ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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ミーティング

東京都内のとある施設のミーティングルーム。

 

高度育成高等学校の理事長代理――月城は先ほど更新された一年生の特別試験経過報告に目を通す。

 

「彼に付与されたプロテクトポイントを剥奪するためにも、ここはひとつ試験に介入させてもらいましょう。あの2人は何やら勝負の約束をしていましたからね、司令塔になったところを上手く利用……あぁ、司令塔になってないですね。まあそれはそうでしょう。彼が進んで退学のリスクのある司令塔になるはずがない。今回は見送りますか、せっかくの出番を奪ってしまってはアナタも面目が立たないでしょうしね」

 

綾小路清隆を退学させるために送り込まれる予定の刺客。

ホワイトルームで綾小路清隆の次の世代、5期生のひとり。

ターゲットの退学は秘密裏に行わなければならない。この学校の後ろにいる政治家は、月城の雇用主と対立関係にある。やり方を間違えれば敵勢力から攻め込まれる口実を与えることになる。

 

よってあくまで表向きは学校のルールのもと綾小路清隆を退学へ陥れホワイトルームに連れ戻す必要がある。

そこで新一年生の中に刺客を紛れ込ませ実行役とし、理事長代理としてサポートしていく方針となった。

 

「このようにターゲットである綾小路清隆は、ホワイトルームにいた頃とは行動パターンが多少変化しています。特に顕著なのが、女性関係のだらしなさでしょう」

 

月城が入手したこの一年の綾小路のデータ。

理事長代理の権限を利用して、一介の教師では閲覧もできない情報や映像まで事細かに用意してある。

 

目を通すだけでも嫌気がさすような膨大な情報量だったが、刺客に選ばれた少女は事もなげに見る見るうちに読み終えた。

ホワイトルームの最高傑作は綾小路清隆で間違いない。

だが、いつまでもそうであるとは限らない。

代を重ねるごとにホワイトルーム生の実力がより洗練されていることは事実だった。

 

「そこであの方からの基本方針をお伝えします」

 

誰よりも綾小路清隆に執着する男は、1年間のデータを確認した上でひとつの疑問を抱き、仮説を立てた。

 

「彼は容姿、器量、その他諸々、申し分のないスペックを持った女子生徒たちに囲まれ、はたから見ても親密な関係を築いているにも関わらず、いまだに誰とも交際していません。なぜだかわかりますか?」

 

投げかけに対して、刺客の少女は首を横に振る。

 

ホワイトルームのプログラムに恋愛に関する項目はない。だからこそ綾小路清隆はそれに興味があるのかもしれないし、学んでこなかったためうまく対応できていないのかもしれない。

 

それに関しては少女も同様だった。

だが、それも刺客に選ばれる前までの話。

 

「あの方の仮説はこうです」

 

月城は少女の目を見る。

 

「清隆の好みのタイプがいなかったのだ、と」

 

「……」

 

「何か?」

 

少女の一瞬揺れた瞳を月城は見逃さない。

 

「資料によれば、対象はクラスメイトから好みのタイプを尋ねられた際に『元気系』と答えています。その手の女性は周囲にいたのでは?」

 

少女からの指摘に月城は面白そうに微笑む。

 

「その通りです。そちらの発言についてはその場しのぎの嘘という見方が有力ですが、別口で手立ても用意してありますので心配なく」

 

「では私への指令というのは……」

 

「ご想像の通り、彼の周囲にいないタイプの女性を演じ、彼の気を引くこと。有り体に言えばハニートラップですね」

 

馬鹿げた策ではあるが、あながち間違いとも言い切れないと少女は考える。

資料によれば少なからず対象が異性関係に興味を持っていることは明白で、同じホワイトルーム生としてそれ自体は理解できなくもない。

 

しかし、そんな策であの綾小路清隆を退学にできるかと問われたら今度も首を横に振るだろう。

 

上の考えていることは理解に苦しむ。

だが、そもそも理解する必要はないのだ。命じられたことを命じられたままにこなすだけ。

彼女たちホワイトルーム生にとって、教官たちの期待を裏切らず成果を出し続けることだけがあの場所で生き残る唯一の手段なのだから。

 

