ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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約束のその先に

「会長、一年生の無人島特別試験の結果が出ています。勝ったのは――」

 

「Dクラス」

 

「い、いえ。Bクラスです」

 

「……」

「……」

 

ガタッ。生徒会室の扉が開く。

 

「1年の結果聞きましたか堀北先輩!これで俺の推薦した帆波の方が、先輩の綾小路よりも優秀なことが証明されたっスよね。生徒会に相応しいのは帆波の方っスよ」

 

南雲が勝ち誇ったように笑っていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

試験7日目。

 

「それではここに他クラスのリーダーだと思う者の名前を記入してもらおう。わからない場合は無記名で構わない」

 

茶柱先生からリーダー当ての用紙を渡される平田。迷うことなく、Aクラス、Cクラスの生徒の名前を記入する。

 

「茶柱先生、最後にこれをお願いしたいんですが……さすがにポイントはいらないですよね?」

 

「なんだ綾小路……意外と学生らしいところもあるんだな。いいだろう、このぐらいならサービスしてやる」

 

少し嫌味が混ざっていたが茶柱先生にしては快諾をしてくれた。

 

 

無人島での特別試験、7日間のサバイバルが終了の時を迎えようとしている。

最終日は点呼後に他クラスのリーダー当てを行い、その後は、後片付けをする。

もちろん、スポット殲滅作戦で使用したバックの回収も行った。島中に点在しているので、これが一番面倒な作業だったかもしれない。

 

「もうこいつで寝ることもないんだろうな」とハンモックを外しながらつぶやく。

 

過去のデータをみるに、無人島試験は1学年につき1回だけ。

それはつまりオレにとっては最初で最後の島での生活になることを意味する。

だからこの試験を楽しむことに重きを置いた。日々のキャンプ生活の他にも、釣り、刺身づくり、スイカ割り、星空、キャンプファイヤー(の準備)など、多くの体験をした。

オレは十分楽しむことができただろうか。

いつかこの日のことを思い出すのだろうか。

 

「綾小路、1週間楽しかったな!また機会があったら釣りしようぜ」

 

「ああ。今度は大物を釣ってみたい」

 

「おう。気合十分だな」

 

柴田や渡辺たちが声を掛けてくる。

他クラスとの親睦も深めることができたのもこの試験の大きな成果といえる。

この1週間の生活でBクラスのおおよその戦力は把握できた。

今後の戦略を立てる際に大いに役立つ情報だ。それを含めずともBクラスをパートナーに選んだのは正解だったといえる。

Dクラスだけだと、違う意味でサバイバルな生活になっていたかもしれないからな。

 

『試験結果の集計が完了いたしました。生徒の皆さんはスタート地点の浜辺に集合してください』

 

そんなアナウンスが流れ、生徒たちが移動を始める。

 

「結果はどうなったと思う?」

 

堀北から話しかけられる。

 

「さぁな。Cクラスが敗退したこと以外はさっぱりわからない」

 

「いつの間にかAクラスのリーダー情報まで探っていた人のセリフとは思えないわね」

 

「あれは一之瀬のおかげでゲットできたんだ。ホント、感謝しかないな」

 

「……念のために確認させて。あなたは私たちの味方よね?」

 

「そんな当たり前のこと答えなきゃダメか?」

 

「いいえ、今のは私が悪かったわ。忘れて頂戴。いくらぼっちのあなたでも、少し仲良くされたぐらいでクラスを裏切るわけないものね」

 

何をもって味方とするのか。

クラスポイントを上昇させるという意味ならイエス。

クラスを一番にするという意味ならノー。

もっと他の意味を指しているのであれば、答えるまでもない。

 

砂浜ではクラスごとに集合して、結果発表に備えた。

 

「それでは結果発表を行う。最下位は見ての通り0ポイントのCクラス」

 

真嶋先生が淡々と告げる。

 

「3位は……Aクラス170ポイント。2位はDクラス466ポイント」

 

「どういうことだよ、葛城」

 

「……いったい何が起こっているのだ。どうして、どうしてリーダー情報が漏れた」

 

圧倒的なまでのポイント差に、Aクラスがざわめき始める。

Aクラスの中では、1位もしくは2位の想定だったろうからな。

 

あえて言うなら、葛城はDクラスが0ポイント作戦だと勘違いした時点で詰んでいた。

もし、本当のポイント数を知っていたら、何が何でもリーダー情報を入手するための攻撃に出たはず。守りに入った結果がこれだ。

 

「そして優勝はBクラス516ポイント」

 

