令と共に背面飛行、把手が顕れ、翼が畳まれ、機首が先割れ、ボディの3箇所に立体ビーコンを発行、
トリガーマシン3号が引き金を引く、全長が前後にメカニカルに伸び、機首タンクが左方向に伸びさながら警棒のようになる、ビーコンに従ってグッドストライカーに接続、
トリガーマシン2号が引き金を引く、全長が前後にメカニカルに伸び、機首から短筒が突出、ビーコンに従ってグッドストライカーに接続、
トリガーマシン1号が引き金を引く、機体が中折れ、ビーコンに従ってグッドストライカーに接続、
それは巨人だった、
1号が頭、左腕が2号、右腕が3号、そして胴と両足をグッドストライカーで構成される質量2千トン、全長50メトール近い巨人が大地に立つ。
『完成 パトカイザー!』
「やっぱ警察ともガッタイムできる訳ね」
ルパンレッドが見下ろすパトカイザーは、どうしてもトリガーマシン1号だけが目立つように見える、
ルパンレックスが大地に降り、2体の巨人が並び立つ、背中合わせに立つその様は、反目しているとも背中を預けているともとれる。
「これが快盗達がいつも見ている風景か。高尾ノエルめ、できるならなぜ教えなかった、」
パトレン1号は今更ながら快盗達が持ちうる力がどのようなものか痛感した。
「てめえら!」
対面するライモン、2体の同寸法の敵を見据えて、無空を歪めて腕を差し込む、掴んで取り出す大剣、やや反りのある象牙のようなその剣をライモンは、対面する敵に突き付けた。
「オレ様にこの武乱剣を抜かせるたぁてめえら褒めてやるぜ!ご褒美にたっぷり味あわせてやる!」
ライモン、頭上で大剣を振り回し、2体の敵に突進、
「警察は下がってなっテナ!」
ルパンレックス、大剣を抱えた対手に自らの段平『ジャックポットソード』を合わせる、
「赤いのが偉そうに!」
圧されるのはルパンレックスの方、それはフィジカル差から来る力の差、さらにもう一太刀合わさる、しかし同じく圧し返されアスファルトを抉るジャックポットソード、
「おいおいてめえら、これは大サービスだぜファング!」
それはコクピット内に流れるジャックポットの色気漂う声、音声と共にレックス両肩アーマー内面からいくつもの光膜が射出、光膜は細いデルタ状の薄板、計10枚、自律運動でそれぞれ異なる軌跡を描いて上昇から降下する軌道で迫り来るライモンの体に突き刺さる、腕の一本が千切れ飛んでレックス足下に転がる、
「ビクともしねえぜ!」
なお無限の再生能力で内側から肉体が復元していくライモン、そして、
「足下を見ろカイリ!ヤツの腕が赤熱化している!」
それは落ちた腕、突如高温を発し赤く輻射しながら容積を拡充、そして至近で爆破、
「キャっ!」
コクピットで思わずもんどり打つイエロー、
「この間のウニ野郎のコレクション技じゃねえか、どうなってるっつーの!」
それは金の金庫に蓄積されたコレクションの能力が巨大活性化する事で目覚めた事を意味した、ライモンの再生+電磁波加熱、膝を折るダメージのルパンレックス、僅かに距離を置いた事がむしろ幸いしたのか、
「あのギャングラーの千切れた身体が全部これから爆弾になるという事か」
ブルーは不安をかき立てた、
「最強コンボじゃん」
敵にダメージを与えれば与える程、敵の手数が増え、そして再生能力は無限に手数を産み出す土壌となる、
「いくぜてめえら!」
ライモン、距離を置いた対手に金庫周りの棘6本、棘は周回を描いてダメージが抜けきれず挙動の鈍ったルパッレクスのボディ各所に鋭く突き刺さる、
「ヤバイヤバイヤバイじゃん、これトゲーノの時と同じじゃん!」
イエローのパニくり様は経験で言えば当然だった、ルパンレックス内部に食い込んだ棘が6本全て赤熱化していく、トゲーノの毒針を彷彿する、
