ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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逆襲のアカネ

夏休みってなんだっけ?

オレは今日も生徒会室にいた。

 

「10月に開催の体育祭についてだが、例年生徒会では次世代の育成を兼ねて、1、2年生のみで運営をしてもらう」

 

「私たち3年生は相談役ですね、困ったことがあったら何でも聞いてください」

 

体育祭の大まかな説明を受け、あとは後日1、2年で話し合って進行して欲しいとのことだった。

とはいっても特別試験とは違い、あくまで運動能力が試されるものであるため、決めることと言えば、種目の選考とルール確認、得点配分に問題がないかなどぐらいだ。

 

「さて、今日の仕事も終わりましたので……綾小路くん、そろそろアレをやりませんか?」

 

橘が目を輝かせながらこちらに提案してくる。

 

「アレ?」

 

「人数もいるし丁度いいと思うんです」

 

……なんのことだ?

全く心当たりがない。

 

「忘れたとは言わせませんよ。綾小路くんに辱めを受けて以来、虎視眈々とチャンスを伺っていたんですから!」

 

「辱め!?」

 

一之瀬過剰に反応しないで欲しい。本当っぽくなってしまう。

この人がこういう時は、大抵くだらない話だ。

 

「もー!人狼ゲームをやりたいって言ってたじゃないですか!」

 

ほら、やっぱり。

 

「負けても怒らないでくださいね、なんて失礼なチャットを送ってきたの、忘れてませんよ。私の手でぎゃふんと言わせてあげます」

 

「1つだけ聞いてもいいですか?」

 

「なんですか?」

 

「橘先輩に、オレをぎゃふんと言わせることができるんですか?」

 

「あー!ほらまたそうやってー!こう見えて人狼ゲームは得意なんですからね」

 

人狼ゲームか。船上での干支試験のルール説明時に、例として出てきたゲーム。当然知らないゲームだったため、試験対策を兼ねて橘に聞いたことがあった。ただ、試験が終わった今となっては、別に知らないままでも問題ないのだが……。

この状態の橘をスルーするのは、堀北妹が素直になることぐらい難しいな。

 

「それでどんなゲームなんですか?」

 

諦めて付き合うことにする。

試験に使われたぐらいだ。知識の1つとして学んでおいても損はないだろう。

 

「お、やっとやる気になってくれましたか。信じてましたよ、綾小路くん!」

 

上手く乗せられてしまったというか、お互いお互いの思考がわかり始めてきたのかもしれない。

今回でいうと橘は色々言っていたが、ただ単にみんなで遊びたかっただけなのだろう。

一応、夏休みだしな。

 

「では、早速ルールを説明すると――」

 

村人陣営と人狼陣営がおり、村人陣営は議論をして紛れ込んだ人狼を見つけ出し、人狼を処刑すれ(吊るせ)ば勝ち。

逆に人狼は議論を上手く誘導して正体を隠し、村人の人数と人狼の人数が同じになれば勝ちとなる。

 

各陣営にはそれぞれ能力を持った役職があり、それらを上手く活用することで議論を活性化させる。

 

進行は1日の流れを模してターン制度になっており、

 

昼時間に議論→夕方に処刑する人物を決定→夜に役職有の人物と人狼は能力を使用できる→朝、人狼による犠牲者がいるかどうかわかる→昼の議論……

 

といった形で進めていき、人狼を全滅させるか、村人と人狼の数が同数になるまで続けることとなる。

ゲーム設定にモノを申すのも野暮だが、容赦なく仲間を処刑していくなんて、かなり世紀末な村だな。

 

「なるほど……」

 

「細かいことはやりながら覚えていけば大丈夫ですよ」

 

確かに干支試験と似ている部分があるな。

……いや、もしかすると逆か。干支試験は人狼ゲームを元に作った試験かもしれない。

堀北兄曰く、生徒会が特別試験を作ることも可能という話だった。

過去、人狼ゲームが大好きな、橘みたいな生徒が特別試験にしたら面白そうと学校側に提案し、それが採用されたとか。

でなければ、わざわざ真嶋先生の口から人狼ゲームみたいなものだ、なんて説明は入らないだろう。

真嶋先生が人狼ゲーム好きなら話は変わってくるが……。

 

今後のことを考えると、色々なゲームに取り組むのは試験対策や試験を作る上で悪くないのかもしれない。

 