Bクラスから大歓声が聞こえる。

それもそのはず、これらのポイントを現在のクラスポイントに合計すれば――来月からはBクラスではなく、Aクラスに昇格する。

さすがBクラス……いや、新Aクラスさん。まさに強敵だな。オレたちなんて足元にも及ばないぞ。

 

ちなみにDクラスもCクラスのクラスポイントを抜いたため、来月からCクラスへ昇格だ。

いまいち盛り上がっていないのは、恐らくその事実に気づいている生徒があまりいないからだろう……。

 

「やったね、帆波ちゃん」「一之瀬のおかげだぜ」「帆波ちゃんと同じクラスでホントによかった」クラスメイトからの賞賛が一之瀬に集まる。

 

「いや、みんなで頑張った成果だよ、もちろんDクラスのみんなも含めて」

 

あくまでも謙虚な姿勢の一之瀬。

ちらっとこちらを見てオレと目が合う。

だが、次の瞬間クラスメイトたちからの胴上げがはじまりそれどころではない状態に。

Bクラスのノリの良さに拍車がかかっている。

あれが、胴上げか……いつかやってみたいな。

宙を舞う一之瀬を見ながらそんなことを思った。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「何が起こりやがった……」

 

船内のモニターで結果発表を聞いていたオレは、この謎の結果の答えを導き出せずにいる。

 

「龍園さん、これどうなってるんすか?」

 

「黙ってろ、石崎」

 

馬鹿共も馬鹿なりに焦っているようだが、構ってる余裕はねえ。

 

Bクラスの結果はまだ納得できる。あのキャンプ地でのやりとりから、一之瀬ならAクラスのリーダー情報を入手できてもおかしくはないと考えていた。

葛城は守ることだけに集中した結果、情報が洩れてることも知らずにのうのうと残り時間を過ごした。……いや、守りに入るように誘導されていたと見るべきか。

 

だが、Dクラスの結果だけはわけがわからない。

奴らのポイントは初日に全て消費されたはず……いくらスポットを獲得しても、Bクラスとシェアしたのなら400を超えることはない。

なら前提が間違っている。

奴らはどうやったか皆目見当がつかないが、初日の点呼でペナルティを受けなかった。

そう考えれば点数の辻褄は合う。何かしらの裏のルールを見つけ実行し、他クラスを騙して見せたわけだ。

 

問題は、これを誰が考え実行したかだ。

そいつは金田たちを嵌めた人物と同一だと考えられる。一之瀬なのか、神崎なのか、もしくはもっと別のだれか。確率は低いがDクラスのクソどもに紛れている可能性も捨てきれない。

 

「クク、面白くなってきやがった。次は必ず潰してやる」

 

このふざけた結果へと導いた奴を探し出して、俺に喧嘩を売ったことを後悔させてやる。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「橋本、お前が他クラスにリーダー情報を売ったんだろ。お前のような奴がいるから、葛城さんは自由に戦えなかったんだ」

 

「いやいや弥彦、それは誤解だ。本当に俺は何にもしてないんだって」

 

客船に戻ってきたAクラスの皆さんの声が聞こえます。

魔女狩りのようなことが起きているようです。

事前に橋本君には、龍園君と組んで葛城くんの妨害をするようにお願いしていましたが、龍園くんが不甲斐なかったですからね、本当に何もしていないのだと思います。

ここはひとつ救いの手を差し伸べてあげなくてはいけないでしょう。

 

「戸塚くん、そのぐらいにしていただけませんか?」

 

「さ、坂柳!?」

 

「今回は明らかに葛城くんの失策です。Bクラス相手に後手に回った結果がこれじゃありませんか。もし葛城くんが意欲的にBクラスのリーダー情報を得ようと行動していればこんなことにはならなっかたんですから」

 

「いや、でも、葛城さんは間違ってない」

 

「弥彦、いいんだ。今回は俺の判断ミスによるところが大きい」

 

「葛城くんは素直ですね。ですが反省すれば許されるものではないですよ。私たちはAクラスから陥落、来月にはBクラスを名乗らなくてはならなくなったのです。これ以上の屈辱はないでしょう」

 

そうだそうだと周りから賛同の声を頂きます。

葛城さんを慕われる方々はさぞがっかりされているでしょうね。

意地を張っているのは戸塚くんぐらいです。

 

「……責任を取れと?」

 

「いえ、私ならもっとうまくやれると申し上げているだけです。近いうちに証明して差し上げますので、皆さんもそれを見て今後の身の振り方を考えていただければ」

 

「行くぞ、弥彦」

 

「は、はい」

 

葛城派ももうすぐ解散でしょう。

綾小路くんとの対決は個人戦がベストですが、もしかしたらクラス対抗という形になるかもしれません。その時に、私の手足となるようクラスメイトの皆さんとは仲良くなっておく必要があります。

