ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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坂柳のあっというま劇場

「ところで田さんは100万ポイントあったら何に使いたいですか?」

 

「えっ?そうだなぁ。そんな大金、全然想像できないけど、万が一に備えて使わずにとっておくかな。坂柳さんは?」

 

「私はそのぐらいの金額では欲しいものには手が届きませんので、田さんと同じくとっておくでしょうね」

 

「さすが坂柳さん、金銭感覚が違うね」

 

「そうでもございません。実際この学校では何でもポイントで買えるとおっしゃっていますが、重要なものほど値が張りますからね。例えばテストの点数ですとか、そうですよね堀北さん?」

 

「なんの事かしら?全然興味がないのだけれど。さっきから聞いていれば無駄話ばかり、今は試験中よ、もっと優待者を探すための話し合いをするべきじゃないかしら」

 

「フフフ、堀北さんは手厳しいですね。せっかく皆さんとお話しする場ができたんです。楽しくおしゃべりすることも大事ではないですか?」

 

「不要よ。私たちはAクラスを目指している。この試験で少しでも多くのポイントを獲得して、次はあなたたちのクラスを抜かせてもらうわ」

 

「冗談もお上手で。でも、その虚勢が張れるのはどうしてですか?あなたのクラスにそんな実力があるとは思えません。自分がいかに恵まれているか自覚のない哀れなお人形さんの言葉ほど、耳障りなものはございませんよ?」

 

「坂柳さん、あなた何が言いたいの?」

 

「いえ、無人島ではBクラスにおんぶにだっこ、一体どなたのおかげで勝利できたのでしょうか。ちょっと気になっただけですので」

 

「よほど試験結果が気に入らなかったのかしら。いつまでも過去の話をしていても仕方がないと思うのだけれど」

 

「そうでしょうか。過去の思い出は今の自分を形成する大切な要素かと。あ、過去といえば、学校のデータベースには入学時に学校が調べ上げた生徒個人情報が保管されているそうです。閲覧にはそれこそ多額のポイントがいるそうですが、100万ポイントを使えば自分の情報にプロテクトを掛けることができます。ご存じでした?」

 

「別に私は見られて困るような過去はないもの。そんなことにポイントを使う必要はないわ」

 

「そうですね。品行方正な堀北さん、田さん、平田くんには関係のないお話でした。それこそ龍園くんみたいにやんちゃをしていた生徒は違うでしょうが」

 

「クク、お前の無駄話に乗ってやるつもりはねーよ。どうせガセネタだ」

 

「気づかれてしまいましたか。堀北さんの冗談が面白かったので、つい私も冗談を言ってみたくなってしまっただけなんです。どうかご容赦くださいね」

 

ホットリーディングとコールドリーディング。

占い師や詐欺師、セールスマンに尋問官などが使う話術とされていますが、事前に入手した情報を知らないふりをして誘導したり、逆に観察によって知っているふりをして驚かせたり、人の感情を揺さぶるのは大変面白いですね。

面白いだけでなく、皆さんのことが手に取るようにわかるのもポイントです。

 

例えば先ほどの会話で堀北さんは、綾小路くんの存在を隠そうとしていました。

なので、その手の話を続ければ、過ぎたことと無理やりにでも話題を変えてくる。

 

そうして引き出した『過去』というワードは、特にDクラスの方々には効果的です。

ここにいる3名はDクラス以上の力をお持ちのようですがDクラスにいるのですから、何か原因があるはず。その知られたくない過去を閲覧できる方法があると知ったとき、それを今回の試験で優待者なら得られるかもしれない100万ポイントで防ぐことができると知ったとき、それらが全て嘘だとわかったとき、人はどんな反応をするのでしょうね。

 

じっくりと楽しませていただきました。

優待者はあなたですね、田さん。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

2回目の話し合いの時間がやってきた。

できることなら欠席を選択したいところだが、不参加者にはペナルティが待っているためそうもいかない。優待者が他クラスなら、すぐに試験を終わらせる方法がいくらでもあっただけに、軽井沢が優待者であることが悔やまれる。