「「「パトカイザー!弾丸ストライク!!」」」
しかし、その背後、両腕にエネルギーを充填したもう一体の巨人から炎球が放たれる、それはパトカイザーの左腕より放たれた火砲、
「オイラにこの形で結集したトリガーマシンの力は、パトレンU号の3倍の力を持ってるんだぜ!」
火球がライモンの身を浮き飛ばし、金の金庫扉に僅か煤が着く、
「この金の金庫のライモン様には屁でもねえ!、」
吹き飛ばされたライモンを余所にルパンレックスは身をよじって刺さった棘を振り払う、
「なんだよ、赤くなってどうのこうのあの警察のデカブツ口だけかよ」
逆に言えば吹き飛ばす程度でしかない威力のパトカイザーの一撃に焦りを覚えるルパンレッド、
「もう関係ねえ!そこらじゅう火の海だぁ!」
落下した棘をライモンは、さらに金庫周りの棘を何度も連続再生させて街の地面、家屋の壁、放送局の屋根などに大量散布する、加熱して街を焼き尽くつもりだ、
「ところがぎっちょん!」
「どうした、オラ!オラぁ!」
しかしライモンの豪声が徐々に先細りして戸惑いに変わる、
「金の金庫を打ち破れなくても、パトカイザーの攻撃は確実に金庫に蓄積された力を奪っていく、まずは『熱くなれ』だ、」
ルパンレックスコクピット内に轟く声はそう言った。パトカイザーの能力はパトレンU号と同じくコレクションの力の消去、その能力は合力したトリガーマシン3台の力をさらに引き出し相乗的に力を引き上げる、
「このオレ様にはまだまだ手があらぁな!」
それでもなお大剣を振り上げてパトカイザーに襲いかかろうとするライモン、ライモンの腕が4本から千はあるのではないかという程に増殖する、数十の手で掴んだ大剣を振りかざし、ルパンレックスの剣を中央から寸断、
「ふざけんな、させねえってバ」
それでも大剣を鍔で受け止め、そして受け流し切っ先を地面に落としたかと思えば、代々木公園の大地にライモンの大剣を踏みつけた、
「おー、まるでフェンシングみたい」
うみかは先日ネット映像で拾ったフランス革命時に活躍した女傑のアニメを思い出した。フランスと言えば剣術はフェンシングかと言えばさてどうだろうとは思うが。
「力を受け流す要領をようやく見えてきたっツう事よ。」
「いいのかカイリ、これではオレ達は囮だ、奴等さっきから加勢もしない、」
「良いんだって、こっちは盗るモノ盗って後はあのギャングラー倒すだけなんだから、」
「どう?ゆう?こと?カイリってば」
「決定力はあっちにあるんだぜ、さっきと逆、じゃんじゃんフリーにやってもらうさ。ケイちゃんだってそう考えるさ。」
快盗3人の会話をもちろん警察側に聞こえない、ないのだが、
「あっちが全ての防御を引き受けるだろう、U号の時の逆だ、こうなればこっちは砲台になってライモンを撃破すればいい。」
「センパーイ、こっちが楽をするって事っスか?」
「圭一郎、快盗がそこまで都合良く」
「イヤ、奴等なら、ヤツならそう動く、我々を利用してギャングラーを一体でも倒したいはず。ならばヤツは必ずオレに時を稼いでくれる。次だ、つかさ!」
『出動!縦横無尽!』
パトレン1号は不思議と迷いの無い自分に内心戸惑いすらありながら、3号にバイカーの射出を促す、バイカーの巨大化もグッドストライカーへの合体も3号が実証済みである。
『カエマショータイム!』
ルパンカイザーのそれと同じく、一部の合体マシンを交換できるパトカイザー、トリガーマシン3号が接続を解いて右腕の役割を終え、入れ替わりにトリガーマシンバイカーが巨大化して接続、
「「「パトカイザーバイカー!」」」
一方でルパンレックス、
「抑え込んでやるぜ!」
