快盗戦隊VS警察戦隊に極めて近い世界線のルパンレンジャーVSパトレンジャー   作:bassher

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※この作品は『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』という素材を使って再構築した二次小説です。
※諸処設定等変更ございます。
※オリジナルのスタッフが小説という形で奮起される事を切に願います。



# 7 クリスマスを楽しみに

 

 

 

『つかさちゃんはもうボク達が必要ないよね、さようなら』

 

「待って、ジダモちゃんホウギョクちゃんアンヅちゃんきしめんたろうちゃん!」

 

『さよならつかさちゃん、いままでありがとう』

 

「マッテマッテ!うづきクレメンマルちゃん、ビッグドムちゃん、トライデンさんぺいちゃん!」

 

 いつのまにか少女の容姿となっている明神つかさだった。

 

「マッテエマッテエマッテエ!あっ!」

 

「サヨウナラツカサチャン・・・・」

 

 その場に転んで起き上がれないつかさはそれでも手をいっぱいに伸ばした。

 離れていくぬいぐるみ達、手が届かない、もう目で捉え切れないところまで離れていき、静かにフェードアウトしていった。

 

「あ・・・・そんなぁ!」

 

 明神つかさは実年齢の容姿に戻ってその場で正座気味のまま泣きじゃくった。

 

 

 

「ああ、勢いで行くところまで行ってしまった。」

 

 明神つかさが目覚めたのは職場、宿直室だった。

 畳の上に一枚の紙切れがあり、そこには、先に行く、とだけ書かれていた。

 

「ああ、私は圭一郎で収まる程度の女だったか。」

 

 そんなつかさも姿見の前に立ち、制服の折り目を正した。

 

「圭一郎とはシフトが合う事なんか金輪際無いからな、どうするか。」

 

 

 

「国際警察の権限において、ビストロ『ジュレ』、家宅捜索する!」

 

 独断でドアを蹴破る朝加圭一郎だった。

 真鍮が転がる音がした、ビストロ『ジュレ』はこうして終わった。

 しかしそれ以外の反応がない、

 朝の日差しが差す店内テーブル席、僅かな埃が反射でキラキラと輝いている、

 

「これが彼らが働いていた厨房。」

 

 整然と並べられた食器と器具、レードルは五つ重ねで掛けられ、フライパンも鍋も三つ重ねられ棚に保管されている、だがしかし、それを丹念に磨いていた店主の姿は無い。

 

「これが浴室、トイレか。」

 

 決してうみかの姿で連想している訳ではない、

 

「これが、」2階へ銃を構えたまま駆け上がる朝加圭一郎、「カイリ君の部屋はここか。」

 

 枕もシーツもそのまま、蛻の空だった。シーツの皺を一つ一つ目で追いながら、部屋を空けてどの程度の時間が経っているかを掌で確認する朝加圭一郎だった。

 

「何をしている圭一郎、」

 

 朝加圭一郎、枕を掴んだ手を慌てて引っ込め、明神つかさの視線から目を背けた。

 

「起きたか。」

 

 それだけ辛うじて絞り出した。

 

「圭一郎、それより、」

 

 そう、今明神つかさは仕事の場ではあるが、朝加圭一郎と二人のみというシチュを得た。

 

「解っている、責任は、取る、親御さんにも目通りする。」

 

 男は社会的責務をまず口にした。

 

「圭一郎、考えてみろ、我々は日々ローテーションで休日はすれ違ってばかりなのだ。二人揃っての休暇を取るなどあり得ん。だが私はまだこの仕事を辞めたくはない。」

 

 女は私生活上の懸念を口にした。故に男女というものは対話が食い違う。

 

「そうか、あるいは職場での共働きはいかに国際警察であろうと御法度かもしれん。解った、その内考える、それより今はカイリ君達の行方、職務に専念をだな。」

 

「それより?」

 

「せんぱーい!」

 

 耳を劈くように二人の対話を遮って2つ先の部屋で騒いでいる後輩同僚に両者共に呆れ顔を表に出した。

 

「せんぱーい、フカフカだ、ホントだ、うみかちゃんの匂いがするーっ」

 

「変態かキサマ!」

 

「いやあ、やっぱりうみかちゃんだったんだ、ボク知ってたなぁ」

 

「咲也、おい、やっぱりとはどういう事だ、」

 

 つかさが顔満面にキモいものを見た表現をしている後ろで圭一郎は同僚の言動に奇異を覚えた。

 

「だって、匂いいっしょですよ、うみかちゃんとイエローちゃん。」

 

 犬かキサマ、

 

「なんにしてもだ、カイリ君達はここを離れてかなりの時間が過ぎている。後は鑑識班に任せて」

 

 その時圭一郎の通信端末からヒルトップ管理官のエキサイティングな声量が響いてきた。

 

「ギャングラーが、多摩市?」

 

 

 

「その代わり、あのルパンレッドはこっちで処理させてもらう。でなければ、もうこれっきり、この世界はドグラニオ様が思いのまま滅ぼす。」

 

「そのドグラニオに伝えてほしいね、これでゲームはエキサイティングになったと。」

 

 群馬県高崎市某廃工場、高尾ノエルの眼前にはテンガロンハットにポンチョという出で立ちの青年が立っている。顎にやや自己主張がある。その眼光が鋭く高尾ノエルを差した。

 

「まあ、いいだろう、次節はデストラ・マッチョ、指定区域は文京。」

 

「なるほど、『マグナム』に対抗する為の金の金庫か。そうせざる得ないという事かな。」

 

 珍しく悪意のある高尾ノエルの笑みに、眼前のポンチョの男は無表情で応えた。

 

「デストラなら、あの一帯を蹂躙して草一本生えない大地にするだろう、それで」

 

「待ちたまえ」

 

 ポンチョの男は他人から制止されるのを酷く嫌う、この時もそれを公然と顔に出した、出したが堪えた。珍しい事である。

 

「このオレの決めた事に文句でもあるのか?」

 

「違うな、そちらがボク等の預かり知らぬところでゲームをスタートした、と言っている。多摩市桜ヶ丘にギャングラーの目撃情報が警察に上がった。ボクの方が聞きたい、何をしたい?」

 

 憮然とした表情がいつのまにか口角が上がり、吊り目になってやや顎がしゃくれた。

 

「さぶっ」思わず吹き出したポンチョの男だった。「オレの預かり知らん金庫がどうやら動き出したという事かな!」

 

 高尾ノエルは唖然とするしかなかった。

 

 そんなはずはない、ドグラニオがそれを許すはずが、いや、見過ごしたという事か、

 

 

 

 時に、世間は12月24日である。

 

「クリスマスには!チキンの代わりに!シャケを!食えぇぇ!!」

 

 聖蹟桜ヶ丘と言われる地域は、多摩地域全域でごく平均的な街であり、ある映画の舞台モデルとなった事以外可も不可もない野猿街道と鎌倉街道に挟まれた私鉄駅周辺の俗称である。

 そこには骨付き肉をフライにして食べさせるチェーン系ファーストフード店がある。今日と明日は年に一度のかき入れ時だ。

 

「やめろぉぉぉ」

 

「シャケを食え、もっと食え」

 

「ジーュュをえ3!(くえません!)」

 

「ノーチキン、チキンを売るな!」

 

「そこは!フライヤーにシャケを入れないでぇ!」

 

 シャケの頭骨を胸に飾り肋骨の中になぜか巨大なサイズのイクラを百単位で抱えている怪物が、その人間のコンマ5倍広い掌で丁寧にシャケの切り身を小麦の中に投下して衣にし、そしてフライヤーに指の股に挟んだシャケを8枚同時に投下、

 

「シャーケっケ」

 

「やめてくれ、小麦粉と油にシャケの脂を混ぜないで!」

 

 それは地獄絵図だった、フライドチキンの代名詞たるそのファストフードチェーン店は、今シャケの脂によって汚染され、店が荒巻に蹂躙されようとしていた。

 

「ダラダラダラぁ~」

 

 シャケの頭蓋骨をしたその怪物は、勤続16年のバイトリーダー、本業と副業が逆転しつつある自称お笑い芸人を厨房の床に押し倒し、その歯並びの整った口先から大量の粘液を浴びせかけた。

 

「やめてやめてぁぁぁぁ」

 

「ギャングラー怪人、」

 

 そして店内に現れる2人の影、

 

「ボク達のプレシャスを、返してほしいな。」

 

 短剣を片手に突進するゴーグルマスクの男、体色は黒、黒っていたっけ?短剣なんて武器あったっけ?

 

「サバイブレード!」

 

 黒のマスクはシャケの怪物に挑みかかった、慌てたギャングラー怪人は右に躱し、躱した拍子に胴に詰まったボール球のようなイクラがいくつかこぼれ落ちた。

 

「キサマ、イクラがこぼれたではないか、そこまでしてチキンの味方をするつもりかぁ!」

 

「ボク達はキミがサージェスから盗んだコレクション、お宝、『プレシャス』を回収したいだけさ。」

 

 そのスーツは全身が青でキメられた黒の方と同形異色。

 その青い男が黒と同じ短剣の形状を短銃に変えて弾丸を発射、

 

「サバイバスター!」

 

 剣でも銃でもある標準武装だ。

 

「ええい、おまえ達あくまでチキンに味方する気だなぁ、こうなったらこれを金庫に」

 

 シャケの化け物が薄い絹か何かの反物、光沢で七色に映える繊維の帯を取りだしてくる、

 

「それは『虹の反物』、スコープショット!」

 

 黒のマスク、シャケの怪物が掴んだ反物めがけて、フック付きのワイヤーを投擲、巻き付ける、

 

「アアバァ!たったこれだけっ!」

 

 シャケの怪物、黒のマスクに掴んだ反物をかすめ取られる、ごくごく僅か指先にその切れ端を掴むのみだった。

 

「えぇ、またこの反物千切れちゃったの、ほころびが二つになっちゃったじゃないか。真澄、もっとスマートにいかなかったかなぁ」

 

「煩い、ミッション中は、コード、ネームだ!」

 

 適当に同僚を遇って、奪った反物をケースの中に封入したブラックは、尚得物を振るって近接戦闘を挑もうとする、

 

「だが我が輩は決してチキンに負けはしない、全イクラの期待を背負っているのだぁ」

 

 その指先に付着させる一欠片の布を金庫に納めた、

 途端、光り輝いて店内の天井を突き破り店の位置するショッピングストアビルを左右に割る、シャケだった人型の異形は、全長を70メートル台に伸張、全身が巨蛇か竜のようであり、その天へ掲げた頭を垂らして、その長い身を道路に沿って横たえた。

 

『チェンジ、あ、エンジンキャリゲーターぁ!』

 

 黒いマスクと青いマスクの二人が轟音に耳を塞ぐ、

 

「なつき、出番だ」

 

『真澄、ミッチョッン中はコードネームだぞ』

 

 オレンジの巨大トレーラーが大音量で叫ぶ、そのヘッドはまるでワニの頭ようにも見えなく無い、そのワニのトレーラーに同寸法の巨大なダンプカーが突進する、車線4つに跨がる巨体を振動させて荷台と思われた赤いマニピュレーターを二本起動、大きく伸ばして体当たり気味に敵トレーラーを鷲づかみする、

 

「なつき投げちゃうよ!」

 

 ダンプに搭乗するのは少女の声色、70メートルのオレンジの車体を掴んで宙に放り上げた、

 

「二台同時に操作しちゃうんだぞっ」

 

『発進シフトオン!ジェット!ゴー!ゴー!!』

 

 いずこからか飛んできたデルタ型の大型ジェット、上空舞い上がって錐もみして急降下、本体下部から2本のアームを伸ばす、空に飛ばされたワニのトレーラーは、大型ジェットがアームに挟み込み、トレーラーの巨体を軽々持ち上げて上昇、多摩川沿岸部に投擲し、周囲を旋回する、

 

『ええいこうなったら、拙者の奥の手を、5つの心が一つになって、あ、ガンバルオー!チューンナップ!バルカとガンパードはおまけ、ガンバルオーとはオレの事だぁーぁ』

 

 多摩川の土手に落下したワニトレーラーは2足歩行の人型にどういう訳か変型して河川に片足を突っ込んで起立する、

 

「俺達もいくぞ、ボウケンフォーメーションだ!」

 

『合体シフトオン!ダンプ!フォーミュラー!ジャイロ!ドーザー!マリン!ボウケンフォーメーション!』

 

 先に現れた赤いダンプカーが多摩川に乗り上げてくる、後続にいつのまにか4機のビークルが追随、ダンプが荷台を大きく展開する、先はまるで腕のように見えたが今回は大きな脚のよう、ダンプの両サイドに2台のビークルが並走、一台はイエローカラーで彩られた全長13メートルという巨大ブルドーザー、もう一台は白地にピンクのポイントがキュートな筒状のビークル、潜水艦だろうか、

 ダンプに左右から接続する2台のビークル、その姿はもはや人の形、なお走りながら上体が起き上がっていくそのダンプの足先から乗り上げて斜面を駆け上がりボディの先端にストップする黒いフォーミュラーマシン、ボディ胸部に被さるようにボディを屈折して筒状の頭が見えてくる、最後の一機、宙を舞う両翼のファンを回転させた青いビークルが背にドッキング、そのビークル後部パーツが冠のように頭に被さる、

 

「ダイボウケン、合体完了!」

 

 ビークル5機が合体、3人が一つのコクピットの中に集まる、3人が同じハンドル型の操縦システムを掴む、

 『ダイボウケン』と呼ばれた50メートル近くの巨大ロボがその全長に見合った寸法のスコップとピッケル状の武具を構えた。

 

『あ、雉も鳴かずば撃たれまい』

 

 シャケの異形だった怪物が何の効果か巨大化し右腕に内蔵された銃を放った、

 

「ファーストギア、イン!」

 

 敵の砲撃の中悠然と歩を進める巨大ロボ、

 

「轟轟剣!」

 

 ダイボウケンがスコップとショベルを組み合わせて巨大な西洋剣を構成する、片腕で薙ぎ下ろす、

 

『あ、これは春から縁起が悪い』

 

 自称ガンバルオー、反対の腕、まるで魚のような造形の装着武具で敵の段平を受け止める、受け止めて円を描くように回転し大気に渦を作る、眼前で突風を起こされ後退するダイボウケン、もんどり打って頭から倒れ込んだ、

 

「なんだあの緑のイルカは?」

 