待っててくださいね、あなたとの勝負はどんな形になっても最高の状態でできるようにいたしますので。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「よう、葛城。負け犬が顔に出てるぜ」

 

「龍園、貴様こそ負け犬らしく小屋で震えていればいいものを。リーダー情報の1つも持ってこれないとは、よほど散歩は嫌いとみえる」

 

「強がってんじゃねーよ。これでお前は坂柳派に敗れることは決まったようなもんだ」

 

「う、うるさいぞ」

 

先ほどのAクラスのやりとりを物陰で伺い、葛城が出たタイミングで捕まえることにした。雑魚が一緒についてきちまったが気にする必要もない。

 

「だがよ、このまんまじゃ終われないよな」

 

「何が言いたい?」

 

「オレが手を貸してやるよ、見返りはこの契約書の内容の再履行だ」

 

「話にならんな」

 

「ならお前にはわかったのか、今回の試験結果のからくりによ」

 

「からくり?そんなものは関係ない。今回は俺の策を他クラスが上回っただけ。なら、次はもっと優れた策を打ち出し、他クラスを倒すだけだ。龍園、お前のような信用ならんヤツの言葉には2度と耳を貸すつもりはない」

 

「クク、それで勝てると思ってるならおめでたいぜ。ま、そういうことなら精々あがくんだな」

 

「言われずともそのつもりだ」

 

今回の島での契約はこちらが条件を満たせなかったため無効となった。

弱っている葛城なら、次の餌に食いつくと思ったが……こいつはこいつで覚悟を決めた面をしてやがる。こういうやつを落とすのは骨が折れるからな、ここは引くとする。

 

こいつを利用する場面は、まだ先で訪れるだろうからな。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

夕暮れの時間。

オレたちを乗せたクルーズ船は再び出航し、遊覧をはじめていた。

これから6日間かけて学校へと帰港する。

 

約束の場所で、一之瀬は海を見つめながら待っていた。

どこか儚げな横顔を見ると、声を掛けるのが躊躇われる。

 

「一之瀬」

 

「綾小路くん、お疲れ様」

 

一之瀬と試験中交わした約束――試験で一之瀬が感じたことを教えてもらうため、オレたちは待ち合わせをしていた。

 

「ああ、お疲れ。そしてAクラス昇格おめでとう」

 

「うん、ありがとう。綾小路くんも来月からCクラスだね」

 

「そうだな。自分でもうまく行きすぎて信じられない、と思っている」

 

「私もだよ。まさかこんなに早くAクラスになれるなんて思ってもみなかった。……綾小路くんのおかげ、だね」

 

そういう一之瀬の表情は、勝利を噛みしめ、クラス昇格を喜んでいるようには見えなかった。

 

「オレはきっかけを与えたに過ぎない。実際にみんなに声をかけ、行動したのは一之瀬だ」

 

「そう言うんじゃないかなって思ったよ。ダメダメ。綾小路くんはすごい人。何を言われてもその認識は変えないよ」

 

「にゃはっ」と、はにかむ一之瀬はいつもの一之瀬だ。

どうやら、自分の実力というよりオレに助けられて勝ち上がったことに罪悪感のようなものがあるのかもしれない。

 

「一之瀬にそう思ってもらえるのは光栄だけどな」

 

「ねえ、綾小路くん。約束の私の感じたこと、聞いてもらってもいいかな?」

 

何かを決意したかのように真剣な表情の一之瀬。オレは一之瀬の目を見つめて頷いた。

 

「この試験、本当は……綾小路くん一人でも勝てたんじゃない?」

 

何を言い出すかと思えば、面白い推察だ。

 

「どうしてそう思うんだ?」

 

「例えば洞窟に潜入した時。仮に綾小路くんがDクラスのリーダーだったとしたら、混乱に乗じて、先にスポットを占有することもできたはず。そうすればAクラスを拠点から追い出せるよね。次のベースキャンプを見つけるまで点呼ができなくなるAクラスは大ダメージを受けたはずだよ」

 

「だが、オレはリーダーじゃなかった」

 

可能か不可能かは明言しないでおき、事実のみを伝える。

 

「それもどうにでもできたんじゃないかな?最初からリーダーに立候補しても、綾小路くんならクラスの人も納得したと思うよ。もしそうじゃなかったとしても、ルールの裏を突くつもりでいた。リーダーは正当な理由なしに交代できない。でも、先生に預けたプライベートポイントでリーダーの交代権利を買うことは正当な理由になる、と私は考えているんだけど」

 

「結局確認はしなかったが、恐らく可能だな」

 