――本来はそれで済む話。

ただ、少女はこれをチャンスと捉えていた。

 

『綾小路清隆を超えてみせろ』

『綾小路清隆ならもっと上手くやる』

 

ホワイトルームの同期の中でいくら好成績を出しても、教官たちからの言葉はいつも同じ。

 

どんなに努力しても到達できないその存在は、一部では崇拝の対象に、一部では憎悪の対象にといった具合に、何かしらの強い影響をホワイトルーム生に与えていた。

 

それはこの少女も例外ではない。

 

思わぬ形で彼と対峙する機会を得ることができた少女は、いつぶりだろうか、高揚する感情を押し殺しながら、月城の話す計画に耳を傾けた。

 

用意された試験では、彼のスコアに誰一人勝つことができない。

なら、自由な学校生活であれば――。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「勝つ自信がある、と思う特技をそれぞれ考えて来て欲しいの。そこから種目を検討していくわ」

 

放課後開かれた特別試験への対策会議。

堀北が種目決めの方針をクラスメイトに伝え、宿題とし解散となる。

 

「あなたにもしっかり働いてもらうわよ、綾小路くん」

 

生徒会に向かおうとしたところで堀北に捕まった。

 

「それについてだが、話しておきたいことがある」

 

「何?」

 

「今回オレの運用は対坂柳で考えておいて欲しい」

 

「どういうことかしら」

 

「十中八九坂柳は1対1の種目に参加する。そこにオレを当ててくれ」

 

「殊勝な心がけね、敵の大将を自ら討ち取りたい、だなんて。確かに坂柳さんに対抗できるのはあなたぐらいでしょうけど、彼女との勝負は捨てるという選択もあるわ」

 

「Aクラスは良くも悪くも坂柳中心に機能している。1対1での勝利はこの試験だけでなく来年度以降の士気にも関わってくるはず。長い目で見ても悪くない話だろ?」

 

「綾小路くんが力説する時は大抵裏がある時なのよね……。逆にあなたが負けた場合はAクラスの流れになる、やるからにはもちろん勝利を約束してくれるのかしら」

 

やたら疑り深い堀北。

勝負を前に慎重な姿勢は悪くはないのだが、今回は不都合。

となると用意しておいた堀北に効く一言の出番だな。

 

「学に誓ってもいい」

 

「そこまでの覚悟を!?いいわ、その方向で考えておく」

 

「助かる」

 

「ただし条件があるわ。綾小路くんが出場しそうで、かつ相手も練習すれば勝てる可能性がある、と思える種目をひとつ提出して欲しいの。できれば複数人参加するものがいいわね」

 

「ブラフに使うってことか」

 

「ええ。Aクラスもあなたの出る競技はマークしてくるはず。1人では敵わなくても協力すれば倒せると判断すれば、練習に時間を割くはずだわ」

 

それで当日の5種目には選ばないことでAクラスに無駄な時間を使わせる作戦か。坂柳は、オレが向こうの用意する種目で戦うことを把握している以上、効果は薄いかもしれないが……。いずれにせよ、こちらの無理を通してもらう以上、断ることはできないな。

 

「わかった。それぐらいの協力はさせてもらう」

 

「交渉成立ね」

 

Aクラスの最大戦力を攻略する糸口を掴んで安心したのか、オレが試験に協力的だったことに喜んだのか、ホッとした顔を見せる堀北。

常にトゲトゲしかった1学期とは大違いだな。

 

「それで参考までに考えを聞かせて欲しいのだけど、この試験綾小路くんはどう見る?」

 

今の堀北ならオレのアドバイスも素直に聞き入れ、そこから何かオレの想像を超えた策を考え出すかもしれない。

 

「この試験で注目すべきは、この1年間の集大成というところにある」

 

「試験を通して見えてきたクラスメイトの特性を活かせってこと?」

 

「もちろんその側面もあるが……」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「……これまでの試験で出来たことはできる可能性が高いと考えています」

