ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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Bクラス VS Dクラス その② 仲間の意味

私たちBクラスが3勝、ひよりさんのDクラスが1勝の状態で迎えた、特別試験5種目目の空手。

 

大将の神崎くんと副将の龍園くんの試合が始まった。

 

私たちのクラスが格闘技に弱かったことを踏まえると善戦してるんだけど、神崎くんが最後のひとりだから追い込まれている状況には違いない。

 

「神崎くん、お願い……」

 

過程がどんなに素晴らしくても、この学校では勝てなければ生き残れないのが現実で……。

 

神崎くんと龍園くんの攻防はこれまでの試合とは異なる静かな立ち上がりだった。

 

恐らくお互い先を読みあって牽制し合っている状態で迂闊に動けないんだと思う。

 

お互いにフットワークを刻み、拳を出そうとしては引っ込める。

 

じっと見守っていると、先に動いたのは神崎くん。

 

龍園くんの動きに合わせて、ワンツー。

龍園くんは上半身を捻ってそれを避ける。

その避けたところに神崎くんは中段へ回し蹴りを放つ。

龍園くんはそれを片手でいなしながらバックステップで避けたかと思うと、すぐに踏み込み突きで反撃する。

蹴りをいなされ体勢が崩れた神崎くんだったけど、予期していたのか、拳が来る前に大きくな横ステップで避けながら再び構えを取る。

 

一瞬の攻防だったけれど、これまでの試合とは明らかにレベルが違うことが素人目にもわかった。

 

そんな攻防が何度も繰り返されていく。

 

でも、お互いに決定打には至らず、なかなかポイントが入らない。

 

先に一撃を入れた方がこの勝負に勝つ、生死を賭けた決闘のような緊張感が漂っていた。

 

「そこまでっ」呼吸を忘れてしまうぐらい集中して見守っていたら審判の先生から3分経過したことが告げられた。

 

同点の場合は先取点をとっていた方の勝ちだけど、0ポイントの場合は、本来は審査員による審議で決着。

ただ今回は審判が体育の先生1人しかいないため、勝負がつくまで再戦することになる。

 

「大体お前の実力は把握できたぜ、神崎」

「それはこっちのセリフだ。次の勝負でケリをつけさせてもらう」

 

たった3分とは言っても、気の抜けない集中した攻防を繰り広げた2人は少し息が上がっているように見えた。

 

それでもお互いに弱みは見せず闘志を燃やしている。

 

だからこそ感じる違和感。

 

柴田くんとの試合からだけど、龍園くんがあまりにも真っ当に試合をしている。

ううん、本来それが正しくて、おかしなことじゃないはずなんだけど、だからおかしいっていう不思議な状況。

 

ここまでの龍園くんは、いつものように口は悪いけど、試合で反則技を使っているようには見えない。

 

……椎名さんにリーダーを譲っている間に心を入れ替えたとか?

 

いや、それは希望的観測ですらない。

 

一体何を企んでいるの……。

 

神崎くんならその違和感にも気づいていると思うし、警戒もしていると思うけど……。

 

「はじめ!」答えは出ないまま、2人の試合が続いていく。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

龍園との打ち合いが幾度となく行われては、互いに捌き切る展開が繰り返される。

 

ここまで龍園が姑息な手を使ってこないことは奇妙ではあったが、そうでなくとも龍園は十分厄介な相手、一筋縄では倒せない。

 

柴田との試合、さっきの試合で分析した情報を元に、龍園の手を読んで仕掛けるが、なかなか防御を崩せないでいる。

 

相手もそれは同じようだが、こちらの動きが徐々に捉えられている感覚がある。

 

つまり……このままでいいということ。

 

『経験者の神崎には別メニューも用意してある』

 

すでにボロボロではあったが綾小路からの提案を喜んで受け入れた。仲間のために強くなれるのならなんだって歓迎だ。

 

『これからの実践で俺は神崎の動きを再現する。それをどう活かすかは神崎次第だ』

 

驚くほどに忠実に俺の動きを真似てみせた綾小路。

 

世の中には俺では足元にも及ばない天才はいる。

幸か不幸かそんな連中が何人か身近にいて、それを見て育ってきた。

 

