ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

108 / 172
今回から原作に登場する特別試験の話になります。

毎度のことながらいくつかのネタバレが発生することになりますので、気になさる方はご注意ください。
※展開自体は原作と異なります。


崩壊の足音

「麻耶、誕生日おめでとう」

 

「ありがとう清隆くんっ!私のためにこんなサプライズしてくれてサイコーだよ」

 

2月28日はクラスメイト佐藤麻耶の誕生日。

ペーパーシャッフルで助けられて以来、今日はそのお礼も兼ねて盛大にお祝いすることに決めていた。

 

幸い、日曜日ということもあって出来ることの自由度は高かった――のだが、まさかこんなことをやるとは思わなかった。

 

そう現在オレは、グラウンドでサッカー部に混じり試合形式の練習に参加している。

 

そして、今しがたゴールトゥゴールを決めて、応援席で見守る麻耶のところまでお祝いを言いに来たというわけだ。

 

「綾小路ー!お前生徒会辞めてサッカー部入れよー」

 

「僕も驚いちゃったよ。綾小路くんがいれば全国制覇も夢じゃないと思うな」

 

即席チームメイトの柴田と平田が駆け寄ってくる。

 

「悪いがサプライズは珍しいからこそ価値がある」

 

「えー、清隆くんの活躍、私は毎日だってみたいよ」

 

……生徒会辞めて、2年生からはサッカー編、始めるか?

ようこそ実力至上主義のサッカー部へ……至極当然のことを言ってるだけだな。

実力でレギュラーを決めなくて何で決めるっていうんだ。

 

一瞬悪くないかとも思ったが、すぐにやることがなくなりそうなのでやめておく。

それに、夏休みのバスケの試合のように助っ人で急遽というシチュエーションならいざ知らず、試合のため定期的にこの施設から出るのはリスクでしかない。

 

そうして試合を終えた後はサッカー部からの熱烈な勧誘を断り、麻耶と夕食を共にする。

 

「グラウンドまで来てって連絡が来た時はびっくりしちゃった」

 

「麻耶が喜ぶサプライズを色々考えてみたんだが、こんなことしか思いつかなかった」

 

「こんなことなんて……。私、今日のこと一生忘れない」

 

これまでのサプライズ以上のものを求めた結果、悩みに悩むこととなり本人が喜ぶものが一番だという結論に至った。

それとなくどんな時に嬉しさや喜びを感じるのか尋ねてみたところ『清隆くんのカッコイイ姿を見た時』と言われてしまったため、余計に頭を抱えることに。

 

カッコイイってなんだ?

 

意識したことはないため、改めて問われるとわからなくなる。

 

原点に戻れば、麻耶がオレに好意を抱いたきっかけは体育祭での活躍。

それなら運動している姿を披露しつつ、そこで活躍すれば格好良くなるに違いない。

 

そこで、白羽の矢を立てたのがサッカー部だった。平田や柴田に頼んで、一日体験入部という形で混ぜてもらえることに。

 

もちろん、サッカー経験はなかったため、ちゃんと活躍するため学年末試験が終了してからは、平田に頼んで基礎を叩き込んでもらっていた。

最近は糖分を摂取し過ぎていたため、運動もできて一石二鳥というやつだ。

 

そういった準備が身を結び、ご満悦の様子の麻耶。この表情が見れただけで頑張った甲斐がある。

 

「はぁー、この時間がずっと続けば良いのになぁ」

 

「ずっと同じだと飽きてしまうんじゃないか?」

 

「ないない。いつまでも一緒なら幸せに決まってるよ」

 

幸せの感じ方は人それぞれ。

オレには理解できずとも、だからと言って否定することもできない。

 

「それに……明日は学年末試験の結果発表だから、なおさら明日が来ない方が嬉しいかな、なんて」

 

「勉強会でみていた感じだと問題ないと思うぞ」

 

「うーん、赤点はないとは思うんだけどさ、やっぱりまだ怖いかな。清隆くんやみんなと楽しく過ごしてる毎日が急に終わっちゃうかも、とか考えたくないっていうか……」

 

「それならもっと日頃から勉強を頑張るしかないな」

 

「清隆くんがまた教えてくれるなら頑張れそうなんだけどなー」

 

