ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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嵐の後に

一斉告発の翌日。

本来は試験最終日の夜に結果が発表される予定だったのだが

すでに全グループ終了してしまったため、特例で今日の午前11時にメールで一斉通知されることとなった。

 

結果発表は、堀北と船内の休憩スペースで確認する約束になっていたのだが

そこに平田が一緒に確認したいと申し出て、平田の浮気を疑った軽井沢が同行し

さらに堀北についてきた須藤を含めた5人で結果を待つこととなった。

 

「……異色のメンバーね。別に大勢で一緒に確認する必要もないと思うのだけれど」

 

「僕は堀北さんと意見交換することが今後のDクラスのために重要だと思うんだ。こんな機会でもないと中々話すこともできなかったし」

 

「これまでは協力する必要がないと判断していたから。……でも、無人島、そしてこの試験で私も考えを変えたわ。この学校の試験、一人ではどうにもならないことが多すぎるもの」

 

特別試験を通して堀北の考えにも変化が訪れたようだ。

無人島では寝込んでいてほぼ活躍できなかったにもかかわらず、Bクラス主体ではあったものの、クラスメイトの団結があってDクラスとしては好成績を残すことができた。

逆に今回の干支試験では特にクラスの方針を定めずに挑んだ結果、何も為すことなく終わっている。

 

実際、坂柳が予想以上の力を見せたため仕方ない面もあるのだが、そのAクラスはクラスで戦略を立て動いていた。クラスで協力し試験に取り組むことの重要性が身に染みたに違いない。

 

これでようやくスタート地点に立った、といったレベルではあるが、特別試験が本格的に始まる2学期より前にこのことに気づけたのは大きいだろう。堀北と平田を中心にDクラスがまとまっていくことを願うばかりだ。

 

「はぁ~これから来る結果ってヤバいやつなんでしょ?せっかく大金ゲットできるって思ってたのに」

 

「そうだね……裏切り者の告発ミスでも起きない限りは、僕たちにとって苦しい結果になると思うよ」

 

軽井沢のいう通り、これから来る結果はDクラスにとって悲惨なものだろう。

だが、それでいいのではないかと思う。

要はこの結果を受けて、各々がどう考えるかが大事になってくる。

 

無人島試験では、Bクラスを勝たせるためとはいえ、少し介入しすぎた。

結果、Dクラスとしては団結することの大切さを学べたとしても、それは仮初にすぎない。

その結果をそのまま自分たちの実力だと勘違いし、慢心することだけは避けたかった。

 

プライベートポイントのため兎グループでは結果を出そうと思っていたのだが

優待者が軽井沢とわかりそれも難しくなった時点で、今回は静観することを決めた。

 

「あ、通知が来たみたいだよ」

 

平田からの指摘に全員がメールの確認をする。

 

全12グループ

裏切り者の正解により結果3とする

 

以上の結果からクラスポイントの増減は以下とする。

 

Aクラス……プラス200クラスポイント

Bクラス……マイナス100クラスポイント

Cクラス……変動なし

Dクラス……マイナス100クラスポイント

 

「Aクラスの1人勝ちね……やはり坂柳さんの仕業かしら」

 

「どのグループでも沈黙していたAクラスで、唯一話をしていたのが彼女だから、おそらく」

 

それはつまり、竜グループの優待者がバレた結果が招いた出来事だったということ。

堀北と平田はそのことに気づき、重く受け止めている様子だ。

 

「つーことはよ、9月からのクラス順位はどうなるんだ?」

 

「あー、それ私も気になる」

 

「ちょっと待ってね……こんな感じになると思う」

 

須藤の指摘に平田が携帯で計算して結果を見せる。

 

Aクラス  1374クラスポイント

Bクラス  1079クラスポイント

Cクラス   492クラスポイント

Dクラス   453クラスポイント

 

「クソ、せっかく抜いたのにまたDクラスに戻っちまうのかよ」

 

「クルージング前と比べると僅差になったけど……クラス昇格で喜んだ後だから余計辛いものがあるね」

 

「BクラスもAクラスに負けちゃうし、ちょっと強すぎじゃない?」

 

「やっぱり無人島でAクラスに勝てたのは、Bクラスと僕らが共闘したからだったんだと思う」

 

「そういうことになるわね……私たちにとってもBクラスとっても今後も共闘関係は重要になってくる」

 

そういうことでしょ?と堀北がこちらの様子を伺ってくる。

Aクラスの脅威を体験したことで、無人島での共闘の成果を再認識し、今後自然とBクラスと交流できる基盤を築いた。

Bクラスも同様の事を考えていることだろう。

お互いの協力なしではAクラスに対抗するのは難しいと。

 

