ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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須藤、部活辞めるってよ

『いや、辞めねーよ』

 

須藤、電話越しで大声はやめて欲しい。

 

『オレたちの出る予定だった試合を何とかしてくれって話だろ』

 

今朝、モーニングコーヒーでも楽しもうとお湯を沸かす準備をしていたら須藤から電話がかかってきた。

バスケ部所属で期待の1年生の須藤は、チームメイトとともに昨日から大会に出場している。

日頃の練習の成果もあり、見事準決勝進出を決め、その準決勝、決勝が今日の昼から行われるはずだったのだが……昨晩、宿で食べた夕食が問題だったらしく、バスケ部全員食中毒で倒れ、緊急搬送。

しばらくの間、病院で安静を余儀なくされた。

 

「その内容でなんでオレに電話してくるんだ?」

 

『綾小路は生徒会だろ。んで、生徒会といえば権力あるんだから、なんかできっだろ』

 

本当に療養が必要なのかと疑わしくなるほどの大きな声。

病院ではお静かにお願いします。

 

「なんかって言われてもな……」

 

『そこはなんかよ、お偉いさんに掛け合ってもらって数日ずらすとかよ、この学校ならできるかもしれねーと思ってよ』

 

さすがにこの学校でも他校が関わる大会で、スケジュール変更を強行するほどの権力はないはずだ。

そんなことをしたら相手チームや応援に来た一般客にSNSで晒されて、誹謗中傷の的になるだろう。

そのまま税金の無駄遣いだとエスカレートしていき、廃校になる。

……それはまずいな。

 

『この試合の成績が秋の全国大会出場に関わってくるんだ。こんなバカみたいな理由で棄権して、これまでの練習を無駄にしたくねぇ』

 

普段、粗暴な須藤だがバスケと堀北妹に対する想いだけは本物だ。

 

「……わかった、あまり期待してもらっても困るが、一度生徒会長に相談してみる」

 

『すまねえ、頼む』

 

ひとまずこの話を終わらせるには形だけでも動くしかないだろう。

須藤から聞いた話を堀北兄にチャットしたところ、生徒会室へ来るように返事が来た。

てっきり馬鹿なことを言うなと一刀両断、取り付く島もないと思っていたのだが……まさか、本当に国の権力を使って大会スケジュールを変更できるのか?

 

生徒会室へ入ると、中には堀北兄の他に、橘、桐山、そして南雲がいた。

 

「さっそくだが、綾小路から連絡があった件で、まず認識を共有するが、その大会のメインスポンサーはこの学校へも多大な支援を行っているお方だ。バスケが非常にお好きらしく、本校の活躍が楽しみだと今日の試合も見学にいらっしゃる。つまり、何が何でも出場し、高育生の実力をアピールしなくてはならない試合となる」

 

国が主体の学校であることが裏目に出ているようだ。

運営資金の確保など、余計なしがらみも多いのだろう。

お偉いさんのご機嫌を損ねれば、予算が回ってこなくなる可能性もある。

とはいっても、どうするのだろうか。

バスケ部は補欠含め全滅。試合の延期などもちろんできない。

 

「そこで、我々生徒会がこの大会に出場することに決まった」

 

とんでもないことを言い出す堀北兄。

桐山たちもさぞ驚いているだろうと見てみると

 

「今回はバスケットボール部ですか。生徒会の力、存分に発揮しましょう」

 

「私は女子なので参加できませんが、カントクは任せてくださいっ!」

 

桐山も橘もノリノリだ。というよりこの状況に慣れているようにもみえる。

 

「綾小路は初めてだったな。生徒会が部活の助っ人をすることは意外と多い。理由はシンプルで、部活の試合と特別試験等が被った場合、当然特別試験への参加が優先されるからだ。その場合、1学年全員が参加不可能となり、出場人数が足らなくなることがしばしば起こる。普通、大会へは選手登録が必要だが、それを見越して生徒会役員は登録なしであらゆる部活の試合へ助っ人参戦が可能だ。今回もその権利を使って我々が代わりに参加するということだ」

 

なるほど。この学校で部活動に入っている生徒は少ない。

その少数で大会にも参加しているため、例えば無人島試験などと被って1学年いなくなると部によっては、かなりの痛手になるだろう。

今回みたいに全滅することは珍しいかもしれないが、人数合わせ要員が必要になる場面は出てくるのかもしれない。

 

非常に面倒な話になってきた。

オレはもちろんバスケなんてしたことがない。

知識としてルールは把握しているぐらいだ。

 

