ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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思惑の混戦

障害物競走。

 

平均台を渡り、網を潜り抜け、頭陀袋に両足を入れてジャンプで移動、ラストは50m走ることになる。

 

平均台は1組8人に対して3つしか設置されていないこと

網の中や頭陀袋での移動中は自由が利かないこと

 

オレが効率よく相手を仕留めるとすれば、この競技を利用するだろう。

もっとも、一番攻撃しやすいのは棒倒し中ではあるが、すでに事なきを得ている。

 

オレは6組目だが、それまでの須藤、平田のレースでCクラスが何かをやってくる様子はなかった。

考えすぎでなければ、的をオレに絞ったということか。

6組目、Cクラスは龍園と近藤が出場する。

 

「綾小路、流石に3回も一緒ってのは偶然にしちゃ出来すぎてないか?まるで出場表でも流出したんじゃないかって心配になるぜ」

 

「何のことだか。単純にオレの運がないんだろ」

 

「クク、運がねえのはお前の仏頂面を拝み続けなきゃならない俺の方だろうよ。ま、次はどんな雑技を見せてくれるのか楽しみにしてるぜ」

 

そう言いながら自分のコースに移動する龍園。

 

「よっ、かなり活躍してるな綾小路。今回は敵同士だけど、楽しくやろうぜ」

 

「そうだな」

 

同じ組にはBクラスの渡辺もいた。

最初こそ、組み合わせの妙で1位を獲得していた渡辺だったが、その後のハードルでは5位と平凡な成績へと戻っている。

一之瀬の事だ、組み合わせを決めた際に、誰か一人だけがたくさん勝ったり、逆にひたすら損をしたりする編成ではなく、全員が一度は活躍できるタイミングがあるように調整したのだろう。

つまり、最初に1位を獲った渡辺は、残りの競技、今回の様な組にしか入らないということになるな……。

 

「よーい、スタート」

 

6組目の8人が、3つしかない平均台を目指し走りはじめる。

極端な話、選んだ平均台の前後をCクラスで囲まれて、じっと動かないなんてことをされると、それだけで6位以下が確定してしまう。

かといって平均台を最初に登れば、後ろから平均台を急に揺らすなど妨害をしてくる可能性も捨てきれない。

Cクラスの内、1人が平均台に乗ってから、別の平均台に乗るのが安全か。

 

そうして先頭の龍園が左の平均台に乗ったことを確認し、オレは右の平均台を選んだ。

後ろにいる近藤はこちらに来るか?と思っていたが、追ってくる様子はない。

気配から察するに真ん中を選んだ様子。

 

平均台では攻撃してこないのか。そう思った時だった。

 

「おっとっと」

 

真ん中の平均台を進んでいた近藤の声が聞こえる。

何かしてもこちらに届くことはないように思うのだが……。

念のために振り向き様子をみると、近藤がよろけた先にいるのは――渡辺だった。

 

だから、どうした?といった感じではある。

まさかオレが渡辺を助けると龍園は考えたのだろうか。

もしくは白組の敗退は避けられないと、せめてBクラスには勝っておこうという算段か。

いや……そういうことか。

 

「うわぁぁぁー、おいおいおいぃぃ」

 

もうすぐ平均台から降りるというところで渡辺が近藤に突き飛ばされる。

バランスを崩した渡辺は盛大に転んでしまう。

 

「わりぃわりぃ。平均台って難しいな」

 

そんなことを言いながら何食わぬ顔で走り去る近藤。

 

「痛っ」

 

土塗れになりながらも懸命に立ち上がった渡辺だが、あちこち擦りむいており、どうやら足まで痛めた様子。

先頭の龍園はすでに網を潜り切っており、オレと渡辺以外は網の目の前だ。

考えてる時間はないな。

 

「悪い、渡辺」

 

「え?」

 

渡辺を横から抱え上げ、加速する。

 

「綾小路王子が別の男をお姫様抱っこなんて解釈違いっ!アイツ許せません」

 

どこからかそんな声が聞こえてきた。

 

丁度、網を潜ろうと近藤が持ち上げていて空間ができている。

網の長さは2メートルもないな。

それならと、そこへスライディングで滑り込み、一気にで網を突破。

 

「あ”やのごうじぃぃぃ」

 

渡辺から悲鳴が聞こえるが気にしない。

 

龍園たち先頭グループは頭陀袋に入り、ジャンプしている最中だ。

渡辺に頭陀袋を覆いかぶせ、オレも別の袋を装着する。

 