「ソウソウ蒼太、あれは緑のオルカだね、シャチ」

 

「真澄来るよ来るよ!人相悪いロボットが来るよ!」

 

 即座に立ち上がるダイボウケン、

 

『あ、ぶっちぎるぜファイナルラップ、剛力無制限!』

 

 だが敵は恰好の標的と見て両腕を振りかぶった。

 

 

 

「あれは、なんだ?」

 

「敵?が二体?」

 

「なんかこう、ボクなぜか知らないけど、夢の共演って感じがします!」

 

 本部を南東へ、井の頭通りと交差する高速に乗って国立インター、そこからほぼ南下する進路で聖跡に到着するランエボカスタム、制服を正した国際警察3人は半ば2体の巨大メカが近接格闘する様に度肝を抜いた、ギャングラーと対峙する時とは重量感がまるで違う、それは当事者としての視点か端で眺めている第三者視点かという問題ですらない。

 

「そう、彼らはサージェス財団。『ボウケンジャー』だそうだ。」

 

 高尾ノエルはどういう訳かここまでいっしょに居たらしい10代前半の少女に向かって慇懃に会釈し、少女はこれまたどういう訳か長方形の頑丈そうな箱を抱えて、高尾ノエルに軽い笑みで返した。そうして少女と別れて3人の元に歩み寄った高尾ノエル。

 

「キサマ!」

 

「どこに行っていた!」

 

「同じンジャーなんですね!」

 

 圭一郎が上官に掴みかかった、

 

「おまえには!いろいろ聞かなきゃいけない事がだな」

 

「キサマ!我々が出前を取る毎に笑っていたのか!そうだろうが!」

 

 詰め寄る同僚男女に目を泳がせながら管理官待遇の優男は何も言わずに命令だけ下した。

 

「国際警察はサージェスからけっこうな援助を受けている。借りを返すという訳ではないが、サージェスが保管した『プレシャス』をギャングラーが2つを強奪した。1つは回収したと今情報が入ったが、もう1つは依然敵ギャングラーの手中にあるという。彼らボウケンジャーと協力して、その奪還をしたまえ。」

 

 命令に逆らえないのが国際警察の性である。

 

「任務、了解・・・・」

 

 歯がみする男女の国際警察だった。

 

 

 

『あ、ぶっちぎるぜファイナルラップ、剛力無制限!』

 

 だが敵は恰好の標的と見て両腕を振りかぶった。

 

「五基のパラレルエンジンを直結する!」

 

 ブラックが叫ぶと同時にダイボウケン内部から強振がコクピット3名の全身を包んだ、

 

『ダイボウケン、アドベンチャードライブ!』

 

 ダイボウケン、得物を片手に、頭上に楕円を描いて、振りかぶる、

 

『あ、オノーレオノーレ!』

 

 互いに弾き返る、

 もんどり打って後退りする敵のロボ、

 

「どーすんの真澄、必殺技跳ね返されちゃったよ!」

 

「相打ちさイエロー。」

 

「菜月、ミッション中はアーッもういい!オレ様流にやらせてもらうぞ、轟轟武装だ!」

 

『合体シフトオン、ジェット、ジェット、パワーオン!』

 

 先程敵の巨体を抱えて飛翔したデルタ型戦闘機が再び飛来、ダイボウケンの直上から直線で急降下、

 

「ダイボウケン、バスターモード!」

 

 急降下した『ゴーゴージェット』、地上スレスレでUターン、上角に機首を向け、上昇するでなく重力に従って降下、ダイボウケンが抱えるように受け止める、ジェットの両翼が前方90度に畳まれ、ダイボウケンはその自重のバランスをとる為に人間で言えば中腰の構えとなる、ジェットの両翼に仕込まれた機関砲2門を前面に向けたそれが『バスターモード』。

 

「真澄!いいの?このモードは敵の的になるから避けろってチーフが言ってたじゃん。」

 

 女声のマスクの言う通り、敵メカは左腕の大口径砲を雑多に放って突進してくる、直撃も何発か受けるが棒立ちのままのダイボウケン、中腰のまま身動きがとれないように見える。

 

「任せろって、オレ様流はこれからだぜ、」

 

『発進シフトオン!ミキサー!クレーン!ゴー!ゴー!!』

 

 ダイボウケンの右からはグリーンカラーの巨大ミキサーダンプ、左からバイオレットカラーの巨大クレーン車が突出、

 

『ゴッホ、ア、リューカークサーン』

 

 構わず突進する敵メカ、

 

「クレーンパンチ!」

 

 黒いマスクが叫ぶ、クレーン車アーム先端の2本のフックがロープを後ろでに引きながら射出、それはまるでクレーン車のストレートパンチ、これが敵にカウンター気味に入る、

 

『アッ!とオドロク、タメゴロー!』

 

 敵の動きがこれで停滞、そこへミキサー車が踊り出て背負ったタンクを前面に向ける、

 

「アジテーションシュート!」

 

 青いマスクが叫んだ。タンクから射出される粘質の液体が敵メカに大量に覆い被さっていく、それが一瞬で固体と化し、

 

『しばらくー、あいやしばらくー』

 

 まるで身動きがとれなくなってしまった。

 

「「「バスターモードシュート」」」

 

 コクピット内の3人が声を一斉に揃えた、ダイボウケンから怒濤のごとく撃ち込まれるビーム砲、その砲弾は敵メカの全身に浴びせかけられ粉々にしていく、

 

『殿中でござる!電柱でござ』

 

 呻き声を上げて崩壊していく肉体、敵は胸部をエメラルドに発光させ、それでも自らの崩壊を止められず最後は木っ端微塵に破裂した。周辺全体がエメラルドの光で満ちあふれた。

 

「これはいつもと違う!」

 

 思わず片手で目を覆う朝加圭一郎等三人の国際警察。

 

「おっと、そうかこの光は、」

 

 妙に落ち着き払った高尾ノエルもまた、その光に呑まれていった。

 

 

 

「1号生筆頭宮原華音、生来目が見えん!」

 

 どういう訳か明神つかさ、腹筋の割れ目に目がいくが顔も中々どうして素朴に整っている女子が眼前に立っている事に気づいた。

 

「どういう事だぁ」

 

「問答無用!核破孔!」

 

「うぉりゃぁぁ」

 

 どういう訳か所持していた水晶製ブーメランをあらぬ方向に投擲する、

 

「透明なブーメランには血を吹き付ければ見える!」

 

 宮原華音を名乗る女は毒霧でも吐くように口から透明ブーメランに有色の液体を吹きつけ視界にブーメランの軌道を捉える。

 

「恟透翼は一枚だけではない。」

 

 刺さる背中、宮原華音は白目を剥いて倒れた。生来目が見えないのに目視できない攻撃に惑わされやがって。

 

 

 

「シャッケッケっ、緑のスーツが似合う貴方のラッキーシャケはこれ!ドルルルルルゥ、シャケチャーハン!」

 

「おわ、オアッツ、アッツ、」

 

 ごはん2膳分、鮭フレーク大さじ3、卵2ケ、ネギ適量、ごま油適量、

 ごま油を引いて熱したフライパンにご飯を入れて崩すように炒める、

 

「なにこれなにこれ」

 

 鮭フレークを入れ、ステキに炒める、

 

「パラパラになっちゃう、パラパラになっちゃう!」

 

 最後にネギを入れ、軽く火が通ったら火から下ろす、以上イメージである。

 

「なんだ今の!?」

 

 ちなみに卵2個はどこへ行ったのか、そして家庭の火力でこの調理法でチャーハンがパラパラするはずがない。もっとフライパンに金杓子で押しつけるように一粒一粒水気を飛ばしていくしかない。決して下町ラーメン屋のラードの光沢で艶々したチャーハンを望んではいけない。

 

「なんなんだこれ・・・・」

 

 そうそう、ちなみにこれは巨大中華鍋の中で、シャケチャーハンの具材と共に炒められているパトレン2号の図である。

 

 

 

 俺はいつまでこのまま走り続けているんだろうか、

 

「1番、マシンマッハ、2番バリタンク、」

 

 気がつけばこの世界でトリガーマシン1号でこのレース会場を幾度も周回している、

 

「3番、ブルバルカン、4番レッドビークル、」

 

 何度勝っても何度負けても、変わらず周回を続けている、

 

「5番、マッハルコン、6番、ターボGT、」

 

 いったいここはどこなのか?

 

「7番、ブンブンレーシング、8番スペシャルゲストのトライドロンだ!」

 

 そんな疑問も既に記憶の彼方へ、

 

「そして9番、トリガーマシン1号」

 

 俺はいったい誰なんだ?

 

「最後にナンバー00、謎のレーサー、ゴーゴーフォーミュラー!」

 

 朝加圭一郎をサングラス越しに見やって腕組みをしている男は、やや悪い歯並びに青臭さが滲む笑みをこぼしていた。

 

「見つけたぞ、朝加圭一郎。」

 

 

 

「2号生筆頭山本千尋、この世に斬れぬものはなしっ!」

 

「いったいなんだというのだ次から次へと!」

 

 明神つかさは相変わらず謎の対戦相手と死闘を繰り広げていた。

 互いの日本刀を得物とした立ち回り、つかさの対手の鍔迫り合いを許さないあまりの切っ先の疾さにつかさは翻弄された。

 

「斬岩剣!」

 

「太刀筋は見切った!」

 

 だがしかし最後に間合いを離してからトドメに入ろうという山本千尋の動きにつかさは隙を見た、

 

「ぐへえ!」

 

 さすがだぜ桃の字。

 

 

 

「高さ13メートルから水面にダイブだって!」

 

 トロッコのような乗り物でレールに従って落下する陽川咲也、

 

「バ・バ・ババイキング!」

 

 振り子運動する巨大船センターにいて一人Gに耐える陽川咲也、

 

「君はさっきから観察していると、あまりに落ち着きというものがないね。まあうちのブラックと似たところがあるかな。君の方が多動的だ。」

 

「あなたは誰ダレ!サンダードルフィン高すぎでしょこの角度ぉぉぉ!」

 

 陽川咲也は最高傾斜80度、130キロの速度で落下していった。

 

「さようならぁ~また見つけ出してあげるよ。」

 

 最上蒼太はビッグオーからそれを眺めていた。

 

 

 

「マシンマッハ、ブンブンレーシングをコーナーで刺した、」

 

 コースを周回していると、ドライバー達の癖なども分かってくる、先走りする者、今勝負を賭ける者、出力を抑えて競争相手達を観察する者、

それぞれだ。あの2本の脚のような方外な全高のマシンを全車両がテイクオーバーする頃にはある程度のポジョシンが完成している、ここからスペックで抜くか、テクニックで抜くか、際どいせめぎ合いが繰り広げられる。

 

「さあブジスピードウェイから、ズズガサーキットへ全車新東名へのルートを取ります!」

 

 集中力が研ぎ澄まされると、世界全体が奇妙な程スローモーに見えてくる、その様々な要素の軌道も見えてくる、軌道の交差も察知できる、

 

「これはすごい、マシンマッハ、ターボGT、ブンブンレーシングをS字クランクで針を縫うように追い抜いたトリガーマシン1号!」

 

 この程度はもはや朝飯前になっていた、だが、であるが故にヤツの動向が異様に感じられた、

 

「おおっと、トリガーマシン1号の開けたルートを正確になぞるように追走するのはゴーゴーフォーミュラーだぁ!」

 

 そう、あの黒いフォーミュラーカー、こちらのケツに付いて離れない、離れない技術があるなら、抜き去る機会は十分にあったはず。だが付かず離れず、不気味だ。

 

「もう一度引き離してみる、」

 

 トリガーマシンを変型させ、第七のタイヤを露出、ブーストをかけてあの黒いマシンを引き離す事にする、イレギュラーは排除する、

 

「おっと!さらにトリガーマシン1号後続をぐんぐん引き離す、セカンドグループからトップグループへ、今トライドロンの後背に食らいつく!」

 

 オレはいったいいつまでこうしているんだ、

 

 

 

「三号生筆頭武田梨奈!真空殲風衝!!」

 

 受けて立つ明神つかさ、

 

「哈っ!」

 

 その厚い胸板は一瞬鉄板と化した、敵の鎌鼬を受け止めた、

 

「ほほぉ、気を使いこなすのはキサマだけではない。」

 

 敵はワイヤーに刃を付けて錘代わりにして直上へ投擲した、

 

「見せてやろう、ワシとキサマの気の大きさの違いを、けええーっ!」

 

 ワイヤーが気合いもろとも空中に直立した、

 

「気功闘法繰条錘!!」

 

 敵が伸びたワイヤーを操って忽ち明神つかさに巻き付け拘束、

 

「うっ」

 

 だが拘束されないつかさ、刹那跳躍して上方へ逃れ距離を置こうとする、

 

「フッフフ、ならばこれはどうだ!!」

 

 ワイヤーが蛇のようにのたうってつかさに伸びる、それを体術一つで躱していくつかさ、しかし、

 

「哈ーっ」

 

 敵の怒声である、運動法則に則って伸びたワイヤーが、ある一点でひとりでに直角に折れ、つかさの肩口にワイヤー先端の刃が刺さった、ワイヤーは予測できない動きで襲いかかった、

 

「先端を封じる手はただ一つ、、、!!」

 

 つかさの顔面に向かってワイヤーが飛ぶ、それを片腕でガードして敢えて前腕に食らうつかさ、

 

「腕一本犠牲にして受け止めるとはな、所詮悪あがきにすぎん、ひと思いにあの世に送ってやる。」

 

 不敵な笑みを浮かべて近寄づいてくる敵に油汗をかいて睨み付けるつかさ、

 

「力を貸してくれ、雷電、飛燕、月光!!」

 

 投擲、敵に向かってではない、頭上だ、

 

「血迷ったか!ぐあああっー!!」

 

 感電する敵、頭上に放り投げたワイヤーに雲の中から雷が起こって通電し敵を黒コゲにする、

 

「私の完全勝利だ。」

 

 すっかりこの世界に染まっている明神つかさだった。

 

 

 

「なんですかぁ!?この舞台は、」

 

「ここは僕と握手、で有名なGロッソヒーローショー準専用劇場の舞台だよ、見たまえ、ちびっ子達の視線がボク等に釘付けだよ。」

 

「ていうか貴方は誰なんですか?」

 

