ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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空から奴らがやってきた

無人島での特別試験が終わった翌日。

 

船に戻った後、平田から来月Cクラスになることが現Dクラスのメンバーに周知され、かなり盛り上がったようだ。

 

「とはいっても、点差は60ポイント。生活態度の減点やちょっとしたトラブルで逆転されちゃうから油断はできないね」

 

「特に俺たちDクラスはそこのところが課題だ。トラブルメーカーが多すぎる」

 

「あとは、クラス昇格のお祝いムードだったから、リタイアした高円寺くんがそこまでみんなから責められなくて安心したよ」

 

「あいつにはもっとお灸を据えてやる必要があると思うがな」

 

同室の平田、幸村が昨日の様子を教えてくれた。

今月まではDクラスということで、Cクラスを名乗れるのは来月から。

ただ、それまでに減点されるようなことになれば、CクラスになることなくDクラスに戻ってしまう。注意して過ごさなくてはいけないな。理想は部屋で大人しくしておくことか。

 

「せっかく客船に戻ってきたし、色々見て回ろうと思う」

 

「綾小路くんは元気だね。僕はスポット獲得で動き回ったから、今日はちょっと休んでおこうかな」

 

「俺もだ。平田ほど動いていないはずなのに、身体中痛んでる。部屋で大人しく勉強でもしておく」

 

そうして部屋から出て、客船の探索をする。こんな機会、もう訪れるかわからないからな。色々見ておいて損はないだろう。

 

平田たち同様に疲労が出ているのか、多くの生徒は大人しく部屋で過ごしている様子。外にあまり人がいなかった。主に歩き回っているのは早期リタイアしたCクラスの生徒たちぐらいなもの。

 

探索も落ち着き、プールデッキでトロピカルジュースを飲んでいると、コツ、コツ、コツ、と杖を突く音が近づいてくる。

そういえば、こいつも無人島試験に参加していないから元気だよな。

 

「おかえりなさい、綾小路くん」

 

「ああ。元気そうだな、坂柳」

 

坂柳はどうしてオレの居場所がわかるのだろうか。

 

「乙女の直感でしょうかね」

 

「さらっと人の心を読むな」

 

「フフ、警戒なさっていないときの綾小路くんは、考えていることが割と顔に出ていますよ。まぁ気づけるのは私ぐらいだと思いますが」

 

「そうなのか……そういえば以前、生徒会長にも――」

 

「それはたまたまでしょうね。真にわかるのは私ぐらいなもの」

 

「あ、ああ。そうかもな」

 

食い気味でこちらの話を遮る坂柳。深入りしない方が良さそうだ。

 

「無人島試験は大活躍でしたね。結果を見て私も我慢ができず、あなたの元を訪れてしまいました」

 

「結果を見たのなら、Bクラスの勝ちに、Dクラスが便乗させてもらっただけだとわかると思うが」

 

「そうかもしれませんね。では、一言だけ。共闘を申し込んで良い返事をもらえる下地を事前に作っていたこと、お見事でした」

 

全てお見通しということか。そして今回の試験での戦略の前提部分に気づいている。共闘を申し込んだのはどっちなのか。一件どちらでもいいようで、真相にたどり着くために重要な問題。調べればわかることではあっても、先入観で決めつけてしまう者が多いのもポイントなのだが……坂柳も中々侮れないな。

 

「期待以上の結果に胸の高鳴りが止まりませんでした。次の試験では私と勝負してくださいませんか」

 

「それをオレが受けるとでも?」

 

「胸の高鳴りはまだ収まっていませんよ。どなたが無人島試験でのMVPか、皆さんに宣伝して回りたい気分です」

 

勝負などに興味はないが、無人島試験でオレが暗躍していたなどと広められては、何のためにBクラスを勝たせたのか、目的の半分が意味をなさなくなってしまう。

 

「……わかった、もしその時が来れば真剣に戦うことを約束する」

 

「ありがとうございます!次の試験が待ち遠しいですね」

 

欲しかったおもちゃを買ってもらった子供のように喜ぶ坂柳。

 

「ところで、皆さんが無人島サバイバルをしている間に美味しいケーキを提供してくださるカフェを見つけたのですが――」

 

