ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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生きています

「洋介くん、大丈夫っ!?しっかりして!!なんで、なんで、私なんかのために……」

 

平田に庇われて一緒に転倒した軽井沢が慌ててお互いの足を固定している紐を解き、平田の状態を確認する。

 

赤く腫れあがった平田の右足。倒れこんだ際にCクラスから強く踏まれたようだ。

救護スタッフや教師が大急ぎで駆け寄っていく。

 

「軽井沢さんは、ケガ、してない……かな?」

 

担架に乗せられ、痛みに耐えながら、なおも軽井沢の心配を優先する平田からの問いに、軽井沢は涙を溢れさせながら、何度も頷く。

 

「それなら良かった……。一緒にゴールできなくて……ごめんね」

 

「そんなの気にしなくっていいから……。テスト勉強ぐらい、いくらでもするし、こう見えて私やればできるんだから」

 

「うん……みんなのこと、お願いするね」

 

これ以上、平田に心配をかけまいと軽井沢も精一杯明るく振る舞う。

そんな姿を見て安心したのか、最後にクラスのことを案じ、痛みからか意識を失ってしまったようだ。

 

そうして平田は保健室へ運ばれていき、レースは棄権。

もちろん、Cクラスの選手も失格となった。

 

「彼が抜けるのは走者がいなくなった以上のダメージになるわね……」

 

待機列で堀北が言うように、平田のクラスでの役割は大きい。

この体育祭だけでも平田に救われていた場面は多々あった。

現状、誰も代わりができない重要な生徒。

 

平田の事故の後、再開した1年の二人三脚が終了し、各自テントに戻る。

 

「くそ、Cクラスの野郎ども許せねえ。みんな平田の弔い合戦だ!」

 

「「「おおー!」」」

 

須藤の掛け声に今にもCクラスに殴り込みに行かんとするDクラスの面々。

上手く競技中の事故として処理されてしまったが、これまで嫌がらせを受けてきた

Dクラスからしてみれば、明らかに悪意を持った攻撃。仕返しをしたくなるのも仕方がない。

だが、平田は生きてるからな?弔っちゃまずいぞ?

 

「みんな落ち着いて。そんなことをしても平田君は喜ばないよ」

 

「でもよ、桔梗ちゃん、アイツらマジで許せねえよ」

 

「平田くんをあんな目に合わせるなんて……生かしてはおけません」

 

「そうだ、そうだ」

 

櫛田の制止も効果は薄い。

温厚なみーちゃんまで物騒なことを言い始めるぐらいには、Dクラスの怒りは頂点に達していた。

 

Cクラスへの殴り込みとなれば、体育祭での失格はもちろん、停学処分とクラスポイント減は免れなくなる。

 

どうにかして止めなくてはいけない。

こんな時に平田がいてくれれば……と、平田の離脱が原因で起きている騒動に平田の助けを欲しくなるどうしようもない状況。

 

悪い意味で結束してしまっているDクラス。

オレが出て無理やり止めるしかないか、と考え始めた時。

 

「洋介くんの仇をとるなら、最後のリレーでCクラスをぶち抜いて私たちが優勝するのが、一番の仕返し……。アンタら卑怯な真似をしてもDクラスには勝てないって言ってやるの。それに頑張った私たちの姿を伝えに行く方が、洋介くん、何倍も嬉しいよ」

 

一番キレて喚き散らしそうな軽井沢が、誰よりも冷静に、そして力強くそう主張する。

普段の軽薄な口調ではなく、真剣で重みのある言葉に、一同は驚きつつも、冷静さを取り戻すことができたようだ。

 

恐らく誰よりも平田の事をわかっている軽井沢がそう主張するなら、間違いはないだろうと、軽井沢の意見にみんなが頷く。

 

「そうだな、暴力に訴えたらCクラスのヤツ等と同じになっちまうところだった。軽井沢、ありがとよ」

 

「私は洋介くんのために言っただけ。……みんなのこと託されちゃったしね。洋介くんも草葉の陰から応援してくれてるよ」

 

「おう。アイツならどこからでも応援してくれるよな」

 

だから平田死んでないからな?草葉の陰って、どこのことかわかってるか?