「それでは試しにやってみますか!今回はこの人狼アプリを使います。1台を使い回すこともできますが、プライバシー面を配慮して持ってない方はダウンロードをお願いしますね」

 

いつの間にか全員参加することになっているが……。

 

「人狼ゲーム、クラスでもたまにやるんです。面白いですよね!」

 

「橘、やるからには容赦せんぞ」

 

「堀北先輩。これも勝負っス。陣営が分かれたら、どっちが陣営を勝利に導けるか、競いましょう」

 

「南雲、堀北先輩に勝つのはお前でも無理だ」

 

全員ノリ気だ。

生徒会の仕事ばかりだったから、みんな羽を伸ばしたかったのか?

意外なことにアプリを持っていなかったのは、堀北兄とオレだけで

後は全員所持していた。学校で流行っていたのだろうか……。

少なくともDクラスでやっている人間を見たことはなかったのだが、情報源がオレでは信用もないだろう。

 

参加者は、堀北兄、橘、桐山、溝脇、殿河、一之瀬、オレ、南雲の8人となる。

 

「まずは初心者の綾小路くんもいるので、役職は村人4人、占い師1人、狩人1人、人狼2人のシンプルな形でいかがですか」

 

橘の提案に一同は賛成する。

オレもよくわからないが頷いておいた。

橘は少なくともここで何か策略を立てる人間ではないので、善意での提案だろう。

 

そうして人狼ゲームがスタートした。

 

オレの役職は……「村人」か。しばらく様子見をさせてもらおう。

 

「まずは昼の議論ですね。とはいっても初日は情報が少ないので大体フィーリングになってしまいますが……」

 

「ハハッ、初日を捨てるなんてもったいないっすよ。こんなのは感覚で嘘言ってるやつわかるもんですって」

 

南雲、言ってること橘と一緒じゃないか?

 

「そうだなー、帆波、お前は人狼か?」

 

「え?村人ですよ」

 

「うん、白だな」

 

「殿河、溝脇も違うだろ?」

 

頷く2人。

 

「となると……堀北先輩、怪しいっすね」

 

「お前がどう思おうと勝手だが、俺を吊るすことは勧めない」

 

「へえー、じゃあ何か役立つ役職持ちなんっすかね?……おいおい、綾小路全然しゃべってねぇな、お前人狼なんじゃないか?」

 

「ひどい言いがかりですね」

 

「素人ってのは人狼になったとき、途端黙るもんなんだよなぁ?」

 

「その理屈でいうと、経験者でしゃべりまくってる南雲先輩も怪しいのでは?」

 

「……」

 

と、ここで昼の議論タイムが終了し、夕方の投票時間となった。

 

アプリ画面で誰に投票するかを決定する。

もちろん、南雲一択だな。

 

投票受付後、処刑された人間の名前が出てくる。

 

『南雲』

 

「おいおい、全員見る目がないぜ……このゲーム終わったな」

 

やれやれ、といった様子の南雲。

うるさかったので投票しといたのだが、きっと正解だったな。

 

そんなこんなでゲームを進行していき、結果、人狼は南雲と桐山だった。

1戦目は『村人陣営の勝利』となる。

 

「それじゃ、綾小路くんもルールを覚えてきた頃でしょうし、皆さん、ここからは本気で行きましょう。役職も村人を1人減らして、狂人を追加しますね」

 

狂人は、人ではあるが人狼側の陣営で、特殊な能力はないものの人狼側が勝利となれば自分も勝ちになる。

ただ誰が人狼かはわからないため、人狼の予測を立て庇うことで、議論を混乱させる……らしい。

 

突然、そんなややこしい役職を入れてくるとは……。

 

そうして、2戦目、3戦目とゲームを続けて行ったのだが……

初日に必ず吊るされる南雲。

 

「いくらなんでも酷すぎないっスか?帆波は俺のこと信じてくれてるよな?」

 

「もちろんですっ!」

 

「だよな。先輩方、俺が脅威なのは理解できますが、お手柔らかにお願いしますよ」

 

素敵な笑顔で肯定する一之瀬。

ただ、本人を除いた7票のうち、過半数を超えているから吊るされているわけで、殿河、溝脇が南雲に入れないことを考慮すると

高確率で一之瀬も南雲に投票しているのではないだろうか。

 

変化が訪れたのは4戦目だった。

 