「ソウソウ蒼太、紹介してなかったね、僕は最上蒼太、とりあえず、風体の通り、決闘でもしようか。」

 

 対面する両者、江戸時代末の腰に刀を二本差ししている諸藩に雇用された武士、のように見える。家紋からすれば両者は違う藩の雇われであろうか。

 

「どうしてこんな事に。」

 

「それは僕の台詞ね、どうしても斬り合わねばならんのか、ちなみに君は、それが我らの運命、ね。」

 

「ソレガワレラノサダメ?え?」

 

 二人は同時に羽織りを脱ぎ捨てる、

 

「信ずるものの為に命を捨つるは、」

 

「もののふの本懐なり!」

 

 静寂の壁が両者の間に横たわる、二人が共にやや爪先に重心をかけたまま動かなくなる、もしこれが敵に囲まれていれば、このように前傾に重心を傾ける事はない、全身に体重を分散させるが、今回は決闘である、前面に集中すべきだ、

 幾時過ぎたであろうか、呑まれて凝視していた観客と両袖のスタッフがついに集中力が切れ、幼児などはとっくにあくびをかいている、

 それをまるで無視する両者は、左腕は自らの剣の鞘を軽く握って親指が鍔にかかり、右腕は未だ柄におよぶ事なくそれでいてゆっくりと左腰に向かっている、敵が先に握るかこちらが握るか、それだけでも競り合いが発生している、腰元は半身を前に出し、それでいて重心を低く落として同時に襲いかかる直前の獣のごとく膝から腰に力を貯めている、

 蒼太を名乗る者の左の親指がいつのまにか剣鍔を軽く押し出している、それが目に止まった咲也、対手の抜刀がこちらより遙かに疾ければ一太刀で極まる、その恐怖から先に抜いた咲也、

 それを一旦足捌きだけで躱す蒼太、同時に抜刀、下段から刃をせり上げる、刃と刃が合う、咲也が刃を這わせたまま対手の首に流していく、突き放す蒼太、そのまま2合ほど太刀を合わせ互いの位置を入れ替える、

 

 ちょっと待って、これ、全然殺陣が違う、

 

 舞台袖、上手で覗いていた殺陣師が同じく舞台袖の演出に京都寄りの訛で訴えた、演出は思い悩んだ挙げ句、

 

 いいか、絶対止めるな、

 

「ふん 」

 

 咲也は対峙しながら刀を一振り、敵に太刀の疾さを見せる、動じない蒼太、咲也は打ち込んだ、軽く躱し反撃を伐つ蒼太、二合三合、互いの刃が互いの首筋へ振り下ろされ、そして寸でで互いが躱す、

 

「つまらんシャケよ!」

 

 舞台観客席中央、なまじ静まりかえった劇場を一際甲高い声が轟いた。

 

 

 

 どういう訳か今度は四角いリングで水着に近いコスチュームで立っている明神つかさだった。

 

「な、なんじゃそんなに傷だらけになって!?」

 

「待たせたな、うみかちゃんマン」

 

 おっと、これは作品が変わってきた。

 見ればより露出の大きいコスチュームで対峙する初美うみかうり二つの女子が。水着のヒラヒラがやたら多い。明神つかさは確かにその女をタッグパートナーと認識していた。

 

「うみかちゃんマングレート、一体何をしておったんじゃ」

 

「我々のこのハレンチな恰好は」

 

 ごくごく一般的な女子レスラースーツなんだが、一歩外に出るとハレンチ極まりないはない、

 

「気にしない気にしない、さあ入場だ!」

 

 カーッカッカッカ、グォッフォッフォッフォッ、

 

「わたしの名はアユミちゃんマン!カーッカッカッカ!」

 

「オレはゴミシャインだ、グォッフォッフォッフォッ!」

 

 いったい何が始まった?

 

「がんばってね師匠!!あの二人を倒さない限りワシらは本物にはなれんぞい」

 

「(うみかちゃんマンはワタシの事を完全にプリンスハチスカと思っている)」

 

 さあ試合開始のゴングが鳴ったーっ!

 うみかちゃんマングレート18番のローリング・ソバットだーっ!

 

「あっ」

 

 おっとこれはめずらしい、うみかちゃんグレートがローリング・ソバットを外してしまったっ!

 

「いくぞゴミシャイン、地獄のコンビネーションパート2!!」

 

「か・・・火事場のクソ力~っ!」

 

 あーっとうみかちゃんマンが飛び込んで悪魔スーアクをぎりぎりで阻止したーっ!!

 

「ヘイ、グレート、マッスル・ドッキングだ!!」

 

「(そんな事言われても不可能だ、私はただの警察官だぞ)、ウワーッ!」

 

 リングから逃走を図ろうとする明神つかさ、いや、うみかちゃんマングレート、

 

「どこへ行くんだ、そっちはリングではないぞ」

 

「は・・・ハチスカ!」

 

「あなたはやはり偉大すぎます!」

 

「ワシは初代グレートのテクニックをマネしろとはいっておらんぞ」

 

「し、しかし」

 

「みせてやるんじゃ、新生グレートのファイトを!」

 

「(そうだ、オレは今まであまりにも初代グレートの女より女らしいしぐさを意識しすぎていたんだ・・・・、本来の私の色気を見失っていた!)、オレはオレなんだ!」

 

 あーっと、グレート、アユミちゃんマンをうみかちゃんバスターの体勢にもちこんだーっ!

 

「うおおーっうみかちゃんドライバー!」

 

 うみかちゃんマン、そのままゴミシャインを肩でかついで準備万端だ、

 しかしグレートとうみかちゃんマンの距離がありすぎるーっ!!

 

「うおおっ」

 

 おおっ、無理矢理グレートが宙で軌道修正してうみかちゃんマン直上へ!

 

「「マッスル・ドッキングーっ!!」」

 

 極まったぁ!アユミちゃんマンはグレートに頭、腕、腰、股を極められ、ゴミシャインはうみかちゃんマンに腕、足を極められながら脳天逆さ落としを食らっているぅ!

 

「「グハぁ」」

 

 口から血を吹いて倒れるあゆみちゃんマンとゴミシャイン、同時にうみかちゃんブラザーズが互いの手を取り合って掲げた、勝利のVだ。

 

「見事だズラ!」

 

 リング四方に満席の観客がコールする、その中で立ち上がって一際声高に叫ぶ青年がいた、串を入れたことのないかのようなロングヘア、前髪すら目元を隠し、辛うじてバンダナで束ねている、どこかネイティブアメリカンな空気を醸し出している、

 

「見事ズラ、このジェロニモの見立て通りの大活躍ズラ!」

 

 そんな異常に熱を上げて立ち上がる観客の一人に、どういう訳かうみかちゃんマンは右手を大きく動かし人差し指を向けた。

 

「ようやく出てきたな!黒幕!」

 

 

 

「つまらんシャケよ!」

 

 舞台観客席中央、なまじ静まりかえった劇場を一際甲高い声が轟いた。

 観客席より立ち上がる一人の異形、それはあのシャケの骨を頭から被り、全身イクラに塗れたあの怪人『サモーン・シャケキスタンチン』。

 

「現れたなこの世界を作った黒幕、ええとギャングラー怪人。」

 

 踵を返して怪人に向き直る最上蒼太、状況がまるで呑み込めないまま蒼太に同調して向きを変えた。

 

「つまらん、観客の子供達がまるでついていけない!大人の独りよがりを捺し付ける事と観客を楽しませる事は違うシャケよ!」

 

 ええと、大人の絶賛するものは得てして個性や作風なので、それはそれこれはこれという、

 

「シャケぇ!子供は情景の深意を噛みしめるんじゃない、変化だよ、適切に過剰な情報量が刻々と変化していく様を欲しているシャケ!止まったキャラクターに魅力を感じないシャケケ!」

 

 いつのまにか観客席の子供達が、繕い縫いの人形に全て変わっている、サーモンの周囲全てが人形だ。

 

「まあ、君の映画の好みはさて置いて、」

 

 そう、映画の好み、映画の好み、

 

「このボク等を閉じ込めた幻想空間、君を倒せばどうにかなるという事なんだよね。」

 

 油汗、いや脂汗を流すサーモン、

 

 むむむむむ、

 

 怒りに震えるサーモン、震えのせいかその肉体全身に罅が入り、罅が集合して亀裂と化し、身体の皮が一枚捲れていく、

 

「携帯電話オルグっっっ!」

 

 スティック型携帯電話と折り畳み型携帯電話を胸でX交差させた怪人がその姿を顕す、

 

「いったいなん何ですかぁ?!」

 

 とごくごく凡人なリアクションしかできない陽川咲也を尻目に、最上蒼太はまず二羽織を脱ぎ捨て、その本来の『サージェス財団』の制服を露わにする、

 

「スタートアップ」

 

 左腕ホルダーからリボルバー型携帯電話を取り出しディスプレイを180度回転、リボルバー軸はタービンになっており、それを刀の柄をなぞって回転させると、青いスーツが現出、最上蒼太の肉体に定着する、『ボウケンブルー』だ。

 

「え?警察チェンジ?」

 

 何も考えず右に倣えで2号へとチェンジする咲也、

 

「その携帯貰ったぁ!」

 

 ボディから生えるバリサンアンテナを震わせて超音波を発する怪物、

 

「ブローナックル!」

 

 それは警察戦隊の発想に無い武装、ファンローターを腕に装着して飛翔するボウケンブルー、

 

「おぁぁぁ」

 

 まともに食らうのはパトレン2号、そんな彼を尻目に飛翔するブルーは腰元から得物を抜いた、

 

「サバイバスター!」

 

 弾丸を発射、携帯電話オルグを名乗る敵の、そのバリサンアンテナを弾き折る、

 

「きさーまぁ!オレのアンテナは3本じゃないんだぞぉ!」

 

 感電したかのように震えていたパトレン2号がカブリを振って、こちらも即座に得物である銃を抜きオルグに向かって連射、

 

「ピポパポピぃっっ!お掛けになった番号は現在使われておりませんんんんんんっっ!」

 

 上下からの猛攻を受けてタジタジとなるオルグ、

 

「対応力はすごいな君。」

 

 一旦降り立って、緑の警察の肩に手を置く青の冒険者、

 

「え、そんなぁハハハ、貴方もすんごいかっこいいっス!」

 

 などと定番の意気投合を果たした戦隊同士の和解だった。

 

「さて、脱出もできたし、あのギャングラーを追い詰めようか。」

 

「え?脱出?本当だ、多摩川だ。ていうか敵がいない!」

 

 二人はいつのまにか先のワニの巨大怪人が炸裂した多摩川の土手に立っていた。

 

 

 

「ようやく出てきたな!黒幕!」

 

 ほぼビキニ水着のレスリングスーツのうみかちゃんマンは、雑に長すぎる前髪で目元が見えない半裸の男を指差した。

 

「ク、黒幕じゃねえズラ、オラは人間だから・・・」

 

 いつのまにかジェロニモを名乗る者以外の観客は、やはり繕いのパッチワークが目立つ無表情なぬいぐるみに全て変わっている、

 

「嘘つけ!さっきリングで同じ顔をしたレスラーが試合してた時、そっちで平気で応援してたでしょ!」

 

「ゲ、そ、それは、そっくりのコスプレ・・・」

 

 あからさまな動揺を顔に出すジェロニモ、

 

「なんなんだこの茶番は、とにかくだジュレの、ここはなんなんだ」

 

 とレスラースーツで吠える明神つかさ、そんな同僚に無邪気に微笑み返す自称うみかちゃんマンは首元に手を充て一気に皮をめくり上げた。

 

「ぉえ」

 

 皮が捲れてもう一つの顔が現れる、皮、ではなく合成皮膜に初美うみかの顔をそっくり模造した変装装備、サージェス財団にはその手のアイテムも豊富に揃っているらしい、

 現れたのはリスやウサギ系の丸い円の中にパーツが鼻に向かって行く顔立ち、笑顔で前歯が出るところが初美うみかとは違うキュートさがある、

 

 やばい、こいつカワイイ、

 

 思わず明神つかさの顔が崩れそうになりながら見つめる美少女は、

 

「あのね、菜月ねボウケンイエローなんだよ、貴方とここを脱出する為にこうして化けてたんだよね。えっと、サージェスの博物館で働いてる事になってるんだけど、適当にサボってるんだよ。」

 

 などと理に適ってるような適ってないような事をのたまいロングの髪をツインテールに纏めた少女に、

 

 どきゅん!ジャストミート!

 

 などと思いながら見つめる明神つかさは、

 

「脱出、どういう事だ、脱出なんてここは、そうか、私は妙な世界に巻き込まれていたところだった。」

 

 我に返ったつかさはもはや姿を鶏なのかアヒルなのか微妙な顔をした宇宙人となった敵を振り返った。

 

「茉莉花ちゃ~ん。」

 

「ええと、・・・・正体をゲンしたなギャングラー、もう逃がさないぞ!ええとなんて字これおぼ、もう蒼太さんのいじわる」

 

 『覚悟』が読めないでカンペをかなぐり捨てる菜月なる女子、年の頃は18前後だろうか。

 

 計算され尽くしたドストライクっっ!