「今回は特例だ。それに、教えるだけなら堀北や啓誠の方が適任だな」

 

「えー」

 

以前、明人たちの勉強をみた時も思ったが、本気で指導するならその人物の得手不得手を理解し、適した指導を行う必要がある。

他にもうまくモチベーションを引き出すことも重要だったりと、何かとオレには向いていないと感じることが多かった。

 

「じゃあわからないとことか質問しに行くのは?」

 

「担当の先生の所へ行く事を勧める」

 

「もぅ、私たち仲良しの友だち、なんだよね?」

 

なるほど。友だち同士なら普通のことなのか。

確かに気兼ねなく何でも言い合える関係というイメージはある。

『友だち関係』を経験できる機会を自ら捨てる必要はないか。

 

「確かに友だちのピンチなら一肌脱ぐこともやぶさかではないな」

 

「やったあ」

 

こういう積み重ねで人は信頼関係を築いていくのだろう。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

翌日3月1日月曜日。

まもなくテスト結果が発表される。

 

「1年生もあと1ヶ月か……」

 

ため息とともにそんな言葉が零れる。

 

「わかるわよ、綾小路くん。兄さんの卒業が目の前に迫って来てノスタルジックなのね」

 

「いや……」

 

珍しいことだがブラコン堀北の発言が全くの的外れとも言い切れない、かもしれない。

学や橘からは多くのことを学ばせてもらったからな。

観察対象が減ることは機会損失――だからだろう、何となく感傷に浸ってしまったのは。

 

「お前たち、席に着け。お待ちかねのテスト結果を発表する」

 

茶柱先生が軽快に教室へ入ってくる。

 

「いやぁ待ってませんよぉ……うげぇ、胃が痛くなってきた」

 

「随分と弱気だな池。自信はないのか?」

 

「いや、やれるだけはやりましたけど、何が起こるかわからないじゃないですか」

 

「それはそうだな。この学校始まって以来、名前の書き忘れで退学になった者はいないが、池が最初の1人になるという可能性だってあるわけだ」

 

「お、脅さないでくださいよ」

 

「すまんすまん。あまり不安がっても仕方がないが、油断するよりは何倍もマシだ。だが、この1年でお前たちは確実に成長した。それだけは先に伝えさせてもらう」

 

「え、あ、はい。ありがとうございます」

 

茶柱先生からの滅多にない褒め言葉に池だけでなく、クラスメイトたちも戸惑っている。

とは言え、結果発表前にここまで機嫌がいいのだから、変に疑うよりも素直に受け取った方が良いだろう。

 

「今回の結果はこの通りだ。もちろん、赤点の生徒もいない」

「うぉマジかよ」「やったぁ、過去最高得点なんだけど」

「このぐらい当然の結果だな」

 

など様々なリアクションが飛び交う。

学年末試験までに何度か勉強会を開いた甲斐があって、どの教科も前回よりクラス平均が15点以上高い。

 

茶柱先生との取引は勉強会を開くことまでだったが、その後、ポチの動画撮影をお願いしたところ「とにかく結果を出せ」という条件が加わったため、ファンクラブ経由で先輩方から過去問を入手し、傾向と対策を練り、山を張って、成績の下位層を中心にひたすら暗記させた。

 

「残念ながら総合平均は、A、Bクラスには及ばなかったが、かなりの接戦で健闘したと言える。正直どこが1位でもおかしくなかったぐらいだ。その証拠に日本史など一部教科では勝っているからな」

 

日本史は暗記がメインで点数を稼ぎやすかったこともあるが、茶柱先生の担当教科なのでご機嫌を取る意味でも他より力を入れておいた。ご覧の通り、効果は抜群のようだ。

 

昨日不安がっていた麻耶も、ふたを開けてみればクラスの下位グループの中でも上位に位置しており、その他、須藤や軽井沢など入学当初と比べると大きく成績を伸ばしているようだ。意外なことに池もそれなりに伸びている。

山内や井の頭などあまり伸びていないメンバーと比較して何が違うのだろうか。

 

「さて喜ぶのはここまでだ。お前たちも覚悟はできているだろうが、来週8日から今年度最後の特別試験が開催される」

 

「うげぇー」

 