 

「ほう。詳しく聞かせろよ、ひより」

 

放課後の教室、人払いを済ませ、龍園くんへ特別試験に向けた作戦の相談をしています。

 

「一見すると今回の試験は自分たちで種目を決めるため、学校が抜け道や裏のルールを用意しているようには見えません」

 

比較的何でもありだった無人島試験、優待者の法則が決まっていた干支試験、不足分の点数をポイントで購入できたペーパーシャッフルなど、これまでの試験は、説明されたルール外にも攻略方法が存在しました。

 

「ですが、どのクラスにも平等に勝つチャンスが用意されている、それがこの学校の方針のように思えます」

 

まるで生徒がそれに気づけるかどうかを試すかのように。

 

「クク、面白い仮説ではあるが、今回の試験でそれをどう活かせる?その仮説が真だとしても、そのチャンスはBクラスの連中も使えないとおかしいことになるぜ」

 

「その心配はございません。注目したいのは『ルールの裏の法則』と『ポイントで購入できないものはない』という点です」

 

「なるほどな。Bクラスの連中はゴミ処理もできず救済措置を使ったことで財力に乏しい」

 

「逆にこちらには龍園くんが獲得したポイントがあります。その優位性を利用して、購入して欲しいものが2つあるのですが……」

 

「俺に身銭を切れと?」

 

「もちろん、タダでとは言いません。龍園くんにとって十分な見返りを用意いたします」

 

そうして龍園くんに具体的なこれからの方針をお伝えします。

あとは彼が頷いてくれれば、作戦を決行できます。

 

「ハッ、ひよりにしちゃあ大胆な策だな」

 

「普通に挑んでいては敵いませんので。引き受けていただけますか」

 

龍園くんは少し考える素振りを見せたのち、ニヤリと笑い口を開きました。

 

「そうだな、俺の答えは――」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「私の答えは決まってるよ。みんなで協力して勝利する、そのために種目のメインは学力テスト系で攻めようと思う」

 

「もちろん一之瀬の考えには賛成だけどさ、俺、サッカーならあいつらに絶対負けないぜ?」

 

Bクラスみんなでの作戦会議。

方針を説明したところで、柴田くんが元気よく提案してくれる。

 

「うん、私もそれは疑ってないよ。ただ相手はあのDクラスだから、どんなラフプレーをしてくるかわからないよね。退場覚悟で柴田くんを潰しにくるかもしれない。できるだけ接触しない種目がいいと思うんだ」

 

「それに加えて、学力は一朝一夕で向上するものじゃない。前回の学年末テストの平均から見ても、Bクラスが学力テストで負ける可能性は低い」

 

私の考えを神崎くんが補足してくれた。

 

「なるほどなぁ」

 

「もちろん、向こうのクラスにも成績が良い生徒はいるだろうけど、そこは参加人数を多めに設定して平均点での勝負にすれば問題ないと思う。これまでみんなで頑張ってきた私たちらしい戦い方で勝ちに行こう!」

 

「おうっ!」

 

他クラスのテスト結果は平均点しか開示されないから詳細はわからないけど、これまでの交流で見えている情報を踏まえると、どこも一部の優秀な生徒が平均点を底上げしている状態。対して私たちのクラスは、学業もみんなで支えあって真剣に取り組んできたから一人一人の点数が高い。

 

「それに柴田くんにはどちらかというと向こうの種目の対策として頑張ってもらうことになると思う」

 

「ああ!なんでも言ってくれよな」

 

おそらくだけど、学力では敵わないとみたDクラスが取る戦法は限られてくる。

 

陸上系なら柴田くんに、格闘系の種目が入ってくるようなら、経験者の神崎くんに身体を張ってもらう。そう経験者だからね、他意はないんだよ、神崎くん。

 

「どうしたんだ一之瀬、ニコニコしながらこっちを見て」

 

「ううん、みんなの得意不得意はしっかりわかってるから安心してね!って思ってただけだよ」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「さて、みなさんの得意不得意は把握していますので安心して任せて頂ければと思いますが、もしどうしても推薦したい種目がある方は個別に私までお知らせください。高い勝率が見込めそうなものは採用いたしますので」