 

言葉のチョイスはともかく、軽井沢のおかげでDクラスの暴走は収まりをみせた。

むしろ、最後の全学年対抗のリレーに向けて闘志が高まっている。

 

「清隆、アンタ洋介くんの親友なんだから、あいつらなんか蹴散らしてきてよね」

 

そう言いながらオレの胸に右手で作った握り拳を当ててくる。

自分のせいで平田が傷つき、多少なりともショックを受けているはず。

それを周りに感じさせず、平田の代わりを務め上げた心の強さ。

涙で腫らしているにも関わらず軽井沢の顔はこれまで以上に良い表情に見える。

 

だが、現実問題として、一体どうしたものか……。

この最終リレーは得点配分がこれまでの競技よりも大きく設定されている。

ここまでの競技結果を振り返ると、団体競技では赤組が勝ってきたものの

 

Aクラスは出場表の組み合わせの結果、Cより有利でBには不利

Bクラスは個人競技で好成績を収め(CとD間での争いで漁夫の利もある)ているが、団体では負けている

Cクラスは、妨害に人員を割いているため、一部の人間以外の成績は悲惨

Dクラスは、活躍する生徒がいる反面、妨害を受けて順位が伸び悩む場面も

 

といった感じで、A、B、Dは最後のリレー次第ではまだどこが勝つかわからない状況になっている。

 

そして何よりピンチなのは、平田の代役の走者がいないことだ。

ギリギリ戦えそうな三宅も足を痛めている以上、他の誰が走っても、好成績は期待できない。

堀北兄とのアンカー勝負も控えているだけに、何とかしたいのだが……Dクラスはあまりに手札が少なすぎる。

 

どうすれば、戦えるか思案していると

 

「ハッハッハッ、お困りのようだね、綾小路ボーイ。我々で平田ボーイにレクイエムを届けようじゃないか」

 

手札の外側、除外ゾーンから、禁止カードがこちらに話しかけてきた。

あまりに意外な人物の登場に「だから平田は死んでない」と心の中でのツッコミを忘れていた。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「鬼龍院、どういう風の吹き回しだ?お前がここまでクラスの勝利へ貢献したことなどなかった」

 

「素直に感謝できない男はモテないぞ、桐山」

 

「……信じていいのか?」

 

「信じるも何も、ここまで2年赤組と互角に戦えている事実が全てだろう。もっとも、不甲斐ない男連中がどこかで勝ってくれていれば、私たちが優勢だったのだがな」

 

「仕方がないだろう、南雲の支配があってはどうにもならん」

 

「だから君は二流止まりなんだ。上の奴らはそんな固定概念には囚われんぞ?」

 

「……。悔しいが、今回に限ってはお前に分がある。南雲と渡り合うにはお前が必要だと再認識した」

 

「素直なことはいいことだ。ま、私が今後どうするかはわからんがな」

 

「おい、鬼龍院、この体育祭頑張ってるようだな。おかげで退屈しのぎにはなってるぜ?」

 

「南雲か。君の暇つぶしに付き合わされる身としては、面白くとも何ともないがな」

 

「そういうなよ。やっとお前と勝負できんだ。この二人三脚、負けねーぜ」

 

「それは良かったな。私は普通に走らせてもらうが、君も頑張るといい」

 

「あくまで勝負とも思ってないってことか。俺相手にそんな態度取れる奴は2年ではもうお前ぐらいだぜ。それも今日までかもしれないがな」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「南雲君と桐山君のレース、すごかったですね、会長」

 

「ああ、そうだな。正直、桐山が南雲に勝つ日が来るとは思わなかった。勝敗の差はペアの実力差だったな」

 

「鬼龍院さんでしたか……朝比奈さんも頑張ってましたけど、なんというかオーラが違いました」

 

「これから鬼龍院が出てくるのであれば、南雲も油断できないかもしれないな」

 

「ですね」

 

「ところで、橘」

 

「はい、どうなさいました?」

 

「まだ今日は1位を獲っていないだろ」

 

「……恥ずかしながら」

 

「いや、責めているわけじゃない。それなら、これから二人三脚で獲れるからな。ついてきてくれるか?」

 

「……はいっ!喜んでお供させていただきます」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「私が平田ボーイの代わりに走ろうじゃないか」

 

高円寺からの提案。

確かにコイツが本気で走れば、平田以上の結果をもたらしてくれるだろう。

だが、素直にイエスとは答えられない。

 

「何を企んでいる?」

 

「疑り深いんだねえ。シンプルな話さ。等価交換だよ」

 

「手伝う代わりにオレにも何かを手伝えってことか」

 

「グッド!今度、バースデーを迎えるレディがいてね、サプライズでお祝いしてあげたいのだよ。それを綾小路ボーイに手伝ってもらいたいだけさ」

 

誕生日にサプライズ……まさか、平田を呼んで来いってことか?

今しがたケガで退場したばかりだが……相手の誕生日次第では行けるだろうか。

 

「君の腕は私も認めるところだよ」

 

平田を連れてくるだけでそこまで評価するのか。

誰が頼んでもアイツは来てくれると思うぞ?

