ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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因果応報

綾小路くんは1回目の話し合い後に、優待者がどなたか『知っている』とおっしゃっていました。『わかった』ではなく『知っている』と。

 

つまり自分のクラスに優待者がいて、それを知らされたことになります。

 

その情報を教えること自体、私にかなりのヒントを与えてしまう行為。

綾小路くんなら、いくらでもはぐらかす方法はあったはずです。

 

……私はこれを彼からの挑戦状だと受け取りました。

ならば期待に応えるのが幼馴染の務めですね。

 

田さんが優待者だったということは……」

 

自分のクラスの優待者と比べて確認します。

わざわざ干支を使ったグループ名

男女混合の名前順の表などヒントはたくさんありました。

 

「やはり、干支の順番とグループの名前順が優待者を決める法則ですか」

 

ここまで来て私は少し悩みます。

一気に優待者を告発するのも芸がございません。

ただ、勝負でないこの試験をこれ以上続けるのも無意味です。

 

ひとまず、各グループにいるクラスメイトに優待者の情報を送り

合図を送ったら、優待者を告発するよう伝えます。

 

どうしたら綾小路くんに喜んでもらえるでしょうか……

そうこう悩んでいると、学校から通知が来ました。

猿グループの試験が終了したそうです。

 

「綾小路くんですね!」

 

彼も人が悪いです。

やる気がなさそうに見えて、しっかり自分のクラスメイトを使って告発を始めたようです。

綾小路くんも法則に気づかれたのでしょう。

この段階で気づけるのは私たちぐらい。

つい嬉しくなってしまいます。

 

のんびりしてはいられません。

私からもお返事をお届けしなくては。

私はクラスメイトたちにメールを送ります。

もちろん、兎グループは告発しません。

どのような形でも綾小路くんにトドメを指すのは私自身の手でなくてはいけませんからね。

ちょっとしたメッセージです。

 

あぁ、なんて素敵なひと時なんでしょう。

お互いを理解し合えた、そんな気分です。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「いったいどういうことなんだ……」

 

幸村が動揺している。

平田も状況が飲み込めず、黙ったままだ。

 

間違いなく坂柳の仕業だろうな。

Aクラスが沈黙していたのは、坂柳が答えに辿り着くまでに他クラスに余計な情報を与えないためか。他者を信用しない徹底した支配主義――葛城が無人島で失策した今、坂柳の力が強くなったのかもしれない。

 

「恐らく優待者には何らかの法則があって、それに気づいたクラスが一斉に告発したんだろう」

 

「だったら何で4グループ残っているんだ?」

 

「遊んでるってことかもな」

 

この試験もし優待者の法則がわかっても一度に全て告発するのは、例外を除き、下策だ。自分のクラスは指名できないのだから、必然残ったグループの優待者はそのクラスの生徒とわかってしまう。

 

だが、1グループ余計に残せば、残されたグループのクラス以外はその事実を絞り込むまで時間がかかる。

例えばBクラスからしてみれば、Aクラス3グループと突き止めても、4グループ中どの3グループがAで、残りの1グループのどこがCもしくはDかわからない。

一方、Dクラスからすれば兎以外がAだとわかる。

 

残ったグループが兎以外なら、Cクラスの犯行とも考えられなくはないが、兎であったことの意味を考えるならAクラス――坂柳がやったのだろう。

 

オレが優待者を知っていると伝えた意趣返しか。

1グループ余計に残して時間を稼ぐというのも、残りの日にちが少ない場合なら効果があるだけで、基本的に50クラスポイントと50万プライベートを捨てるだけだ。

今回の行為には、試験に、クラス争いに勝つという意志が感じられない。

坂柳はあくまでオレとの勝負で勝つことしか頭にないということ。

 

 

いずれにせよ、もう時間がない。

もし法則の目処がついている生徒がいれば、この4グループが残っている事実だけで、確証を得る可能性がある。

 

試験を終わらせるためにオレも動くとしよう。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

一斉通知に混乱したクラスメイトたちを空き部屋に招集して、落ち着いてもらうために話し合いをしている。

 

