ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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色とりどりのサプライズ

先日のひよりとの約束を果たすため、平田に電話を掛ける。

夏休み中ではあったが、数コールで繋がった。

 

「明日みーちゃんの誕生会をサプライズで実施するんだが、来てくれないか?」

 

『明日だと部活終わりになるけど大丈夫かな』

 

「もちろんだ。こちらも茶道部の活動終わりに実施するから同じ時間になるんじゃないか」

 

『それならよかった。楽しみにしてるね』

 

「ああ。平田が来てくれたらみんな喜ぶと思うぞ」

 

予想通り平田は誕生会参加に2つ返事でOKしてくれた。

茶道の指導なら気にならないが、女子の中に一人だけ男子が混ざってお祝いするのも気まずかったので有難いかぎりだ。

 

明日、正しい誕生日サプライズを体験できるのは楽しみだ。

トライ&エラーが大事とは言え、お手本になるものがあるのとないのとでは習得率が大幅に変わってくる。

明日のサプライズを乗り越えた時、オレは誕生日サプライズをマスターすることができるだろう。

 

 

今日は見回りの時間を夕方からにしている。

いつも同じ時間に回っても効果が薄くなってしまうからな。

日中よりも暑さが軽減できるのも魅力的だ。

 

「綾小路くん、こんにちはっ!……いや、こんばんわ、かな?」

 

元気な挨拶の後、微妙な時間帯なのでどっちが正解だろうかと首をかしげる一之瀬。

夏は日が落ちるのが遅く、東京といえど6時でもまだ明るさが残っている。

これが冬だと、5時にはすっかり暗くなるので不思議なものだ。

 

ホワイトルームから出て、ここに来るまでの1年間、初めて外の世界で過ごした時、この日の長さの違いには驚いたものだ。

知識としては理解していても体感すると全く感じ方が違う。

そう言った意味でも外の世界――この学生生活は日々新しいことを発見できる貴重な機会だと改めて感じることができる。

 

「夜からの見回りってなんだか緊張するね」

 

「そうだな。いつも見ている景色がまた違って見える」

 

「景色と言えば、こっちはあんまり星が見えないの、残念だなぁ」

 

2人して夕焼け空を見つめながら、あの日無人島で見た無数の星々を思い出す。

 

「また機会があれば一緒に星を見ようね」

 

「ああ。あれはホントにキレイだった」

 

オレからの返事を聞き、ニコッと笑う一之瀬。

……何気ない約束ではあったが、きっと叶わない約束。

これからこうやって、叶えることのできない約束をいくつもしていくんだろうな。

 

「そうそう!綾小路くんの学校でやりたいこと探し計画をそろそろ進めよっか!」

 

「進めるってどうするんだ?」

 

「うーんと、まずはなんでもやってみる!ってのはどうかな」

 

「なんでもか」

 

かなり範囲の広い話だが……。

 

「難しく考えないで、いつも自分がやってないことをしてみる。それで面白いと思ったものを続けていけば何か見えてくるんじゃないかな?」

 

「確かに、興味がないことは極力避けるようにしていたな」

 

「だよね、私だってそう。じゃあ明日から実施でどうかな、もちろん私も付き合うよ」

 

「すまないが、明日はクラスメイトの誕生日をサプライズでお祝いする予定があるんだ」

 

「ん?……もしかしてピアノ弾いたりするの?」

 

「もちろん弾かないぞ。あれは一之瀬だけだ。他では演奏する予定はない」

 

ピアノはやりすぎだとわかったからな、これ以上他で演奏して黒歴史を増やす必要はないだろう。

 

「わ、わたしにだけ……特別……」

 

「どうした、一之瀬」

 

「ううん、何でもないよ。じゃあ、明後日から実施だね!」

 

「そうしよう」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「ん、確かにこれは美味いな、綾小路」

 

「お口にあって良かったです」

 

