ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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それぞれの夏休み~女難の日~

「――以上が体育祭ルールの概要だ。ここまでで何か意見があるやつはいるか?」

 

南雲先輩の進行で、私たち生徒会の1、2年生は、体育祭のルールに問題がないかの確認を行っていた。

 

全学年通して、クラスで赤組か白組に分けて競い、組の成績と学年別に成績で競うルール。勝った組に所属して学年でも2位以上でないとクラスポイントが増えないので、なかなか厳しい試験になりそうだ。

 

それにしても……どこかのクラスと一緒の組になるんだ……できればあやの――Dクラスと一緒だったらいいな。

無人島で共闘したこともあって連携も取りやすい。学年でもトップクラスの運動能力を持つ須藤君や、うちのクラスで一番運動ができる柴田君が褒める平田くんもいる。

そしてなんと言っても、実はスポーツ万能の綾小路くんまで仲間になってくれれば、団体競技は断然有利だ。

 

そんなことを考えていると、綾小路くんが挙手をして話し始めた。

 

「当日の欠席についてのペナルティを考える必要がある、のではないでしょうか。このままだと仮病で休む生徒がいてもおかしくありません。元々身体的理由やケガ、病気等で運動ができない生徒を除き、もし欠席を希望する場合は医師による診断に加え、当日までの生活の様子等を加味して判断。もし、仮病等虚偽の申告であった場合は著しく意欲のない生徒として退学を検討する、というルールの追加を提案します」

 

私が体育祭の妄想をしている間に、ちゃんと仕事をしている綾小路くん。

いけない、いけない。私もしっかり仕事をしなくちゃ。

今は生徒会の一之瀬帆波。

クラスのリーダーやただの女の子でいるのは、この時ではない。

 

「確かに、綾小路の危惧していることはとてもよくわかる。オレもその案を支持したい」

 

桐山先輩が賛成する。どうしたんだろう、普段はクールなイメージな先輩なんだけど、この時だけやたら熱がこもっていたように感じた。

 

「……自分のクラスのマイナスになる行為をするやつなんて、と思ったが、なるほどな。その方が2年としても少しは楽しめることになるかもしれない。その案採用してやるよ」

 

そんな感じで話は進んでいき、競技別のルールの確認になった。

これは各々担当を分けるらしく、全員参加のモノを除き、自分が担当した種目にはでることができなくなる。

 

「帆波、お前には借り物競争の担当を任せる。借りるもののリストを考える必要があって大変だが、帆波ならできるサ」

 

「はい。頑張ります」

 

借り物競争のお題かぁ。どんなものがいいだろう。

面白くするなら、簡単なものばかりじゃなくて、難しいものや意外なもの、ちょっと恥ずかしいものもいれるといいかもしれない。

……例えば、『好きな人』とか。

『友達10人』は簡単に集められる枠で入れて、難しいのは、校舎まで取りに行く必要があるものとかどうだろう。

でも中には見つからない場合もあるから、その時は引き直しも可能にした方がいいかな――

 

そうやって色々考え、決めていき、今日の仕事が終了した。

時間はお昼過ぎ、頭をたくさん使ったからお腹もペコペコだ。

 

「綾小路くんっ!ケヤキモールにスイーツ中心のビュッフェがあって美味しいってきいたんだけど、これから一緒に行かない?」

 

「ああ。いいな」

 

快く承諾してくれる綾小路くん。

彼が学校生活でやりたいことを見つける協力、ということで色んな提案をしてみるんだけど、綾小路くんのそれまでのイメージとは違って積極的に参加してくれる。綾小路くん自身、答えを見つけたいことなのかもしれない。

 

そして私には密かな目標があったりする。

それは綾小路くんを笑顔にすること。

いつもビックリするぐらいポーカーフェイスの綾小路くん。

一緒にいるうちに、あ、今楽しんでそうだな、あ、今ちょっと面倒くさそうだ、みたいなことは何となくわかるようになってきたんだけど……結局彼の表情が大きく変わることはない。

 

だから、この活動を通して、たくさんの楽しいを経験して笑顔になってもらう。

全然ゴールは見えないけど、それだけやりがいもあるってことだよね。

 

今日は試しにスイーツを食べてもらおう。

甘いものって幸せな気持ちになるから、綾小路くんにも効くかもしれない。

さぁたくさん食べさせるぞー!

