ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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竜虎相打ち

高円寺が騎馬戦のグラウンドにやってくる少し前の出来事。

 

「お前が高円寺か。2年の鬼龍院だ。少し話に付き合ってもらおう」

 

「おや、私の活躍にハートをブレイクされた新しいファンガールかい?」

 

「フッ、私がファンになるとしたら自分よりも優れた殿方のみだろうな。その点、君は判断材料に欠ける。まだ、綾小路の方が目立っているぐらいだ」

 

「面白いことをいうガールだね」

 

「事実を述べただけだよ。次の騎馬戦でも私の方が派手に活躍できる自信があるからな」

 

「なるほどねえ。オーガガールとじゃれ合うのも悪くはない。荒々しくも気品に溢れる君は嫌いじゃないよ。次の一戦で私の美しさを目に焼き付けるといい」

 

「万が一にでもそんなことが起こるなら私としても楽しみだ。この学校では私を夢中にさせてくれる殿方と出会うことはないと決めつけていたからな」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「ハッハッハッ、ボーイアンドガールたち。私が騎馬戦に出場して見事勝利へ導いてあげよう」

 

意気揚々に宣言する高円寺。

どうやら鬼龍院が上手く焚きつけてくれたようだ。

こちらもリスクを飲んで目立った甲斐がある。

 

何をどこまでできる実力があるのか、何に価値を置きどうすれば動くのか。

この体育祭に限らず、少しでも高円寺の情報を収集しておくことは今後の備えに繋がる。

 

「高円寺、マジでやるんだろうな?手ぇ抜きやがったら承知しねーぞ」

 

「心配無用だよ、レッドヘアー君」

 

高円寺の気まぐれにはこれまで何度も悩まされてきた。

須藤がこの場のほとんど全員の疑問を代弁する。

 

「綾小路くんに何か考えがあることは重々承知しておりますが、私はあの不遜筋肉を当てにするのは悪手と言わざるを得ません」

 

「そうなのか?」

 

坂柳にこんなことを言われるなんて……高円寺、何をやらかしたんだ。

いや、逆に好かれていたらそれはそれで驚きだが。

とは言っても、もちろん、オレも高円寺を100%当てにするといったリスクは背負わない。現在、クラスメイトが予想以上の活躍を見せ、想定よりも早くDクラス優勝の目途が立ってきた。

そのためこの騎馬戦は実験の意味合いが強い。

 

「えーと、じゃあ高円寺君は、伊集院くんと交代で騎馬をやってもらう感じでいいかな?」

 

こんな状況だが、平田は穏便に場を収めようと動いてくれる。

 

「ノンノン。私が出るということは騎手をやるという意味だよ。そこのボーイ、代わりたまえ」

 

そういって騎手の予定だった沖谷を指名し、半ば強引に交代することとなった。

沖谷には平田が謝っていた。

 

 

グラウンドに一同が集合し、騎馬を組む。

オレは右の騎馬役で、平田を騎手に、正面は須藤、左を三宅が担当するといったクラスの総力を集結した一騎当千の騎馬だ。元々の作戦では、オレたちがどんどん攻め込んでいく予定だったが……。

 

「高円寺君がどう動くかわからないけど、ひとまず作戦の変更はなしでいいんじゃないかな」

 

「そうだぜ、アイツに合わせて動くとか無理に決まってら」

 

「それでいいんじゃないか」

 

3人とも同意見で、高円寺の事は気にせず、こちらはこちらの作戦で動くこととなった。

Aクラスの大将騎は葛城が正面を担当する騎馬で、騎手は弥彦だ。

他の3つの騎馬は、騎手を鬼頭、橋本、町田が担当している。

 

「葛城さん、ここで俺が活躍したら、目を覚ましてくれますか?」

 

「弥彦、何度も言っているが俺は俺の信じた道を進んでいる最中だ。こんな俺でも慕ってくれているのは嬉しいが、お前も自分の道を探して行動して欲しいと思っている」

 

「坂柳は碌なやつじゃありません。あんなのの下についても学べることなんて人の蹴落とし方ぐらいじゃないですか……」

 

「そんなこと言うもんじゃない。アイツは俺にない発想を持って行動している。それは俺にも必要な力なんだ」

 

「納得できませんね……」

 

「いまはこの勝負に集中するんだ、いいな」

 

ある日突然、坂柳の傘下に入った葛城。それまで葛城を慕っていた弥彦としては複雑な思いを抱いていたようだ。

 