その経験を踏まえて言えば、綾小路もそっち側の人間だろう。

アイツのクラスの躍進も、この学校の生徒会で副会長を務めているのも納得しかない。

 

「神崎、見え見えだぜ!」

 

俺の突きへカウンターを合わせてくる龍園。

 

「そうだな、俺でもそうする」

 

綾小路との対戦で俺は俺自身のことをよく理解した。

 

どこが弱点なのか、どうすれば倒せるのか。

 

なら、そこをついてきた相手を倒す方法を準備しておけばいい。

 

俺は突きをフェイントにして、カウンターのため前に出てきた龍園の上段に前足で裏回し蹴りを打つ。

 

「一本!」

 

この種目初の一本で3ポイントを獲得した。

 

「神崎いいぞー!!」

 

柴田たちからの大きな歓声が届く。

 

「今のは少し驚いたぜ、神崎」

 

「この程度で驚いてもらっては困る」

 

「クク、悪くねえ」

 

このポイントを守り切る、なんて考えでは絡めとられる。

 

龍園が反則行為をするなら、追い詰められたこのタイミングをおいて他にない。

 

8点差をつけるつもりで攻め続けることで、龍園にプレッシャーをかけていく。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「ここで再戦権を使用させてもらいます」

 

神崎くんの一本から攻防がさらに激化し、お互いに有効を2本ずつ取ったんだけど、そこで3分経過。

 

最初の3ポイントの差で神崎くんが龍園くんに勝利した。

 

神崎くんが、喜び神崎くんへ飛びつこうとした柴田くんを手で制したのと同タイミングで諸藤さんが真嶋先生へ司令塔の介入を申告した。

 

「一之瀬さん、すみません、少しタイミングを間違えましたね。もう少し様子を見ていれば、いいものをみれたかもしれないのに」

 

「いいもの?」

 

「ええ。一之瀬さんの想像通りですよ」

 

何のことか全く見当がつかなかったけれど、少しぞっとするような不敵な笑みで諸藤さんはモニターを見つめていた。

 

まさか、龍園くんが何かを仕掛けようとしていた?

 

……たとえそれが何であろうとここで動揺や戸惑いを見せては弱みになる。

 

強気に返答しておかなきゃ。

 

「ホントだよ。私も期待してたのに残念」

 

「さすが同志。今度ゆっくり意見を交わしたいところですが……」

 

「ん?」

 

「そのためには申し訳ございませんが、やはり私たちのクラスが勝たねばなりませんね」

 

「そうだね」

 

「どんな結果になっても恨みっこなしで、今後のお付き合いをしていただければ」

 

「試験は試験、学校生活は学校生活で別だよ。私はクラス関係なくできるだけみんなと仲良くなりたいと思ってるから」

 

「それを聞いて安心しました」

 

この試験が開始から初めて嬉しそうな表情を見せた諸藤さん。

 

自分たちが勝つことを疑ってないから、そんな表情ができるのだろうか。

 

それともやっぱり私から同情を誘い出すための策だったりするのかな……。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

龍園と神崎の再戦が始まった。

 

教室に設置されたモニターで一喜一憂する龍園の手下たち。

 

龍園が空手でもここまでできる奴だったのは正直驚いた。

 

型を極めた武術より型にはまらない暴力の持ち主。

 

正々堂々よりも卑怯で姑息な手段を好む不良。

 

自分自身がルールだと力で人を支配することをよしとして、周りの声に耳を傾けない暴君。

 

そんな印象しかなかったヤツが、いま神崎を相手に死力を尽くして戦っている。

 

今回の件だって、私情で龍園が暴走して椎名や俺たちに迷惑をかけて、クラスのことなんて考えていないんだと、そう思っていた。

 

なのに――。

 

モニターには、ただクラスに勝利をもたらすために傷つきながらも真剣に戦う龍園の姿が映し出されている。

 

一体なんだってんだ、くそ。

 

悔しくて、認めたくない……だが、あんな姿を見せられたら思わずにはいられない。

 

「……勝てよ、龍園」

 

気づけば周りの仲間に交じってモニター越しにそう呟いていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「再戦権を使用します」

 

迷わず真嶋先生に伝える。

 