「僕たちもまだまだ成長の余地はあると思う。今後はBクラスと連携しつつ、クラス内でも協力していこう」

 

「そうね」「おう」「平田くんが言うなら」

平田の提案に各々賛同する。

これでDクラスは無人島試験勝利のお祭りムードは一切なくなったな。

油断なく新学期に臨めるだろう。

 

「それじゃ、さっそく一之瀬さんのところに行ってくるわ。綾小路くんも同行してくれるわよね」

 

「そうだな。Bクラスの様子も気になっていたところだ」

 

「大勢で尋ねても迷惑だろうから、僕たちはここで解散するよ。また近いうちに今後の方針を話し合おう」

 

「ええ。一度は昇格できたんですもの。次は絶対に勝つわ」

 

今回の試験、Dクラスは惨敗だったが、戦う意志を強めることができた。収穫としては十分だろう。前向きな気持ちで解散し、一之瀬に連絡をする。Bクラスの集まっている場所を教えてもらい、堀北とそこを目指す。

 

「それにしても坂柳さんはどうして竜グループの優待者を見破れたのかしら……」

 

「話し合いではどんな話をしたんだ?」

 

堀北から2回の話し合いの内容を共有してもらう。

 

「なるほど、上手く誘導されたな」

 

「誘導?」

 

「坂柳はいくつかの話術を使い、Dクラスの弱点を突いてきた」

 

「……Dクラスには弱点ばかりだものね、思い当たる節ばかりだわ」

 

堀北の重度のブラコンとかだな、とは口が裂けても言えなかった。

 

「否定はしないが、今回に限れば、過去の情報だ。田にはそれが刺さったんだろう。たとえ一瞬の動揺でも坂柳は見逃さなかったんだろうな」

 

「……そういうことね。確かに田さんは過去の話……知られたくないのかもしれないわ」

 

「何か知っているのか、堀北?」

 

「そうね。でも、ごめんなさい。人の過去を吹聴して回る趣味はないわ」

 

「それなら仕方ない。……一之瀬たちが見えてきたぞ」

 

急な来訪だったが、Bクラスの面々は気持ちよく迎えてくれた。

 

「お互い手痛くやられちゃったねー。ほんと予想外だったよ」

 

「ええ、Aクラスの脅威を実感したわ」

 

「「それで――」」

 

一之瀬と堀北の言葉が被る。お先にどうぞと譲る一之瀬。

 

「今後もクラス間での協力が必要だと考えたのだけれど、どうかしら?」

 

「私たちも同じことを考えてたんだ。Dクラスとはこれからもできる限り力を合わせていきたいな」

 

「話が早くて助かるわ」

 

その時だった、通路の奥から数人の人影が現れる。龍園と伊吹、石崎にアルベルトか。

 

「よう、一之瀬。Dクラスの雑魚を連れて反省会か?」

 

「龍園くんこそ、また0ポイントだったようだけど?」

 

「クク、マイナスの連中が何をほざこうが構わねえさ。だが、これ以上調子に乗られてもウザったいからな、次はお前を潰すぜ一之瀬」

 

「望むところだよ。また返り討ちにするだけだからね。次は誰と誰が交際するのかな?」

 

「今の言葉忘れるんじゃねーぜ。それと、綾小路だったか。うちのクラスの女子にもちょっかい出すなんてほんとに女好きのクズだな」

 

「なんのことだか、心当たりがないな」

 

真鍋たちが告発できなかった原因は調査済みか。

こちらを怪しんでいるだろうが、プールに誘ってきたのは真鍋たちなので確証までには至らない。

 

「まぁいい。Bクラスを潰せば同じだからな」

 

「堀北!あんたのことは許さないから!覚悟して待ってなさい」

 

「なんのことだか、心当たりがないわね」

 

伊吹が堀北に突っかかる。堀北、はぐらかすのにオレのマネをするんじゃない。

 

「クク、気持ちはわかるがな、伊吹。今日はここまでだ。行くぞ」

 

直接目で見てBクラスの様子を確認したかったのだろう。

用事が済んで龍園はあっさりと帰っていった。

 

「それじゃ私たちもこれで失礼するわ」

 

「うん、またね」

 

一之瀬たちBクラスから離れ、堀北とも別れる。

 

「待って、綾小路くん」

 

それを見計らったかのように後ろから一之瀬が声を掛けてきた。

 

「何か伝え忘れか?一之瀬」

 

「えっと……あ、そうだ。優待者、軽井沢さんだったけど良かったの?」

 