 

 などと浮かれる心をおくびにも出さず、明神つかさはボウケンイエローなる少女を凝視していた。釘付けになったと言ってもいい。

 

「かわいーぃじゃぁん!よだれ出ちゃうぅ、お近づきのチューーーー!」

 

「ボウケンジャー、スタートアップ!」

 

 菜月なる少女は完全無視してスーツを装着した、そのカラーは透き通るようなイエロー、

 

「ボウケンイエローっ」

 

「人を絶対傷つけないのがオレのポリシーなんだ、さらば茉莉花ちゃ~ん」

 

 頭のトサカが乱雑に生えた囚人服のようにも見える姿の嘴男はそのまま虚空の中に消えていった。

 

「待て!ギャングラー国際警察の権限!」

 

 カワイイ隣人に気を取られていた明神つかさは再び我に返って3号のスーツを装着したものの、既に敵の姿は無かった。

 

「んーやっぱり蒼太さんの言う通り、あいつが消えたらホラ」

 

 マスク越しに人差し指を米神に宛てるイエローにキュンキュンしながら、パトレン3号の見上げた頭上はリングの照明ではなく、青空が広がっていた。

 

「つかさせんぱ~い」

 

 明神つかさは同僚の緑の方を認めた。ここが思った通りにいかない現実世界である事を認めた。

 

「やぁ、菜月ちゃん」

 

「蒼太さ~ん、みっちょん中は高度ネイルだよ。」

 

 青と黄色の二人も合流を喜んでいる、そして4人は当然、ある事に気づくのである。

 

「圭一郎は?」

 

「真澄はまだ?」

 

 

 

「トップグループは混戦模様、トライドロン、トリガーマシン1号、マッハルコンが抜きつ抜かれつ大接戦、そして、あーっと!ゴーゴーフォーミュラーが後背から迫ってくるっ!」

 

 そんな実況アナの放送を聞いてる訳ではないがしかし、後方カメラはトリガーマシン1号にも備わっている。

 

「なぜだ、どうして追いついてくる、そして追い抜かないっ?!」

 

 朝加圭一郎が後方に気を取られたその時、

 

「あーっっと!ここでバリタンクだぁ!」

 

 朝加圭一郎は突如浮遊感に襲われた、バリタンクは背後からではない、下からだ、地中から穴を掘ってショートカットしてきた、

 

「そんな!」

 

 バリタンクの突進をまともに食らう形で宙を軸回転しながらコースアウトするトリガーマシン1号、ズズガ名物スプーンカーブの中に放り出される、

 

「おおっっ!無敵の戦車バリタンク、たちまちトップに踊り出る、追走するトライドロン!そしてゴーゴーフォーミュラー!」

 

 辛うじて水平を保つパトレン1号、ダメージチェックはアラートだらけ、変型機構が反応せず、前輪の1つが軸を変型して接地していない、トリガーマシン1号の7輪からの出力伝達、グリップの全てが半減していると言って良い、

 

「終わった・・・・」

 

 天井を仰ぎ見る朝加圭一郎、

 

「どうしたいブラザー、」

 

 コクピットを劈く大音量だった、

 

「マシンがしゃべっている?ギャングラー?」

 

 唖然とした圭一郎だった。

 フロントモニタに映る声の主は明らかに人のそれではない、見覚えはあった、だがそれはマシーンのそれであり、『炎神マッハルコン』という巨大なレースマシンが先方レーンからスタートし、追い抜き追い越されして、どういう訳かコースアウトしたスプーンカーブの内エリアに共に並んで停まっていた。

 

「何故俺なんかに構っている!貴様も出走車だろ!」

 

「ハハハハハ、オレ様の事は気にすんなって!オレが追いつくって思ったら追いつくんだぜこの世界はよ、それよりてめえだ、1回のコースアウトで何ショゲてんだって、オレ様を何度も抜いたあの走りはハリボテの力か、」

 

「なんだと、一体貴様何者だ!」

 

 朝加圭一郎は、あるいは比べられる事に堪え切れなかったのではないか、それはこのレースの話ではない、あの夜野カイリとも、比べられる事に足掻いたという事ではなかったか、警察という正式な手続きを踏んで公式な機関に所属しその中で実力に見合ったポストに就いた、にも関わらず、ただの民間人が数ヶ月そこらで自分達の実績を上回り、まさにポッと出のシロートが快盗を名乗り、比較された、比較したのは世間というもっとも大きな社会性である。

 

「オレ様は炎神で海賊さ、オレ様の仲間も、オレ様の相棒達も、チッタぁ骨があるぜ、警察ってのはそんなもんか!」

 

 まさに、背負ったモノから何から全てそんな烙印を押されたのが、今の朝加圭一郎である。

 

「なんだと、言われる筋合いは、ない!」

 

「じゃあ、オレ様より先にチェッカーを受ける事だな!付いてこい警察!」

 

 そう言って人語を発する巨大レースマシーン『マッハルコン』は四輪を芝に擦り付けコースに復帰した、

 

「俺は、警察は、しゃべるエンジンや快盗になんぞ負けはせん!」

 

 3度レバーを引き直して動力が起動、残った駆動輪全てがしばらくの空転から大地をグリップし始めた、

 

「いくぞしゃべる車!」

 

 コースに復帰したトリガーマシン1号を、早速ブンブンレーシングやマシンマッハが追い抜いていく、それはトップギアに入れ切れていないマッハルコンも同じだ、辛うじてその5連マフラーの背後に就けた圭一郎は、そのままスリップの形でしか競争相手達に追随できない、

 

「付いてこいよ警察!」

 

「くそ、追いつくだけで精一杯なのか」

 

 マッハルコンの速度がトップに入る、途端追い抜いたブンブンレーシングとマシンマッハのケツに急接、130Rからのシケイン、超高速からのブレーキング勝負、

 

「こいつその速度でシケインに、」

 

 ズズガのシケインは名のあるレーサー同士が接触事故を起こしたことでも有名な悪夢の名所、どのレーサーも尻込みするこのシケインに敢然と挑みかかる巨大レースマシン、まずマシンマッハとドリフトで並走、立ち上がりまで鍔迫り合い、アウト側から被せる形のマッハルコン、その圧倒的な体格差のマシンマッハそれでも対手にほぼバンパーを接触させながらシケインを脱出しようとする、

 

「バリバリ行くぜっ!」

 

 押し出される形のマッハルコンはしかし縁石に乗り上げながら加速、半ばマシンマッハを撥ね除ける形で先にシケインを脱出、

 

「続く!」

 

 トリガーマシン1号もまたマッハルコンに続いてマシンマッハをオーバーテイク、

 

「おっと、最下位まで下ったマッハルコン、トリガーマシン1号がマシンマッハをシケインで躱し、ブンブンレーシングを最終コーナーで捉えた!」

 

 相変わらずマッハルコンにスリップで追走するトリガーマシン1号は、明らかに1輪が空転して異常なノイズ音を発生させ、ボディへ伝わって今にも空中分解しそうな恐怖を圭一郎に与える、

 

「どうした警察!ビビってんじゃねえぞ、オレはこっからでもあの前の車に追い付くぜ、」

 

「できるのか、そんな事」

 

「できるのかじゃねえ!やるんだべらぼーめえ、バリバリだぜ!」

 

 速度を上げるマッハルコン、前方ブンブンレーシングにズズガ最終コーナーで間合いを詰めていく、

 

「コーナーまで追い付くなど、いやそれよりさっきはなぜ横合いを掘られて押し返せる、グリップ力で撥ね除けるなど不可能、」

 

「バリバリだっつうてんだろうが!もはや技術のレベルじゃねえ、気持ちだ、おめえに足りないのは、なんとしても対手に勝ちたいという思いだぁ!」

 

「おまえはどうしてオレにそれを」

 

 朝加圭一郎、無自覚にスロットルを吹かし追随、引きずられる形でトップスピードに乗る、

 

「追い上げるマッハルコン!ブンブンレーシングの後ろに追い縋る、インを取るのはどっちだ?マッハルコンだぁ!インを塞ぐブンブンレーシングのさらにイン、縁石に乗り上げての片輪走行!体格差の不利をものともしないデンジャラスな走り!観客全てが総立ちだぁ!」

 

 後方で圭一郎は不可思議なモノを見た、前方車が縁石に乗り上げた拍子に片輪が浮く、そのまま傾斜を保って45度角を維持したまま走行、あの重量を持ち上げて片輪だけのグリップでである、そこまでは多少トリッキーだが無くはない、だが車体を左側に傾けながら右折していくのは驚愕すべき事態、

 

「あり得んあり得ん、」

 

 圭一郎はカブリを振った。傾斜が左ならば左に重心を絶えず傾けなければならない、ところがコーナーは右に車体を向けなければならない、逆方向へ重量を傾ける事ができないならばハンドリングの細かな挙動でバランスとコーナリングの全てを制御するしかない、途方もない走行である、

 

「おおっと縁石に着地際前へ圧し出るマッハルコン、さすがのブンブンレーシングも突破されたぁ!あーっとその右サイドで混戦する2台の逆サイドからこれは、トリガーマシン1号がマッハルコンと並走したぁ!」

 

 朝加圭一郎、避ける意志しかなかった、マッハルコンの片輪走行は3車のペースを落とし、ブンブンレーシングは減速してマッハルコンを躱すしかない、半ば圭一郎には前走車が下がってくるように見えた、視界には車一台以上分のスペースが空いている、そこへハンドルを切るしかなかった、

 

「やるじゃねか警察、オレ様の横を取るとはな!」

 

「やるしかない、このままレースを!」

 

 2台の並走は東名高速まで続く、

 

 

 

 そこは朝加圭一郎が囚われている幻想世界ではない、現実の、私鉄高架下のおでん屋台。

 

「ええいカラフルな奴等め、どうしてたかが人間にこうまで手を焼かされるのか?聞けぇゴーレムクン!」

 

 見窄らしい屋台の親父でしかない男が酒も入っていないのに息巻いていた。おかしな事に奇妙な丸みのある、手で抱えられる程度の人形に向かって話しかけている。要するにオカシなオッサンだった。

 あまりに甲高い声で吠えている為に屋台横でしゃがみ込んでバケツで食器を洗っていた若い男が労りの言葉をかけたのだが、管を巻いた声で怒鳴りつけ、

 

「煩えイチ!てめえは黙って皿を洗ってろ!」

 

 と黙らせた。

 

「あのギャングラーとか言う可笑しな化け物ならサージェスから『ゴードムの脳髄』を取り返せると踏んで組んだものを、今度はヤツがパクリおったぁ!いったい私が眠っている間世の中どうなってしまったのだおいゴーレムよ!」

 

 人形はただ呆然とオカシなオッサンの方を向いて見つめているだけである。

 

「邪魔するぜ、大根くれや、辛子をたっぷりでな。」

 

「へいおまち!」

 

 茶髪で俯きながら屋台ののれんを潜り、立ち馬のような木椅子に座す客の男、

 

「こりゃうめえ!精進したなオヤジ、もう一つ大根をくれ。」

 

「お客さん、大根だけでいいんですかい、ウチのタネは何もかもアッシが豊洲で吟味した一流品ですぜ、この卵、最高ですよ。」

 

 茶髪の男、ゴーレムをいつのまにか手元にたぐり寄せ、大根を2回に分けて口の中に捻り込む、

 

「ごぼう天と、こんにゃくなら、いやオレ様はな、とりあえず野菜が食いてえ。ガジャ、大根をもう一つだ。」

 

「へいっ大根ですね、お客さん大根が好きだねえ、って、何故我が輩の事を知っている!」

 

「オレ様が高丘映士だからさ。」

 

「ターカオカの!」

 

 茶髪で肩までロン毛の男はメタリックシルバーのジャケットを羽織って木椅子から立ち上がり、手づかみで大根の輪切りを丸呑みすると、槍ではないかという長い錫杖でオカシなオヤジの鼻先を突いた。

 

「一応怨みみたいなもんはあんだよアンタには。ガイとレイの魂を必要以上にこの世に縛り付けてクエスターにしたのはアンタだからな。血のせいかな、同情すらしてんだよ、あいつらにさ。」

 

「それを殺ったのは、貴様ではないかぁ!」

 

 屋台を飛び出てきたオヤジの姿は灰色に変身していた、グレーの法衣、グレーの指先、寸法を1メートルは嵩増しするグレーのかぶり物、オカシなオヤジこそは『神官ガジャ』の借りの姿だった。

 

「おいガジャ、一度聞いてみたかったんだけどな、明石はリュウオーン、真墨はヤイバ、蒼太はシズカちゃん、そしてオレ様にはガイ共だろ、じゃあてめえは、誰と対応してんだ?さくら姐さんとてめえ接点ねえだろ、菜月か?古代文明同士?それもアバウトなククリじゃねえか?」

 

「そんな事このワタシにキクなーっ」

 

 すかさず錫杖を投擲、灰色の異人の前面に突き立つ錫杖、

 

「おまえの影を縫った、もう動けんぜガジャよ、スタートアップ!」

 

 大きすぎる腕時計型ガジェット、圧縮保存されたスーツが容積を増して装着、それは輝くメタリックシルバーのスーツ、ボウケンジャー3名との決定的な両肩のアメフト選手を連想させるアーマー、ヘルメット額の中央から伸びる一角のアンテナロッド、高丘映士が『ボウケンシルバー』に変身した。

 

「目映き冒険者、ボウケンシルバー!」

 

「ええいこんな高架下の屋台の前で名乗りをアゲるなぁ!」

 

 上半身をプルプルと震わせながらくすんだ灰色の変なオヤジは、眩しいばかりの銀色の男に吠えた。

 

「サージェスでちゃんと保管してやっから、おとなしく縛につきな!」

 

 銃を構えて近づくシルバー、ガジャは口元をモゴモゴとさせている、

 

「ゴードム、ゲードム・・・」

 

 それはなにがしかの呪文、神通に通じている高丘、それが何か分からないまでも血相を変えた。

 

「やめろガジャ!」

 

 ガチャと何かが動いた、それは屋台そのもの、そもそもが人力車である屋台が無人の力で動き出し、ガジャの影を縫っていた錫杖を弾き飛ばしシルバーとの間に割って入った、

 

「しまった」

 

 視界を遮られたほんのコンマ数秒である、慌てて屋台を飛び越して闇雲に得物を振るった、もちろん手応えは無い、

 

「逃げられた、オレ様とした事が」

 

「まあ敵も然る者、君達と長年戦ってきたという事ですね。」

 

 背後から屋台越しに話しかける影があった。

 こちらはタキシードであるが、同じく銀に輝く出で立ちでボウケンシルバーを眺めていた。

 

「すまねえ警察の、そっちがせっかく情報提供してくれたっつうのに。」

 

 紛らわしい恰好をしている高尾ノエルであった。

 

「パスデプロブレム、追跡は可能だ、それよりあの男が手引きして強奪したそちらの、脳髄、とやらの奪還を優先していいと思うよ。」

 

「真墨達、よろしくやってんだろ。戦利品はゴーレムだけか。」

 

 銀の男達は既に打ち解けているようだ。

 

 

 

「さあ舞台はづぐばサーキットに映った、東名高速でレッドビークルをパスしたマッハルコンとトリガーマシン1号、マッハ1,5の実力はどうした?レッドビークル、おおっとここで情報です、なんでもレッドビークルドライバー、消費期限を過ぎたいも羊羹に当たってコクピット内で吐いた模様、まさしく辛酸を舐めたか!」

 

 ヘアピン2を含む主に4つのコーナーで構成されるサーキット、圭一郎はマッハルコンと共にセカンドグループのケツに付く、

 