対するBCクラスで注意したい騎馬は、神崎柴田の機動力のありそうな騎馬と、アルベルトを正面に、騎手を龍園が務める大将騎か。

 

スタートの合図とともにAD連合は陣形を組む。鋒矢(ほうし)の陣、矢印の上(↑)の形で先頭にオレたち、左右に橋本、鬼頭、最後尾には葛城の騎馬を配置する。

須藤の突破力で相手の態勢を崩していき、左右の2騎でとどめを刺す。

取りこぼしは、後方の騎馬で対応して、いち早く相手の大将騎龍園の下へ突進していく作戦だ。

 

「行くぞぉぉ、おらあぁぁ」

 

須藤の雄たけびで一同が前に進む。

途中会敵した騎馬へは須藤がタックルをかまして落馬させる。

鉢巻を奪わないと得点にはならないが、敵の総数を早めに減らして勝率を上げる狙い。

 

「おい、お前たち、陣形を崩すな」

 

葛城の指示が聞こえ、ちらっと後方を確認すると、高円寺の騎馬が静止している。

 

「つってもよぉ、こいつめちゃくちゃ重いんだぜ……」

 

「君たちには何も期待していないよ。時が来るまでこのまま持ちこたえてくれれば十分さ」

 

高円寺を支えるのは、山内、池、伊集院の3人。

お世辞にも頼もしいとは言えない。高円寺の重量も筋力量から考えると相当なはずで、機動力はほぼないと見ていいだろう。

それでも余裕ありげな高円寺、あんな状態でどうするつもりだ。

 

こちらの突進を警戒して左右に散り距離をとっていたBクラスは、格好の的を見つけたと言わんばかりに高円寺の下へ向かっていく。

逃げることも叶わず、囲まれる高円寺。囲んでいるうちの両サイドから挟み撃ちで攻撃が仕掛けられた。

 

「もうおしまいだぁぁ」

 

池の泣き言が聞こえてくる。池でなくとも誰もが高円寺騎の脱落を予想した瞬間だった。

 

「とぅ」

 

「はいぃぃ?」

 

高円寺は襲ってきた騎馬へ飛び移り、瞬く間に鉢巻を奪う。そしてさらに反対側の騎馬にも飛び移る。

相手の騎手も抵抗するが、力の差は歴然。高円寺があっという間に鉢巻を奪い取った。

ルール上、騎手が地面についた時点で脱落。そうでないなら、飛び移るのも騎馬を解体するのも反則ではない。まさか実践するヤツがいるとは誰も思ってもみなかっただろうが……。

 

「た、退避だ!」

 

神崎からそんな指示が出されるが、すでに手遅れで高円寺が飛び移ってきている。

軽くホラーだな……。

 

後方でそんな攻防が繰り広げられる中、オレたちは龍園の下へ到達した。

2騎が護衛をしていたが、橋本、鬼頭たちの4騎で引き付けてくれている。

 

「よお、龍園。3対1だぜ?降参したらどうだ」

 

葛城が龍園の後ろに回り包囲する。

 

「騎馬の足の分際で偉そうだな。馬を見下ろすのは気持ちがいいもんだ」

 

「上に乗ってるやつが偉いとは限らねえぜ」

 

「ならタイマンで勝負しろよ。お前が複数でしか勝てないっていうなら仕方ない。だが、勝ちってのはタイマンで勝ってこそ意味がある。複数で取り囲んだところでそれはお前の強さの証明にはならないさ」

 

「てめぇ……」

 

「ここで挑発に乗っちゃダメだよ、須藤くん」

 

「わかってるよ」

 

「わかってねーのはおめーだろ、須藤。前にこいつらを可愛がってくれたようだが、裁判では鈴音におんぶにだっこ。てめーは1人じゃ何にもできない、弱腰野郎だ」

 

龍園の左右を支えるのは、小宮と近藤。以前暴力事件で須藤を陥れたバスケ部員たち。

体育祭ではCクラスから様々な妨害を受けてきた。

さらに堀北まで引き合いに出して馬鹿にされる……そろそろ我慢の限界か。

 

「ふぅー……。以前の俺なら間違いなく切れてたけどよ。俺はもう自分が小さい人間だったって自覚してんだ。仲間と協力して勝つ。今はそれだけだ」

 

「はっ、雑魚が雑魚であることを認識したか。せめて男らしくタイマンぐらいできるかと思ったんだがな。鈴音も見損なうんじゃないか?」

 