「綾小路、探したぞ。ちょっと来てもらおうか」

 

プールデッキの上の階から茶柱先生の声が聞こえる。

坂柳はオレの陰に隠れて見えなかった様子。

 

「邪魔が入ってしまいましたか。残念ですが、これで失礼いたしますね」

 

一瞬だけしゅんとした坂柳だったが、すぐにいつもの表情に戻り、笑顔をみせて立ち去る。

 

「それで何の御用ですか、茶柱先生」

 

「まずは試験、ご苦労だった。1位ではなかったにしろ、大量のクラスポイントを獲得し、Cクラス昇格は大したものだ。私もお前に付き合わされた甲斐があったというものだな」

 

「ご満足いただけたなら良かったです。この調子で頑張るので、今度茶道部に差し入れ持ってきてくださいよ」

 

「まぁいいだろう。私も気分がいい。この調子でAクラスまで突き進んでくれ」

 

今回の結果は茶柱先生としても満足できるものだったようだ。

他クラスと比べ圧倒的に後れをとっていたDクラスが一気に追いつき、追い越したのだから、文句はないだろう。

今度の差し入れ次第では、もう少し頑張るか。

 

「用件はそれだけですか?」

 

「いや、これを渡しておこうと思ってな。島で依頼されたものだ」

 

「ありがとうございます」

 

茶柱先生から渡されて、中身を確認する。

なるほど、中々いいな。

 

「では私はこれで失礼するが……綾小路、もし暇なら11時頃プールサイドに行く事を勧める」

 

「何かあるんですか?」

 

「それは行ってからのお楽しみだな」

 

これまでの仕返しとばかりに情報を伏せる茶柱先生。可愛いところもあるものだ。

 

 

特に予定もなかったため、茶柱先生の言った通り11時にプールサイドを訪れた。

 

そこには堀北がいた。

え、茶柱先生これがお楽しみの内容でしょうか?

だとすると、無人島で茶柱先生をいじり過ぎたか。仕返しに堀北を送り込んでくるとは、こちらの嫌がることを熟知している。全く可愛くなかった。

 

「あなたも茶柱先生に呼び出されたの、綾小路くん」

 

「……ああ」

 

「わざわざ、行けばわかるなんて言って呼び出したんですもの、余程大事なことなのかしら」

 

……オレへの嫌がらせのため、とは言えないな。

どうしたものかと考えていると、何やら上空から騒音が聞こえてくる。

 

「ヘリ、か」

 

見上げると、一機のヘリがこの客船へ向けて降下してくる最中だった。

これがお楽しみの内容か。疑って悪かった、茶柱先生。

 

「一体何なのかしら」

 

「とりあえず行ってみるか」

 

オレたちはヘリが着陸したところへと向かうことにした。

ヘリポートに到着するとすでに何人もの生徒が集まっている。

物珍しさの野次馬もいるだろうが、葛城や一之瀬といったクラスのリーダーの姿もあることから次の特別試験を予見してやってきた可能性もある。

 

教師陣も集まってきていたようで、ヘリから降りてきた人物に真嶋先生が話しかける。

 

「空の旅は快適だったか、堀北」

 

「悪くはありませんでした」

 

「お疲れ様です、真嶋先生」

 

現れたのは堀北兄と橘だった。

 

「結構な歓迎ですね、真嶋先生」

 

「生徒会長の鳴り物入りとなれば、学校サイドも無視はできない」

 

「私は学校の要請に従ったまでです」

 

それっぽいことを言っているが、きっとくだらない理由でやってきたんだろうな、という安心感がある。

 

真嶋先生と話しながら、船内に向かっていく堀北兄と橘。

 

「どうする堀北、後を追うか?」

 

「当たり前でしょ。こっそり気配を消して近づき、写真の1枚や2枚撮って帰りましょう」

 

思っていた返事の斜め上をいっていた。

ストーカー行為は身内ならセーフなのだろうか。

 

気配を消して忍び寄るオレたちより前にいた3人の生徒――龍園、一之瀬、葛城が堀北兄に話しかける。

 

「ド派手な登場で誰かと思えば生徒会長様かよ」

 

「ご無沙汰してます、生徒会長。一之瀬です」

 

「こんなところにいらっしゃるなんて何か重要なことでも?」

 