このゾーンは、およそ5メートルといったところか。

ぴょんぴょん跳んでいたのでは到底追いつけない。

渡辺を頭陀袋ゾーン終了地点を狙って高く放り投げる。

 

その後すぐさま体勢を低くし力を溜めて、なるべく地面と平行になるように跳躍。

着地は足を前に斜めに入り、袋によって摩擦抵抗が弱まることを活かし滑り進む。

その勢いを利用してぐるりぐるりと転がってさらに進む。

土塗れにはなるものの、渡辺とお揃いになるだけだ、気にするほどの事でもない。

ぴょんぴょん飛び跳ねるより断然こちらの方が早いと思うのだが、なぜ誰もやらないのだろうか。

丁度落ちてきた渡辺をキャッチして、頭陀袋から出る。

跳躍とスライディング、回転を利用し最低限度の動きで、素早く頭陀袋ゾーンを突破することに成功した。

 

後は走るだけ。頭陀袋に入った渡辺を抱え込みながら猛ダッシュ。

ひとり、またひとりと抜いていったが龍園には逃げきりを許してしまう。

 

また、抱きかかえていた渡辺が先のゴールという判定となり、オレは3着となる。

ついそのままゴールしてしまった……手前で身体を入れ替えるべきだったか。

 

「クク、惜しかったな綾小路。お荷物は置いて行けば勝てただろうによ」

 

「生憎、そうもいかないんでな」

 

龍園が去ったところで頭陀袋から渡辺を開放する。

 

「素直にお礼を言えない気分だけど……助けてくれてありがとな」

 

「困っている生徒を見捨てられなかっただけだ、生徒会だからな」

 

ガクっと倒れる渡辺を医療テントに運んでいく。

幸い足のケガも大事には至っておらず、意識が戻れば競技に復帰できるだろうとのことだった。

 

お礼を言ってくれた渡辺には悪いが、助けたのは友情でもなければ、生徒会としての使命でもない。

龍園の目的を察した以上、渡辺を見捨てるという選択肢がなくなっただけだ。

あの場面では多少強引でもBクラスを助ける必要が出てきてしまった。

 

この体育祭、龍園は勝利以外の価値を見出しているようだな……。

 

そしてついに体育祭初のリタイヤが出ることとなる。

 

二人三脚をするオレと平田を見て、諸藤が倒れたそうだ。

図らずもCクラスへとダメージを与えることになったが、些細な問題だろう。

 

二人三脚で気の毒だったのは幸村だ。

なにせペアは高円寺。高円寺の気まぐれで最下位になったとしても、ペナルティのテストの点数減が問題にならない生徒ということで幸村が選ばれた。

 

先ほどの障害物競走では、全員がゴールするまでスタートせずに、最後の1人がゴールしたのを合図に驚異的なスピードで走り抜け悠々とゴールして見せた高円寺。

 

今回の二人三脚でも、進もうとする幸村を気にも留めず、全く動く気配がない。

 

「ガリ勉ボーイ。レースなどという枠に囚われていてはいつまでも大成できないよ」

 

「うるさい。お前はいつもクラスの足を引っ張って……少しは反省しろ」

 

「実にナンセンスだねえ。クラスに害をなすというのであれば、私よりも迷惑をかけている生徒は多数いるんじゃないかい。君も体育祭で役に立っているようにはみえないんだがね」

 

「今、話しているのは、取り組む姿勢や気持ちの問題だ」

 

「目に見えないものの価値を問うのは難しいんじゃないかい。それよりも美しい私がいる。美しさはそれだけで存在価値となる」

 

「意味が分からん」

 

「そろそろ頃合いだね。美しく走ることにしよう」

 

「ちょ、ま、まって」

 

いきなり動き出す高円寺。もちろん、幸村に合わせることはないため、幸村はバランスを崩す。高円寺にしがみついて転倒を免れるが、そのまま引きずられるような形で進んでいった。

 

「ほら、君も美しい私にしがみつくだけだった。そういうことさ」

 

最下位にも拘わらず、堂々とゴールをした。

このままだとチームの指揮にも影響しかねない。

200m走までに最後の手を試してみるか……。

 

二人三脚が終了し、ここで小休憩となる。

 

「君もなかなか奇抜な戦い方をするな。個人としては面白く見させてもらっているよ」

 

給水所で水を飲んでいると、鬼龍院が話しかけてきた。

 

「鬼龍院先輩には及びませんよ」

 