「いけよファング!」
千手となったライモンの拳を、辛うじて光のフィンを飛ばして威嚇、必殺の大剣を抑え込んだまま半ば千日手に陥っていた。
「「「パトカイザー!ロックアップストライク!」」」
そのルパンレックスの背に向けてバイカー前輪が尾を引いて投擲される、
「カイリ、警察がオレ達を攻撃してきたぞ!」
また騙された、などと肝を冷やすルパンブルー、しかしカイリ、ルパンレッドは逆に嬉々とした、
「分かってんじゃんケーちゃん、飛ぶぜ!」
迫る前輪を咄嗟に上へ躱すルパンレックス、つまりルパンレックスの前面に立ちはだかるライモンにその攻撃が直撃する、
「てめ」
ルパンレックスによって半ば視界を遮られた状態からの不意打ちは屈強のライモンを怯ませ、前輪と本体を連結するワイヤーはあっという間にライモンをグルグル巻き、敵の身を頭上に放り上げる、拘束し放り上げた上で左腕の短身砲が炸裂、
ぉぉぉぉ!
ライモンの雄叫びが木霊し落下、
「煙吹いてるだけじゃんアイツ、」
しかしその身は焦がしてもダメージらしいダメージは見受けられない、ルパンイエロー同様6人全員が焦燥感に囚われる、
「ところがギッチョンって言ってるってよ!」
「くそ、この刀のサビに、どうした腕が、腕が上がらねえ!」
倒れてなお立ち上がるライモンはしかし、肩胛骨に違和感を覚えた、左右を見渡すと千手の内自らが生まれながら持ち合わせている二本の腕しか上がらない、力無くダラリと下がりただの気色の悪いアクセサリーと化している、
パトカイザーの攻撃は、金庫に蓄積された能力を徐々にだが消し去っていってくれている。
「だがそれだけだ、ヤツの体力すら削れていない、」
「センパーイ、あいつピンピンしてますよ!」
ルパンブルー、パトレン2号は奇しくも同時に叫び、そしてルパンレッドとパトレン1号は、その受け答えを奇しくも同じ文言で返した、
「「何度でもやるまでだ!」」
『出動!伸縮自在!』
ルパンレックスは光のフィンを数枚出してライモンへ攻撃、そしてパトカイザーはトリガーマシンクレーン&ドリルを召還、バイカーに替わって装着。
「どうしたどうしたどうした!」
ルパンレックスのフィンを数枚身に受けながら筋肉の隆起だけで跳ね返し、さらに傷口が瞬間的に復元するライモン、もはやルパンレックスでは時を稼ぐくらいしかできない、
『クレーンをくれーん』
パトカイザー、一瞬だけ隙を見せたライモンに向かってクレーンのチェーンを巻き付ける、
『ドリルをかりる』
そうしてクレーンのパワーで勢い引き寄せてドリルで殴りつける、
「「「パトカイザーブレイクアップストライク!」」」
そのままクレーンで宙吊りにしてドリルを幾度も連打、ライモンの咥えた骨が弾け、隆起する肩アーマーももぎれ、自慢の鬣も左半分削げ落ちた、
「どうした、どうしたってんだ!」
ライモンの喜色を帯びた遠吠えが狼狽に変わった、
「ようやくかよ、」
ルパンレッドは勝機を見た、
ライモン、肩アーマーも自慢の鬣もいままでなら一瞬で元の通り修復されていたはず、ところが今では弾け飛んだ骨を咥え直す余裕がない程にダメージが復元しない、
パトカイザーの再三の攻撃によってついにライモンのほとんどの能力を消失させるに至った、
「オレ様は、金の金庫なんだよ!」
しかしライモン、身体から2本伸ばす、あの黒い、高尾ノエルが『フィジカルチェーン』と称した強力な鎖を、パトカイザーをあっという間に拘束、抵抗するパトカイザーは左腕クレーンのパワーで無理矢理チェーンを引きちぎろうとするも、逆にクレーンのシャフトがくの字にへしゃげる、
「高尾ノエルが苦戦したヤツじゃないかこれは?」
「せんぱーい、腕を元のサイズに戻せば」