口ではそう言っているものの、挑発に乗ってこなかった須藤に面白くない様子の龍園。

 

「須藤、堀北はタイマンで勝つ男より、大人数で囲んで倒すような容赦ない姑息で狡猾な男が好きだ、と言っていた……気がする」

 

一応、適当にフォローを入れておいた。

 

「それならもう何の心配もねえな」

 

「鈴音のヤツ、男の趣味がいいじゃねえか」

 

「何言ってんだよ、おい、葛城、こいつをぶっ飛ばすぞ」

 

「もちろんだ」

 

話はここで終わり、あとは龍園を倒すだけ。そう意気込んで突進する。

その時だった、両サイドからCクラスの騎馬2騎が捨て身のタックルをかましてきた。

 

「くっ、くそが……」

 

急発進して橋本たちの包囲網を突破し、そのままこちらにぶつかってきたのだろう。

突然の衝撃に何とか持ちこたえるオレたちだったが、見動きが取れない状態に。

 

「タイマンじゃねーならこっちも考えがあるってことだ」

 

その隙を逃す龍園ではなかった。平田の鉢巻きへと手が伸びる。

 

「いたっぁぁ」

 

後方で町田の悲鳴と落馬する音が聞こえたかと思えば、オレの肩にも衝撃が走る。

そして龍園の手を払い、逆に相手の鉢巻へと手を伸ばすのは、オレの背に立つ高円寺だ。

思わぬ援軍の思わぬ登場。背中が痛い。

 

「チッ、綾小路といい、お前といいDクラスはサーカスでもやってんのか」

 

ブートキャンプならやっていたぞ。

一度身を引く龍園。

その間に、突撃してきたCクラスの鉢巻は高円寺が奪い取っていた。

 

「馬鹿なことを言うねえ。私はエンターテイナーではあっても、道化ではないのだよ。楽しませる相手は私自身と美しいレディだけさ」

 

倒した騎馬を踏みつけ、高円寺が龍園騎に飛び乗ろうと跳躍する。

 

「何度もそう簡単にやらせるかよ」

 

素早く回避する龍園たち。だが、移動することも読んでいたのだろう。

避けた先には葛城が回り込んでおり、完全には逃げきれない。

 

僅かに届いた小宮の肩を掴み、再び空中へ。くるくると回転しながら、橋本の騎馬へ着地する。

当然、急な空からの襲撃に橋本たちは体勢を崩して落馬。

ただし、高円寺本人は騎馬が倒れる前に次の騎馬へと飛び移った。

……あれ、本当に味方だよな?すでに2騎撃墜されている。

そもそも自分の騎馬――山内たちはどうした……後方からこっちに向かってきているな。

どうやら高円寺は、Bクラスの騎馬を倒しながらこっちまで飛び移ってきたのだろう。

先ほどのCクラスを倒したことで、白組は残りは龍園の大将騎だけになっている。

 

「俺たちを忘れんじゃねーぞ」

 

須藤も龍園に向けて再び突撃。

騎手の平田も鉢巻へ触れるが、なかなか奪えない様子。その間も高円寺が味方騎馬を犠牲にしながら宙を舞う。

陸と空からの挟撃となる。

 

追い込まれる龍園。そしてオレたち。気付けば、オレ達の他には葛城、高円寺しか残っていない。

 

高円寺が再びオレの肩に着地する。

 

「綾小路ボーイは丈夫なようだ。臨時の騎馬に任命するよ。この調子で働いてくれたまえ」

 

「なあ、お前なら普通にやっても勝てるだろ?」

 

「それでは美しくないからねえ。ピンチにこそドラマは生まれ、人の心を打つ瞬間が見えてくる。今頃私のファンガール候補も胸を打たれていると思うよ」

 

そこまで言うなら派手に活躍してもらう。

 

「……平田、須藤にしっかり掴まってくれ。葛城、キャッチは任せる」

 

「「え?」」

 

オレは須藤の肩に置いていた右腕を開放し、投げる構えを取ると高円寺も理解したのか手に乗ってくる。

次の瞬間、高円寺を龍園に投げつけた。

 

龍園たちも反応が遅れて回避は間に合わない。

 

投げ飛ばされた高円寺は龍園の上空を通過、その瞬間、手を広げ身体をねじり、龍園の頭から鉢巻を千切り取った。

 

そのまま反対側にいた葛城の下へ着地した。葛城も鍛えているだけあって、しっかりと高円寺を受け止める。

 

騎馬戦は赤組の勝利となった。

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