少しうつむきながらそんなことを話す一之瀬。

良かったの、というのは自分のクラスの優待者を告発させたことについてだろう。

 

「どの道、守り切れる状況じゃなかったからな。Cクラスに告発されてDクラスとの差をつけられるぐらいなら、Bクラスに告発してもらいたかったんだ」

 

「そっか……綾小路くんのおかげでなんとか兎グループの優待者にたどり着いたけど、他3グループは間に合わなかったから申し訳なくて……」

 

「気にする必要はない。むしろよく頑張ってくれたと思っている」

 

高円寺が告発したのはBクラスの生徒だったから、実際これでトントンではある。

 

「……ありがとう。今回の試験で私も力不足を痛感したよ」

 

あのタイミングでBクラスと協力し、法則を見つけ、半分ずつ指名する手もあったが……そこでDクラスが目立つことは得策だと思えなかった。

あくまでBクラスがいないと何もできないクラス、という認識を周囲に持ち続けてもらう必要があるからな。

 

「以前も言ったがオレはクラス順位に興味はない。一之瀬さえよければ、困ったときは頼ってくれて構わない」

 

「……いいの?」

 

「もちろんだ。その代わり、オレが困ったときは遠慮なく助けてもらおうと思う」

 

「もちろんだよ」

 

今度はしっかりこちらの目を見て伝えてくる一之瀬。

どうやら心配はいらないようだ。

Bクラスで今後の方針を考えるとのことで一之瀬は去っていった。

 

今日は、このあと人と会う予定がある。

約束の時間まで暇を潰すため展望デッキへと移動すると、すでに坂柳が待っていた。

 

「そろそろ綾小路くんがやって来る頃合いかと思いまして」

 

「試験結果、見事だったとしか言いようがないな」

 

「いえ、嘘つきを見つける簡単なクイズでしたので」

 

余裕の笑みを浮かべながら、既視感のあるセリフを使う坂柳。

 

「……高円寺も同じこと言ってたな」

 

「いま、なんとおっしゃいました?」

 

「高円寺も同じことを言いながら告発をしてたんだ。嘘つきってわかるやつはわかるんだな」

 

「あの最初の告発は、不遜筋肉の仕業だったと?」

 

坂柳が小刻みに震えている。

高円寺と一緒にされるのが屈辱的だったのか。

確かに失言だったかもしれない。

 

「ああ。そうだな」

 

「……私たちの甘美なひと時をよくも邪魔してくれましたね」

 

「ん?なんだって?」

 

「いえ、こちらの話です。綾小路くん、すみませんが所用を思い出したのでこれで失礼しますね」

 

そう言い残し坂柳はこの場を後にする。去り際の坂柳の表情は、心なしか試験前よりも闘志に溢れているように感じた。

 

 

時間になったため約束の場所、客層の最下層エリアを訪れた。

 

ドンドンドン!

ガシャーン

ガガガガガガ

と物騒な音がいくつも聞こえてくる。

 

「せっかく堀北を退学させるチャンスだったのにぃ!!!」

 

田が暴れたい放題暴れていた。

 

田、せっかく優待者だったのに残念な結果だったな」

 

「なに?私を馬鹿にするために呼んだの?」

 

「そんなことはない。今回は相手が悪かった」

 

「本心を隠すのには自信があったんだけどね……」

 

「気にすることはないさ。田は間違いなく優秀だ。恐らく堀北あたりの表情から的を絞られたんだろう」

 

「それもそうね、堀北のヤツ、今回も大したことはできてなかったし」

 

「櫛田も苦労してるんだな。物にあたると物証が残る可能性がある……オレでよければ話ぐらい聞くぞ」

 

「気が利くじゃない。ほんとさ、あの女――」

 

そうして田は普段からは想像もできないほどの罵詈雑言を並べ続ける。

 

田なら次は結果を残せると思うんだ。引き続き期待してるな」

 

「うん、ありがとう。私、頑張るね」

 

ある程度ストレスは発散できただろうか。

いつもの田に戻って帰っていった。

こちらも順調に推移していることを確認できたので部屋に戻る。

 

 

それにしても今回の試験、トランプで遊んだり、沈黙したり、ナイトプールで遊んだり……ホントに何にもしなかったな。

グループがグループだっただけに早く終わってくれたのは坂柳のおかげだな。

坂柳の事も少しずつわかってきた。時が来たら真剣に向き合うのもいいかもしれない。

 

 

こうして残りの日数は、遊び倒すもの、次の試験に備えるもの、我が道を行くものなど、各々の過ごし方で過ごし、1年生のクルージング旅行は幕を閉じた。

 

 

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