「お前たち、堀北は忙し――」

 

「構いませんよ、真嶋先生。今年の一年とは交流の機会を持てずにいました。幸い今日はしばらく時間があります。せっかくですから話す場を設けましょう。参加者はここにいる者たちでいいか、こっそり隠れている生徒もいるようだが?」

 

パシャっ。

 

「シャッターチャンスではなかったと思うぞ?」

 

「て、手が勝手に。兄さんの鋭い視線に耐えきれなかったわ」

 

そういう方向は耐えてくれ堀北妹。まだ、しゃべることができないぐらい緊張してくれてた方が幾分かマシだ。

 

「と、とにかく、そういうことならカフェの一角に交流会の場を設ける。だが、人数は各クラス4名まで。私も同席させてもらう」

 

真嶋先生も少し引いていた気がするが、交流の機会があるのは堀北妹にとっていいことだろう。

 

そうしてそれぞれのクラスから4名ずつ集められ交流会が始まったのだが、話の流れで堀北兄企画で10万プライベートポイントをかけた特別試験をすることとなった。

 

「おいおい、試験なんざまどろっこしいぜ。直接あんたと勝負させろよ」

 

「龍園くん、会長への言葉遣い気を付けてください」

 

挑発的な龍園の態度に、橘が物申す。

 

「オレはこいつよりも実力がある。なら敬語なんて必要ないだろ」

 

「相手を敬う気持ちすら持てないあなたでは会長の足元にも及びません」

 

龍園相手に引けを取らないやり取り。今日の橘は何だか頼もしいな。

 

「力があるというのなら、この試験でそれを証明してみせることだ、龍園。これからお前たちには宝探しをしてもらう。隠すものは……そうだな、オレのハンカチでいいだろう」

 

「兄さんのハンカチ!?確かにこの上ないお宝ね」

 

「その意見には同意します」

 

堀北妹はもう手遅れだが、橘はせっかくここまで『生徒会の書記』という威厳ある雰囲気で頼もしくやり過ごせていたのに、つられてボロが出始めているぞ。

 

「橘、これを船内のどこかに隠してきてくれ。そしてその際に隠した場所を示すヒントを作成し、各クラスに配布して欲しい」

 

「わかりました、会長」

 

「あと綾小路、お前はいまさら交流も何もない。生徒会側として橘に同行しサポートしてもらう」

 

「え?はい」

 

堀北兄からの突然のパス。

たしかにわざわざここでこの2人と交流する意味はないな。

 

「では行ってまいります。さ、綾小路書記も行きますよ」

 

「はい」

 

綾小路書記とか初めて呼ばれた。

橘は公共の場では猫を被るタイプか。

 

「それでどこに隠すんですか?」

 

「目星はつけていますよー。変なところに隠して、会長のハンカチになにかあっては一大事ですっ!確実に安全な場所にしなくちゃいけません」

 

いつもの橘に戻った。

まぁこっちの方がいいな。

 

「オレが会長相手にため口なのは注意しないですね」

 

先ほどの龍園とのやり取りでふと気になったことを聞く。

 

「最初はムカッとしましたが、今は違います。堀北くんは、あなたが生徒会に入ってから、毎日とても楽しそうです。やっとできた対等な友達みたいな存在なんでしょうか……だったら敬語はおかしいですから」

 

橘はとても嬉しそうに、でもどこか寂しそうにそう話した。

堀北兄にも色々あるのだろう。

 

そうして橘の後に続き、客船の地下2階へと進んでいく。

 

「ところで綾小路くん、無人島の試験はどうでした?」

 

「頑張ってはみたんですが、Bクラスのチームワークの前には一歩及びませんでした」

 

「そうなんですね。元気に頑張れたならそれで良かったです。会長は何か理由があるんじゃないかっておっしゃってましたけど……」

 

オレだけ別行動をさせた意味を考えていたが、こういうことか。

 

「そうですね……会長の思っている通りの理由です、と伝えていただければわかると思いますよ」

 

堀北兄ならそれで察してくれるだろう。

 

「いえ、せっかくでしたら自分で伝えましょう。この試験、時間かかりますからね。会長もその方が嬉しいと思いますよ」

 