お祝いムードから一転、教室に重い空気が流れる。

とは言え、伊達に1年間この学校で過ごしてきたわけではないようで、大半の生徒が気持ちを切り替え、茶柱先生の話を真剣に聞く姿勢ができていた。

 

「例年、学年末の特別試験はそれまでのモノよりも過酷なものとなる。当然退学のリスクがある内容でもおかしくはない。だが、この時期まで退学者が出なかった学年はお前たちが初めてだ。この調子で全員で乗り越えることができるよう努めて欲しい」

 

そう言って茶柱先生は最後にこちらをちらっとみる。

 

だが、オレとしてはポチの動画撮影の権利を得た以上、勝つためにどうこうする必要性がない。

まして櫛田との約束があるため、堀北を程よく退学にするための道筋を考える必要があり、試験内容次第だが、退学者を出しながら試験にも勝つのは至難の業だろう。

 

「みんな、大変だろうけど、今度の試験で勝てばBクラスが見えてくる。頑張ろう!」

 

「だよな、Dクラスだった俺たちがBクラスとかなんかカッコイイよな」

「うんうん、私たちなら目指せるよ」

「このクラスにはリーサルウェポンの俺がいるから余裕だぜ」

 

平田からの激励をクラスメイトも前向きに受け止める。

この様子ならオレが何かせずとも平田や堀北任せでもいい勝負ができるかもしれない。

 

現状のクラスポイントは

坂柳(A)クラス   1372クラスポイント

一之瀬(B)クラス  1027クラスポイント

堀北(C)クラス    550クラスポイント

ひより(D)クラス   235クラスポイント

 

と、平田の言う通り、試験の報酬次第ではBクラスの背中が見えてくる。

 

気になるのはひよりのクラスか。

ここでの結果次第で来年度以降、クラス争いの場に立てるかどうかの瀬戸際といったところ。

リーダーになって以来、色々と働きかけているようだが、それがどれだけものになっているか。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

ホームルームが終了し、生徒会室へ向かう途中でメールが届く。

 

坂柳からの特別棟への呼び出し。

 

スルーするかどうか迷ったが、後々面倒なことになりそうなので仕方なく足を運ぶことにした。

 

特別棟の階段を進んでいくと、3階に向かう途中の踊り場で待機する葛城を見つける。

 

「来たか綾小路。今日の坂柳は機嫌がすこぶるいい。これからする話に関係があるのかもしれないな」

 

「それを聞いて早くも帰りたくなってきたんだが……」

 

「まあそう言ってやるな。わざわざこっそり会いたいなんて可愛いもんじゃないか」

 

親戚の子供を見守る叔父さんのような態度の葛城。

 

「本気で言っているのであれば、生徒会でやっていけるだけの度量は身についていると思うぞ」

 

「綾小路も世辞がうまいな。俺はまだまだだ。そのぐらい自分でもわかっている」

 

葛城は生徒会をどんなところだと思っているんだ。

一緒に坂柳が乗ってこなければいつでも歓迎するのだが……。

 

「とにかく坂柳はこの奥の教室だ。終わったら声をかけてくれ」

 

「相変わらず大変だな。お互い無事ならまた今度動画の打ち合わせをさせてくれ」

 

無言で頷く葛城に見送られ、坂柳の待つ教室に入る。

 

「こんにちは、綾小路くん」

 

「ああ」

 

「今回のテスト結果、綾小路くんのクラスはとても好成績だったようですね。これもホワイトルームで身につけられたノウハウか何かなのでしょうか?」

 

「用がないなら帰るぞ」

 

「ふふっ、つれないんですから。世間話でもと思ったのですが、本題に入らせていただきますね」

 

それまでの和やかな雰囲気が一変し、にこりと笑う坂柳からは殺気に似た何かが漂い始める。

 

「いけませんね、どうも気持ちを抑えきれなくなっているようです。そう、本題です。綾小路くん、次の特別試験――1年の締めくくりとなる舞台、私たちの勝負の場として相応しいと思いませんか?」

 

「思わないな。オレは特に何かをするつもりもない」

 

「それは残念です。ぜひ綾小路くんと雌雄を決したかったのですが……」

 

話の中身は案の定な内容だったが、やけにあっさり引き下がるな。

 

