ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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開幕『リアルケイドロ』

2年生徒会主催のイベント『リアルケイドロ』

スタート地点のグラウンドには、すでに多くの生徒たちが集まっていた。

動きやすい格好という指定があったため、ジャージや運動着、部活の恰好など各々動きやすい姿で準備運動などをしている。

 

1、2年Dクラスを除く、大半の生徒が参加することになっており、それなりの数となるが、探索範囲も広いため、スタートしてしまえば気になることはないだろう。

 

ちなみに、Dクラスの警察連合は体育館がスタート地点となっており、泥棒のスタートから5分後に行動可能となる。その間に、泥棒側はお宝へ向かうか、潜伏して様子を伺うか、戦略が試されそうだ。

 

「それじゃ、お互い頑張ろうね」

 

「ああ。健闘を祈る」

 

Bクラスの面々から手招きされ、一之瀬がそちらに向かっていく。

オレも啓誠たちと合流するか。

 

綾小路グループの姿を探していると、一際目立つ集団――というより目立っているのは2人だが――がこちらにやってくる。

 

「こんにちは、綾小路くん」

 

「ああ。……やはりその状態で参加するんだな」

 

やってきたのは1年Aクラスの面々を引き連れた、葛城に乗る坂柳。

 

「それはそうです。残念ながら葛城くんは乗り物判定とはいきませんでしたので、参加生徒の1人として登録しましたが、生徒の肩に座って移動してはいけない、とはルールに記載されていませんでしたからね」

 

オレが言うのもなんだが、誰か坂柳に人権が何たるかを教えた方がいいんじゃないだろうか。駒とか道具はあくまで比喩であって、人間を本当の意味で道具にしようとするのはこの学校でも坂柳ぐらいだろう。

 

「これでも葛城くんには感謝しているんですよ。彼がいなければ、私がこのイベントに参加することなどできるはずがないのですから」

 

「そうだな、この手のイベントはどうしてもハードな動きが必要となる」

 

こちらの考えを読んだように補足する坂柳。

 

「俺もこうして鍛えてるのは悪い気分ではない。肉体的な面は言わずもがな、誰よりも先に坂柳の考えに触れることができるからな。生徒会へのリベンジマッチも遠くはないと思っている」

 

「それは何よりではあるな」

 

葛城も了承済みであるため、一切問題はないのだが……。ただ、葛城が生徒会入りを志望した場合、逆にセットで坂柳もついてくることになるのではないか、という懸念が生まれる。

 

「所詮学生の考えたイベントですので、今回は勝負とは申しません。ただ、Aクラスはこのイベントで手堅く報酬を頂戴する予定ですので、その点は恨みっこなしということでお願いしますよ」

 

「ああ。だが、せっかくのイベントだ。お互い楽しめるといいな」

 

「ふふふ、綾小路くんからそんなお言葉を頂けるなんて……あながちこの学校の教育も悪くないものですね」

 

それではお邪魔しましたと元々居た場所に帰る坂柳。

普通に考えれば、生徒一人担いで逃げ回るのはハンデでしかないはずだが、それを一切感じさせないコンビ。良くも悪くも板についてきている。

 

そんな2人の様子を、Aクラスの集団の端の方で、ギリっと睨みつけている生徒が1人いる。戸塚弥彦だ。元々葛城を慕っていた戸塚にとって、この状況は未だに容認できないものらしい。

だが、戸塚の実力では坂柳から葛城を奪い返すのは夢のまた夢の話。

覚めない悪夢にうなされ続けているようなものか。

 

「清隆、こっちだ」

 

そんなことを考えていると、後ろから明人の声が聞こえてくる。

どうやらオレを探してくれていたらしい。

 

「すまない、合流が遅れてしまったな」

 

「いや、気にしなくていい。清隆も色々忙しいことはわかっているしな」

 

そうして明人の案内のもと、他のメンバーと合流する。

 

「きよぽーん、遅ーい。あと数分遅れてたら他の女子のところに行った裏切り者認定するところだったよ?」

 