「帆波ちゃん、ごめん。私、気づかないうちに優待者ってバレちゃってたのかも」

 

牛グループの優待者、小橋夢ちゃんが責任を感じ落ち込んでいる。

しっかり者で明るい彼女にそんな顔をさせてしまうなんて、自分の不甲斐なさに腹が立つ。

 

「そんな事ないだろ。話し合い中、小橋に変な言動はなかった」

 

同じグループだった渡辺くんがフォローする。

誰も彼女や他の優待者の子を責めないのは、本当にいいクラスだと、手前味噌かもしれないけど、心からそう思う。

 

「そうだよ。夢ちゃんは悪くない。一斉に告発なんておかしいと思うんだ。何か理由があるって考えた方が自然だよ」

 

この試験、優待者は何かの法則で選出されたと見るべき。

でも、その何かにたどり着くのは簡単じゃない。

手持ちの情報では足りないのがもどかしい。

 

もしこの告発が全てAクラスのものだとしたら……。無人島で綾小路くんに助けられて、みんなで頑張って掴み取ったAクラス昇格がなかったことになってしまう。

 

「……私のミスだよ。もっとみんなの状況を確認して指示を出すべきだったのに」

 

「そんなことないよ、帆波ちゃんはいつも頑張ってくれてるよ」

「そうだぜ、一之瀬。今だって助けてくれてるじゃないか」

「気にすることないよ」とクラスメイト達からは温かい言葉をもらう。

 

でも……私は自分のグループを見た時、すこし舞い上がってしまったのかもしれない。

彼の前で、彼の力を借りずとも、私も戦えるんだってところを見せたかったんだ。

そんな気持ちを優先してしまったこともあり、Bクラスは自分たちの意思に任せて行動してもらった。もちろん、沈黙を続けるAクラスへの対策案や情報交換など、みんなで話し合ったりもしたけど、最終的な方針と判断はグループごとにお任せしていた。

 

今回はクラスのリーダーとしてではなく、兎グループの一之瀬帆波として戦う。そう思うと、肩の荷が下りたというか、いつもよりリラックスして、試験に向き合うことができていた。

 

でも、そのエゴが招いた結果がこの惨状。

リーダーとしてこれじゃダメ。もっとみんなを助けるべきだった。

 

……やっぱり私は綾小路くんがいないとダメなんだろうか。

 

いや、弱気になっちゃいけない。

クラスメイトは誰も諦めていないし、綾小路くんだってこんな場面でもどうにかしようと必死に考えるはずだ。

 

残り4グループを当てれば、少なくともマイナスにはならない。

まだ諦めちゃダメ、と気合を入れなおした時だった。

 

私の携帯にチャットが飛んできた。

 

『オレができるだけ時間を稼ぐ。兎グループの優待者探しは任せた。見つけたら遠慮なく告発してくれ』

 

綾小路くんもやっぱり諦めていなかった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「クク、こんな無茶やらかすのは坂柳しかいねーか」

 

一斉通知を確認し、これをやった人物の見当をつける。

無人島でこちらを嵌めた一之瀬たち、もしくは裏にいるかもしれない何者かの仕業かとも思ったが、どうにもやり口に違和感を覚える。

こんな適当な勝ち方をするようなヤツじゃない。

そうでないといたぶりがいがない。

 

オレはこの試験、最初から話し合いで優待者を見つけようなんざ、思っちゃいなかった。

だから、坂柳たちが自由にしゃべっていても適当に流して、優待者の法則について考えていた。

あと一人でも優待者がわかれば、この試験の法則を確立できたんだがな。

だが、どこかのバカが一斉に告知してくれたおかげで状況は変わった。

 

干支の順番と名前順、その仮説通りだとすれば、残りはAとDクラスに優待者がいるとわかる。他の終了したグループと照らし合わせてみても疑いようがねぇ。

 

残した兎グループには一之瀬がいるな。Bクラスへの当てつけが目的だったのか。あるいは――

 

まぁ今はどうでもいい。

あとはこの情報を各グループのヤツに送って、告発させるだけだ。

 

しばらくして学校から通知が届く。

 

『鼠グループの試験が終了しました――』

『鳥グループの――』

『猪グループの――』

 