オレの役職は「占い師」か。

初めて役職持ちになったな。果たしてどう動くのが正解なのだろう。

 

「さすがに南雲くんが可愛そうですから、初日に誰かを吊るのはやめましょうか」

 

「それがいいと思います。私も賛成です」

 

「俺も異論はないです」

 

「橘先輩、あざっす」

 

橘の提案に、一之瀬、桐山が賛同したことで、南雲の延命措置が決定した。

こんなあっさり助かるなら、何のために今まで南雲は吊るされていたんだろうか。

 

その協定通り、初日の議論では誰かを処刑にすることはなく夜時間を迎える。

 

占い師の能力は、選んだ1名の役職を知ることができるというもの。

昼間の議論では怪しい人物はいなかったため、とりあえず適当に桐山あたりを選んでおくか。困ったときの桐山さんだ。

 

桐山は『村人』だった。

 

 

翌朝。

 

『桐山』が無残な姿で発見された。

 

「初日は桐山君が犠牲になりましたか……惜しい人を失いました」

 

「桐山は冷静な男だ、人狼側も先に始末しておきたかったのだろう」

 

「まぁいなくなったやつのことはイイじゃないっスか」

 

「……あの、議論を円滑にするために役職をカミングアウトしませんか?」

 

一之瀬が恐る恐る挙手をしながら提案する。

 

「それもそうだな。占い師は出てきてもらえるとありがたい」

 

堀北兄が一之瀬の発言を受けて全員へ促す。

だが、ここでおいそれと名乗りを上げると、人狼に狙われる可能性が高い。

狩人が毎晩1名人狼から守ってくれるらしいが、桐山が狩人だった場合、詰むだろう。

どうしたものかと考えていると

 

「実は、言い出しっぺの私が占い師なんです。狩人の方、お願いしますね」

 

そう言い出したのは一之瀬。

 

「いえ、それはおかしいです。なぜなら占い師は私ですから」

 

と、橘も占い師を名乗りでるというおかしな状況できた。

 

「この2人のどちらかが占い師か?」

 

堀北兄が進行していく。

オレも名乗り出た方がいいか?

だが……オレが占った桐山はすでにいない。

つまり、ここで名乗り出ると誰にも信じてもらえず、即吊るされる可能性がある。

それは避けたい。

 

「一之瀬さん、出番がないからと無理やり出てくるのはいけないと思いますよ?」

 

「そっくりそのままお返ししますよ、橘先輩」

 

2人がバチバチ火花を散らす。

なんだか珍しいな……そういえば2人とも遊び関係には本気になるタイプか。

 

「ちなみに各々誰を占ったんだ?」

 

「私はもちろん会長です。会長は人狼ではありませんでした」

 

というのは橘。

 

「えっと、私は南雲先輩を。南雲先輩も人狼じゃなかったです」

 

一之瀬は南雲を占ったという。

 

これはマズい状況になりそうだ。

本物の占い師が名乗り出ないとこういう展開になるのか。

 

堀北兄は自分の潔白を証明した橘を信じるだろうし、南雲は一之瀬を信じるだろう。

だが、実際はどちらとも人狼か、もしくは片方が狂人だ。

人狼同士はお互いが人狼だと把握しているため、わざわざ2人とも占い師だと名乗り出るのはリスクがある。

大胆な策でなければどちらかは狂人だと思うのだが……。

 

「さすが帆波だ。オレは帆波を信じるぜ。間違いなく占い師だ」

 

ほら、南雲はもうダメだ。

南雲と一之瀬が人狼で結託している可能性もあるが……あの南雲のニヤけた顔を見るに違うだろうな。

 

「どちらかが嘘を言っているのは間違いないが……俺も村人だ。だが、だからと言って橘が白だとは限らない。判断材料が不足している」

 

「占い師の追及はともかく、もう1人の人狼が誰かを考えるのが先ですかね」

 

ここでオレも発言をしておく。

あえて占い師であることは伏せて進めてみることにした。

 

橘と一之瀬は人狼側確定。

桐山は村人だった。

残りの、堀北兄、殿河、溝脇、南雲の中にもう一人の人狼がいるはず……。

 

本物の占い師のオレ視点でいえば、怪しいのは人狼から白をもらった2人のどちらかになる。

だが、南雲はあのニヤケ面をみるに、人狼ではなさそうだ。

人狼であれば間抜けすぎる。

 