翌日、茶道部には、差し入れを持ってきた茶柱先生がいた。

せっかくならとお茶をごちそうしている。

 

もう間もなく部活も終了といった時間。

そんな時、平田からチャットが届いた。

 

『ごめん、綾小路くん、軽井沢さんも一緒に行きたいって言ってるんだけど……大丈夫かな』

 

「大丈夫ではありません。彼女がやってきてしまってはただの修羅場になってしまいます」

 

ひよりにこっそり確認を取ったが、かなり強めに拒否されてしまった。

Dクラスでは女子のリーダーである軽井沢だが、Cクラスの女子からはビックリするほど不人気だな。

ただ、確かにこの場に軽井沢がやってきては、羊の群れにオオカミを放つようなものか……。

 

「わかった、何とか平田だけ来るようにやってみる」

 

平田はクラスメイトに優劣をつけたりはしない。

みーちゃんの誕生会に参加することを彼女(偽)の軽井沢に伝えたんだろう。

その結果、軽井沢は警戒して同行を言い出してしまった。

 

普通ならそこで来るのを諦めそうなものだが、それではみーちゃんが悲しむ。

どちらもないがしろにできない板挟み状態。

平田も大変だな……。打開するためにはオレが動くしかないだろう。

 

「茶柱先生。お願いがあるんですが……」

 

「そのセリフ、もはや耳に馴染んできたな。それで、今回は何のお願いだ?」

 

「今から軽井沢を1時間ぐらい食い止めてください」

 

「また訳の分からないことを。少なくとも教師の出番ではないな」

 

「オレにやったみたいに、無理やり相談室に呼び出して生活相談でもしてくれればいいじゃないですか」

 

「無茶を言うな、綾小路」

 

有無を言わさず軽井沢を拘束できるのはこの学校からの命令のみだろう。

これがダメなら、以前やろうと思ってやらなかった手刀の出番がやってきてしまう。

 

「『お前のせいで、1人死んだぞ』という事態になるかもしれませんよ?」

 

「物騒な話だな……しかしそこまで言うなら条件次第では飲んでやってもいい」

 

「……予想はできますが、どんな条件ですか?」

 

この人の頭の中はAクラスに昇進することしかないからな。

あれだけ色々弄っているにも関わらず、まったく折れないところを見るに相当な執念だ。

 

「今度体育祭があるのは、お前なら知っているだろう。そこでDクラスを優勝に導いてもらいたい」

 

「また、随分と無茶をおっしゃいますね」

 

「それはお互い様だからな」

 

うーん、無茶のレートが合っていないような気がするが……。

ただここで軽井沢の侵入を許せば、サプライズは悪い意味でサプライズとなりオレの知りたかったものを知る機会を損失してしまう。

次にこんな都合よく、誰かの誕生日のサプライズが行われるとも考えづらい。

それにみーちゃんやひよりの悲しむ顔もできればみたくはない。

 

「わかりました。優勝できるだけの最善を尽くすことをお約束します」

 

「よし、いいだろう。取引成立だ。それじゃ私は早速軽井沢へ連絡をしてこよう。ちょうどアイツの成績に教師として注意した方がいいと思っていたんだ」

 

なら無料でやってくれてもいいのではないか、と口に出しそうになったがぐっとこらえる。

茶柱先生が出て行ってから数分後、平田からチャットが入る。

 

『軽井沢さん、急用ができたらしくて来れなくなったんだって。予定通り僕だけで向かうよ』

 

茶柱先生は上手くやってくれたようだ。

これで失敗したら逆にDクラスを最下位にしようかとも検討していただけに

お互いwin-winな結果となって良かった。

 

「「パンッパパーン」」

 

お手洗いに行っていたみーちゃんが茶道室に帰ってきたところで

みんなで一斉にクラッカーを鳴らす。

 

「みーちゃん、お誕生日おめでとうございます」

 