「づぐばホームストレッチ、セカンドグループ先頭はターボGT、続いてバリタンク、おおっと後ろからマッハルコンが猛追!」

 

 ターボGTの背後にぴたりとスリップストリームに着いたバリタンクが見える、

 

「いやあれはスリップじゃなく、」

 

 圭一郎が背後に近接してようやく理解した、バリタンク、スリップなどという生優しいものではない、バリタンクの2本のアームでターボGTのリアウィングを掴んでいるではないか、

 

「狡いぜ先輩」

 

 マッハルコンも思わず叫び、そして右側から追い抜きをかけた、

 

「なにっ!」

 

 マッハルコンがバリタンクからターボGTを追い抜いていく、そして変わらずそのマッハルコンの5連エグゾーストを覗きながら追い抜きをかけようとするトリガーマシン1号、朝加圭一郎の身が異様な衝撃を捉える、背後からである、バリタンクである、バリタンクがターボGTを掴んだアームを放し、今トリガーマシン1号後部のブーメランのような形状のパトランプにその爪を立てた。まるで後ろに引っ張られるような感覚を覚える圭一郎、感覚だけではない、現実にマッハルコンに距離を置かれている、バリタンクが明らかに錘になっている、

 

「おいおいこんなところで終わりか警察ぅ!ジャアなぁ!」

 

 などと半笑いのマッハルコン、

 

「ウソだろこんなところで、オレは」

 

「負けるなんて考えてるだろてめえ、そういうとこだってよ、あの快盗に適わねえところはよぉ!」

 

 なんだとぉ、

 

 やはりこの男には快盗というワードであった。

 

「クソぉっっ!」

 

 ムダと分かっていたはずのレバーを再び握力の限り握り絞めた、

 その時奇蹟が起こった、

 トリガーマシン車体前面がスライドして七輪目が露出、破損していない計五つの車輪が唸りを上げる、

 

「負けるか快盗!」

 

 加速するトリガーマシン1号、あまりの馬力にバリタンクが掴んだV字パトランプが引きちぎれた。哀れバリタンクは操舵を失い後ろから来たターボGTと接触、両車ともにコースを外れて転倒クラッシュ。

 

「こいよこいよ!」

 

 一気にトリガーマシン1号、マッハルコンとフロントを並べてバックストレッチを鍔迫り合い、

 

「快盗に、負けるかぁ!」

 

「悔しいヤツっているよなぁ!もっと剥き出せや警察!それがてめえ底力上げるんだっ!」

 

 トリガーマシン1号、ロングノーズとなったボディでヅグバ出口をケツを振って無理矢理機首を向けて脱出、マッハルコンもまた横付する形で共にドリフトで追走する、

 

「さあセカンドグループにまで踊り出たマッハルコンとトリガーマシン、トップグループは既にヅグバから出て高速に乗っているぞ!舞台は出発地点、ブジスピードウェイだぁ!」

 

 

 

 サージェスミュージアムは神奈川県本郷に建てられた拠点一つの呼称だった。ところが一度敵の襲撃で壊滅的打撃を被ったのを境にして拠点を十に増やす方針を打ち立てた。従来の拠点をミュージアムダンプ、そしてこの西東京市芝久保に建築された新たな拠点をミュージアムフォーミュラーと呼称した。

 

「クリスマスに呪われ~ル、我が輩は解っているぞ。一つの拠点にプレシャスを集中させれば、襲われれた時一気に強奪される、ならば分散させようという魂胆なのだ。先の我が輩の襲撃で血の気を失ったのだろう、愉快愉快、ざま~味噌ラーメンだサージェスめ!」

 

 西東京市のコミュニティバスを降りた初老のおでん屋のオヤジは見てくれに似合わぬ鋭い眼光でミュージアムとその横に起立する東京で4番目に高い塔を眺めやった。

 

「大神官ガジャ、スタートアップぅ」

 

 跳躍し150メートルを大ジャンプ、灰色の衣を纏って、全長3メートルの出で立ちにチェンジする。

 

「一度やってみたかったのだ。ここからならサージェスの全てを思いのままたたき伏せる事ができる、愚かなサージェス、こんなところに拠点を設けよって。」

 

 着地したのは電波塔上層部、三段あるコーリニアアンテナの最上段に飛び乗った。

 

「ま、そう誰でも思うからここ張ってればいずれやってくる訳だおまえのようにな、ガジャ!」

 

 2メートルの肩幅で180度ターンする大神官、背後に見えるのは銀光りの6番目の戦士。

 

「ボ、ボウケンシルバー!」

 

「ガジャ、覚悟しやがれ!!」

 

 ロット状の武器を振りかぶるシャインシルバーの戦士、

 

「くらえ!」

 

 大量の石粒を投げつける大神官、そのまま跳躍してきた塔をそのまま落下した。

 

「また粕かよ。」

 

 散らばった石粒はそのまま容積を数千倍に膨らませ、人の形を形成する、その名はカース。

 

「急所突きゃこんな奴等、」

 

 ボウケンシルバー、得物のロッドで最接するカース1体の心臓の位置を刺突、粉々になるカース、その粉々になったカースの背後にもう1体、左右にも既に回り込んでいる、半歩引いて一旦カース2体をなぎ倒し、そのさらに背後から突進するカースをやはり心臓を一突き、なぎ払って一旦退け、そして1体確実に突き倒す。

 

「こっちの方が絶対簡単だよな、スナイパーモード。」

 

 得物を中折れさせると短銃になる、

 

 連射する、

 

 数十に膨れ上がったカースが銃撃での急所攻撃で一気に半数に減る、

 

「スナイパー!ガトリングぅ!」

 

 全身轟音を轟かせながら弾丸が拡散し拡散し拡散する、圧倒火力になぎ倒されてカースが半瞬で一掃、

 

「ガジャ!待て!」

 

 150メートルの高さを降下、灰色の怪人を認めて銃を連射、敵の頭上に雨を降らせながら地面に着地、

 

「ゴードムゲードム、ムダだボウケンシルバー、ワタシの行く手を阻む事はもはやできぬわ!」

 

 ボウケンシルバーはいつのまにか灰色の敵の周囲にベレー帽の集団が取り囲んでいる事に気づく、

 

 チャカ、

 チャカチャカチャカ!

 

 ワラワラと現れたのはかのギャングラーの金庫より量産されるポーダマン、

 

「なんだテメエ、その膨大な数のゴードムエンジンは!?」

 

 唸る高速回転、無数のポーダマンの胸にターボファンエンジンが埋め込まれており、ポーダマンのナイフが高速振動し半ば発光している、ボウケンシルバー経験則的に脅威を感じるに十分であった。

 

「サガスラッシュ!!」

 

 一斬、返してもう一斬、宙にXの字を描いた斬撃が圧倒数のポーダマンを呑み込む、ボウケンシルバー最大レベルの技をいきなり放った、

 

 チャカチャカチャカ!

 ヴィッッッッッッ、

 

 全てである、打ち消した、

 

「畜生め、こいつは」

 

 全てのポーダマンが依然ナイフを片手に立っていた、ダメージの痕跡すら無い、ボウケンシルバー最大の技をそのナイフで弾き返した、

 

「ザマァカンカンカッパっヘーッ!ゴードムエンジンによって強化されたギャングラー兵は、もはやボウケンジャーなど足下にも及ばん無敵の軍団なのだぁ、降伏すれば許してやらんでもないぞぉ!」

 

「くそがぁ」

 

 ボウケンシルバー、得物を強く握り締め歯噛みするしかなかった。

 

 

 

「トップグループはトライドロン、ゴーゴーフォーミュラー、ブジスピードウェイに突入したぁ、おおっとセカンドグループのマッハルコン、トリガーマシン1号も既に高速を降りたとの情報が入ってきましたぁ!これは優勝はこの4車に絞られたと言って良いでしょうぁ!ファイナルラップは3周、全てはブジの3周にかかっている!」

 

 トリガーマシン1号、全長のチェンジが出来ないロングノーズのままにパワースライドを駆使して一般道に砂塵を立てる、ブジのゲートが見える、マッハルコンは絶えず直背にあってパトレン1号を追い立ててくる、

 

「前に出るぜぇ!」

 

「オレの前を出させん!」

 

 ブジのストレートに踊り出るトリガーマシン1号とマッハルコン、

 

「ようやく来たな。」

 

 奇しくもコースを周回したトライドロンとゴーゴーフォーミュラーの前へ出る形になる。ここでオーバーテイクされると周回遅れで終わってしまう、

 

「抜かせん!」

 

 後方からのプレッシャーを受けながら朝加圭一郎はスロットルを捻る、

 

「ぐおぉ」

 

 パトレン1号、背後から呻くような奇声が耳に飛び込んでくる、

 見れば、マッハルコンがゴーゴーフォーミュラーの接触プレーで圧し退けられ、操舵を失ってスピンしている、なお直進しトリガーマシン左脇に着くゴーゴーフォーミュラー、

 

「この時を待っていたぞ警察。」

 

 ゴーゴーフォーミュラーのレーサー、黒いサングラスの男が前歯をやや出しながらシタリ顔をした。

 

「さあトップグループ、セカンドグループを巻き込みながら30度バンクに突入、全員200キロ近く出ているぞぉ!」

 

 30度のカントがかかったバンクコーナーにトップスピードで並走する、オーバースピード気味に外側から被せてくるゴーゴーフォミュラー、もはや削るかのようにフロント同士接触させてくる黒き疾風、

 

「さっきもそうだが、どうしてトップがここまでラフな」

 

 ゴーゴーフォミュラーの強引過ぎる追い越しにアクセルを緩めざる得ない朝加圭一郎、しかし、

 接触、後方から、

 

「なぜトライドロンがっ?!」

 

 後方から衝突する紅いスポーツカー、スペシャルゲストで参戦しトップグループを争っていたそのトライドンがなんとトリガーマシン1号のリアに接触、挟み撃ちに追い込んだ、

 

「どうして、どうしてトップグループの2台がオレをこんな強引な挟み打ちに、前の車はどうしてスリップすらしないでこちらに圧力をかけてこれるんだ!?」

 

 前後を接触され、ギシギシと軋む音がするトリガーマシン、このままでは前後からへしゃげてしまう、

 

「勝負というものを教えてやるぜ。」

 

 前方にあって物理的にあり得ないようなスライド走行でコーナーをパスするゴーゴーフォーミュラー、いつしか完全にトリガーマシン1号を後方のトライドロンと共にサンドイッチし、三並びでコーナーを周回、その間何度もトリガーマシン1号はコースアウトの圧迫を受ける、それどころか車体崩壊の軋みで不連続な振動まで起こしている、

 

「バカヤロどもが!」

 

 マッハルコンが猛追してくる、トライドロンをオーバーテイク、トリガーマシン1号と並んだ100R、接触したままヘアピンカーブの軌道を描く3車、スピードを殺さず直線で突っ込むマッハルコン、先頭ゴーゴーフォミュラーへの衝突コース、

 

「余計な事を!」

 

 コースアウトするゴーゴーフォーミュラーとマッハルコン、

 頭のつっかえが取り除かれ外圧で機動を失うトリガーマシン1号、

 それを圧していたトライドロンもまた前2車が取り除かれた事でオーバースピートでヘアピンを曲がり切れずコースアウト、前方マッハルコンに衝突、

 

「なんで、オレの為に、こんな」

 

 絶句しかない朝加圭一郎、

 

「思いの強さだ!この世界の全ては、物理的だなんだクソどーでもいいんだぁ、思えば走れる、スピンなんかヘでもねえ!イケァ警察!」

 

 たった一台コースに残ったトリガーマシン1号、強引にグリップが回復、路上に大きくタイヤ痕を描いて立て直し、300Rを突入、独走する、

 

「本当だ、立て直した!行ける、行けるぞぉ!」

 

 最終コーナーを高速で突破、再びストレートに踊り出る、

 

「ええい、ヤメだヤメだこの世界、ゼンッぜん楽しめないではないかぁ!」

 

 だがしかし、そんな圭一郎の視界がどういう訳か歪んでいく、

 

「やっぱりな、てめえだとは最初から分かっていたんだ、このギャングラー!」

 

 吠えたのはマッハルコン、どういう訳かマッハルコンのボディが縮んでいき等身大2メートル未満の人の形に収まっていく、

 トライドロンもまたクシャクシャと紙クズのように縮み上がり、並行して風景そのものも背景画であったかのように朝加圭一郎の眼前で二次元的に折り畳まれ、白光だけが目映い風景に変わっていく、

 

「なんだ、どうした事だこれは、」

 

 即座にトリガーマシンを降り、大地に立つ朝加圭一郎、白光が徐々に弱まっていき元の現場、多摩川を横目にする聖跡の街並が見えてくる、そして、

 

「ようやっと来たセンパーィ!」

 

「圭一郎、おまえも脱出したか。」

 

 ぼんやりとする視界に映る二人の同僚を認めた朝加圭一郎は他にも3人の人間がどうも揃いツナギで立っている事にも気づく。その内一人はトムキャットかというくらいの大型のサングラスをかけていた。その男にだけは見覚えがあった圭一郎である。

 

「アンタ、確かさっき」

 

 だらしない八重歯を出した男はサングラスを取った、

 

「よお、まさかオレが『虹の反物』を使ってしゃべる車に変身するとは思わなかった。」

 

 朝加圭一郎は見ていたのだ、マッハルコンが徐々に人の、成年男子の姿に、黒いラインのツナギを着こなした八重歯のだらしない者の姿になったのを。

 

「誰だ貴様、」

 

「命の恩人に貴様はねえだろ警察、この伊能真墨様を捕まえてさ。」

 

 警察に捕まえて、などというややドすべりの事故に伊能真澄は自覚はない、ただ同僚の最上蒼太はニヤけているだけだ。

 

「どうしておまえはあんなモノにバケていた」

 

 ハハハハハハ、

 

 圭一郎の言葉を遮って大笑する声が三つ、6人の戦隊が一同に返り見る、一体は電話機を頭に埋め込んだ化け物、一体はトサカと嘴の囚人服の男、そしてもっとも驚くべきは今眼前に居る伊能真墨とうり二つの男がその並びに立っていた。

 

「ハハハハハハ、どうだ、我が輩のシャケ空間の味は、とてつもなく油切った体験でもうおまえ達の精神はボロボロのはずだぁ!」

 