「話は変わりますが、動画チャンネルを開設なさると伺いました。実は私も興味がありまして、投稿すれば再生数が伸びに伸びる動画を提供する準備があります」

 

情報源は葛城あたりだろう。

出演する手前、坂柳に許可を取るのは当然とも言える。

 

「それと引き換えに勝負しろと?」

 

「まさかまさか。無償でお渡しいたします。私のお友だちが撮ってくださった、とても愉快な動画なんですよ。まずは再生数が稼げるかご自身の目でご覧になってください」

 

そう言って携帯の画面をこちらに見せてくる。

かなり自信があるようだが、一体どんな動画を用意してきたのか。

 

映し出されたのは公園。少し先にいるのは、男女2人と……子犬だな。

 

『ポチ、お手だ』

『わんっ』

『はぅうっ』

 

子犬が男の指示の元、同級生と思われる女子の手を舐めまわしている。冷汗が出てきた。

 

「こんなものもございますよ」

 

坂柳はオレの反応を楽しむかのように次の動画を見せてくる。

 

再び公園。またしても男女2人と子犬が映っているが、先ほどの女子ではなく、代わりに女性が映っている。

 

『綾小路、ポチが正しいお手を覚えるまで特訓に付き合ってもら――』

『ポチ、お手だ』

『わうん』

『んっ……どうやら反省が足りないようだな』

『ポチ、お手だ』

『わうん』

『んんっ!』

 

こっちの動画も、子犬が男の指示の元、女性の手を舐めまわしているな。

 

なるほど。外村は再生数を劇的に上げる方法は程よいエロスだと熱弁していた。

それに照らし合わせれば、間違いなく再生数は稼げそうだ。

 

「気に入っていただけたでしょうか?実は最近気持ちが昂っておりまして、この昂りを沈めなければ、綾小路くんより先に、この動画を誤って動画サイトにアップしてしまうかもしれませんね」

 

「ちなみにバックアップは?」

 

「大量にございますよ。ああ、これをあなたのお父様が見たらどう思うでしょう。最高傑作がただの変態に成り下がる前に、何が何でも連れ戻しに来られるのではないでしょうか。私の父も、この動画を突きつけられたら流石に庇い立て出来ないでしょう」

 

非常に楽しそうな坂柳。いつか一之瀬が言っていた噂の出所も判明したな。

周囲に気を付けていたつもりだったが、誰がこんな動画を撮影したのか。

Aクラスにはまだオレの把握しきれていない戦力があるようだ。

まったく侮れない相手と言わざるを――

 

「それでこの動画いかがでしたか?」

 

「わかった。次の特別試験で勝負しよう」

 

「それでこそ綾小路くんです」

 

坂柳は現実逃避すらさせてくれない。

こんな動画を撮られるとは、ポチに会えると少し油断しすぎたな。

 

「勝負方法は試験の内容がわかってからでいいか?」

 

「もちろんです。ただし、条件を付けさせてください」

 

「条件?」

 

「難しいものではありません。綾小路くんが真剣に勝負してくださること、そして引き分けや不戦勝など明確な勝敗がつかなかった場合は、次の試験に持ち越し続けること、以上です」

 

「適当に流すな、ということか」

 

「はい。それらが守られた勝負をしてくだされば、勝敗に関係なくこの動画はバックアップごと削除することをお約束いたします」

 

「決まりだな」

 

こうして次の試験で坂柳との勝負が決まった。

櫛田との約束もあるため、勝負内容は工夫する必要がありそうだ。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

だが、次の日、想定外の出来事が起きる。

 

朝のホームルームが始まるや否や、茶柱先生が険しい様子で教室に入ってきて告げたのは、追加の特別試験の実施だった。

 

「例年と比べ、今年は退学者が出ていない。学校はその『特別措置』として追加の特別試験を今日より実施する。それをクリアしたものだけが8日の特別試験へ進むことができる」

 

生徒たちからは非難の声が出るが、学校側の決定を覆すことなどできるわけがない。

茶柱先生自身も納得しているわけではないことは、その様子からも伺える。

それだけイレギュラーな出来事なのだろう。生徒会にある過去のデータにもこの時期に1年生が特別試験を2つ取り組んだ事例はなかった。

 

 

「特別試験の内容は極めてシンプル。そして退学率もクラス別に3%未満と髙いものとは言えない」

 