「そうか、咲也、それだ」
パトカイザー、ダメージを負ったクレーン&ドリルを縮めてチェーンから脱出しようとする、
「逃がさねえってよ!!」
死の際まで追い詰められれば進化する、それが生命力と言うものである、拘束から抜け出そうと空間を空けたパトカイザーに間髪入れずチェーンが縮んで拘束を強める、そのチェーンはまるで別の生き物のようにライモンの意思通りに動く、
「くそ」
朝加圭一郎は歯がみした。生命力とは、死から逃れようとする力であり、渾身をライモンは絞り出した。
「おいてめえら、」レックスのコクピット内に音声が轟いた、「あれを切断するぞ。」
ダメージを負って動けないジャックポットの言句に反応するのは間近で見ていたブルー、トオマだった。
「待て、あの鎖はエックスでも切れなかった」
「斬れる、オレの言葉を信じろ。」ジャックポットの自信はどこから来るのか。
「斬るも何もウチらの剣折れてるじゃん、じゃん?!」
くらえええ!
コクピットの混乱を見透かしているはずもないライモンがしかし、その大口を開け、光を点した、
発射、
直撃を受けるレックス、その両肩のフィンも片側が欠け、バルカン砲も喪失、ソーサーも歪み、その自慢の冠も真っ二つに折れてしまう、見るも無惨な姿となって動けなくなる。
「カイリ!どうするんだ!?」
コクピットから投げ出されたブルーは、腰に手を宛がうイエローと同じタイミングで再び座席に就く、半ば破壊されたルパンレックスと半ば拘束されたパトカイザー、フラッシュバックするエックスの最期、ブルーの目の前には絶望が広がった。
「忘れてんじゃねトオマ?」カイリはこの後におよんで余裕を崩さない。
「何がだ。」
カイリ、ブレスレットのようなコレクションを片手で掲げた、
「俺っちらも、こういうモノがあんだぜ。」
それは『医者医者』のルパンコレクション、
「オラオラ、たとえ腕が無くなろうともオレ様は無敵だぁぁ!」
ライモンはパトカイザーをたぐり寄せようとし、パトカイザーも負けじと綱引き状態で拮抗している、
その状況においてライモンは、沈黙させたはずのルパンレックスから溢れる光を半壊した顔面で浴びた。
あのブレスレットが光を放つとコクピット内部も発光、光が頭部から徐々にルパンレックス全身を行き渡り、折れた剣先も肩アーマーも光が導くままに復元していく、発光したボディで飛翔するルパンレックス、
「っファング!」
レックス両肩アーマーより10枚の光を帯びたプレートフィンが射出、周回してルパンレックス背面にまるで後光のように方円に配置、宙にあってジャックポッドソードの切っ先をライモンに向ける、
「名付けて超高速必殺斬りってか!」
「ダサいぞカイリ」
煩い小娘、
ルパンレックスはファング10枚に推され加速急降下、
「いくぜケーチャン!」
片手で握るソード、
「斬れるのか本当に」
等身大でファイヤー、サイクロンの同時攻撃を凌いだフィジカルチェーン、
「斬れる、奴は生まれたばかりだからな!」
振り下ろされるジャックポッドソード、同時に背にあったフィン10枚が立て続けに刃を後押しする、
裁つ、
「どうだケーちゃん!」
ルパンレックス、あのフィジカルチェーンを両断、パトカイザーを拘束した鎖はズリ落ち、フリーになって慌てて右腕に3号を再装着するパトカイザー、
「快盗には負けられん、我々でトドメを刺す!」
返す刀でなお光輝く大剣でライモンに刺すルパンレックス、連動してファング10枚もライモンに一点で突き上げ、ライモンの巨体を宙に浮かせる、否それどころか持ち上げ天高く上昇、
「貰っちまうぜこのギャングラーを!」
パトカイザー、ライモン共々飛び上がったルパンレックスを仰視した。