 トサカと電話機に並び立つ真墨の体が光り輝きイクラの詰まったシャケの骨と化す、そうあのサモーン・シャケキスタンチンが人間の姿に化けていたのだ。

 

「あっちは一度巨大化して復元したから、『虹の反物』の力を吸収してしまっていると、そちらの管理官から情報を得ている。倒すのはボクら『ボウケンジャー』の力じゃダメだ、君達警察の力でヤツを倒すしかない。」

 

 そう解説してくれたのはツナギに青いラインの最上蒼太。

 

「あいつは君に化けていた?それで何故君は別モノに化けていたんだ?いったいどうして」

 

 問い質した朝加圭一郎に、伊能真墨は得意気な顔を向けた。

 

「あいつがオレのお株を取って、ゴーゴーフォーミュラーで出場して、おまえを虐めてやろうとしていたんだ、そしたらオレが出れねえだろ、」

 

「真墨、ダブってたら目立てないもんねえ」

 

 同じツナギの女子が伊能真墨にジャレつく姿に、密かにこめかみを痙攣させる明神つかさだった。

 伊能真墨は咳払いをするしかない、

 

「とにかくだ、あいつが『虹の反物』の能力で化けて、ゴーゴーマシンで君の走行を妨害するのが解っていた、だからオレはヤツの空間に取り込まれて、『虹の反物』でマッハルコンになっておまえのケツを叩いてたんだってばよ。」

 

 つい最近読んでいた漫画の台詞が口から溢れ出る伊能真墨だった。

 

「ええい、おまえら無視するなぁ!」

 

 三重の豪声でドヤしつけるアヒルと電話とシャケ、

 

「「「三つの濃いキャラが今一つにっっ!!!」」」

 

 三つある像が一つに重なり三つのどれでも無い形に混ざっていく、

 

「何が、起こってるんだ、」

 

 置いてけぼり気味の6人の眼前で一体の異形が姿を顕す、

 

「ワンデ星人、デンワオルグ、そしてサーモンが合体!そして生まれたのがこの我が輩、」

 

 身体中の体毛は植物の葉、頭にはクラシカルなデザイン固定電話機が埋まって、その胴体の中央、胸の位置に生物界1、2を争う咬合力を持つ鰐の頭が備えられている、それこそ、

 

「究極進化ぁ、ベールベルベル、ヤツデンワニたぁ我が輩の事だぁ!変身を繰り返した我が輩の究極の姿ぁ!」

 

 なんとも呆気にとられた6人は、それでも携行する変身アイテムを握り締めた、

 

「ボウケンジャー、スタートアップ!」

 

「国際警察の権限において実力を行使する!」

 

 6人揃って変身、3人は携帯端末のローラーを回転させ、3人は銃に車のミニチュアを差す、

 

「「「ボウケンジャー!」」」

 

「「「パトレンジャー!」」」

 

 なんと誰もダブりカラーが無い3人と3人の戦隊が並び立つ、

 

「ベルベル、貴様等、せいぜい逃げるがいい、このヤツデンワニ様が受話器を使って」

 

「ヤダーっなんかこいついままで会った中で最低なヤツ!」

 

 女の子より女の子っぽく多動するイエロースーツは激しい嫌悪を敵に向けた。

 

「ゲロキモいぞキサマ!」

 

 如何に女っぽくないポージングをしてもほのかにオンナを感じるピンクスーツもまた激しい拒否感を示した。

 

 ぉぉぉぉぉぉ!

 

 憤っているのか、ワニの口を上下に揺らすシャケでは無くなった怪物、

 

「もっと蔑めもっとだぁ、君達の嫌悪感が、このヤツデンワニ様のラブを育てるぅ!愛でてやるからねえ君達ぃ~」

 

 ヤツデンワニの何を考えているか解らない両目からハート型の光が幾粒も放出、イエローと3号の全身に纏わり付く、

 

「うえっ、クッついてくるよぉ」

 

「なんだこれは、背中、背中に、痒い、圭一郎、背中を掻いてくれ!」

 

 イエローと3号に集中したハートはジワジワとスーツを浸食し、ジワジワと二人が言い様の無い悪寒を与え続ける、

 

「グハハハ、ヤツデンワニ様の愛を思い知るがいい!最後はこの電話で」

 

「ミキサーヘッド!」

 

 黒いスーツの男は既に胸部に追加アーマーを装着、抱えるのは自動小銃のような武器、銃身先端が三つに先割れし、銃口が顕れる、

 放たれるのは粘性のある液状の物体、

 

「ぐぉわぁ!受話器がぁ!」

 

 受話器どころか全身に灰色の液体を浴びたヤツデンワニは、手足の自由が効かなくなっている事を自覚する、粘液が凝固し、灰色の土から灰色の石のようになっていく、

 

「ドリルクラッシャー!」

 

 ブラック、得物の銃身を180度回頭、その突端は巨大なネジ式のドリル、

 

「GO!」

 

 射出、突端が銃身から切り離され、それは鋭角的突端の弾丸と化す、高速で打ち出され、ヤツデンワニに衝突、爆破、

 

「うぉぁぉぉぁっ、我が輩のキュートな口がぁぁ!」

 

 ヤツデンワニ、歯がボロボロに欠けて上顎と下顎が上手く噛み合わない、だが、だがしかしそれだけ、五体はなんと、

 

「こっちの必殺技を食らってダメージが無いだと!?」

 

 青いスーツの男が絶句した。そう、ヤツデンワニ、まるで蚊に刺された程度の事だったようにピンピンとしている。

 

「やだ、キモい上に硬いなんて、どうしようもない」

 

「ゴキブリみたいだな」

 

 女子二人の容赦無い讒言をヤツデンワニは逃さない。

 

「ムムム、なんという嫌悪感だぁ、かつて一度しか味わった事のない屈辱感ン!」

 

 身震いしながらもしかし、胸元、いわゆるワニ頭の上顎と下顎に挟まれた、つまりは口の中からエメラルドの光を灯し、いびつに崩れていたはずの歯並びと噛み合わせが見て分かるほどの速度で修繕していく。

 

「回復してるっス!?」

 

 緑の咲也が驚嘆した。

 

「さてさてさて、回復系のコレクションはおよそこちらの手にある、考えられるのは、超がつく程強力なエネルギーを得て、金庫自体が持つ治癒力が超がつく程強化されているという事だろうね、サージェスからの情報だと『ゴードムの脳髄』というコレクションがギャングラーの手に渡ったそうだが。」

 

「誰だてめえ」黒い伊能真墨は反射的に苦手なタイプである事を嗅ぎ取った。

 

「おや、『ゴードムの脳髄』は『ゴードムの心臓』と並んで高いエネルギーを発現するプレシャスだが、奴等の肉体をとてつもなく強化しているという事かい?」青い最上蒼太は似た者同士の対抗心と共感を織り交ぜた複雑な表情を見せた。

 

「なんだかお人形さんの彼氏みたいだ。」黄色い間宮菜月はケンくんを玩具屋で見つけた少女のように燥いだ。

 

「「「高尾ノエル!」」」

 

 今更やってきた銀の燕尾服に一斉に声を上げる警察3人組。

 

「君達、あの姿だと金庫を開ける事ができないからね、攻撃を繰り返してまずはあの姿を剥いで欲しい。」

 

「いきなり上から命令かよ」

 

 と愚痴る黒スーツの同僚を押し退けて、

 

「ブロウナックル」

 

 ブルー、右腕にターボファンローターを備えたナックルガードを装着、タービンの高速回転は宙空に竜巻を発生させ、眼前の敵を呑み込み、掬い上げた、

 

 我が輩がぁぁぁぁぁぁ、

 

 顎を揺らしながら上空に舞い上がったヤツデンワニ、京王ストアの高さと並んだところで落下、強かに腰を打った、

 

 こいつ、けっこう、チョロい?

 

 6人が同時に思った、思って身体が前に出る、

 

「スクーパーファントム!」イエローがバケットのようなグローブを振り回してエネルギーを何本も放つ、

 

「ハンマーダイナマイト!」ブラックが長竿のハンマーをフルパワーで振りかぶる、先の胸部アーマーをまだ装備している、

 

『スプラッシュ』

 

「食らえ!」パトレン1号、換装した長竿の先端から奔流が迸る、

 

『クレーン』

 

「うみかちゃんの為にイクっす!」パトレン2号、前腕のアーマーを揃えて振り抜く、

 

『バイカー』

 

「こいつだけは、こいつだけは地獄の底に落とす!」パトレン3号、タイヤ状の弾丸を発射、

 

 ドゥクえぁぉちゅをぁ!

 

 倒れたままのヤツデンワニに波状攻撃が炸裂、もんどり打って跳ね飛ぶ様は何故か滑稽さすら漂う、

 

「やり過ぎて金庫の中身を破壊しないようにね」

 

 既に銀のルパンエックスへと変身している高尾ノエルは、過激な集団心理に辟易し、なおかつ敵の様態の奇妙さを訝しんだ。

 

「あの恰好のまま、オカシイ、トリガーマシンの能力キャンセルが通じていない、姿を元に戻さないのは、なるほど、コレクションの力ではないからか。困ったなぁ。」

 

 だがそうは言いつつも、半ば踏んだり蹴ったりの状態のヤツデンワニ、

 

「うむむ、女子二人のスゴイ嫌悪感を感じる、たまらん、そうだ今度リメイクのドラクエ3が出たら君達の名前でキャラを作って勇者ヤツデンワニの取り巻き女子達にしてやろう、もちろんまほうのビキニのセクシーギャルで!!」

 

「「キモイ、こいつキモ!」」

 

 イエローがフライング気味にバケットを振り上げワニ頭を直撃、

 車輪型の光球が連射され、パトレン3号の得物から煙が吹いている、

 

「ああキモチィィィィ!」

 

 見ろ、変態がいる、変態がいるぞ、

 

「ダメだな、ゴードムの脳髄のエネルギーは想像以上だ。」

 

 ルパンエックスの視線が水平から徐々に上方へと移っていく、同時に巨大な影がルパンエックスを、いや7人に差していく。

 

「大地に眠る悪霊達よ、ヤツデンワニに、はっ!力を与えよ!」

 

 ヤツデンワニ、数十メートルへ何もしていないのに巨大化、総員の頭上に影が差す、

 

「いつもの流れじゃんか、アルティメットダイボウケンでイク!」黒のスーツが口火を切る、

 

「高尾ノエル!グッドストライカーは無いのか!」パトレン1号は早期に決着をつけるつもりでいた。

 

「グッドストライカーぁ、ただいま参上ぉ!」

 

 既にルパンエックスの足下で、トリガーマシンモードとなって走り回っている。

 

「あの玩具の車しゃべってるぞ」

 

「プレシャスにあんなのいたような」

 

「ワーッ、ズバーンみたいにグッドグッドとか言うのかな言うのかな?」

 

 もう一つの戦隊は物珍しいその物体を恐る恐る眺めた。

 

「忠告しておくよ。あのギャングラーの体内には『ゴードムの脳髄』かある。一撃で始末すれば。諸共損壊してしまう。」

 

「だがこのままでは聖跡の街に被害が!」

 

「パトカイザーを使いたまえ。」

 

「まだまだグッドが足りないぜ」

 

 訳が分からなかったが命令を鵜呑みに従う1号、

 

『一撃必勝!』

 

『轟音爆走!』

 

『百発百中!』

 

『乱撃乱打!』

 

 立体ビーコンが巨大化したグッドストライカーから発せられる、それに従って同じく巨大化したビークルが三車、左右の腕と頭部に合体、

 

「「「パトカイザー!」」」

 

 立ち上がらない、そのまま速度を落とさずスライディングでヤツデンワニを強襲、

 

「ぐぉっぐぉっぐおっっ!」

 

 前のめりに転倒しながら押し込まれる、押し込まれた先には空間のひずみが開く、

 

「真っ暗になったぁ」

 

「これは異空間という事か」

 

「うわあ、すっごいすっごい」

 

 それぞれビークルに搭乗済のサージェスのチームもまた続けて突入、計十機のビークルが聖跡と全く同じ風景のエックス空間に踊り出る、

 

「究極ゴーゴー合体!」

 

『発進シフトオン!』

 

 ダンプがバケットを下ろす、ダンプの上部を伝ってフォーミュラーが機首に至り中折れ、バケットの中にドーザーとマリンが収納されそれが両脚となって起立、ミキサーとクレーンが脚のオーバーアーマーとして履かれ、ドリルとクレーンが両の腕として肩から装着、ジェットは背面から装着、そして最後にジャイロ腰部前面に飾られる、

デルタ型の翼を抱えた巨大ロボが完成する。

 

「「「アルティメットダイボウケン合体完了、ファーストギアイン!!」」」

 

 闇の空間に並び立つ巨人が2体、

 

「ええいカラフルな奴等め、かかってこい!」

 

 下顎に両掌を載せたヤツデンワニが吠える、

 左右に回り込む巨大ロボ達、

 

「削る!」

 

 右から銃撃を加えるパトカイザー、

 

「ギュァォアーワン!」

 

 と声に出して痛がるヤツデンワニ、そう痛がるだけでおよそダメージがない、等身大戦と変わらない、

 

「背後を伐つぞ!」

 

 アルティメットダイボウケン、左腕を振りかぶり電話を殴りつけ、さらに右腕を突き入れて吹き飛ばした、

 

「ギケュアーオワント!」

 

 まるでゴム鞠のようにビルからビルへと跳ね飛ばされては跳ね返り、最後は地に伏して起き上がる事もできず、目を回して電話に大きな瘤を作っていた。しかし、

 

「目回して、たん瘤だけとか、どういうヤツだ!?」

 

 そう、ダメージはパトレン2号の言う通りそれだけなのだ。

 

「圭一郎、3号で必殺技を!」

 

 パトレン3号は己がマシンのロッドでの近接攻撃を示唆、それは局所への精密攻撃、

 

「いくぞっ!」

 

 赤熱化するロッド、名も無き技の一撃がヤツデンワニに水平に打ち込まれる、

 

「あんぐ」

 

「咥えた!」

 

 ヤツデンワニ、噛力で強引にその威力を減殺し、なおパトカイザーの動きを停めた、

 

「離せって」

 

 パトカイザーが強引に口角を押し上げる、ダラダラとヤツデンワニの口内から粘液が垂れる、

 

「キモい、どうしようもなくキモい!痒い、思い出したら痒くなってきたぁ」

 

 3号の呻きを余所に、1号、圭一郎はあの高尾ノエルの声を耳にした。

 