「えーっ!み、みんな、まさか祝ってくれるなんて思ってなかったです。ありがとうございます」

 

「これは私たちからのプレゼントです。そして、そして、ゲストも呼んでいますよ~」

 

驚きながらもプレゼントを受け取ったみーちゃん。

ゲストって誰だろうと首をかしげている。

予め合流してもらい、隠れてもらっていた平田が出てくる。

 

「やぁ、みーちゃん。お誕生日おめでとう。これは僕からのプレゼントだよ」

 

「ひ、ひ、ひ、ひ……平田くんっ!?」

 

一気に赤面するみーちゃん。

急にイケメンが掛け軸の裏から出てきたら驚きもする。

クラッカーで視線誘導したとはいえ、よくバレなかったな、その隠れ場所で。

 

「ありがとうございます」

 

ちょっと涙を浮かべるほど喜ぶみーちゃん。

 

「さ、みんなでケーキを召し上がりましょう」

 

美味しくケーキを食べて歓談して過ごした。

なるほど、これが適切なサプライズか……。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

そんな誕生会が行われた2日後。

生徒会室の改装工事が終わったというので堀北兄と橘に呼び出されていた。

 

「ジャジャーン。どうですか綾小路くん、新生生徒会室は!」

 

「パッと見、塗装がキレイになったことぐらいしか変化が見られないのですが……」

 

開校以来そのままだったとのことで、ところどころ汚れや塗装剥がれなどがあったのだがそう言ったものがなくなりピカピカである。

真っ白な部屋にされたらどうしようかと思ったが、それも杞憂だった。

 

「そうでしょう、そうでしょう。でも、この生徒会室は誰もが憧れるあの機能がついています!」

 

「憧れの機能?」

 

「綾小路くん、この本棚の3列目の紫色の本を押し込んでみてください」

 

「これか?」

 

言われた通り押し込んでみたところ、ガガガガガーと音がなり生徒会室正面、会長席の後ろの壁がスライドし、人が一人ぐらい入れるスペースと中から扉が現れた。呆然と眺めていると

 

「さすがの綾小路も理解が追い付かないようだな」

 

「フフフ、そのようですね、会長っ!」

 

「……それで、その扉を開けるとどうなるんですか?」

 

建物の構造的に向こう側は生徒会相談室だ。

何か隠し部屋のスペースがあるとも思えない。

 

「もちろん……」

 

「生徒会相談室に出る」

 

実際に実演してくれる2人。扉の先には生徒会相談室があった。

 

「無駄ギミックでただの通路を作るなんて、税金を何だと思っているんですか」

 

「と、思うでしょ。こっちはフェイクですよ」

 

そう言って橘は、出現した扉の下の床を5回ノックし現れたくぼみのボタンを押す。

すると、床もスライドして下に続く梯子が出現した。

 

「こっちが本命です。さ、降りてみましょう」

 

2人に続いておりると、そこには秘密の部屋と描かれた教室半分くらいの広さの部屋にモニターやら豪華な机、ソファーなどが置いてあった。

 

「このモニターでは生徒会室と相談室の様子を確認することができる」

 

「……マジかー」

 

「生徒会室の下のスペースは、使用していない物置部屋になっていたからな。改装して隠し部屋を作ってみた」

 

「上の扉は南雲君用のカモフラージュですね。彼の事ですから何かあると探って扉を発見すると思うんです」

 

「ただ、南雲の場合、一度決めつけたらそこで考えを放棄する癖がある。扉で満足して床の仕掛けには気づかない」

 

「それでこの部屋、なんに使うんですか?」

 

「予算が余っていたのでロマンで作ってしまいましたが、きっと何かの役に立つはずです」

 

「このことを知っているのはこの場の3人だけだ。俺たちの引退後は、綾小路、お前が信頼できると判断した後輩たちに引き継いで行って欲しい」

 

 

サプライズにもいろいろあるんだなと体験できた数日となった。

 

 

 

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