「パトカイザー、バトルフォーメーション!」
グッドカイザーの呼び声と共に両足を揃えて倒立気味に浮遊、足裏の砲門をライモンに向ける、
『3号、警察ブースト!2号、警察ブースト!1号、警察ブースト!』
パトレン1号、胴体内部のコクピットにおいて、VSチェンジャーにスケールを戻したビークル3台を立て続けに装填、装填されたビークルは立て続けにアバター化しコクピット内部、グッドストライカー内部に溶けるように拡散、仰角のグッドストライカーにアバタービーコンのVSチェンジャーが装着され、それを構えるアバタービーコンのパトレンジャーが空疎な巨体となって出現、
「「「パトカイザー!ビッグマグナム!」」」
轟く豪砲、
「オレ様がここで終」
呑み込むはライモン、大口を空けて反撃しようと試みるもパトカイザーの豪砲はライモンの上唇をめくり上がらせ口内を露出、その上で全てを光の屑へと溶かしていく、
「オイラがこの大きさになってからのイチゲキストライクはU号の5倍近い攻撃力があるんだぜっ」
グッドストライカーが自慢げに吠える、
「ま、やるじゃん、って事にしといてやるっちゅうの。」
上空にあってライモンを刺し飛んだルパンレックス、パトカイザーの一撃を咄嗟で回避してそのまま旋回しながら立ち去っていく。
「快盗にずっと煽られていた気がするな今回は。」
パトカイザーも分離して飛び去る4機の機影を見上げるままに、
「オイラはこれから大親友とデートだからね!」
そうして3人を放り出し、グッドストライカーもまた寸法を縮小して地を這うように消えていった。
「見つけたぜ金の金庫、」
色気のある声を上げてジャックポットストライカーもまた本来の寸法へと戻り、破壊された陸上競技場から野外ステージにかけての一帯を周回し街道を跨いだ桜の木の根元、角度によって視界に入らない根と根の間、そこに転がっていた。
「金の金庫になったは良いが、羽化したばかりで成長が早過ぎたんだ、要するに脆かったんだよてめえはよ、だからポーダマンもフィジカルチェーンも本来の強力さが無かった、まだ『医者医者』が腹ん中にある内は攻撃を受けながら修復もできたんだろうがな。」
金庫だけが煙を吹いて転がっていた。見つけたジャックポットは金庫の上に留まり、鼻歌を歌い出した。だがそんな紅いコレクションの機嫌はピークから急降下して奈落に達する、
「このバースでのルールは、オレとおまえは動かない、その禁を破ったなら、応報を受ける、そうだったよな。」
脅威の空気が張り詰めた。
「警察のガキが逃げた件も気づいていないと思っていたのか?そこまでマヌケではあるまい?」
眼前の空間が歪み、波紋を立てて2メートル近い体躯の影が現出する、鎖の音がうっとおしい、足音の他に雑草を踏みつける硬質な何かの音がする、時に歯ぎしりのような摩擦音は身体の骨が軋む音なのか。
「ドグラニオ、悪ぃ、金の金庫見たらよ」
「いままでおまえのルール違反は大目に見てやった、おまえの連勝に文句も言わず言うまま次のコレクションを送り出してやった、オレもこのまま100年はおまえと遊んでいられると思っていたが、この金の金庫が出現したとなれば話は別だ。」
一歩一歩杖を突きながら踏み歩く圧倒的存在は手を祓う仕草だけでジャックポットストライカーを押しのけ、否この意思のあるコレクションが自発的に押し退き、ダメージを負った金庫を片手に掴んだ。
「なぜだ、なぜこんなにも早く金の金庫が出現した、ドグラニオ!」
「さあてな、オレもよく分からん。金庫を呼び覚ますのはゴーシュに任せていたからな。このバースの人間とは相性が良いのか、金庫にそれほど邪な怨念を込められるのかもしれんな。」