よって、堀北兄が怪しい。

何とか切り崩す必要があるのだが……。

 

現状だと村人側が不利になってしまっているが、相手にも弱点はある。

オレが名乗り出なかったため、人狼は狂人の事を本物の占い師だと思っており、狂人もまた相手を本物だと思っていることだ。

 

「オレには一之瀬が嘘をつくとも、南雲先輩が人狼であるとも思えませんね。そうすると堀北会長が怪しいと思うのですが、橘先輩、嘘をおっしゃいました?」

 

「そ、そ、そんなことないデデデすヨ~」

 

この人、人狼ゲーム得意とか言ってなかったか?

 

「綾小路に同意するのも癪だが、橘先輩、確かに怪しいっすね」

 

「そうです、本物の占い師の私としてもおかしいなって思います」

 

おそらく狂人であろう一之瀬側について、同士討ちで堀北兄&橘を沈めてしまえば、こちらの勝ちが見えてくる。

奇しくも1、2年初の協力体制になったな。

 

「いや、それこそおかしな話だ。南雲を白だと決めつける理由はなんだ、綾小路?」

 

「理由も何も、この南雲先輩の顔を見れば一目瞭然でしょう?」

 

「綾小路、お前もやっとこの俺の偉大さがわかってきたか」

 

「……確かに、これが南雲の演技なら大したものだ」

 

南雲は一之瀬から白を出してもらえたことによる喜びが顔面に溢れていた。

これまでほとんど相手にしてもらえてなかったからな、よほど嬉しかったのだろう。

 

「だが、落ち着いて考える必要がある。少なくとも今晩、占い師は人狼から攻撃されることはなくなった」

 

片方の占い師が人狼にやられれば、必然生き残った方の占い師が人狼ということになる。

 

そのため今晩直ぐに処理されることはない。

とはいっても、変に占われてもう一人の相方を見つけられたらマズいため、早急に処理する必要が出てくるのも事実。

勝負を仕掛ける時は、あと1~2名村人側が減ってからだろう。

 

「ならば、あえて1日泳がせて他のメンバーを占ってもらいたい」

 

「じゃあ夕方の指名はどうするんっスか?」

 

「無理して吊るす必要はないだろう。人狼を外した場合、狩人が上手く防がなければ翌朝は村人3人、人狼2人の計5人だ。村人に狂人が混ざっていた場合、そこから逆転するのは非常に困難になる。だが、ここで吊るさなければ翌朝は村人4人、人狼2人と逆転はできる」

 

というのが堀北兄の見解。オレが真の占い師であることを知らないため、そういう発想になるのは自然ではあるが、堀北兄が人狼であるため夕方に吊るされないための延命を図っているようにも思える。

 

「堀北先輩はこういうとき守りに入りがちっスよね。絶対に橘先輩が人狼なんっスから、今日吊るしておいた方が安心ですって。ただ、橘先輩が人狼だった場合、堀北先輩の立場も一気に怪しくなりますケド」

 

どちらかというと南雲の意見に賛成ではある。

橘が人狼であれば、翌日は村人4人、人狼1人の5人となり、一気にチャンスとなる。

オレを除いて、一之瀬(恐らく狂人)と南雲が人狼ではないため、堀北兄か殿河、溝脇のうち生き残ったうちの2人のどちらかが人狼となるだろう。

 

「待て。橘を吊るして本当に人狼だったとしても、その夜、一之瀬が人狼にやられる可能性が高くなる。そうすれば占い師が全滅だ。それは得策ではないだろう」

 

人狼にとって、片方の占い師(偽)がいなくなれば、占い師(真)を生かしておくのはデメリットしかない。余計な占いをする前に消しておくのが一番だ。

 

「わ、私のことは狩人の方が守ってくれると信じています。そうすれば、占いもできて人狼も一人減って、村人の勝ちが見えてくると思います」

 

こう主張すれば、狩人は一之瀬を守る。人狼も守られている相手を狙うより、守られてない人間、できれば狩人に的を絞って襲撃したいところ。普通ならそれでいいのだが、一之瀬も偽物の占い師である以上、守ることのメリットは少ない。

 

しかし、そうなると南雲は今晩人狼にやられる確率が高いのか。

一応、白認定されてるしな。本人は気づいているのだろうか。

とはいっても所詮確率の話、オレが狙われない保証はどこにもない。

ここは狩人を生贄に差し出すか。

 