「そう責めてやるな、清隆だって仕事だったんだから仕方ないだろう」

 

庇ってくれる明人や啓誠には申し訳ないが、ここに来るまでにやっていたことと言えば、カラオケ大会の打ち合わせと坂柳の非人道発言への対応ぐらいだった。

 

「遅れた分は活躍で返させてもらう」

 

「おっ、言うねぇ。副会長は違うぜって感じ?頼りにしてるよー」

 

「き、清隆くん、一緒に頑張ろうね!!」

 

「そうだな」

 

愛里もやる気十分だ。

何せ今回のオレたちの作戦は、オレと愛里にお宝ゲット役が任されている。

オレは単純に生存確率の高さから、愛里は気配を消すのが上手く潜伏向きだからだ。

また、警察側の視点になったとき、この5人グループを発見した場合も愛里が宝を一番持っているとは思わないだろうことから、狙われる優先順位が下がり、逃げのびる隙が生まれそうという考えもある。

ペナルティのこともあるので、オレと愛里で分散して集めつつ、状況によって比重を変える算段。

 

あとは、明人が索敵、波瑠加は携帯で情報を集め、啓誠が状況に応じて戦略を組み立てていく方針。どこまでやれるか楽しみだ。

 

『学生諸君、よく集まってくれた』

 

開始15分前、グラウンドに設置されている巨大な電光掲示板に突然映像が映し出された。

 

声の主は、胸より上の部分は映しだされない為、顔は見えず、椅子に座った状態で膝の上のネコを撫でている。

一体誰なんだ、なんていうのはツッコむまでもないな。

 

「どこの悪役だよ……」

 

「てか、あのネコぬいぐるみじゃない?」

 

明人と波瑠加から冷静なツッコミが入る。もっと言ってやって欲しい。

流石の生徒会長もこのためにネコを連れてくることはできなかったようだ。

本物だったら先日のリベンジでモフりにいきたい欲が出たかもしれないため、ぬいぐるみで助かった。

 

「こんな馬鹿なことに全力だせんのは南雲ぐらいだぜ!」

 

「猫似合ってるー」

 

この映像に少なからず戸惑う1年に比べ、意外なことに2年生には好評のようだ。

そこそこ周囲が盛り上がる。

 

そんな会場の雰囲気など知る由もない謎の人物は話を続ける。

 

『諸君にはこれから各地に隠されたお宝を争奪してもらうわけだが、その前に今から配布する腕時計をつけてもらう』

 

そういってスタッフの生徒会役員や手伝いの2年Aクラスの生徒から腕時計が配られる。無人島試験で使用したものと同じだな。経費削減と質の向上という意味で有効活用と言えるだろう。

 

『その時計と携帯端末をリンクさせることで登録完了だ。警察側にタッチされた場合は、その時計からこちらに情報が届くようになっているため不正はできない。また、イベント終了までそれを外した場合は問答無用で失格だ』

 

言及はしないが、これでこちらの位置情報を測ったり、安全面の確保もしているということだろうな。

 

『諸君らに盗んでもらうお宝の情報は各端末のマップに表示される。表示されるお宝情報は各自異なるが、お宝の獲得自体は誰でも可能だ』

 

「なるほど……泥棒側での協力を推奨している、ということか?」

 

「運営視点で言えば、誰か一人がお宝を独占しないようにしているのかもな」

 

啓誠の考察に補足を加えておく。他に考えられるのは、泥棒側を分散させる狙いなどだが、オレたちは元々5人で組んでいるためそこまでの影響はない。

 

『他にも端末にはミッション開催の情報などが随時更新されていく。ミッションで手に入るアイテムによっては他にも活用できるだろう』

 

「携帯チェックも大事だけど、それに気を取られすぎたら危ない、よね?」

 

「警察が巡回しているだろうからな、チェック係と警戒係と分かれる必要がありそうだ」

 

愛里と啓誠の言うように、どちらかだけではこのイベントで好成績は残せない。グループを組んだことの利点だな。

 