 

私が全て決めてしまってもAクラスのみなさんは反対しないでしょう。ですが、何事にも建前は必要です。

 

「坂柳、俺からも司令塔として一言いいか?」

 

「ええ、もちろんです」

 

わざわざ挙手して許可を得てから、葛城くんがクラスメイトと向かい合います。

 

「相手はあのCクラスだ。体育祭では心強い味方だったが今回は強敵として立ちはだかる。綾小路はもちろんのこと、高円寺をはじめAクラスに匹敵する力を持った生徒も多々いる。油断ならない相手だが、俺たちはAクラス。ここまで首位を守り続けてきた実力は紛れもない本物だ。揺るぎない自信を持って各々試験へ臨んで欲しい。俺たちは必ず勝つ」

 

一言という量ではありませんでしたが、クラスメイトの中には葛城くんのそんな熱い部分を慕う方々もいるようで、士気は向上しているようです。

 

元より私は綾小路くんとの勝負に全ての力を注ぎたいと思っていましたので、試験全体のことは葛城くんにお任せしても良いかもしれません。

 

あとは綾小路くんとの勝負が実現するように準備をするだけ。

 

あぁ、楽しみでなりません。

この時をどれだけ夢見たことか。

 

彼との一騎討ち。必ず勝ってみせます。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「これで勝ったつもりかよ、綾小路」

 

生徒会室に入るなり、ご機嫌斜めな様子の南雲が吐き捨てるように言った。

 

「今日は生徒会にいらっしゃったんですね」

 

「誰のせいだ」

 

「さぁ?その誰かもきっと善意だったと思いますよ」

 

「あれが善意だったら相当クレイジーな野郎だぜ、そいつは」

 

「そうですか?似合ってますし、憧れの堀北先輩に近づけたんじゃないですか?」

 

「ったく減らねえ口だな」

 

「お疲れ様でーす!」

 

まだまだ言いたいことがありそうな様子の南雲だったが、一之瀬がいつも以上に元気よく入室してきたことで中断された。

 

「あ、綾小路くん、な、なんだか久しぶり、だね」

 

「そうかもしれないな」

 

「えっと、色々話したいことが……って、あ、えっ!?」

 

オレから視線を逸らした先にいた南雲の姿を見た一之瀬が一瞬固まる。

 

「えーと、南雲会長、その、イメチェンですか?それとも今週のラッキーアイテムをまた信じちゃった系ですか?」

 

一之瀬も、触れて良いのかどうかわからないが、スルーすることもできなかった南雲の変貌。

 

今の南雲はシャツをズボンに入れ、制服のボタンをちゃんと止め、ネクタイをきちんと締めており、アイデンティティの金髪は黒髪になっていた。

一言で表現すれば、堀北学のような格好になっていた。

 

「聞いてくれるか、帆波。昨日発表された2年の特別試験のルール。学年末らしくハードで過酷で退学者が何人も出そうな試験内容だったが、俺にとっては取るに足らないもんさ。だが、ルールの最後にとってつけたような余計な項目があってな」

 

「それとその格好が関係してるんですか?」

 

「あぁ。『品行方正な最上級生』とか書かれたそのルールは、試験内容とは別に、派手な髪型や染色、服装の乱れなどが見受けられる生徒へのペナルティを与えるものだった」

 

「なるほど?」

 

状況がよく飲み込めていない一之瀬。

ペナルティぐらいで南雲が大人しく従うとは思えなかったのだろう。

 

「無視してやっても良かったんだが、俺を慕う連中を心配させるのも忍びないからな。やむなく昨日美容院に行ってこんなんになったわけだ」

 

そんな一之瀬の思考を読んだのか、あくまで周りのため、と主張する南雲。

だが、当然そんなことはない。実際は無視できないペナルティだったからだ。

 

このルールとペナルティは、この手の攻撃が南雲にどれほど効果があるか検証を兼ねてオレが考えたもの。

 