 

「そう、君はクールなピアノボーイだからねえ」

 

ん?もしかして高円寺の言っているサプライズは……う、頭が痛い。

 

「あのレストランで何曲か披露してもらう、それで手を打つ、という話さ」

 

やはり一之瀬の誕生日を祝ったあの日、レストランにいたのは高円寺だったか。

 

「お前なら自分でも弾けるんじゃないか」

 

「やろうと思えば私にできないことはないだろうからね。だが、あくまでも私は聴く側の人間、ということさ」

 

「わかった。取引成立だ。ただ、変なことはせずに真面目に走って、結果を出してもらう。それが条件だ」

 

「もちろんだとも。君の演奏、楽しみにしてるよ」

 

……ピアノの演奏だけで動いてくれるんだったら、これまでのあれやこれやの策は、全く不要だったな。早く言って欲しかった。

 

兎にも角にも、これでリレーのメンバーはどうにかなった。

 

「平田の死を無駄にしないためにも頑張るか」

 

「ねえ、平田くんは死んでないわよ?」

 

オレの時だけツッコむのはやめてくれ、堀北。

 

 

体育祭最終競技、全学年対抗1200mリレーが始まる。

クラスから男女3人ずつ、計6名を選出し1人200m走る。

全学年同時に走るので、レース中は12人が競い合うことになる。

 

Dクラスは、先行逃げ切りの作戦でリレー順を決めており

須藤、高円寺、小野寺、松下、堀北、オレの順でバトンを繋ぐ。

 

アンカーは私がやりたいと、兄と一緒に走りたい堀北妹が主張してきたが、こちらも南雲との取引の関係で譲ることはできなかった。

 

「兄貴目がけて走って来れる第5走者の方がいいんじゃないか」そんな適当な提案したところ

 

「それもそうね、兄さんに追いつける感じが堪らないわ」とブラコンの何かが琴線に触れたようで、アンカーを譲ってもらえた。

 

第一走者がスタート地点に並ぶ。

12人もいるとなかなか壮観だ。

 

各テントで応援する生徒たちも、スタート前のこの瞬間はスタートの合図を待って静かに固唾を飲んで見守る。

 

「よーい、スタート」

 

ピストルの音が鳴り響く中、スタートダッシュを決めたのは須藤だ。

他のクラスは後半に戦力を集めたのかもしれないが、見る見るうちに他の選手を引き離していく。

 

「お前たちのクラスもかなりまとまってきたようだな」

 

「そう見えるなら、アンタの妹と散っていった仲間のおかげですよ」

 

「そうか。あの鈴音がな」

 

そう話しながらトラックの反対側で待機している堀北妹を見つめる堀北兄。

 

「この調子ならお前との勝負もいい試合になりそうだ」

 

「一応南雲先輩もいますが、気になさらず」

 

「ああ。そうだな」

 

須藤はトップを独走して高円寺へとバトンを繋いだ。

2位とは10m以上差がある。

 

「全力で走れよ、高円寺!」

 

「もちろんだとも、レッドヘアー君」

 

高円寺は宣言通り、強烈な速さで走り抜けていく。

 

「堀北先輩、やっと勝負できますね」

 

「南雲、次期生徒会長として、お前がどこまでやれるのか確かめさせてもらう」

 

「うっす」

 

南雲のヤツ、滅茶苦茶嬉しそうだな。

先ほどの会話、聞かれていないようでよかった。

 

その間も高円寺はスピードを上げて、2位との差は20m以上は開いている。

あとはこれを女性陣がどこまでキープできるか。

 

各クラスからの声援もどんどん大きくなる。

体育祭の会場が今日一番の盛り上がりを見せ始めていた。

 

小野寺、松下と懸命に走るも男子生徒の上級生などが相手であったため、バトンが堀北に回る頃には、差がほとんどなくなっていた。

 

「堀北さん、あとはお願い」

 

「任せて」

 

バトンを1位で受け取った堀北だったが、ほぼ同時に3年Aクラス、そして2年Aクラスの

生徒もバトンを渡す。

 

第5走者は、どちらも女子生徒だが、上級生のエース相手だ。流石の堀北妹も分が悪い。

少しずつだが、差が開き始めた。

 

だが、3年Aクラスが先に行ってしまえば、当然堀北兄はスタートし、バトン受け渡しゾーンからいなくなってしまう。

 

「にぃぃさあああんん!!」

 

そのことに気付いた堀北妹のギアが上がっていく。

これまで以上の加速を見せ、上級生たちに追いついた。

アイツを第5走者にしたのは正解だったな。

 

しかし、その後ろから猛スピードで追い上げを見せ、そして先頭グループの3人を一気に抜き去る女子生徒がいた。鬼龍院だ。

 

そのまま距離を広げていき、トップでアンカーにバトンを渡す。

 

「最後ぐらい、君自身の手で勝ってみせたまえ」

 

そう言ってバトンを渡した相手は、桐山だった。

 

「堀北先輩、この勝負、俺だって負けません」

 

桐山が俺たちより先にスタートし、およそ5秒ぐらいたった頃、オレたちにもバトンが届く。

 

「言うまでもないが、1位になったやつが勝ちだ」

 

「もちろんっす」

 

「ああ」

 

アンカーの生徒会会長、副会長2人の計3人が一斉にスタートした。

 

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