妙な言い回しから察することは多い。

退学率、具体的な3%という数字、高いものとは言えないという表現。

 

恐らくこの試験では……。

 

「お前たちに取り組んでもらう特別試験は――『クラス内投票』だ」

 

茶柱先生からルールの説明が始まる。

 

今日から4日間でクラスメイトに評価をつけて、賞賛に値するもの、批判に値するものを3名ずつ選出し、土曜日の試験当日に投票する、というもの。

 

また、クラス内だけでなく1名だけ他クラスの生徒を選び、賞賛票を入れなくてはいけない。

 

投票結果で、賞賛票1位の生徒には新制度のプロテクトポイントという1度だけ退学を無効にできる特典が与えられる。

 

批判票1位の生徒は『退学』となる。

 

同数であれば決選投票、無記名、同一人物への複数回記入禁止などの細かいルールも定められており、必ず一人退学者を出すということを覆すことはできそうにない。

 

まるで退学大好き櫛田さんのために作られたような試験だ。

まさかとは思うが、学校の運営人も手中に収めたとか……。

あの校長であれば櫛田なら籠絡できそうなだけに、ないとは言い切れない。

背中しか見えないが、平田を始め多くの生徒が動揺している中、表では周囲と同調しているものの、心の中では退学チャンス到来とばかりに小躍りしている様子が伝わってくる。

 

しかし、この試験はオレにとっても都合が良いな。

少し前から考えていたことを実行するには丁度いい機会だ。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「遅くに悪いな、一之瀬」

 

「それで、話って何かな。綾小路くん」

 

とんでもない特別試験が発表された日の夜、綾小路くんから連絡が来た。

 

時刻は23時過ぎ。綾小路くんのお部屋に招待されている。

 

そっとココアを差し出してくれた綾小路くん。

温かくて甘い。

 

まさか退学がかかったこの場面で、万が一のための思い出作りに……なんてことはないだろう。

普通に考えて綾小路くんが退学になるはずがない。というより私がさせない。

すでにBクラスの賞賛票は全部綾小路くんに投票することでみんなにも納得してもらってる。

 

「今回の試験、Bクラスはどうするのかと思ってな」

 

「……私たちのクラスは退学者を絶対に出すつもりはないよ」

 

「つまり2000万ポイントを使った救済を考えているんだな」

 

「……さすが綾小路くんだね、全部お見通しだよね」

 

「ポイントは足りるのか」

 

「実は、クラス分のジム代とか席替えとか色々使っちゃったこともあって、あと200万ポイントぐらい足りなくて……」

 

正直に伝えると綾小路くんは携帯を操作し始める。

 

「いま、振り込んでおいた」

 

「えっ!?」

 

確認するとポイントが2000万ポイントに到達している。

これで退学を防げる、そう実感した途端、身体から力が抜けていった。

 

確かにこんな大金を貸してくれるのは、この学校じゃ綾小路くんか南雲先輩ぐらいだと思ってたけど、あまりにあっさりしすぎてない?

ポイントを貸す代わりにオレと交際しろ、とか言っていいんだよ?

 

「その代わりと言ってはなんだが……」

 

急に真剣な雰囲気になる綾小路くん。

え!?ホントに交際要求してくれるの?

 

はい、うん、わかった、よろしくね……何が返事として一番かな、って落ち着いて私。

心の中で深呼吸をする。

 

「その2000万ポイントをオレにくれないか?」

 

「へ?」

 

理解が追いつかない言葉に、間の抜けた声が出てしまう。

 

「もしそうしてくれたなら、そのポイントを使ってオレは一之瀬のクラスに編入したいと考えている」

 

プレゼントは綾小路くん自身でした。なんて考える余裕もない。

突然の提案。まったく想定していなかったこと。

 

 

 

この提案への返事が私の……ううん、この学校の命運を決めるターニングポイントだったなんて、この時の私は知る由もなかったんだ。

 

 






本日7月20日は一之瀬さんの誕生日。
こんな時に限って7:20の投稿に間に合わず無念です……。

そして誕生日なのに、作中では他の人が祝われてたり、クラスメイトか綾小路くんかの究極の2択を強いられたり、散々なことに……。悪意はありません←
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。