ペナルティの内容は

試験までに改善が見られなかった生徒を対象に

 

・この特別試験の参加資格の剥奪

・プライベートポイント全額没収

※ここでの全額とはルール発表時の所持ポイントととし、その後試験までに増減に関係なくその額を没収するものとする

 

ルールの部分は南雲が違反対象になる内容なら何でも良かったが、学校へ意見を通しやすくするために、最上級生に進学するにあたり今一度正しい学生像を示し、乱れた風紀を正し、上級生として下級生の模範となるようにするためとそれらしい理由をつけておいた。

少し強引なやり方ではあったが、これぐらいであれば学校側は採用するということもわかった。

 

「でも安心しろよ、帆波。髪は黒くなっちまったが、俺の輝きは微塵も薄れちゃいないからサ」

 

「そんなことは全く心配してないので大丈夫です」

 

「だよな、試験が終わったら即戻すつもりだが、見た目だけが俺の魅力ってわけじゃない」

 

「そうですね。南雲会長は何にも変わりませんよ。0から0を引いても0ですから

 

「ありがとよ、帆波。元気が出てきたぜ」

 

南雲自身ではなく、ポイントへの攻撃。

大量のポイントを保有し、この学校内では無敵に思える南雲の弱点。

一体何ポイント持っているかは不明だが、今回のことで失えば取り返しがつかない額ということはわかった。

 

南雲の支配は、純粋に南雲に従っている者よりも、弱みを握られた挙句、ポイントを押収され反抗できなくなっている者の方が多い。

そのポイントがなくなってしまえば、従う理由もなくなり、逆に責める理由ができる。

他クラス総出のクーデターが起きても不思議ではない。

 

南雲の強気な姿勢は自身が安全圏にいることに由来していると分析している。

こちらにも打つ手があることを示したことで、少しは大人しくなってくれるといいのだが……。

このルールを提出した際は実験と牽制とちょっとした遊び心のつもりだったが、月城の存在がわかった以上、来年度南雲の相手もしている暇はない。

 

「この話はここまでだ。昨日遅れた分も卒業式関連の仕事は溜まっている。盛大に送りだしたいからな、しっかり働いてもらうぜ、綾小路」

 

「確かに卒業式の準備はしたいですね」

 

そもそも卒業式が通常どんなことをする式か知らないが、そういったものを体験できる分には歓迎したい。

その後は内装や演台花など必要なものの発注確認や進行の話など事務作業を中心に準備を進めていく。

 

「各々特別試験の対策も必要な時期だ。南雲、今日はこの辺りで切り上げないか」

 

「必死だな桐山。勝てない戦いに時間を割く方が勿体ないと思うぜ」

 

「それを決めるのはお前じゃないが、油断してくれるなら結構だ」

 

Aクラスへ返り咲きたい桐山だが、堀北妹よろしく、学の卒業へ向けて一つでも結果を出したいという気持ちもあるのかもしれない。

 

「ま、準備はこの調子なら問題なさそうだしな。今日は解散にしてやるよ。桐山が試験で楽しませてくれるってんならちょっとは期待しとくぜ」

 

見た目は真面目な感じになった南雲だが、本人の主張通り中身は全く変わらなさそうだ。

 

「ね、綾小路くん!この後、時間あるかな?よければ――」

 

「悪いな一之瀬。これから人と会う約束がある」

 

「あ、そうなんだ。……忙しいときにゴメンね」

 

俯く一之瀬を背に生徒会室を出る。

 

待ち合わせ相手にこれから向かう旨を連絡すると、ケヤキモールのカフェで待っていると返事が来た。

 

これから会う相手と話す内容は非常に重要な話。

本番に間に合わせるためには今日接触しなければならない。

 

「あ、こっちです、王子!」

 

待ち合わせの相手、諸藤リカがカフェの奥の席で手を振っている。

周りに人もいない、密談をするには適した場所を押さえてくれたようだ。

 

「待たせたな」

 

「いえ、お気になさらず。大事な話ですから」

 

そうしてオレたちは今後の話を始めた。

 

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