ハンカチをロッカーに丁寧にしまい、カギをかける橘。

そのカギをレストランのスタッフに預ける。

 

ヒントは事前に用意していたものに、客船内の状況に合わせた情報を加えていく。途中、伊吹にあったときはかなり嫌な顔をされた。

 

完成したヒントを見て、2人の意図に気づく。

かなり苦戦する宝探しとなりそうだが、堀北妹たちは大丈夫だろうか。

 

「それではこれがヒントです。1枚ごとに内容が異なります。どうぞ」

 

各クラス2枚のヒントが渡されて宝探しがスタートした。

 

「行ってくるね、綾小路くん」

 

一之瀬も楽しそうだ。軽快に飛び出していく。

 

「上手くやっているようだな、綾小路」

 

「どうだろうな、試験の結果の意図はあんたには伝わったと思っているんだが……」

 

「そうだな、今日ここに来て確認するだけの価値はあった。以前会った時とは雰囲気が変わっている」

 

どうやらこちらの考えに気づき、意図を汲んでくれそうだ。

 

「ところでこの試験、かなり難しいが、あいつらにクリアできると思うか?」

 

「わからない……鈴音なら或いは匂いを辿るぐらいしそうだと思ってな、対策はしておいた。これで簡単には進まないだろう」

 

妹のヤバさを実感しているなら対策の前に矯正して欲しかった。

 

『くんくん、間違いなくこの中に兄さんのハンカチがあるわね。ただ悔しいことにカギがかかっていて開けられないわ』

 

『……僕たち、ヒントいらなかったね』

 

そんな想像をしてみたが、確かにないとは言い切れないな。

現在進行形で起きていないといいが……一緒に行った平田のカバー力を信じるしかない。

 

「ではっ、皆さんが戻ってくるまで時間があるので3人でトランプでもして待ちましょう」

 

この時間を待ってましたと言わんばかりにトランプを取り出す橘。

 

「さすが橘、準備がいいな」

 

堀北兄もノリノリだ。

毎日楽しそうと言っていた橘の言葉が頭を過ぎる。

そうしてオレたちはトランプに没頭した。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「ハンカチを見つけてきました、兄さん」

 

試験終了時間10分前に扉を開けて、堀北を先頭に、葛城、一之瀬が入ってくる。

 

「ハートの4とスペードの10を止めているのは誰ですか、もう私パスできないんですよ。ずるいです、ひとでなし~。私の番までに出してくれたら許してあげますからっ」

 

「これも勝負の世界だ、橘」

 

「そうです、橘先輩。最後に勝っていることが大事なんですよ」

 

オレたちは7並べをやっていた。

ちなみにハートの4を止めているのはオレだ。

……ん?何か声が聞こえたか?と三人で入口を見る。

 

「「あっ」」

 

「え、えーと。もう一回入るところからやり直そう、堀北さん」

 

一之瀬からの優しくも残酷な提案。

急いでトランプを片付けるオレたち。

 

「兄さん、ハンカチを見つけてきました」

 

「ギリギリ間に合ったようだな、勝者はDクラスか」

 

平然と何もなかったように対応できるのはすごいな。

ギリギリセーフでした、みたいな顔をしているが、完全にアウトだったぞ、橘。

 

「いえ、みんなで協力して見つけてきたものです」

 

「そうか。だが、勝者は1クラスのみだ」

 

「じゃあ私たちはこれで」

 

「俺もポイントさえもらえれば異存はない」

 

空気を読んで、退出する2人。

だが、せっかく兄妹で話せる機会だというのに沈黙が続く。

 

「なんか話したらどうだ、堀北」

 

余計なお世話と思いつつも、発言を促した。

 

「で、では……兄さん、今度トランプするときは、わ、私も入れてください」

 

「……考えておく」

 

「は、はいっ!」

 

満足したのか堀北妹は会釈して勢いよく出て行った。

それでいいのか、堀北よ……そしてしれっとハンカチ持ったまま出て行ったな。

 

「それで綾小路、本題がある。一之瀬を呼んでくれないか?」

 

こちらの意図はしっかりと伝わっていたようだ。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「失礼します。一之瀬帆波来ました」

 