神崎くんと龍園くんの3回目の試合は、序盤こそ互角の戦いでポイントを取って取られてをしてたんだけど、次第に龍園くんが押し始めて3分経つ頃には2ポイントのリードで龍園くんが勝利した。

 

龍園くんの戦闘力、その真髄は何度でも立ち上がって相手の弱点を見つけ出し、そこをしつこく突いてくるしぶとさと対応力なのかもしれない。

 

神崎くんもいくつか対策を用意していたみたいで反撃は成功するんだけど、同じ技は2度も通じない。

 

次第に手札を減らされて、対応が追いつかなくなってきている。

 

それでも神崎くんが勝つことを信じて、私は再戦を要求する。

ううん、私だけじゃない。クラスのみんなも同じ気持ちだよ。

 

みんなの応援が届いたかはわからないけど、再戦の通知が審判から告げられると、神崎くんはカメラに向かって強く頷いてくれた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

龍園との再試合が始まる。

 

これで4戦目。

 

お互い再戦権は使用したため、引き分けない限りは最後の勝負。

 

……いや、このまま何もしなければ俺は敗北するだろう。

 

向こうにも疲労は見えるが、一手ごとにこちらが追い詰められていく。

 

ポイントを取られないようにするだけで精一杯だ。

 

悔しいが実戦経験の差が如実に出てきた。

 

本来ならこうなる前に倒してしまうのが理想だったが、龍園はあまりにしぶとい。

 

「武道やってるやつなんざ、これまで五万と潰してきた。本気で勝てると思ってんのか?」

 

「思ってるんじゃない、確信している。俺たちは勝つ」

 

弱音を吹き飛ばすために、覚悟と気合を込めて龍園に向け拳を突き出す。

 

既に龍園には俺の呼吸もリズムも出せる技も完全に掴まれている。

 

対して龍園の底はまだ見えない。

 

だったらいっそのこと、呼吸もリズムも全て捨ててしまえばいい。

 

避けられようが捌かれようが関係ない。

 

何度も何度も間髪入れずに拳に蹴りに打ち込み続ける。

 

「気合だけは認めてやるよ、だがこんな安い連打じゃ当たれって方が難しい」

 

「はあぁぁッー!!」

 

なりふり構わない、後先を度外視した連撃。

 

あと少し、あと少しだ――既に身体は重く、息をするのも辛くなってきたが、攻撃の手は緩めない。

 

龍園は俺の無謀とも思えるラッシュを冷静に捌きつつ、だが反撃することもできず一歩ずつ後退していく。

 

「神崎ー!あと10秒しかねえぞー!!」

 

柴田の叫び声が聞こえてくる。

 

丁度いい。

 

当然だが、こんな連打は長くは続かない。あと何秒持つか……。

 

もちろん龍園もそれはわかっていて、俺の息が切れて深く呼吸をするタイミングでカウンターを打てばいい、そう考えているはずだ。

 

「龍園、知ってるか?」

 

「あ”?」

 

「そこの床は少し軋むんだ」

 

綾小路との特訓で散々使ったこの武道場。マットが敷かれているから見た目ではわからないが、龍園が軸足を置いたその場所は老朽化なのか何なのか、強く踏み込むと若干軋む。

 

普段なら問題ない程度の軋みでも、真剣勝負の最中では明暗を分ける。

俺もよく踏み込んでは集中を乱し、綾小路からの突きを貰ったため、注意する場所として嫌でも覚えてしまった。

 

「チッ」

 

龍園の姿勢がわずかに崩れることはわかっていたため、そこへ全霊を込めた一突きを放った。

 

騒がしかった武道場が、一瞬、時が止まったのかと錯覚するような静寂につつまれる。

 

「有効!」審判の宣言と同時に試合終了の時間となった。

 

「神崎―!!」

 

感極まった柴田が飛びついてくる。

こっちは疲労困憊の状態で少しは遠慮して欲しかったが、不思議と悪い気はしなかった。

 

「ハッ、まさかここまでなりふり構わねえとはな……今回は勝ちを譲ってやるよ。だがな、喜ぶのはまだ早い、だろ?」

 

「あんたらもう勝った気でいんのがムカつくんだけど」

 