『最後に、このイベントエリア外に出た者は、警察、泥棒問わず、即退場となる。それでは、諸君の健闘を祈る』

 

そうして映像が途切れ、カウントダウンが始まる。

3・2・1と表示され、スピーカーから流れる派手な爆発音と共にスタートの文字が出てくる。

 

ここから5分間は警察のいないフリーな時間。

一斉に飛び出した生徒が半分、携帯端末で情報を確認している生徒が半分、といったところか。

 

「ここに止まってたらかっこうの的だ。情報の確認は体育館から距離を取ってからにする」

 

啓誠の提案に4人で頷く。

女子2人、ついでに啓誠自身の走力を踏まえると、障害物のないこの場所で目をつけられたらひとたまりもない、そういう判断だろう。

 

そういうことでオレたちは急いで学生寮へ続く並木道の方へ移動し、そこの木陰に隠れながら情報を確認する。すでに5分経過しているため、警察は出動している頃だ。

 

「あ、この辺りにも結構お宝あるね」

 

「うん!私たちツイてるね」

 

5人のマップを見比べて、周辺にいくつかお宝があることがわかる。

パッと見だが表示されているお宝は何人か重複しているもの、逆に5人もいて重複していないものもある。表示されている個数は各々10個。

これに関しては一度に表示される最大数が決まっているのかもしれない。

表示されたどこか1個お宝が獲得されれば、新たに別の1個が表示される仕組み。

 

「あ、お宝の表示が1個消えたな」

 

「早速誰かが獲得したんだろ、俺たちもそろそろ動きたいところだが……どこから狙うか」

 

「近いのでいいんじゃない?」

 

啓誠が何に悩んでいるかはお構いなしの波瑠加の提案。

だが、情報が不足している現状はそれがベストかもしれない。

 

「そうだな、まず一番近いこれを探してみるか」

 

周囲を警戒しながらお宝の近くまで移動する。

幸い、その宝を狙う他の泥棒も、巡回する警察の姿もなかった。

 

「うーん、お宝どこだろ」

 

「一見した限りじゃそれらしきものはないな」

 

明人と啓誠に周りの警戒をしてもらい、3人で探す。

マップ上に表示されているとはいえ、どこにあるのか詳細はわからない。

名目上お宝なので堂々とは置かれていないのかもな。

 

「あ、あれかも!」

 

愛里の声にそちらに集まる。

見れば木の根元に小さい箱が置いてあり、中を開けると箱の底にQRコードが記載されていた。お宝第一号発見である。

 

「やったじゃん、愛里」

 

「愛里が見つけたんだ、読み込みも任せる」

 

「う、うん」

 

そうして端末のカメラでQRを読み込むと『お宝ゲット!』の表示が飛び出す。

その後、表示された獲得ポイントが表示される。

今回のお宝は『1,000ポイント』だったようだ。

 

「これは……はずれ?」

 

「まだ情報が足りていないが、恐らく低い方だな」

 

「次はどうする?また近場のを狙うか?」

 

「いや、次はここにしよう」

 

啓誠が自分の携帯を見せ指さしたのは少し離れたところにあるお宝。

そこにたどり着くまで2個ほどスルーすることになる。

 

「今はいくつか検証が必要だ。警察が周りにいないうちに確かめておきたいことがある」

 

そういって狙ったお宝の方へ移動する。

途中2年生の泥棒の姿などもチラホラ見えたが、幸い狙いは別のお宝だったのか、別の方で探索をしていた。

 

「これか」

 

先ほどの隠し場所を参考に、お宝を隠しやすそうな場所を探っていたら、自販機の下に箱が置いてあることに気づいた。

 

「ナイスきよぽーん」

 

「今度は清隆くんの番だね」

 

自販機の陰に隠れながらQRを読み込む。

今回のお宝のポイントは『10万ポイント』だった。

 

「おお!高得点!やったね」

 

「幸先がいいな」

 

このまま逃げ切れば、参加費の1万ポイントを差し引いても、1人1万ポイントはゲットできることになる。

 