「また、競技によっては生徒会の人数でも足りない場合があるため、生徒会が指名して、その日限りで生徒の中から2名まで追加出場もできる。今回も、生徒会全員が学校を留守にはできないため、殿河たちには残ってもらう予定だ。よって追加の生徒を探さなくてはならない」

 

もはや何でもありだな。

世間ではこのぐらいは普通なのだろうか。

普通を体験してみたくてやってきたこの場所も普通でないのであれば皮肉がきいてるな。

 

「ちょっと待ってくださいよ。堀北先輩、悪いっすけど、俺も学校に残ります。副会長がいた方が安心でしょ。綾小路、お前は言い出したんだから責任もって参加して来いよ」

 

オレの参戦が強制決定された。

それらしいことを言っているが、明らかに面倒ごとを避けたい様子が伝わってくる。

 

「南雲、お前の運動センスは買っている。動けるやつが一人でも多い方が助かるのだが?」

 

「いやー、申し訳ないですが、今朝から調子が悪くて運動とか無理なんすよ」

 

「あ、チャットしたら、一之瀬もマネージャーとして試合に参加してくれるっていってます」

 

「堀北先輩、中学MVPの南雲雅と呼ばれたこの俺の実力、他校の奴らに見せつける時が来たっすね!」

 

「そうか、存分に見せつけてくれ」

 

こうして南雲の参戦も決定した。

 

「綾小路、先ほども言ったがあと2名の生徒の選出はお前に任せる」

 

「どーせ出るからには優勝だ。下手なやつは連れてくんなよ」

 

「わかりました」

 

バスケの試合人数は5人だ。

堀北兄、桐山、南雲、オレでとりあえず4名、あと一人と交代要員としてもう一人を探さなくてはならない。

とはいえ、オレの狭い人脈で、試合が成立するぐらいには動ける生徒……

 

困ったときの平田さん、そして平田と同じサッカー部で運動が得意な柴田あたりでどうだ。さっそく電話してみる。

 

『ごめん、綾小路くん。サッカー部も試合で外出しているんだ』

 

……詰んだか。

 

いや、そういえばあの男がいたな。オレは急いでその男の部屋を目指した。

 

「それで俺に試合に参加しろと?」

 

「ああ。送りたいプレゼントがあるなら、自分の手で出すのが一番だろ」

 

Aクラスの葛城康平へ、そんな提案をした。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

昨日、秘密の部屋ギミックを確認して、生徒会室に戻ってきたときの話。

 

「どうでしたか、綾小路くん。胸が躍ったでしょう?」

 

「……ええ」

 

オレも生徒会に入り、忖度というものを覚えた気がする。

 

その時、生徒会室の扉がノックされた。

 

「どうぞ。お入りください」

 

橘が橘書記になる。

 

「失礼します。お忙しいところすみません」

 

入ってきたのは葛城だった。

その手には、先日ひよりと目撃した時の雑貨屋の袋がある。

 

「実は生徒会の皆さんにご相談があり来訪しました。どうしても家族に送りたい荷物があるのですが、メッセージ等こちらから情報を加えることは致しません。発送の許可を頂けませんか?」

 

この学校は外部との連絡をすべて禁止している。

そのため、家族と言えども、物を送ったり、もらったりすることは不可能だ。

葛城もそのことは承知しているようで、それなら何も情報がなければいいのではないかと確認しに来たようだ。

 

「残念だが、現在の校則ではそれは不可能だ。元々にメッセージを入れないのであれば荷物の発送は可能だったが、過去こっそりと手紙などを忍ばせる学生が出てきたため、現在は禁止となった」

 

「では店で購入したものをそのまま店員の方に住所をお伝えし送っていただくのはどうですか?」

 

「それも同様だ。店員の目を盗んで忍ばせるか店員を買収する可能性がゼロだとは言い切れないだろう」

 

「……わかりました。お時間取らせてしまいすみませんでした」

 

そうしてがっくりと肩を落とした葛城は、生徒会室を出て行った。

 

「気の毒ですが、これもルール。一人の生徒の特例を許して秩序が乱れるのは避けねばいけませんからね」

 

「ちょっと様子を見てくる」

 

真面目でリスクを冒さない葛城がそこまでして荷物を送りたかった理由が気になった。

葛城のあとを追いかけると、足取りが重かったのか、すぐに追いつくことができた。

 

「葛城、少しいいか?」

 

「綾小路か……先ほどの件についてか」

 