龍園の後ろから現れたのは、Dクラスの大将――伊吹澪だった。

 

「あ、わりぃ。まだ残ってたんだったな。神崎、あと一勝だ。ファイトだぜ」

 

「ああ」

 

柴田と龍園が控えに戻っていく。

 

改めて、伊吹と向き合う。

 

龍園クラス、最後の1人はまさかの女子生徒。

 

体育祭で一之瀬と一緒に走っていたこともあり運動能力の高さは把握していたが、それでも男女の力の差はある。この種目であえて女子生徒を選出してくるとは思わなかった。

 

女なら戦いにくいとでも思ったのだろうか。

柴田あたりには有効だったかもしれないが、俺はそんなことでは油断も手加減もしない。

 

龍園との闘いでのダメージや疲労は抜けていないが、それでも女子相手に負ける気はしない。

 

だが、いざ対峙して構えをみると、伊吹が武道経験者であることが伝わってきた。

少なくとも人数合わせや見せかけではないようだ。

 

「伊吹、悪いが俺は女だからと言って手を抜くつもりはない。一人の武道家としてしっかりと相手をさせてもらう」

 

「……っく」

 

「ん?」

 

伊吹が何かつぶやいたが上手く聞き取れない。

 

「はじめ!」

 

試合が始まったと同時に、これまでの人生で、いやきっと今後も味わうことはないだろう、衝撃を受けた。

 

「一本っ!」

 

上半身はそのままで始動の気配を一切感じさせない鮮やかな動きで、上段回し蹴りが飛んできていた。

 

本当に何をされたかわからない程の美しいフォームの蹴りに一歩も動けない。

 

場違いを承知で言うが見惚れてしまう程の蹴りだった。

 

「ムカつく。そんな発言してる時点でアンタは私を下に見てんだよ、マジでムカつく」

 

「……」

 

「ハッ、図星だから言い返せないってわけ?どこまで――」

 

「美しい」

 

「はぁ?」

 

「今の蹴りからは洗練された武を感じた。これほどの動きを身につけるまでにどれほどの研鑽を積んだのか、その努力は想像もできない」

 

「あんた何言ってんの」

 

「だからこそ、俺も全身全霊で応えたいと思う。さっきもそんなつもりはなかったんだが、言われてみると失礼な発言だった、すまない」

 

「……調子狂わせんじゃないわよ、ムカつく」

 

クラスのために、仲間のために勝たなければいけない試合。

 

もちろん、それは忘れていない。宣言通り、今出せる力を全て出し尽くして挑んだ。

 

「技あり!よってこの試合、11対2で伊吹の勝利。よってこの空手の種目はDクラスの勝ちとする」

 

だからなのか、この試合、負けたはずなのに、悔しさよりも充実感の方が勝っていた。

 

「ざまあないっての」

 

どうだ、と言わんばかりの表情でこちらを一瞥して退場しようとする伊吹。

 

「伊吹!今度また手合わせしてもらえないか?」

 

何と表現すればいいかわからない想いが胸に溢れる感じがして思わず伊吹を呼び止めた。

 

「はぁ?わけわかんないんだけど」

 

「お前とならもっと高みを目指せるような気がする。頼む」

 

「弱いヤツに興味ないから」

 

「なら俺はもっと強くなる。そしてお前に挑みに行く」

 

「あ~ウザイ……勝手にすれば」

 

「ああ!」

 

今度こそ去っていく伊吹の背中を見送っているとゆっくりと柴田たちが近づいてくるのがわかる。

 

あれだけの啖呵を切ってこの様だ。どれだけ責められても文句は言えないな。

 

「お疲れ神崎」

 

「すまない……」

 

「何言ってんだよ、いい試合だったぜ、マジで」

 

「龍園だけじゃなくって、伊吹もヤバかったな……あんな隠し玉がいたなんて、しゃーねえよ」

 

「だが、試験が……」

 

この空手で勝利することが俺たちの使命だった。仕方ないで済ませていい問題ではない。

 

もっと勝利を渇望し、敗北を重く受け止める。

仲間想いなのは良いことだが、このクラスに足りないのはそんな向上心なんじゃないか。

 