カカと高笑いをあげた恐怖の存在は、そのまま振り返らずに後退していき、
「ゴーシュの金庫は今度の景品としよう。さあ次の手合わせも楽しませてくれよ。」
無の波紋広がる先へと溶けるように消えた。
「けったくそ悪いぜドグラニオ、てめえ一人の筋書き通りってかよ!」
宙に浮かんで負け惜しみを叫ぶしかない紅の翼だった。
「コレクションいただきっ」
「コグレさんに渡すとなればだカイリ、避けて通れないぞ。誰が伝える?」
「エックスの事、そう言えばあの二人ってどういう関係なんだろ。今まで考えてなかったヤ。」
「しかしまさかエックスがロボットだったとはな」
店に帰り着いた3人の快盗は顔の疲労感とは対極に、達成感が脳を満たしていた。また同時に喪失感も無いと言えば嘘になる。
そんな思いを抱えた真鍮の鐘が鳴る、ビストロ・ジュレのドアが開け放たれた、気づくべきだった、店内の明かりが灯っている事を、
「ロボットな訳ないだろ、ボクにとってロボットの一体や二体」
「ノエルくんにまた騙されましたね君達、」
居た。ラテとエスプレッソを啜りながらジュレセンターの丸テーブルで対面するエセフランスの二人が。
「ダミーだよ。ボクの。」
思わず転倒するカイリ、続いてそのカイリに覆い被さるように前のめり顔面を打つトオマ、トオマに足を掬われ中空を舞ってニャンと3回転し着地するもどういう訳か足下に落ちていた濡れたウェスに足を滑らせ、強かに背を打って白目を剥いた。
「「「おまえ!」」」
もう信じられない屈託の無い微笑みを向ける高尾ノエル=エックスだった。何よりも腸が捩れるのは、その横で全ての状況を把握しながら平然と店のエスプレッソを勝手に飲み干したハゲじじい、おっと、ジェントルマン小暮の余裕綽々の顔だった。
「さあコレクションの『医者医者』を。」
「ぜってぇーアンタらいつか欺し返してやっからな!」
カイリが投擲したコレクションを片手で掴んだエックスは、まるでメインディッシュを配膳するかのように小暮のテーブル前にそれを置いた。
「待て、なんだこの匂いは。」
落ち着いて店内を見回すと大皿に載せた挽肉といんげんのシンプルなカスレ、皿に敷き詰められたパテ、巨大にもほどがあるシャケのパイ包み焼き、5列に整頓されたローストビーフ、サラダはリヨン風で砂肝の香りを漂わせて、カゴに無造作に差し込まれたフランスパン、
「お腹鳴っちゃった」
うみかはたまらず顔を赤らめた。
「けっこうイケっぜ。エックスかよこれ。」
「おまえらなぁ、人の店の食材を使ってだな、ここはオレの厨房だ、今度やる時はオレが、まあ56点だ。」
「モゴモゴモゴ?モゴモゴ!」
3人はエックスが用意したバイキング形式のフランス家庭料理をひとつまみずつ口に入れて喜怒楽の表情を交互に浮かべる、
「では私はこれで。」
といつのまにか白手袋に掴んだ『医者医者』のコレクションをブックに納め、わずかにエスプレッソを残して席を立つ。
「そうそう、警察の3人も全快祝いでここに呼んである、君達もそれらしい身支度をしたまえ。」
「なんだと!てめえそれ先に言いやがれ!」
「おまえこのオレの店で常連にオレの料理を出してないという意味が分かってだな!」
「モゴ!?(あいつくんの?!)」
慌てふためく3人を前にラテで余裕の構えを見せる小憎らしいおフランス。
「今日は!ジュレでボクの全快祝いしてくれるって!!」
まず喜び勇んだ2号が猪突、もちろん隊員服でなく通勤に使うスーツである。まだその時点で気づいていない、
「この度はこの場を提供していただき感謝す」
3号もまた通勤でのスーツをやや体型にフィットさせたルックスでノータイの空いた首元がやや色気がある、その色香のある口元がマヌケにフリーズ。