「ああ。ちょっと気になってな」

 

「ここで話すのもなんだ、良ければ部屋に招待しよう」

 

そういうことで葛城の部屋に通される。

 

「どうしてそこまで荷物を送りたいのか聞かせてもらえないか?こう見えて副会長になったんだ、何か力になれるかもしれない」

 

「そうなのか。そういうことなら……実は病弱な双子の妹がいてな。両親は他界して、今は遠い親戚に預けられている。その妹の誕生日が近いため、プレゼントを送ってやりたかったのだが……こんな状況だ。アイツを心から祝ってやれるのはオレしかいない。そう思ったんだが……まさかこの学校が荷物を送ることができないとはな。考えの甘かった俺のミスだ」

 

「そういうことだったのか」

 

橘辺りが聞いたら号泣して協力してくれるかもしれないな。

その辺りから切り崩していくか。

対坂柳用の情報源としてこの男に恩を売っておいて損はなさそうだからな。

 

「一度持ち帰らせてくれ。近々連絡する」

 

そういって解散し、今日にでも橘に聞いてみようと思っていた矢先のバスケ事件だった。

 

だが、これは逆に都合がいい。

外に出る機会があるのであれば、前もって着払いの伝票を用意しておき、こっそり抜け出してポスト投函で事が済む。

 

葛城はガタイもいいからな。

運動がどれほどできるかはわからないが、試合でも最低限度の仕事はしてくれるだろう。

 

「そういうことなら俺も出場させてもらおう」

 

「持ち物チェックがあると危ないからな。念のため、プレゼントは弁当箱に入れて、紙袋と配送伝票は水筒に丸めて入れるぐらいの工作は頼んだ」

 

「わかった。荷物の準備をして生徒会室に向かわせてもらう」

 

葛城の参戦が決定した。

 

あと一人のメンバーだが、葛城を勧誘したことでヒントを得ることができた。

残り時間でバスケの経験者を見つけることは不可能に近く、そもそも動ける人間は運動部であるため平田のように参加できない可能性がある。

つまり、部活に入っていないが、葛城の様にフィジカルでごり押しできそうなやつを連れていけば良いのだ。

 

そう言うことなら一目見た時から気になっていた生徒がいる。

直接面識はないため、仲介してくれそうな人物に連絡をするとすぐに返事が来た。

彼の部屋まで案内してくれるそうだ。

 

「お待たせしました。清隆くん、先ほど連絡したところ今部屋にいるみたいなので丁度いいですね」

 

そういってやってきてくれたのはひよりだ。

 

一緒に部屋の前まで移動し、チャイムを鳴らす。

中から出てきたのは

「おはようございます。アルベルトくん、私の友人の綾小路清隆くんが御用があるみたいなのでお連れしました」

 

部屋から出てきたのは学校随一の肉体の持ち主、黒人とのハーフ、Cクラスの山田アルベルトだ。この風貌、いかにもバスケができそうだ。

 

「突然すまない。実はアルベルトにお願いがあってきたんだ」

 

日本語がどこまで通じるかわからないが、気にせず話してみる。

 

「バスケ部が食中毒で倒れてしまって、代わりに試合に出てくれる助っ人を探している。Cクラスにもバスケ部の小宮たちがいるだろう。そいつらにとって今後に関わる大事な試合らしいんだ。彼らの意思を継いで試合に出てくれないか」

 

黙って話を聞き、こちらをじっと見つめるアルベルトはサングラスをしているので何を考えているのか目からは読み取りづらい。

 

「私からもお願いします、アルベルトくん。きっとクラスのためにもなります」

 

ひよりも援護射撃をしてくれる。

 

するとアルベルトは右手を前に出し親指を立てた。

サムズアップだ。絵になるな。

 

「OK!」

 

そう一言発し、了承してくれる。

助っ人外国人枠、山田アルベルトの参戦が決まった。

 

 

良かったな須藤、誰一人バスケ部は出れないが、試合は棄権しなくて済んだぞ。

……秋の全国大会に出たいという須藤の望みを叶えるなら、試合に勝たないといけないのだろうが、素人集団でそれが叶うのだろうか。

高校バスケのレベルがわからないため判断がつかないが

このメンバーならやれそうな気がしてきた。

 

こうしてオレと、堀北兄、桐山、葛城、アルベルト、南雲の生徒会+αのドリームチームが結成しバスケの試合会場に向かうのだった。

 




まさかの二部構成に……メンバー集めだけで一話使ってしまい、申し訳ない限りです。
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