リーフィア達の住む森の中には、たまに誰かが落としたボールが壊れて転がっていることがある。
森の中に落ちているそのボールの種類はいろいろあるけれど、その日リーフィアが拾ったボールは『赤と白の色』をしたボールだった。森の中によく落ちている『青緑っぽい色のボール』とはまた違うボールだった。
「フィアー……!」
ふだん森の中で良く見ているボールとは違う『紅白のボール』を見付けたリーフィアは、その珍しい色のボールにパタパタと駆け寄った。そうして、(このボールをコロコロ転がして遊んでみよう!)と考えた。そのボールを近くで見てみると、よく転がりそうな真ん丸でコロコロと転がせば楽しそうな形だと分かったからだ。
考えたらさっそく試してみるのが一番!リーフィアは地面に落ちている『紅白のボール』を前足でペシッと勢いをつけて叩いてみた。
だが、そのボールはリーフィアの思ったとおりに転がらず、少し転がってすぐに草に引っ掛かって動きを止めてしまった。森の中の草むらだらけの地面で転がそうとしたのが良くなかったのかも知れない。
「フィァ……。」
転がったボールはスタート地点からほとんど動いてない。リーフィアは、コロコロと言うよりコロンと一回転だけして動くのを止めたボールを眺めて耳をペタンとさせる。これでは、このボールを転がしても動きがあまり無くて退屈だ。
退屈になったリーフィアは、何気なく動きを止めたボールを眺めて右足と左足を使いペチペチと先程より弱めに交互に叩いてみた。
「フィア……!フィア~!」
リーフィアに気まぐれに叩かれたボールは、右へ左へと少しずつ移動する。リーフィアも無意識にボールを叩くのに前へ前へ少しずつ移動する。
始めてみたら案外ボールをうまく移動させるのは難しい。途中で草むらにはまったり、地面の石にぶつかって右に叩いたのに左へ転がったりとボールはあちらこちらへコロンコロンと回って移動する。
いつの間にかリーフィアは、ボールをうまく転がすのに夢中になっていた。
「……ヌメッ!?」
リーフィアは地面を転がるボールに夢中で前を見ていなかった。だからだろう。歩いていたリーフィアの前足は、誰かの体にヌメッと激突してしまった。
「……フィア!?」
リーフィアは驚いてすぐに前足を引っ込めた。「ヌメッ!?」と鳴いた相手は大丈夫だったのか心配だった。自分がぶつかったせいで怪我をしているかも知れない。心配になったリーフィアは、顔をあげて前を見た。
「ヌメェ~?」
顔をあげたリーフィアの前にいたのは、小さな紫色のポケモン『ヌメラ』だった。
ヌメラは先程までリーフィアが叩いてコロコロ転がして遊んでいたボールを興味津々と言った目で眺めると、自分に視線を向けるリーフィアに目を向けた。
それから、頭でボールを持ち上げてリーフィアにそのボールを手渡してくれた。優しくボールを手渡してくれたヌメラに、リーフィアはペコリと頭をさげた。
「フィア!」
頭をさげるリーフィアに(気にしなくて良い)と言うように、ヌメラはフルフルと頭を左右に振る。頭の触角がその動きに合わせてゆっくりと揺れ動いた。
「ヌメヌメ~。」
リーフィアはさげた頭をあげると、自分の前でニコニコと優しく笑顔を浮かべるヌメラを見た。そうして、ヌメラの体の前にさっきまでは1匹で転がしていたボールを置いた。
ヌメラは、目の前に置かれたボールをキラキラとした目で見ている。
「フィア~!」
そんなヌメラに、リーフィアは前足でボールをゆっくりと転がしてそのボールでの遊び方を披露した。(ヌメラと一緒に遊んだら楽しいだろうな)と考えたのだ。
リーフィアとボールの遊び方を覚えたヌメラは、2匹で仲良く並んで交互にボールを転がした。リーフィアが1匹で転がす時よりもコロコロコロコロと勢い良くボールは先へ先へ転がって行く……。
「ヌメッ!」
「フィアッ!」
何処までボールを転がして進むのか?2匹はそれを考えること無く(遊べるだけ遊ぼう!)と考えボールを夢中で転がし続けた。
2匹がボールを転がして進む道には、『紅白のボール』だけで無く『桃色のボール』や『黒いボール』も落ちていた。落ちていたのだけれど、ヌメラと遊んでいるリーフィアはそれらのボールには気付かずに、先へと転がされた『紅白のボール』だけを追い掛け続けた。
「フィア~!」
「ヌメェ~!」
リーフィアとヌメラはボールをまっすぐ転がすのに、右へ左へとお互いに動き続けた。
2匹の力に押された『紅白のボール』は、草むらの中も水溜まりの上もぐんぐんと森の中をまっすぐに力強く進んで行った。