 

話し合いの部屋に着くと、オレは真っ先に外村と幸村の間に椅子を動かし陣取った。村村コンビに挟まれてオレもただの村人だ。誰も話しかけてこないでくれ。

 

「綾小路、恋愛に疎い俺でも午前中のはどうかと思った。そんなことじゃ、成績を落とすぞ」

 

「オレも勉強だけしていたい気分だ」

 

「綾小路殿はハーレムを作るご予定でござるな。拙者、ラッキースケベを目撃するのが夢だったのでござるよ。期待させていただく」

 

「ラッキースケベ?」

 

「とにかく急いで移動すれば、自ずと答えへ導かれる。さあ綾小路殿、冒険へ旅立つのです」

 

この2人も色々と思うところがあったようだ。……それも仕方がないか。

 

「ちょっと綾小路くんの隣は私なんですけど?」

 

少し遅れて到着した軽井沢がオレの座っている場所に気づき文句を言ってくる。それにしても平田がノーマルだと発覚した現在、コイツの目的は……いや、考えるまでもないか。

 

「ムム……早速来ますかな?綾小路殿、ぶつかるときは思いっきりですぞ」

 

外村があっけなくオレを売る。

席を譲ろうとした外村だったが、その前に軽井沢は外村の椅子を掴むと引っ張ってどかした。

キャスター式の椅子であったことが災いし、外村ごと椅子は勢いをつけて進んでいく。

 

その先には……伊吹がいた。

 

「せ、拙者の方にチャンスが!?」

 

伊吹との衝突を受け入れる体制の外村。

いや、止まる努力をするべきじゃないか?

 

座ったままの伊吹は外村の方を向く。

まさか受け入れるのか?と思ったが、次の瞬間、上げた足が外村の腹を直撃。

無事(?)外村は止まった。

 

「こ、これはこれでアリでござるッ……ガクッ」

 

外村は喜んでいるのかぐったりしているわからない状態に。

そんな時、真鍋たち残りのCクラスが入ってきた。

 

「伊吹、あんたやっぱりそういう趣味なんだ……」

 

こうして伊吹の噂はまたひとつ種類を増やした。

 

伊吹に引きつつも、真鍋たちはこちらを向き話しかけてくる。

 

「綾小路くんはさ、平田くんとも仲良いんだね。やっぱり男の子一人だけだと気まずかったかなーって。気づかなくてごめんね。リカが、平田くんも一緒にって言ってるんだけど、このあと6人でナイトプール行かない?」

 

この誘いに裏はなさそうだが、火に油を注ぐ行為には違いない。

 

「はぁ?平田くんは私の彼氏なんですけど?平田くんも綾小路くんもそんなとこ行くわけないじゃん」

 

「あの平田くんがアンタなんかの彼氏なんて信じられないんだよねー。てか、男いるんだったら綾小路くんに近づかないでよね」

 

それはごもっともだな。

 

「お前たち、これから試験なんだ。少しは黙って待てないのか」

 

業を煮やした幸村が2人へ向かって注意をする。

ありがとう幸村。今度何かわからない問題があったら喜んで解説するからな。

 

「「ガリ勉は黙ってて!」」

 

「な……勉強のできないお前たちに偉そうに言われる筋合いはない」

 

勉強ばっかりの奴に言っちゃいけないワードだぞ。

どんどん悪化していく状況。

Aクラスのヤツ等は試験前でも沈黙を守っている。

逆にすごいな。

 

「そこまでだよ」

 

一之瀬たちBクラスの面々が登場した。

 

「言いたいことがあるなら、これで勝った人の主張を通すってことでどうかな?」

 

そうして一之瀬が取り出したのはトランプだった。

一之瀬からはこれ好きなんだよね?といった目配せが飛んでくる。

 

「いいじゃない、これで勝負やってやるわよ」

 