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「佐倉ちゃん、なんか難しい結果だったね?」

 

「ううう、そうだね」

 

今日は篠原さんに誘われてよく当たるらしい占いにやって来た。

私のどこを気に入ってくれたのかわからないけど、よく遊ぶ関係に。

これまで占いを誰かと一緒に行くなんて、考えたこともなかった。

 

篠原さんの勧めで恋愛について占ったんだけど……結果は本当によくわからない。

 

大きな苦しみと別れを乗り越えて、人として大成するか

今頑張って成長して想い人と学生生活を共にするか

 

占い師曰く、大きな選択の時だという。

 

1つ目があまりに不穏過ぎて本当に恋愛の占い結果?なんて思ったんだけど……。

逆に2つ目はそれっぽくて、頑張れば……これからも綾小路くんと一緒に居れるってことだよね。

 

「でも、私なんて『クラスの中にいるお調子者なんか合いそうじゃ』とかテキトーな感じだったから、羨ましいかも」

 

「クラスでお調子者っていうと……池くんとかかな?」

 

「ないない、ぜーたいあり得ない。アイツね、ひどいんだよ、この前も私の悪愚痴言っててさ……あ、でもそのあと真剣に謝ってくれたけど……いやいや、プラマイゼロだわ」

 

「ふふふ、そうだね」

 

案外占い師の言っていたことも馬鹿にならないのかもしれない。

 

「問題は佐倉ちゃんの方だって。今、頑張らないとまずいってことだよ」

 

「……うん」

 

「相手はあの一之瀬さんだよ?無人島では一緒に星を見に行ってたとか、夏休み中もよく二人でいるとか色々噂があるんだから、佐倉ちゃんもぼさっとしてちゃだめ」

 

「うぅぅ……それはそうなんだけど」

 

一之瀬さんみたいな明るくて頭も良くてその上可愛い女子に勝てる未来は想像できなかった。

 

「大丈夫!見た目では佐倉ちゃんも全然負けてない。堀北さんと噂があったときは、ああいうタイプが好みかぁ、ダメかもって思ってたけど、一之瀬さんがタイプならこっちにも希望があると思う」

 

「そ、そうかな?」

 

「全然いけるって、あれから料理の特訓もしてるし、男なんて胃袋掴んじゃえばこっちのもんだよ」

 

「う、うん」

 

「よし、さっそく夕飯に誘っちゃおう。チャット送っちゃいな。私たちはこれから食材選び!私も手伝うし、たくさん美味しい料理ふるまってあげなよ」

 

断られるんじゃないかってちょっと怖かったんだけど、流されるまま綾小路くんに連絡したら、意外なことにOKをもらえた。自分一人じゃそんな勇気でなかったから、本当にありがたい。

 

「ありがとう篠原さん」

 

「いいってことよ」

 

綾小路くん、どんな料理だったら喜んでくれるかな。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「退屈です、真澄さん」

 

「人の事呼び出しておいてそれはないんじゃない?」

 

「これからいささか面倒なお話が待ってるんです、その前に何か楽しいことがあってもいいと思いませんか」

 

夏休みも終盤、クルーズ後は一度も綾小路くんに会えていません。

学校も今月はもう特別試験をなさらないようですし、早く雌雄を決する勝負をしたい身としては、ずっと生殺し状態でいけません。

 

そんな状態なのに今日は葛城くんから呼び出されてしまい、こうしてカフェで彼が来るのを待っています。

 

「坂柳、今日は時間を作ってもらって悪かったな」

 

「いえ、他でもない葛城くんからのお誘いです。無下にはできませんよ。それでご用件は?」

 

彼の事ですからクラスの方針など、どうせ退屈なお話でしょう。

無人島で醜態をさらし、船上で実力差を見せつけて差し上げたのに、まだリーダー気取りとは見苦しいです。さっと済ませていただきたいものですね。

 

「クラス内でお前とは対立してきたが……オレはしばらくお前の下についてみようと思う。お前さえよければだが」

 

「それはそれは……どういった心境の変化で?」

 

予想外の提案、何かの罠でしょうか?

しかし、この葛城さんはそう言ったことをする手合いでもございません。

 

「オレは自分の力を過信しすぎていた。……この前生徒会の皆さんとバスケの試合をご一緒させていただいたんだが……一言でいうと常軌を逸した方々だった」

 

「生徒会の方々と?」

 

葛城くんにしては面白いことをなさっていたようです。

私に隠れて綾小路くんと一緒に何かをするなんて……。

 

「ああ。堀北会長も、南雲副会長も計り知れない実力だった。……いや、試合中、一番驚かされたのは綾小路だったが。あいつは本当にすごかった」

 

「その話、大変興味がありますね」

 

「今の俺じゃ、なれても桐山先輩ぐらいまでだ。あの人たちには届かない。だから、身近にいる天才のお前から色々学ばせてもらって、生徒会が次の代になったらまた挑戦しようと思う」

 

「そっちの話はいいんです。もっと試合中の話をしてください」

 

「……その話をしたら、俺のお願いを聞いてくれるのか?」

 

「もちろんです。さあはやく、そして詳しくお聞きかせください」

 

入学当初はひまつぶしに葛城くんで遊んでいましたが、綾小路くんがいるとわかってからは正直どうでもよくなっていたことでもあります。

ひとまず手駒になってくれるならそれでいいでしょう。

 