「オレもその方がいいと思います。ただ……狩人が桐山先輩だった場合は話が変わってきます。一之瀬が心配です」

 

「綾小路くん……ありがとう」

 

オレの心配に感動したかのように、うるうるとこちらを見つめてくる一之瀬。

偽の占い師であると知っていなければ騙されてしまうところだ。

『善人=嘘をつけない』なんてことはなく、一之瀬の演技力も油断ならないな。

ただ、この場合のいつもの一之瀬なら、俯いてしまい、こちらの目を見て伝えることはできない、そんな気もする。

 

「帆波、安心しろ。狩人は絶対お前を守ってくれるサ」

 

「はい、そう信じてます」

 

ウインクをしながら一之瀬にそう伝える南雲。

……人狼さん、南雲が狩人です。やっちゃってください。

 

昼時間が終了し、夕方になる。

 

ここでは案の定『橘』が吊るされた。

 

「すまない、橘」

 

守り切れなかったことを悔やむ堀北兄。

やられた人はしゃべることができないため

橘は『いいんですよ、会長。会長は生き残ってください』といったようなジェスチャーをしている。

 

確かに、南雲が吊るすと言った時点で、南雲フレンズの殿河、溝脇は従うだろうからな。

そこに一之瀬の票が入るため、元々どうしようもなかった。

 

「ぎゃふんと言わせることはできませんでしたね」

 

しゃべることはできないため『ムーッ!!』と頬を膨らませて抗議してくる橘。

 

夜時間になる。

 

ここは堀北兄を占ってゲームを終わらせてしまおう。

 

堀北兄は『村人』だった。

 

どういうことだ……。

橘は村人である堀北兄を白にして味方にしていただけだった。

その意図はなんだ。潜伏しているもう一人の人狼を信頼しているからか?自分が名乗り出ることであえてヘイトを買っていたのか?

 

だが、あと一人は、殿河か溝脇のどちらかということになる。

この先輩たちは一切セリフがないため正直判断できない。

というか読者からしてみたら性別すらわからない。

 

もう1日生き残って占うことができれば、答えがわかるのだが……。

答えがわかったところで、もう手遅れかもしれない。

 

朝になる。

 

『溝脇』が無残な姿で発見された。

 

あえて南雲を生かしているあたり、人狼側の作戦が見えてきた。

 

「ま、これでゲーム終了ですね。あとは堀北先輩を吊るすだけ。この勝負もらいましたね」

 

「南雲、お前なぜ自分がまだ無事か考えているか?」

 

「この状況で考える必要もないでしょう。混乱させようとしても無駄っスよ」

 

南雲は完全に人狼に翻弄されている。

堀北兄への対抗心、初の一之瀬からの支援、これまでずっと初日に吊るされていた……すべては計算されていたのか。

 

オレが堀北兄側についても、2対3でどうしようもない。

 

夕方、『堀北兄』が吊るされた。

 

が、勿論ゲームは終了しない。

 

「マジかよ、人狼のヤツにはめられたのか?」

 

「でも、これで私たちの勝ちが決まりましたね。さっきは占った溝脇さんが襲われてしまいましたが、あとは殿河さんか綾小路くんを占えばいいんですから」

 

「それもそうだな」

 

夜時間。

もはや占いなど無意味だが、殿河を占ってみる。

 

殿河も『村人』だった。

 

オレは初手で大きな勘違いをさせられた。

どうやら狂人も人であるため占い結果は『村人』と出るのだろう。

そしてこの中にすでに狂人はいない。初日に人狼の手であえて消されていたのだから。

 

翌朝。

 

『殿河』が無残な姿で発見された。

 

「綾小路、上手く潜伏したもんだな。やけに俺たちを庇うと思ったらそういうことか」

 

「南雲先輩、無駄だとは思いますが、一応お伝えすると、オレは本当の占い師で、人狼は……『一之瀬』ですよ」

 

「馬鹿を言うんじゃねえ。俺と帆波が2人で生き残るからって嫉妬か?」

 

「いえ、もうこうなってはどうすることもできません。諦めます」

 

「殊勝なことだ」

 

「綾小路くん……」

 

一之瀬が意味ありげにこちらを見つめてくる。

……そういうことか。まぁ最後に今回の戦犯を懲らしめておくのも悪くないか。

 