「君達、よくやってくれた、その口の中だ、金庫が喉の奥から微かに見えた。大きく口を開けてくれたまえ。マスターキーで開ける。」

 

 スピーカーでコクピット全てに響き渡った。大声になるほどやや気色悪い声だ、などと思いながら圭一郎は、

 

「了解。『ゴードムの脳髄』を奪還する!」

 

「こっちも聞こえた、オレ達は後ろからヤツを拘束する!」黒いスーツ、伊能真墨も応えた。「ミキサーとクレーンでヤツの足を雁字搦めにしてやる!」

 

「ブラック、アルティメットダイボウケンどういう訳か拘束系装備多いけどさ、けっこうみっともないポーズになるんだけど、」

 

「やっちゃえやっちゃえ!踏み潰せ!」

 

 いやイエローさん、アナタはそういう事しちゃダメ。

 

「とにかくいくぞ二人共、アジテーションシュート!」

 

 アルティメットダイボウケン、ヤツデンワニに背を見せる、稼働したのは、左の足下、タンク状の物体がヤツデンワニに機首を向ける、発射される粘質の液体、

 

「あぇ、またこれ!」

 

 グレーの液体を下半身にしこたま浴びたヤツデンワニはその身がまたまた動かない事に気づく、

 

「じゃあボクも、クレーンパンチ!」

 

 今度は右の足首、2本フックが備えられたワイヤーロープが射出、ワイヤーはミキサーの放出したハイパーコンクリートで下半身を石像化したヤツデンワニの上半身に絡みついて両腕を拘束、

 

「ぐぉぁわおわわ、なんて日だぁ、クリスマスくらいシャケに報いはないのかぁ」

 

 完全に身動きがとれないヤツデンワニの前面に立ちはだかり、上顎と下顎を両の手で抑え、左に回り込んで大きく開く、

 

「高尾ノエル、見えるか!」

 

「ああ、喉の奥がほの明るい銀の輝きを灯している、もう少しそのまま耐えてくれ。」

 

 ルパンエックス、闇の中に偽装された聖跡のデパート屋上に立ち、『ボヘミア諸王の敷石』を敵の大口へ向けた、制射、2連結した銀のHOゲージのようなアイテムをスティック状に持ち発射される紅光、

 

「いや゛じゃぁ!」

 

 ヤツデンワニ、魂の叫び、口内がエメラルドから燐の光を灯す、徐々に口内から唾液が乾燥し、皮膚が泡立つようになり、爛れていき、罅割れていく、それはヤツデンワニの肉体だけではない、その口を掴んでいる両の手、パトカイザーの腕部の両マシンの先端が徐々に溶けていく、

 曲折する紅光、

 

「いかん、これはドグラニオと同じ、フィジカルチェーンも出ていないのにアレが出るのか、君達、直ちにその怪物から離れたまえ!これは命令だ!」

 

 ボボゥォァェ!!

 

 パトカイザーが思わず仰け反り、後背にいたダイボウケンもまたワイヤーを解いて上空を飛翔、

 

「ヤツ自身の体が一番ダメージがあるだろ!」

 

 パトレン2号が叫んだ、

 

「どうするのだ圭一郎、ヤツの肉体どころか固められたセメントも赤熱化していっているぞ、これでは圧縮した熱量が臨界爆破するだけだ、」

 

「解っている!両腕を換装して、ヤツを冷やす!サージェスから盗まれたコレクションを破壊する訳にいかない!」

 

『スプラッシュ』

 

『クレーン』

 

 右腕が赤い消防車、左腕が黄色いクレーン車へ換装、現状最強火力を装備したパトカイザー、右腕から放水を開始、その噴流はコンクリートに浴びせかける寸でで蒸気となってヤツデンワニの姿が隠れる程白い靄となる、

 

「ヤツデンパーンチ!」

 

「ガンガラガッチャァ!」

 

 思わずパトレン2号が叫ぶ、この靄の中から突如腕が飛び出してくる、まともに食らったパトカイザーが怯む、ヤツデンワニが固められたセメントを振りほどいてのそれは半ば体当たり、

 

「ヴァリアブルタイフーン!」

 

 後背に降り立ち腰の小さなローター2基を逆回転、強力な竜巻が靄をかき消してヤツデンワニを露出し、さらに推し上げて高転びさせる、

 

「ヤツデンワニは起き上がれないぃぃ!」

 

「圭一郎今だ、踏みつけてやるのだっ!」

 

 獰猛なほどの攻撃性を明神つかさは叫ぶ、コクピット内の男子2名がドン引きする程に。ドン引きした二人はいったいどんな事がこの同僚女子の身に降りかかったのか想像だにできなかった。

 

「踏んじゃえ踏んじゃえ、真墨踏んじゃえ~」

 

 だからアナタはそれNGだから、

 アルティメットダイボウケンとパトカイザー、倒れる敵に歩を進め捕らえようとする、

 

「高濃度の、あ、シャケ脂ぁ、ダラダラダラダラぁ」

 

 倒れたヤツデンワニの口元から溢れ出る粘液が四方50メートルに広がる、近接したダンボウケンとパトカイザーは、

 

「すってん!」圭一郎である。

 

「ころりん!」真墨である。

 

 ヤツデンワニに近づこうとする二大ロボが足を踏み入れた途端軸足を取られ転倒、起き上がろうと片足に重量をかけようとした途端踏ん張った足がなお有らぬ方向に滑り重心を失ってまたしても転倒転倒、

 

「ハハハハ、クリスマスにシャケをバカにするからシャケの油に足下を掬われるのだぁ!」

 

 仰向けに倒れる化け物を捉えようとするとすってんころりん転倒藻掻いたまま全く近づけない、そして全く動けない相手に手も足も出せないという阿鼻叫喚の地獄絵図である。これが全てシャケの脂よって引き起こされている、

 

『無様だなぁ、ブラック。』

 

 伊能真墨、ブラックは声の主に凝固する、

 

「テメエ、テメエ、今更ナニしに来やがったぁ!」

 

 羞恥のあまりか叛心を露骨に顕すブラック、

 

「宇宙から飛んできたってことですか」

 

 最上蒼太もあまりの展開の疾さに頭の処理が追い付いていかない、

 

「わーい、やっと来たぁ、ズバーンに呼びに行かせて良かったよぉ!」

 

 何も考えていない子だからこそ、素直に喜べるという事はあるものだ。

 

 漆黒の大空、大きく割れてリアルな青空と接続、その割れ目から出現する飛行物体、艦首に巨大なローラーが見えるもののそれは紛う事無き戦艦、超弩級戦艦が空を滑空している、

 

『全機最大火力で一斉攻撃!敵を殲滅する!』

 

 未だ声だけの主に真墨達は仰天する、

 

「おいてめえ、プレシャスを破壊したら元も子もないぞてめえ!」

 

『真墨、思い出してみろ、『ゴードムの心臓』の時を。』

 

「なんだおい、おいって・・・あ?!」

 

「そうそう蒼太、『ゴードムの心臓』と同じく封印されていたという事は、」

 

「あ、真墨が一番最初にチーフにケチョンケチョンされた時言ってたヤツだ」

 

「う、うるせえな菜月、『ゴードムの脳髄』も破壊する方法が無かったって事だな!」

 

 他人の威を借りてドヤ顔するブラック、

 

『行くぞ!アタックっっ!』

 

 スナップ音がコクピット内に響く、それはダイボウケンの内部だけではない、黙って聞いていたパトカイザー内部でも同じだった。

 

「なんなんだ、このなんというか」

 

 唖然とする警察3名、

 

「とにかく理屈はよく解らないけどすごい説得力ですね、なんなんですかあの人?」

 

「圭一郎には無いリーダーシップだな、高尾ノエル!これでいいのか?」

 

『オーララァ、いいよ、サージェスで責任を持つと先程連絡を受けてこっちの空間に引き入れた。やってくれて構わない。」

 

 ダイボウケンがジェットを全力噴射して粘着する大地から宙へ飛翔、パトカイザーもまたフックをかけてダイボウケンに引っ張り上げられる、

 

『総攻撃だ!』

 

「遅れんなよ明石、アルティメットブラスターっ!」

 

 叫ぶ真墨、ダイボウケンが宙に上がったまま胸板から炎の鳥のような光が放たれる、火の鳥は空中戦艦と並走、戦艦艦首を追い抜いて敵に向かって一直線、

 

「国際警察も力を合わせる、パトカイザー、連続ラダーボンバー!」

 

 赤と黄色の両腕を共に水平に保つ、一方は消防車両のハシゴ、一方はクレーンアーム、ラダーと似たそれを交互に突き出してはストロークし突き出す度に衝撃波が走る、連続した衝撃波が敵に放たれる、

 

「なんでそんなにシャケを嫌うんだぁぁぁ」

 

 炎が舞い降りてヤツデンワニ周辺の脂が暴発炎上、思わず吹き飛び舞い上がった身体に衝撃の連打と水圧の弾丸が波状攻撃となって宙でお手玉のように弾む、

 

「行くぞズバーンっっ!」

 

 それは巨大戦艦艦首、あれは赤いスーツ、艦首先端に大気圧を全身に浴びながら一振りの黄金剣を携えて構えている、

 

「バカじゃねえのか明石!」

 

 真墨が叫び、

 

「オレ達は何を見せられているんだ」

 

 艦首に起立して黄金剣を構える漢を見て朝加圭一郎は愕然とした、

 

「伸びろズバーン!ズバババッーン!」

 

 握る剣の鍔から切っ先までが数十メートル伸張し、さしずめ戦艦の角となって矛先をヤツデンワニへ、

 

「なぜだぁなぜ純真無垢なヤツデンワニ様がぁ!ニャンチューだったらこんな事にならんぞ、理不尽なぁぁぁ」

 

 猪突、

 貫通する巨大戦艦、一瞬で爆裂する敵ギャングラー、四散し爆煙と化し、粉塵をかき分けて巨大戦艦艦首が露出、多摩川へ波飛沫を立てて着水、深い闇だった空も全てが吹き飛んだように晴れ渡る、そう、全員が仮想空間から現実へと戻ってきた。

 

「明石、この野郎!」

 

 颯爽と戦艦より一飛びで河岸に降り立つ全身赤いスーツの男、その姿が除装し赤いポイントの入ったジャケットを来た精悍な男が立っていた。

 

「チーフ!」

 

「チーフチーフチーフだぁ!」

 

 そのジャケットがボロボロと崩れ去り、黄金の剣を携え生まれたままの姿になる男、

 

「ひさしぶりだな真墨、蒼太、菜月、」

 

 だが動じていないこの男の大事なところに咄嗟に26センチのフライパンが覆われる。

 

「チーフ、ミッション中はコードネームです!」

 

 フライパンで咄嗟に隠したのは細身ながら顔に自己主張が溢れた女子。

 

「あ!さくらさんだぁ!」

 

「さくら姐さんさすがチーフへのフォロー完璧ですねえ。」

 

「ちょっとボケピンクだけどな。」

 

 黄金剣を携えた赤、駆け寄る黒青黄、そして桃色ジャケットがそれを笑顔で迎えた。

 

「なんでこのヤツデンワニ様がこんな目に遭わなきゃいけないんだ、」

 

 対岸の爆煙が晴れ、徐々にその異形が身を晒す、姿はギャングラーのそれではない、能力が定着して変身がそのまま自らの姿になっている、という事は先に金庫に含めた『ゴードムの脳髄』のエネルギーもまたこの怪物の身に定着したという事。

 

「なんだけどね、良かったよとりあえず等身大に戻ってくれて、」

 

 刺すのは背後から、

 

「君があのドグラニオしか出せない青い輻射をはじめた時どうにもならないと観念したよ。けどこのサイズになって位置が解っているからには話は別だ。ベロニクをこうして背後から突き入れれば、ホラこの通り、」

 

 ルパンエックス、背後から剣化したエックスチェンジャーを差し込み、そして引き抜く、その光の巨刃の中に、人間が生来グロテスクな印象を持つ臓器のデザインをしたプレシャスが包まれている。

 

「君はこのコレクションの膨大なエネルギーで金の金庫並に強度を増したようだね、幸いにも脳髄は無事、だが金そのものではない、解錠はマスターキーが安全に取り出す事が可能だ、このサイズならね。」

 

 そうして光の膜の中へ溶けるように消えていくルパンエックスは、今まさにもう一つの戦隊に駆け寄ってきた3人の国際警察の元へと現出する、

 

「高尾ノエル、こいつらとはいったい」

 

 全てのメンバーが既に除装している、一人は一枚の服も着ておらず、股間にフライパンをぶら下げているだけだ。その男に高尾ノエルは臓器デザインのコレクション=プレシャスを投擲した。

 

「そうか、壊さなかったか、ちょっとした冒険だったな。」

 

 投擲された脳髄のリアルな造形のプレシャスを眺め、明石と呼ばれた男は掌からどういうカラクリか箱が現出、プレシャスを包んで、それをピンクラインのジャケットを着た細身の女性に渡した。

 

「おめえなんか着ろよ、つーか、また無謀な賭けでオレ等扇動したのかおい明石。」

 

「チーフ、すいません、最近真墨もチーフ面して言うようになって、」

 

「ねえねえさくらさん、チーフと宇宙で二人キリでどこまで進んだ?ねえねえ。」

 

「オイオイオイ、オレ様を置いてけぼりにするなって。」

 

「バラバラだなどいつもこいつも」

 

 全裸の男を中心にしたサージェスの6人を端で視る朝加圭一郎は、果たして自分達は一枚岩の集団であるだろうか、右のヘラヘラしている後輩と最近フェロモンが収まらない同期を一瞥し、ましてや彼らとは、などと愚にも付かない考えが頭を過った。

 

「じゃあ、総仕上げにあの敵を伐とうかみんな。」

 

 高尾ノエルが高らかに手を挙げて全員に号令する、警察3人を含む8人が一斉に列を成す。3人は銃にトリガーマシンをセットし、5人はリボルバー型携帯のようなアイテムを左二の腕のポケットから取り出し展開、

 

「警察チェンジ」

 

『パトライズ』

 

 VSチェンジャー銃身を90度回転、頭上に掲げ一斉射、

 

『警察チェンジ』

 

 光の膜が3人の頭上から足先までを素通りし、スーツが蒸着される、

 

「アクセルラー!」

 

 リボルバー型携帯の名は『アクセルラー』、

 

「「「「レディっ」」」」

 

 そのテンキーの下部にコインのようなタービンがある、

 

「ボウケンジャー、スタートアップ!」

 

 チーフの号令一下、5人がタービンを左二の腕に宛がい左の拳までなぞる、タービンの回転が耳につんざく程の高音を轟かせる、瞬間、5人の姿がカラフルなスーツへと装着される、

 

「熱き冒険者、ボウケンレッド」

 

「迅き冒険者、ボウケンブラック」

 

「高き冒険者、ボウケンブルー」

 

「強き冒険者、ボウケンイエロー」

 

「深き冒険者、ボウケンピンク」

 

「果てなき冒険魂!轟轟戦隊、」

 

「「「「「ボウケンジャーっ!」」」」」

 

 サージェスではこの変身から名乗りまで厳密な時間が設定、日夜訓練されている、

 

「パトレン1号」

 

「パトレン2号」

 

「パトレン3号」

 

 今一人、エックスチェンジャー銃身を回転させ頭上に掲げて一斉射、光の膜が頭上から足先まで素通りしスーツが蒸着される、

 

「気高く輝く警察官、バトレンエックス」

 

「警察戦隊」

 

「「「「パトレンジャーっ!」」」」

 

 6プラス4、横並びで敵と対峙するスーパー戦隊、永遠に時を越え最強戦士オンパレード!