「1人で背負い込むなよ、神崎。何のための仲間だ、今回一歩届かなかったのは俺らにも責任がある」

 

「だよな、それにまだクラスが敗退したわけじゃない。助け合うのが仲間だろ。残りのクラスメイトも同じ気持ちだ」

 

「……そうか、そうだな」

 

俺は勘違いをしていた。こいつ等だって悔しい気持ちもあるし、勝ちたかったに違いない。

それでも仲間を信じているからこその発言。

仲間で戦うこと、その本当の意味をいま理解した気がした。

 

「馬鹿だな、俺は」

 

「ああ、それに関してはちゃんと言っとかなくちゃな」

 

「そうだぜ、告る相手見つけろって焚きつけたのは俺たちだけどさ、彼氏持ちの女子を口説くのはマズいって」

 

「は?」

 

「さっき伊吹にちょっかいかけてたじゃん」

 

「まさか神崎がMだったとはな~」

 

「金田から略奪かー、うーん、神崎ならできるかもだけど、素直に応援できないなー」

 

「待て、何か誤解が生じている気がする」

 

「でも神崎が本気なら俺たちは味方だぜ!」

 

「俺たちは仲間だもんな!」

 

笑いながらガチっと肩を組んでくる柴田や米津たち。

 

まったく、仲間のありがたさと面倒臭さは両立するんだなと俺もつられて笑う。

 

最終的に敗北はしたが、得たものは大きい試合となった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「尊い……」

 

伊吹さんの勝利がよほど嬉しかったんだと思う。

 

諸藤さんはうっとりとモニターを見ていた。

 

神崎くんたちは負けてしまったけど、その健闘は仲間たちに力をくれたと思う。

 

残り2種目、私ももっと頑張らなくちゃ。

 

「それでは6戦目の種目抽選を行う」

 

モニター画面が切り替わり抽選が始まる。向こうのクラスの残り種目は、ボクシング、棒倒し、しりとり。

 

このどれかが選ばれるはず。

 

だけど綾小路くん特訓メンバーは空手で使い切ってしまったため運動系は分が悪い。

 

向こうも主力メンバーは出場済みとは言え、伊吹さんのような隠し玉がいるかもしれない。

 

6種目目に選ばれたのは――『しりとり』で参加人数13人。

 

これなら対策もしっかりしてきたし、十分勝ち目がある種目だ。

 

くじ運に救われたと思いながら、参加する生徒を決めていく。

 

14人参加だから選択時間も7分と長い。

 

だけど、メンバー選出に時間はかからない。だって――。

 

「あれ……」

 

参加生徒を選ぶ画面を見て、あることに気づく。

 

もしかすると、これが椎名さん達の狙い?

……だとすると、マズいかもしれない。このしりとりで勝たなければ、Bクラスの敗戦の可能性が高くなる。

 

「長考する必要はないのでは?」

 

「……そうだね。でもせっかく時間はあるし、色々考えを整理しておこうかなって」

 

諸藤さんの言う通り、メンバーはすでに決まっている。

しりとりは麻子ちゃんや渡辺くんをはじめとした対策メンバーを残してあった。

 

だからこの時間を使って、みんなには、しりとりの最終チェックをしてもらい、私はこの後の展開をシミュレーションする。

 

3勝2敗、勝っているのは私たちのはずなのに、追い詰められているような不気味な感覚を拭えない。

 

もしひよりさんたちが何らかの方法で潤沢な資金を得ていたと仮定した場合、私の考えが正しければ、このしりとりの負けはBクラスの特別試験敗退に直結する。

 

仮定に仮定を重ねた可能性の話だけど、これなら諸藤さんの余裕も頷ける。

 

「まもなく7分だ、決定されなかった場合はランダムに選出させてもらう」

 

真嶋先生の言葉に我に返って、慌てて決定ボタンを押す。

 

モニターに参加メンバーが映し出された。

 

Dクラスの参加者一覧には椎名さんの名前が表示されている。

 

一体どこからどこまでが椎名さんの筋書き通りなんだろうか……。

 

ニコニコしながらしりとり会場の席に座る椎名さんが、なんだか得体のしれないものに見え始めて仕方がなかった。

 

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