緊張気味の一之瀬。

無理もない。先ほどの茶番劇があったとは思えないほど、部屋の雰囲気は重々しくなっている。

 

「お前を生徒会にと、南雲と……綾小路から推薦があった。今回の無人島試験での活躍はすでに聞き及んでいる。お前にまだそのつもりがあるのなら、生徒会書記の席を譲っても構わない」

 

淡々と話す堀北兄。

実際は文字通り「書記の席しかない」のに、それっぽく言うのが上手いな。

 

「……とても嬉しいのですが、すみません、断らせてください」

 

「ええぇぇ、断っちゃうんですか!?」

 

とてもデジャヴを感じさせる展開だ。

 

「今の私はまだまだ力不足です。とても生徒会の方々と一緒に仕事ができるとは思えません」

 

これまでの一之瀬なら、迷いはすれどすんなり入ったに違いない。

自分の弱さと向き合い、まっすぐに戦っていこうという意志を感じる。

一之瀬自身は気づいていないだろうが、立派に成長し始めている証拠だろう。

 

だが、ここで生徒会に入ってもらわなければ、オレのここまでの行動が無駄になってしまう。

説得は頼んだぞ、2人とも。と、堀北兄たちを見る。

 

『あれをやるか、橘!』

『はい、会長!』

みたいな目配せをしている。

 

まずい、このままじゃ、こいつらまた通販番組みたいなことをし始める。

真面目な空気が台無しだ。オレが動くしかない。

 

「一之瀬の気持ちも理解できる。だが、オレも生徒会に入ったことでたくさん成長させてもらったんだ。無理強いはしないが、入ってから頑張る、という考え方もありだとオレは思うぞ」

 

「綾小路くん、そんな風に思ってくれていたんですね……嬉しいですぅっ」

 

橘の方にクリーンヒットしてしまった。

思わず涙が出そうになった橘に、堀北兄がハンカチを渡す。

……なぜハンカチを持っている?まさか、最初から妹にやるつもりだったのか?

 

「……そうだね。約束の事もあるし。こんなチャンス二度とないかもしれないし。生徒会長、先ほどの言葉は撤回させてください。私、生徒会の一員として学校のため、生徒のため頑張らせていただきます」

 

しばらく悩んでいた一之瀬だが、しっかりとした口調で答えを出してくれた。

 

「歓迎しよう。このクルーズから戻ってきたら、正式な手続きをする」

 

「これからよろしくお願いしますね!」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「よかったな、一之瀬」

 

「うん、綾小路くんもありがとう」

 

気にするな一之瀬。お礼を言うのはこちらになる。

計画通り一之瀬を生徒会に入れることができた。

 

オレは生徒会の活動を通して、自分に足りないものを痛感した。

それは堀北学にとっての橘のような存在だ。

 

残念ながら、オレ自身は『善』を押し出した戦略は取れないし、信頼をもとに成り立つ人海戦術も取れない。

 

この学校で生き残るためには、そう言った力が必要な場面も出てくるだろう。

 

だが、今から善行を積んで、みんなと仲良くなるのは時間的に不可能。

ならどうするか、できる人間を傍に置けばいい。

それだけの話だ。

 

それがオレたちの学年では一之瀬が適任だったということ。

そして、その有用性はスポット殲滅作戦などで試験運用してみたが、十分効果的だと判断した。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

翌日。

再びヘリに乗り目的地へと出発する。

 

「綾小路くん、元気そうで良かったですね」

 

「ああ。それに良い人間関係も作れていたようだな」

 

ヘリが出発した直後、綾小路から送られてきた写真を2人で見る。

 

無人島試験で撮ったものであろうBとDクラスの集合写真。

そこには鈴音も、ぶっきら棒な表情ではあったが、少し楽しそうに写っていた。

 

「まったく、土産の催促なら断ると言っていたのにな」

 

綾小路にも良い変化があったのかもしれない。

徐々に小さくなってく豪華客船を見つめながら、今後が楽しみになってきた。

 

 




生徒会の二人が客船にヘリで乗り込んでくる元ネタはドラマCDです。
原作基準で考えると、そんなこと絶対にしないよなと思うのですが、こっちの生徒会の二人ならむしろヘリで来ない方がおかしいだろ、ということで採用しました。
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