一之瀬には裏のルールを見せているため、その発想も出てきても不思議ではない。 ただ、リーダー情報の誤認をさせる策を取らなかったため、今回は不要となっただけだしな。

 

「そうするとさ、綾小路くんからしてみるとリーダー情報は盗まれても問題なかったってことになるじゃない?むしろ、わざと盗ませて他クラスの誤答を狙った方が得なぐらい」

 

「でも、今回勝てたのはみんなで協力したからだろ?」

 

「もちろん、それもあるよ。でもね、例えDクラスだけで、しかも綾小路くんだけだったとしても、リーダー情報を得る算段もあったわけだし……3クラスに誤答させて、自分は3クラス分のリーダー情報を当てれば、それだけで他クラスと200ポイントの差がつくよね。余裕で1位を狙えたと思うんだ」

 

「買いかぶりすぎだ。オレはBクラスと共闘したことを後悔していない」

 

「あ、違うの。えっと、何が言いたかったかというと……綾小路くんの……行動理念は何なのかなって。わざわざBクラスを、私を勝たせてくれたから――Aクラスに何が何でも上がりたいわけじゃないのかな、って思ったの」

 

「共闘に裏があるのでは?」と疑っているわけではないようだ。

なぜそこまでしてくれたのか、「友達だから」では納得できないところまできてしまったということ。

 

「そうだな。形式上、クラスに最低限の貢献はしているが、極論オレはクラス順位に興味はない。だから、こうして他クラスである一之瀬の応援もできた」

 

「Aクラスの卒業特典に興味がない、ってことだね。でも、だったら何のためにこの学校に来たの?何かやりたいことがあるの?」

 

以前、堀北兄に似たような言葉を投げかけられたことを思い出す。

今日は質問攻めにあう日だが、これが一番回答が難しい問いだな。

結局、オレ自身、まだ明確な答えを出せないままでいる。

 

「実はそれを探しているところだ。勧められるままこの学校を受験したからな。初めはそれでもいいと思ってたんだが、この学校で過ごすうちに少しずつ気になり始めた。ただ、正直に言えば、やりたいこと探しはかなり苦戦している」

 

素直に伝えてみることにした。一之瀬はどう思うだろうか。

この学校で真剣にAクラスを目指す人間からすれば信じられないだろう。

誤魔化されたと思うかもしれない。

 

「だったらさ……私も手伝うよ!綾小路くんのやりたいこと探し」

 

「いいのか?」

 

「うん。私ばっかり綾小路くんに頼っているのはフェアじゃないからね。役に立つかはわからないけど、第三者の視点が入れば、何か見えてくるかもしれないよ」

 

思ってもみなかった、手伝うという言葉。

確かにこれまで色んな体験をしたが答えが出てこないため、この辺りで別のアプローチで検証してみるのも悪くない。

 

「わかった。そういうことならよろしく頼む」

 

「うん、喜んで」

 

こうして交わされた一之瀬との約束が、今後の学生生活の分岐点となるかもしれない。

そんな予感がした。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「……」

 

「……綾小路くん、調子悪かったんですかね?」

 

「こんな大事な時に風邪を引くのは鈴音ぐらいだ。綾小路なりに考えがあったんだろう」

 

「そうですよね!これから直接聞けばいいですし」

 

そう言って生徒会長とその書記は生徒会室から飛び出した。

 

 




各クラスのポイントについての補足。
ちょっとわかりにくいですが、下記のような感じで考えています。


A 初期ポイント残り270 2クラスからリーダー当てられて‐100  結果→170  
クラスポイント→1,004+170 9月からのクラスポイント→1174

B 初期ポイントの残り260 2クラス分リーダー当て成功+100 
スポット156  
(13か所*1日3ポイント*2日分=78 12*3*2=72  殲滅作戦前 3*2=6)
 
クラスポイント→663+516 9月からのクラスポイント→1179

C 0  

クラスポイント 492

D 240 リーダー当てて+100 スポット156 リタイア-30 466 

クラスポイント→87+466 553


といった感じです。
原作ではBクラスは2日目に食料含め、生活必需品を揃えるのに70ポイント消費したと記述有。そこから共闘で折半したことや、初日に食料探しをできたことなどを踏まえて、かなり節約できた想定です。
Dクラスの方が消費しているのは、こちらから共闘をお願いするにあたり、少しだけ負担を多くしたこと、ちゃんとした個室のシャワーの方がいいというDクラス女子の我がままを通すため、Dクラスが購入したため、ということにしています。

実際はスポットを都合よく8時間おきに更新できるかはかなり怪しいですが……そこはご容赦くださいますと幸いです。
平田君が遠くのスポットをめっちゃ頑張って、近場は白波さんに譲ったんだと思っています。



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