「クク、あとは兎グループだけか」

 

だが、いつまで経っても通知が来ない。

真鍋たち、何をもたついてやがる。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「王子ーいきますよ~」

 

諸藤からのパスを受け取り、平田へ繋げる。

 

オレたちは、ナイトプールでビーチボールを使って遊んでいた。

 

「それじゃ、次は伊吹さん」

 

平田は伊吹にパスをする。

 

「そこは王子に戻してほしかったな……いや、平田王子は受け専門ってことですね!」

 

「なんで私がこんな事しなきゃなのっ」

 

諸藤の事は置いておいて、平田からパスされたボールを思いっきり真鍋にたたきつける伊吹。

 

「あんた誘ってやったんだから有難く思いなさいよ」

 

ボールを避けた真鍋が着水したボール拾って藪に回す。

 

「来なかったらもっと噂を広めるって脅してきただけでしょ」

 

「仕方ないでしょ、ナイトプールに行くなら兎グループのCクラスみんなとって言われたんだから」

 

「アンタまで見捨てない、綾小路くんたちの優しさに感謝しなさいよね」

 

不満を漏らす伊吹に、藪と山下が物申していく。

 

一斉通知が来た段階で、この試験はどうしようもないと判断した。

1時間も経たないうちに龍園が残りの4グループの告発を完了させるだろう。

 

そうであれば、何を優先するべきか。

 

1つは、Bクラス――一之瀬へのフォロー。

今後に響くからな、完敗の結果だけは避けさせる。

軽井沢が優待者だから告発してくれと伝えても良かったが、それでは一之瀬の成長に繋がらない。あくまで自分たちで答えに辿り着いたというプロセスが大事だ。

 

もう1つはCクラスとの交流。

龍園の動向も気になるため、今後の事を考えてCクラスとも交友関係を広げておこうと思う。良くも悪くもひよりはそこまでクラスの動向に関心はなさそうだからな、他のルートも欲しいと思っていたところだった。

 

そこでせっかくなのでナイトプールへのお誘いを利用させてもらった。

盗撮防止のためプールへは携帯の持ち込みは禁止されている。

つまりここで遊んでいる限り、Cクラスから兎グループが告発される可能性は0だ。

その間にBクラスには頑張ってもらう作戦。

 

正直、一之瀬の生徒会入りが決定したことでクルージング中の目標は達成された。

あとはこの旅行を楽しむだけ。どんな試験が来ようと退学になるわけではないのなら、そこまで力を入れなくてもいいだろう。

 

「王子ー、ボール行きましたよ~」

 

「任せろ」

「任せて」

 

オレと平田の間ぐらいに落下するボールを触ろうとしてお互いが接触する。

 

「はは……楽しい……はは」

 

諸藤の変なリアクションさえなければ、こちらも純粋に楽しめたのだが……。

 

「王子×王子、またぜひ遊んでください」

 

「綾小路くん、平田くん、ありがとねー」

 

「ああ」

 

解散して着替えを済ますと、Aクラスの残りグループの告発が完了して、しばらく経った後、兎グループも告発されていた。

一之瀬は無事答えにたどり着いたようだ。

 

「本当にこれでよかったのかい?」

 

「付き合わせて悪かったな、平田。これがあの場で取れた最善策だと思う」

 

とそこへ軽井沢が現れた。

 

「ふ、2人ともなんであいつらとプールに行ったわけ?」

 

「えっと、これには深い事情があって……」

 

「楽しかったな、平田」

 

「綾小路くん!?」

 

「うぇーん。平田くんが浮気したぁぁ~」

 

「軽井沢さん!?」

 

散々誤解させられた上に、軽井沢はオレの生徒会の権力目当てで寄ってきている節があった。3つ目の理由として、ちょっとした仕返しも含まれた策だった……のだが、いささかやり過ぎたか?偽装カップルならそこまでダメージがないと思っていたのだが。

このあとCクラスへの対策だったことを二人で懸命に説明し、なんとか許してもらえた。

 

こうして、特別試験1日目にして終了するという前代未聞のスピードでこの試験は幕を閉じた。

 

 

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