「フフフ、褒めるのはよしてくれ。だが、流石の私でも君ほどの無茶はしていないさ」

 

これまでの結果、鬼龍院はすべての競技で1位を獲得している。

身体能力だけ見ても期待以上だ。

 

「そんな先輩にお願いですが、例の件、試してもらえませんか?」

 

「それは構わないが、彼が乗ってくるかは別問題だな。あれは私よりどう動くか予想ができない生き物だ」

 

「うまく行けば、ぐらいで構いませんので」

 

「いいだろう。私も彼には少し興味があるしな」

 

休憩明け。

ここからの騎馬戦、200m走は男女順番が逆転する。

 

そのため、1年女子の騎馬戦からスタートだ。

 

Dクラスからは堀北、軽井沢、櫛田、森が旗手として選出されていた。

騎馬戦は、3分間の間に倒した相手の騎馬と残った仲間の騎馬に応じて点数が入る仕組みだ。一騎につき50点、クラス毎に大将騎を設定してそちらは100点となる。

 

そのため、高得点が狙える競技となる。

 

Aクラスの大将騎は坂柳か。

流石に綱引きと同じ作戦ではないと思うが……。

大将騎が指示を出しながら逃げ切り、ポイントを獲得する作戦かもしれない。

 

試合の合図とともに、各陣営が距離を詰め始める。

 

「ほりきたぁぁぁ」

 

Cクラスの騎手のひとり、伊吹が堀北目指して攻め込む。

他のCクラス3騎も同行しているため、数で各個撃破する作戦だろう。

 

「堀北さんのカバーをお願いします」

 

そんな状況をみた坂柳が、赤組の騎馬に指示を飛ばす。

 

「させないよー!」

 

さらに加わるのは一之瀬の率いるBクラスの騎馬たち。

 

結局、大混戦となる。

こうなってくると各騎馬の強さがモノを言う。

 

伊吹と堀北は格闘経験者ということで、お互いに鉢巻へ手が届きそうなところを寸でで払う紙一重の攻防を繰り広げている。

 

「軽井沢さんとは干支試験以来だね。あの時は彼氏がいるのに綾小路くんにべったりしてて、どうかなって思ってたんだ。絶対に負けないよ」

 

「それはこっちのセリフ。清隆にまとわりつく悪い虫はここで叩き落とすから」

 

「えっ……清隆?詳しく話を聞かないといけなくなっちゃったね」

 

一之瀬と対峙した軽井沢も、何やら白熱している様子だが、こちらはこちらで互角の戦い。

 

田は大将騎の森をカバーしている。

堀北を助けに行かない理由作りとしては完璧だな。

 

坂柳が陣形の指揮を執り、Aクラスの騎馬が堀北や軽井沢たちの一騎打ちに、横やりを入れてくる白組の騎馬を寄せ付けない。

 

その結果、戦いは拮抗し、誰も鉢巻を奪われないまま制限時間の3分が経過する。

女子の騎馬戦は引き分けとなった。

 

「直接対決となると女子は決定力にかけるのが課題ですね」

 

勝利を手にすることができなかった坂柳がそう反省する。

 

「それで男子の方の勝算はいかがですか?」

 

「これから次第だな」

 

「これからですか?」

 

騎馬戦は4人1組のクラスで4騎。つまり残りの4人の生徒は補欠となる。

Dクラスで言うと、幸村、外村、本堂の運動ができない組に、そもそも出す意味がない高円寺だ。補欠と言っても特に出場選手の申請が必要ではないため、直前まで変更は可能ではある。

 

「ハッハッハッ、ボーイアンドガールたち。私が騎馬戦に出場して見事勝利へ導いてあげよう」

 

そう言って高円寺が参上した。

 

 




このお話は最初の投稿時あまりにも綾小路くんが人外になりすぎたため、編集し少しナーフ(?)されています。ギリ行けるラインになったかと……文章力が及ばず申し訳ないです。


頭陀袋でいいのか問題。
麻袋が一般的かなと思うのですが、原作では頭陀袋と記載してあり、綾小路くんも今風に言うならズタ袋とまで言っていて、綾小路くんの常識力不足の描写なのか、高育は頭陀袋でやっているのか、頭陀袋でやるところもあるのか、何かのネタなのか、ミスなのか判断できず……。ひとまず原作準拠ということで、頭陀袋のまま記載しています。

ただこの巻は、堀北が石崎、小宮、近藤の支える騎馬に乗っていたりするので、かなり判断に迷うところでもあります……。
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