「ちょっとみんな集まってくれ」

 

啓誠からの指示に、自販機裏でしゃがんで隠れながら小さく円を作り話し合う。

 

「俺の考えが正しければ、お宝にはランクが設定されていて、それを見破る法則がある」

 

「マジか」

 

「さすがゆきむー」

 

「最初のお宝は、波瑠加、明人、清隆のマップに表示されたものだった」

 

「うんうん」

 

「今回のお宝は俺のマップにのみ表示されていたものだ」

 

「そういうこと!?」

 

「恐らくだが、間違いはないだろう」

 

そう、啓誠の考察は的を射ている。

大多数のマップに表示されるお宝のポイントは低く、個人だけに表示されているお宝のポイントは高いようだ。

 

「レアモンスターとのエンカウントが少ない、とか高レアのキャラのガチャが渋い、みたいな話か」

 

「あー、なるほどー」

 

明人の例えはよくわからなかったが、レアものほど見つかりにくいということだろう。

 

「じゃあこれからは、なるべく表示が被っていないお宝を狙っていく、って感じ?」

 

「概ねそれで良さそうだ。……ただ」

 

「ただ?」

 

法則を見破った啓誠だったが、まだ疑問は残っている様子。

 

「逆に5人とも表示されているお宝は気になる」

 

「めちゃくちゃ外れなんじゃないの?」

 

「確証はないが、それだとゲーム性に乏しいというか、泥棒側での争奪が発生しにくいというか……」

 

「目立つところにいるボスキャラ、みたいなもんか?」

 

「目玉商品、みたいな?」

 

「言われてみれば、そういうのがあってもおかしくないかも」

 

啓誠の指摘に、各々がうーんと頭を捻らせる。

ただ、時間が過ぎれば過ぎるだけ、機会損失をしてしまう状況だ。

 

「丁度この先の大通りにあるようだし、覗いてみた方が早いかもな」

 

「それもそうか、目立つ場所だから慎重に移動しよう」

 

オレの提案で5人の表示が重なったお宝の場所へ、警戒しながら移動する。

丁度、木々が茂った脇道から、お宝付近を遠めに覗くことができた。

 

「あー、そういうことか」

 

これまでと違い、道の中央に配置されたテーブルの上に宝箱が置いてある。

そしてその周辺には警察が数名取り囲んでいた。

 

「初の警察発見だが……思った以上にわかりやすい格好してるな」

 

明人がそんな感想をこぼす。

泥棒側の格好は自由だったが、警察との区別をわかりやすくするため、警察側は統一された格好をしている、とはルールにあった。

 

「うーん、あの格好で走り回るのは恥ずかしかったかな」

 

「私は愛里のだったら見てみたいけどね」

 

「えええええ」

 

そんな感想をもらす女性陣。

 

警察側は、そのままの通り警察の制服のコスプレで参加していた。

南雲の趣味か……あとでひよりを探すのを忘れないようにしないとな。

他意はないが、見てみたい気がした。

 

こうして、リアルケイドロは本格的にスタートしたのだった。

 




【補足】

細かいルールは記載すると読みにくくなりそうなので、省略している部分もあります。
※参加者はルールを把握して動いています。

今回関係しそうなルールとしては、「お宝の持ち運びの禁止」などです。
箱を開けるため手に取るのはOKですが、マップの表示から動くようなことがあれば、検出され失格になります。
ペナルティ回避や安全確保のために集めるだけ集めて、終了時間間際にお宝を一気に読み込む、などの不正を防ぐためのルールですね。

恐らくこの学校の学生はルールの裏をついたり、記載していないことは何でもやっていいと判断しそうなので、事細かにルールが用意されていることと思います。

その他には、タッチされた泥棒は、所定時間内に牢屋のある体育館へ移動しなければならないこと、その途中、遅延行為や妨害行為は禁止されていることなどがあります。

描写されなかったルールについては、関係ありそうなときにあとがきで記載しておきます。

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