「やあカイリ君、管理官から君がウキウキしながら二つ返事で貸し切りにして・・・高尾ノエル!」
そして2号と同じく組織で決められた上下に身を固めた1号は二度までも欺された事に激高した。
「やあ君たち。」
高尾ノエルという人物の屈託無い笑みに反感を覚えずいられない。
「え?あ!ノエルさん!足ちゃんと付いてますよね?」
「昭和かバカ」
「うみか、お客様だ」
「小暮さん消えてるシィ。しかしケーちゃんオレウキウキってどういう」
「圭一郎クン、実はボクがここをセッティングしてヒルトップ管理官に伝言しておいたんだ。さあ店員さん、今日の主役3人とボクに食前酒を。圭一郎クンにはドラフトを、つかさクンには赤を、咲也クンにはシャンデー・ガフを。ボクは白を。チーズがあればなお良いけどね。」
「高尾ノエルキサマ!」
「圭一郎、諦めろ、高尾ノエルという奴はこういう奴だ、私は諦めた」
「うみかちゃ~ん今日もカワウィねーぇ、でもゴメンね、ボクには大切な人がいるんだ、君の好意はすごくありがたいんだけど、タイミングが悪かったね」
「トオマ、こいつ3枚に下ろしていい?」
「お客だお客」
「オレはこんな席はゴメンだ!こんな信用できん奴の為に、たとえヒルトップ管理官の、」
「これはもう一人の管理官としてボクの命令だよ、圭一郎クン、あー、そうか、店員クン、すまないがドラフトはノンアルにしてくれたまえ。」
「オレは別にだな!命令か、クソ命令というかクソ」
「ウマイっすよ先輩!」
「さあ、店員クン達も呑みたまえ、これは主催者として、日本でなんと言ったかな、ブレコーだ、ブレコー。」
「それを言うなら無礼講だ。オレの包丁を使った痕があるクソ」
既に20時を回って成人達の酒量と未成年達の胃の中身がヒートアップしていく。
「ケーちゃんアルコールダメなんだ、へえ」
「カイリ君、それは違う、今日はこれから帰って宿直だ。決してだな、」
「ほらこぼれてる、シャツにソースが」
「うみかちゃん今日はやたら親切」
「ピッチが早過ぎますよ。チーズをどうぞ。」
「ギャハハハハハハハ」
戯けたピエロの役割を適当に終わらせ高尾ノエル=エックスは、壁が幾分取り払われた6人の様を店の端に座り込んで傍観している。
「しかしそれにしても恐ろしいのは、カイリくん。」
ボルドーの白の風味だけをグラスを回して堪能するエックス。
「ボクの計算ではトオマクンがマジックを受け取り、パトカイザーとジョセフィーヌ達で巨大戦も乗り切るつもりだった。カイリクンが強引にロックを解除したのは想定外でしかない。創造主のボクにレッドダイヤルファイターが逆らったというのか?こんなにも彼らとコレクション達は親和してきているという事なのか?カイリくん、君は、似てるな。ボクを絶えずハラハラさせるところまで。」
「え?つかさ先輩、ネットでバズってますよぉ!」
「ギャハハハハハハハハ」
「え?え?これ何スか?(知ってるけど)」
「やはり耐えられん、明日の食材は明日早起きして買ってくる、このままでは店の沽券に関わる、追加注文を、3人さん、していいですよ、いやしてください、頼むからしてください!」
「つかさ、オレは男でも女でも関係ないぞ。」
「それ刑事さんフォローになってナイナイ、どうして女心わかんないんだろ。」
「ギャハハハハハハハハハハハ」
ちなみにあの明神つかさと共に男女逆転した姿を世間に晒した歴史的超スーパーアイドルグループ『チョー新宿』は、エックスがライモンと対した段階で避難を完了しており、その身体もつかさと同じタイミングで戸籍上の性別に戻ったのだが、その後一年と経たずして人気が急落する。
なにあの恰好、キモチワルイ、キィーィ!