「ふん、あんたたちなんて私の敵じゃないってこと証明してあげるし」

 

「せ、拙者も参戦してハーレムを作るでござる」

 

などなど各々やる気十分だ。

 

こうしてAクラスを除く兎グループでは大トランプ大会が始まった。

 

 

数々のゲームを行い、勝者が決まる。

 

「1位はオレだな」

 

先日、堀北兄と橘と散々遊んだ甲斐があった。

運の要素が絡まないゲームなら負ける気はしないな。

 

「そ、それで綾小路くんは誰を選ぶのかな?」

 

待てよ、一之瀬。そんな話じゃなかったと思うんだが……

 

「オレが選ぶのは……」

 

「「選ぶのは?」」

 

「ここだ。オレはAクラスと一緒に沈黙させてもらう」

 

「えー!?綾小路くん、どうして……」

 

部屋の隅のソファーに座るAクラス3人。

そこにいる森重の隣を選んだ。

こんな茶番をしてる限り、軽井沢が優待者だとバレる恐れはない。

このまま時間を稼いで、ひとまず逃げ切りを狙うとしよう。

 

「よろしくな、森重」

 

「お、おう」

 

歓迎されないとは思っていたが……ちょっと距離をあけられた。

沈黙しているとはいえ、森重たちも思うところはあったのだろう。

地味に傷つくな……。

 

そうして、なんとか2回目の試験を乗り切ったオレは、面倒ごとに巻き込まれる前にすぐに部屋に戻った。

 

しばらくすると、幸村、平田、高円寺と次々に部屋に戻ってくる。

 

「なんだか大変なことになっているみたいだね」

 

「ああ。どうしてこうなってしまったのか、まるで分らない」

 

幸村から事情をきいたのか、ノーマルな聖人平田がこちらに気を遣ってくれる。

 

「あははは……それだけ綾小路くんの魅力に気づいてくれる人が増えたってことじゃないかな」

 

「そんなものはないと思うんだがな」

 

「大変なところ申し訳ないんだけど、この辺りで一度情報共有しないかい?実はDクラスの優待者が僕のところに連絡をくれているんだ」

 

「それはホントか、平田。教えてくれ」

 

幸村も試験自体には積極的に参加する姿勢を見せている。

 

「うん。この人たちなんだけど……」

 

そういって見せてきた携帯には

『竜グループ 櫛田さん 馬グループ 南くん』

と書かれていた。

櫛田は優待者だったか。好都合だな。

 

「うちのグループで話に出たんだけど、優待者はそれぞれ各クラス均等に3人ずつ分けられていると思う」

 

「なるほど……」

 

幸村には知らされていないのだろうが、ここに軽井沢が入ってDクラスの3人の優待者が発覚する。何か法則性のようなものがあるのだろうか。

別のクラスの優待者が1名でもわかれば、答えに近づけそうだが……

 

「高円寺くんもよければ話し合いに参加してくれると嬉しんだけど……」

 

「すまないね平田ボーイ。私は肉体美の追及で忙しいのだよ。ただ、こんな試験あと2日も続くのは面倒なだけだねぇ」

 

そういって高円寺は携帯を操作し始めると、程なくしてオレたち全員の携帯に学校から通知が来た。

 

『猿グループの試験が終了しました。猿グループの方は以後試験に参加する必要はございません』

 

「おい、高円寺!やりやがったな」

 

「嘘つきを見つける簡単なクイズさ」

 

慌てて高円寺に文句をいう幸村。

だが、その次の瞬間から携帯への通知が次々となり始める。

 

「どうやら私の美しさがミラクルを起こしてしまったようだね」

 

『竜グループの試験が終了しました。竜グループの――』『牛グループの――』『虎グループ――』

 

結局、全12グループの内、8グループの試験がこの瞬間に終了した。

 

残ったグループは、鼠、鳥、猪、そしてオレたち兎グループだけとなった。

 

 

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