それよりも今は綾小路くんの活躍を聞くことが最優先。

全く、葛城くんにしては面白い話を持ってきてくれるではありませんか。

 

「――というような感じだ。綾小路のおかげで逆転できた」

 

「大変素晴らしい情報をありがとうございます。今後、Dクラスと戦うことがあれば、その綾小路?という生徒には注意しなくてはなりませんね」

 

「そうだな。一筋縄ではいかないだろう。今日のところはこれで失礼する。2学期からよろしく頼む」

 

「ええ。葛城くんの活躍に期待していますね」

 

なかなか充実した時間を過ごすことができました。

 

「アンタも物好きね……って噂をすればアレあいつじゃない?」

 

「真澄さん、すぐ確保してきてください。私はもてなす為に美味しそうなスイーツをたくさん頼んでおきます」

 

「ほんと人使い荒いんだから……」

 

ふふふ、今日はとっても素敵な一日ですね。

さっそく初めてのバスケットボールの感想をお伺いしましょう。

彼が何を感じ取ったのか、大変興味があります。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

部屋のドアが開く。家主がやっと帰ってきた。

 

「お帰りなさい、綾小路くん。ごはんにする?お風呂にする?それとも……堀北さん退学にする?」

 

田……なんでいるんだ?」

 

「えー、合鍵持たせてくれてるってことは、いつでも来ていいよってことだよね」

 

「見解の相違だな」

 

三バカのやつらと一緒に作った綾小路くんの部屋の合鍵はいまだに返却していない。

普通ならあり得ない行為でもあの馬鹿たちのせいにできるから都合が良かった。

 

「遅くまでお疲れ様。生徒会の仕事?」

 

「それもあった。その後色々あったのち、ちょっとお呼ばれして、帰って来たところだ」

 

「ふーん。でも晩御飯まだでしょ。たくさん作っておいたから一緒に食べよっ?」

 

食事を共にするって心理的に相手との距離を詰めやすくなるのよね。

美味しい体験、幸せな体験をしたことに、一緒に居た相手が紐づけられるから。

 

だから、こうして料理を振る舞いながらコイツの機嫌をとる。

そうでもしないと、私のお願いを聞いてくれることはないだろう。

 

「噂で聞いたんだけどさ、綾小路くん、副会長になったんだっておめでとう!今日はそのお祝いだよー」

 

「さすが田だな、そんなことも知っているのか」

 

「最近の綾小路くんは有名だからねー。入学当初が嘘みたい」

 

「望んでこうなったわけじゃないんだがな」

 

「それはそれですごいよー。さ、温めなおしたから遠慮なく食べてね」

 

といったものの、なかなか箸をつけない綾小路くん。

どうしたものかと様子を見る。

 

「これ食べたら、『私の手料理食べたんだから堀北退学にしろ』とか言わないよな?」

 

「やだなぁ、そんなこと言うわけないよー。純粋な日頃の感謝の気持ち。料理を振る舞うのにそんなこと言う人いたらサイテーだね」

 

「そうか……なら、いただく。……うん、美味いな」

 

「ふふ、お口にあって良かったよ」

 

美味しいなんて当然でしょ。

私の料理を食べれること、泣いて喜ぶくらいしなさいよね。

 

「……ここでは2人だけだ、田も無理しなくてもいいんだぞ」

 

「何のことかな?」

 

「いや、口調とか仕草とか……そうしてるだけで疲れるんじゃないかと思ってな。オレはあっちの田でも気にしないぞ」

 

「はぁ?アンタも物好きね」

 

「物好きかはともかく、その田の方が話しやすいことは事実だな」

 

おかしなことを言うやつだ。

人に好かれるために洗練していった表の顔より、こっちの方が話しやすいなんて。

……ドMなの?

 

「ま、いいわ。そっちが希望したんだから、こっちの話に付き合ってもらうわよ。この前さ、わざわざ井の頭の誕生会開いてやったのに、私も平田くんからのプレゼント欲しかったとか訳の分かんないこと言ってんの、マジふざけてるわよね。他にも――」

 

せっかくなのでこの夏に溜まったストレスを全部ぶつけてあげた。

私のことをおちょくった罰だ。

むしろドMならご褒美になったかもね。

 

……って私なんでここに来たんだったっけ?

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

散々色んな愚痴をぶちまけて、食事を済ました後、食器を洗って田は帰宅した。

 

何というか、こういうのって、なんで同じ日に重なるんだろうな……。

 

一之瀬と沢山スイーツを食べたまでは良かった。

その後、坂柳に捕まり、ケーキをいくつも食べることとなり、

解放されたと思ったら、佐倉が立派な夕飯をたくさん作ってくれていた。

あの佐倉がここまでしてくれたんだと残さず美味しく頂いたが……

トドメとばかりに田まで。

 

 

しばらくは食べ物を見るのも嫌になりそうだ。

 

 

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