美少年から美青年となり女性層の支持を確実なものにしていたアイドルグループであったが、ここに来て急激にその女性層があの1分だけの映像の為に離れていく珍事が起こった。アイドル評論家ヒビキセミノスケ氏は、女装までなら女子層も好感を持ちますが性別を超えては嫉妬の対象になります、と彼らの不幸を哀れんだという。アイドルグループチョー新宿は以降コメディアンとしてセカンドブレイクするまで芸能界の辛酸を舐める事になる。
「では、私がゴーシュの金庫を奪還してみせましょう。」
そう言ったのはステイタスダブル、竜の落とし子の容姿をしたナリズマ・シボンズが自らの主の前に伏している。
ここは暗闇の巣窟、エイギュイユ・クルーズ。
「・・・・・・・」
「ドグラニオ様?」
「新入りは、黙っていろ」
主は視線すら合わせない、いつものごとくひじかけに鎮座しながら、呑めもしないグラスを燻り、吸えもしないハマキを指二本で挟んでいた。
「ゴーシュはしかし必要なんですよね?ドグラニオ様。」
「・・・・・・・」
「ドグラニオ様」
「黙っていろ、二度、言った。三度言わせたらその金庫をリセットする。」
洋館にはただ二体の異形しかいない。
この両者が沈黙すると闇に吸い込まれるほどの静寂が屋内外に響く。
豪声が上がる、
それはいつもは主の側近く起立しているはずの異形の絶叫。
開け放たれる両扉、側近の異形はどういう訳か全身から煙を吹き上げ、仁王立ちでドグラニオの眼前に立つ。
「上手くいったようだな、デストラ。」
「ドグラニオ様のご命令であれば、必ずやってみせま」
そのまま仰向けに卒倒する巨躯だった。
「やはりな、医者医者のデストラ、警察の装備に死ぬ寸前まで追い詰められたデストラは潜在的に既にライモンに匹敵する力を備えつつあった。そのコレクションをライモンに納めさせれば、相性が上がり、二つの金庫も相乗的に互いを刺激するものと分かっていた。」
下品な笑いだ、
ナリズマは主の高揚になんら口出ししなかった。それよりもなお驚くべき事象から目が離せなかった事もその一因だろうか。
「金の金庫が、二つ。」
右肩だけだったデストラの金庫の反対側、左肩にも黄金色に輝く金庫が埋まっていた。いやその身に埋めた事にナリズマは驚いているのではない。ナリズマ自身がステイタスダブルであるのだから。むしろ注視してしまうのは右肩の金庫もまた左肩と同じ光彩を放ってる事であった。
これにより、ドグラニオ、元々ライモンだったデストラの左肩、そしてデストラの右肩と、この世に3つもの金の金庫が並立する事になる。
明神つかさの目覚めは職場の宿直室であった。やや重さのある掛け敷きに挟まれて寝苦しさのあまり目が開いてしまう。
まず感じたのは布団と己が皮膚が直接密着している感触であり、頭皮の内面全てに走る激痛は昨夜ひさしぶりにワインボトルを何本か空けた事を思い出させた。上半身を起き上がらせると掛け布団がズリ落ちて自慢のボディが露出する、一人暮らしの女であるから、そのままの出で立ちで朝食を作る事も用を足す事もあっていいだろう。しかし彼女は職場に在り、そして眼前には同僚男子が制服のネクタイを正しながら鏡を覗き込んでいた。
「つかさ、起きたか。もう出勤の時間だぞ。」
結局、結局私は圭一郎で収まるオンナだったか、
明神つかさ一生の不覚だった。