 

「ズバズバっ」

 

「なんだこの金色、」

 

「ノエルさん、負けてますよ!」

 

「むむ、趣味じゃないデザインなのに、妙に仕草に惹かれてしまう」

 

 唖然とする警察達を尻目にまずパトレンエックスがその突如出現した全身金色の鎧を纏ったような者の肩に手を置く、

 

「オララ、はじめてお目にかかるのかい?彼はズバーン、剣だ。」

 

「「「(いったい何を言ってるんだ?高尾ノエル)」」」

 

 バトレン3人にマジマジと眺められる黄金剣ズバーンだった。

 

「いくぞ!アタックっっ!」

 

 ボウケンレッドのスナップが合図、6+4の戦隊総員が一つの敵に向かって突進、

 

「お、お、おまえら人数かけてズッコいんだなぁ!」

 

 迎え撃つワニの異形は口からいくつもの光を発散、四方に散ったそれは攻撃ではない、光が散って立体を象り、容積を等しくする異形どもとなる、

 

「ヤツデンワニ!」

 

「ワンデ星人ニワンデ!」

 

「携帯デンワオルグ!」

 

「等身大だけど炎神キャリゲーター!」

 

「ついでにゼルモダ!」

 

「オルトウロスヘッダーのナモノ・ガタリのガタリの方!」

 

「カナデガミ!」

 

「幻獣アーヴァンク拳のソジョ!」

 

「ケシゴムロイド!」

 

「モグラロイド!」

 

「ゴネーシ!」

 

「ヂェンゾス!」

 

「スパルタン!」

 

「バラカクタス2もいるぜ!」

 

「そして大トリを務めしはこのサモーン・シャケキスタンチン、おまえら戦隊が何人かかってこようが、この歴史の厚みに勝てるものかぁ!」

 

 それは半ば分裂、

 

「てっきりポーダマンを排出すると思っていたが、中々すごいというか酷いサプライズだこれは。」

 

 呆れるほどの数を繰り出す敵にパトレンエックス、肩を竦めた。

 

「ボエボエボーッッッ!」

 

 突撃するヤツデンワニ軍団、倍する敵に敢然と立ち向かう6+4の戦士達、

 

「全員ギャングラー怪人なのか!」1号はかつてない敵の数に驚愕し、躊躇した。

 しかし、もう一人のレッドは違った。

 

「考えるな、レッドゾーンっクラッシュっ!」

 

 槍の得物を抱えたボウケンレッドが高速で敵の群れの中単騎突進、

 

「オルトウロスヘッダーのナモノ・ガタリのガタリの俺様がぁぁぁ!」

 

 すれ違い様袈裟斬り、当然ナモノ・ガタリのナモノの方も纏めて一掃、

 

「負けるかよ、ライトニングクラッシュ!」

 

 ボウケンブラック、ロングリーチのハンマーを投擲、槌の遠心力で高速回転しながら敵を纏めてなぎ払う、

 

「オララ、脆いな。やはりライモンと同じで成長著しい金庫の繰り出す兵は脆い。」

 

 パトレンエックス、独りごちしながら扇状に銃を連射、

 

「ナックルキャノン!」

 

「よーし、いっくぞー!スクーパーファントム!」

 

「シューターハリケーン!なつき、じゃない、イエロー!燥がないでください!」

 

 そんなめまぐるしい状況のアップデートを傍観してしまった警察3人、

 

「い、いくぞボヤボヤするな!」

 

「先輩こそそれズルいですよ!」

 

「くそ、黄色もカワイイがピンクも捨て難い」

 

 警察三人も得物を乱射して突撃、

 

「カナデガミの札がぁぁ」

 

「等身大だけどキャリゲーターがぁ」

 

 風船が割れるように消失していく怪人達、

 

「あの赤いヤツ、何がこんなに差があるんだ」

 

 パトレン1号は初めて同じカラーリングのボウケンレッドという漢を認めた、

 

「ええい戦隊共めぇっ!!お前達はいつもいつもそうだ、数にモノを言わせて我らを袋叩きにして優越を満たす!おまえ達の横暴を許してたまるかぁ、戦隊が我々を倒す事、そしてクリスマスにチキンを食べる事と同じほどに傲慢な事なのだぁぁ!」

 

 訳の分からない事をのたまうヤツデンワニを尻目に、戦隊計10名は敵のほとんどを掃討していく、まるで名乗りから曲が流れて1番が演奏し終わったほどの時間しかない、

 

「グリーンさん、すごい曲射ちですね、」

 

「ボク2号ですぅ、ボクもそんな風に空中から射ってみたいですよ!」

 

 などと戦隊あるあるをする余裕すらあった10名はしかし、残ったヤツデンワニとサーモン・シャケキスタンチンが手を繋いで横並びし、共に大きく開けた口角の中から発光現象を起こしているのを視界に入れ、一斉に沈黙した。

 

「総員回避!」

 

 ボウケンレッドが叫んだ、しかしヤツデンワニ等から口から発射された光芒は10人を呑み込んでいく、

 

『一・致・団・結』

 

「「「私の後ろに!」」」

 

 その光芒を一人、いや一体で遮る者がいた。パトレンジャーが融合したそれだ。そのスペックの合力は防御力も含まれる、2体の攻撃を辛うじて受け止め弾き返した、

 

「反撃だ、全員アクセルテクター装着!」

 

 ボウケンジャー5名、全員がブレストプレートアーマーを装着、その右腕にそれぞれ少しずつ相違のあるアイテムを握った、

 

「クレーンヘッド!」先端にエネルギーを込めたクレーンを投擲する構造だ、

 

「ミキサーヘッド!」リキッド弾を乱射する構造だ、

 

「ドリルヘッド!」おなじみ尖角なドリル、

 

「ショベルヘッド!」アームから衝撃波が出る、

 

「行くぞ、ジェットヘッダー!」噴流を直射する、

 

「ズバーン!」

 

「「「トドメだっ!!!」」」

 

『一撃ストライクっ!』

 

 全員の合力した力がヤツデンワニとサーモンを圧倒した、

 

 生きるぞ、どんな事になっても絶対生きてやるぞっっ!!クリスマスにはシャぁぁぁ!

 

 火力に呑まれながら2体の怪物は絶叫を上げ、虚しくも摩耗消失した。

 

「任務完了!」

 

 パトレンジャー3人に分離して挙手注目の敬礼をした、

 

「ご苦労皆。」

 

「てめえさすがだよ明石、」

 

「チーフ!ひさしぶりひさしぶり、さくらさんと宇宙でどうだった?」

 

 ボウケンジャー5人は、どうやら後から出てきた2人との再会を果たしたらしい。レッドを中心にして和気藹々としていた。

 

「チーフ、彼らが高尾管理官から伺っていた国際警察です。」

 

 ピンクが指し示した3人に目を向けたレッドは、そのまま歩み寄って1号の肩に手を置いた。

 

「はじめまして、」パトレン1号、挙手注目の敬礼をボウケンレッドへ向けた。「朝加巡査部長であります。

 

「なるほど警察戦隊、一致団結か。君達がいなければ危うかった。」

 

「こちらこそ、先程は、見事な統率力」

 

「肩の力を抜け、」

 

「は?」

 

「オレにも経験がある、一人で背負い込むな、仲間は得がたいお宝だ。そのフォローを信じろ。オレが言えるのはそれだけだ。」

 

「仲間は、宝、」

 

 パトレン1号は、いったいどこまでが仲間なのだろうと戸惑う、そして先輩格の男はなおそんな彼を置き去りにしてしまうのだ。いつだって、誰に対してもボウケンレッドはそうだった。

 

「了解したシルバー、すまんな、ゆっくりしている暇がない、今度暇があったら連絡する、総員、これより復活したガジャと、そのガジャがゴードムエンジンで復活させた闇のヤイバ、ジャリュウ一族を討つ。」

 

「さくら姐さんから聞いたぜ、てめえピーマン嫌いなんだってな明石!今度英二にたらふく用意してもらうからなぁ!」

 

「遅くなるなぁ、ちょっと家に連絡しますね、あ、シズカちゃん?未夢にちゃんと餌やっとくんだよ、うん、遅くなるから」

 

「ねえねえ、3号さん3号さん、連絡先教えとくから暇な時いっしょにゴハンしましょ。」

 

 轟轟戦隊は慌ただしく海上に浮かぶビークルにワイヤー一本で搭乗、多摩川の水面を大きく波立たせ発艦していった。

 

「国際警察も追随するぞ!」

 

 朝加圭一郎はあるいは借りを返すつもりもあったろう、

 だがしかし、国際警察のミッションはこれよりサージェス財団と分かたれる事になる。

 

 

 

 そうして彼は硝煙揺らぐ大地の奥の空間のゆらぎを見逃さなかった。

 

「ボウケンジャーの最大火力で粉々に破壊されながら、再生していこうする金庫の能力をパトレンジャーによってキャンセルされていく、パトレンジャーだけでは不可能だった金庫へのダメージがあるいは『マグナム』以上の効果を与えたかもしれない。だが彼にとってはここまでのエネルギーを吸収し存在し続ける、ヤツ並の防衛機能を発現した、あるいは好感すら持てるほどにここまでひたむきに生きた金庫も珍しい。待ちたまえ君達!」

 

 一人離れて残された3人を傍観していたパトレンエックスはその時はじめてエックスチェンジャーを構え最大出力で放つ、

 

「このデストラ様にそんなものが通用するか!」

 

 空間を裂いて踊り出る単眼の巨漢、両肩には眩い光沢を放つ金庫が二つ、デストラ・マッチョ、既に再生していたサーモンだった金庫を掴んでいる、そのデストラを襲うパトレンエックスの光芒、しかし、

 

「そんなバカな!」

 

 効かないだろう事は折り込み済みの攻撃だった、しかし光芒はデストラに届く事すらなく、歪曲し天頂方向に立ち登っていった。

 

「命拾いしたなてめえら、てめえらの処理は言われてねえんだ。」

 

「デストラ、既にあのコレクションを」

 

「ヤツはあの洋館にいた、」

 

 パトレンエックスが珍しく狼狽えている様を横目に応戦するパトレン1号、乱射した、

 

「力を使うまでもない。そして、見えているぞ、」

 

 デストラ、パトレン1号の弾をまともに食らい、にも関わらず不動を保ち、単眼は彼らとはまるで違う方向を向いていた。

 

『ド、ストライーク!』

 

 それは他のメンバーとは比較にならない圧倒的な光芒だった、射角10度下方デストラ・マッチョを呑み込もうとする、

 

「来ていたのか、しかし、」

 

 パトレンエックスは見た、光芒はデストラに直撃するごく数ミリ手前の無空で歪曲、上方へと立ち上った。

 

「これが俺様等を唯一破壊するコレクションだっつうのか、えっ!」

 

 単眼の視線の先、小高い崖である、一人だけである、マントを靡かせ、二つの銃を組み合わせた得物を片手に棒立ちしていた。その彼に声をかけたのは、あの男である。

 

「カイリ君、カイリ君なのか」

 

 赤いマントの男は、声を一切無視してデストラだけを凝視した。

 

「そうでもねえってさ、デストラさんよ、てめえの左の金庫、煙吹いてるぜ。」

 

「なっ!」

 

 単眼の異形は自らの左肩に埋もれる金庫を見やった、いつのまにか金庫が加熱しており、黄金色だったその色艶がくすんだ銀になって煙を吹いていた、

 

「許さん、許さんぞルパンレッド、ドグラニオ様から頂いたコレクションともう一つの金庫をここまでにするとは、」

 

 だがしかしデストラ左肩の金庫、その銀色が再び輝き出し黄金色に復元していく、

 

「ま、いいか、」デストラは片手に載せた金庫を弄ぶ。「キサマとの決着は今度だ。今はこの金庫をオヤジは欲しがっているのでな。」

 

「待てデストラ!」

 

 崖の上のマントの男も、警察3人も、はたまた金の出で立の男すらも、デストラが空間に溶けていく様を黙って見る他無かった。

 

「あるいは本気でボクらを潰す気になったかドグラニオ、」

 

 パトレンエックスなどは心身を喪失したかのように立ち尽くしている。

 

「デストラめ、なんかちょっと違ってたな。アンタも抜かってたなエックス、ゴーシュの時と同じ手口じゃあっちも分かるってさ。」

 

 ルパンレッドの左腕の中に素通しするように収まっていく『マグナム』、同時に上空に巨大化したダイヤルファイターを現出させ、ワイヤーを掛けて飛び乗った。

 

「待て、君はこれ以上!」

 

 立ち去る夜野カイリに声を荒げて朝加圭一郎は叫んだ。

 

「ムダだ、聞こえる距離にはない。」

 

「分かっている!」

 

 あまりに想定外の怒声に肩にかけようとした手の動きを止めるパトレン3号だった。

 

「ステイタスダブルゴールドに『サイレンストライカー』とそしておそらくは『ビクトリーストライカー』も。」

 

 パトレンエックス、高尾ノエルだけはまるで別角度の方向を眺めていた。

 

 

 

 

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