夕方、吊るされたのは『南雲』だった。

 

こうして4戦目の人狼ゲームは『人狼側の勝利』で幕を閉じた。

 

「嘘だろ、どういうことだ、説明しろ、綾小路」

 

「結果のままです。喜んでいる2人の様子を見ればおわかりでしょう」

 

「やりましたね、一之瀬さん!」

 

「はい、橘先輩!」

 

「南雲、どうやら俺たちは最初から2人……いや、3人の罠に嵌められていたようだ」

 

堀北兄も状況が読めていたようだった。

 

「すみません、堀北先輩。橘先輩にお願いされて断り切れず……」

 

「気にするな、桐山。おかげでなかなか面白いゲームになった」

 

「ふふふ、どうでしたか綾小路くん」

 

勝ち誇る橘。

 

「こんな形で勝って満足ですか?」

 

「私の目的は綾小路くんをぎゃふんと言わせること、どんな手を使ってでも……最終的に、勝てばよかろうなのだでぇーすっ!」

 

「……その考え方には同意しかありませんね」

 

勝つために一之瀬と桐山を懐柔し、その過程で自分が吊るされても、最終的に人狼として勝利していた橘。

最後に自分が勝っていればいい。本当にその通りだ。

 

気づこうと思えばヒントはあった。

堀北兄とオレが持っていない人狼のアプリを、あの桐山が持っていた違和感。

ずっと南雲が吊るされていたのは、橘、一之瀬、桐山の3人が人狼と狂人になるまでの調整か。そして、自分が該当職になったのを南雲を吊るすのやめる発言に同意するかどうかで探っていたなどなどおかしな部分は結構見られた。

 

南雲、便利すぎるな。

 

そこを見逃し続けた時点でオレたちの勝ちはなかったわけだ。

人狼ゲームが得意といったのは本当だったんだな。

 

「では、綾小路くん、一言お願いします」

 

「……ぎゃふん

 

「やりましたー!これで今日はぐっすり眠れますね」

 

実に面白い経験をさせてもらったので、このぐらいサービスすることにした。

 

「ちっ、占い師のお前がもっと仕事していたら勝ててかもしれないんだぜ?」

 

オレが占った相手、全員翌日に死んだんだよな……。

決して呪詛師とかではないはずなのだが。

 

「まぁ現実でもゲームでも占いは当てになりませんから」

 

「……待ってください、綾小路くん。いまのは聞き捨てなりませんよ」

 

「何がですか?」

 

「占いは当たります!丁度、ケヤキモールにめちゃくちゃ当たる占い師さんが来ているので、今から一緒に行きましょう。もちろん、一之瀬さんも来ますよね?」

 

「は、はい。実は、私も占い大好きなんです」

 

……一之瀬が俯きながらしゃべっている。

なんだか、強引な話の展開だと思ったが、一之瀬が橘に協力したのは、このためか。

よほど生徒会で占いに行きたかったんだな。今後の活動運でも占ってもらいたいのだろうか――ということにしておこう。

 

「そういうことなら俺も連れて行ってくださいよ」

 

「南雲くんもですか?」

 

「俺も占いに興味あるので」

 

「うーん。まあいいですよ、みんなで行きましょう!会長はどうします?」

 

「悪いが俺は少しここで仕事をしておきたい。4人で楽しんでくるといい」

 

「そうですか……じゃあこの4人で占いにゴーです!」

 

こうして、奇妙なメンバーでこれから占いをしに行く事が決まった。

 

 




更新時間が大幅に遅れてしまい申し訳ないです。
人狼ゲームをやりたいなんて言い出した、橘先輩のせいですね。

責任転嫁はこのぐらいにして、何度かやったことあるし、人狼ゲームの展開くらい書けるかなと思ったら想像以上に頭を使わないといけないことに気づいた深夜。

原作にある占いの話に持っていくきっかけ作り(原作のきっかけ須藤は、まだ入院中のため不可)で、占いと以前橘に話を振っておいた人狼ゲームの占い師を繋げて話を作る、というアイディアだけで放置していたツケが回ってきました。今日が休日でよかった……。

結果、この時間、文章量、しかも占いまでたどり着けないことに……。情けない限りです。

明日からはいつも通りの更新時間の予定です。
今後ともよろしくお願いいします。
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