ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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友情の力

綾小路グループで挑戦している『リアルケイドロ』

現在、オレたちの視線の先には、明らかに高得点が見込める宝箱がある。

啓誠の予想が当たった形だ。

 

だが、これまでのお宝とは違い、その周囲には2年Dクラスの警察が3名ほど警備している状態。

警察側としてもここが狩場となると判断したか、他のお宝と違い守ることで何かしらのメリットがあるのか……。

 

「んで、どうしよっか?」

 

じっと状況を探るだけでは進展しないため、波瑠加が切り出す。

こういった時に仕切ってくれる波瑠加は、自己主張の少ないこのグループでは貴重な存在だ。

 

「正直なところ、今、他の泥棒が狙っていない状態で、あのお宝を発見できたのはチャンスだ」

 

「だよな。警備はいても、これを逃すと他の奴らに盗られそうだ」

 

「極端な話、さっきのお宝で10万ポイントでしょ。あれが100万ポイントとかだったら、あとは逃げ切るだけで1人20万ポイントだよ、挑戦する価値はあるんじゃない?」

 

「そ、その時は、私、頑張って逃げるよ」

 

4人ともお宝ゲットの方向で考えているようだ。

 

「きよぽんはどう?」

 

「オレも異論はない」

 

元々オレもゲットする考えだったので話を誘導する手間が省けた。

恐らくだがあの規模のお宝は何十個もあるものではない。

盗れる時に盗った方がいい。

 

「じゃあ決まりだな」

 

「でも、あの警備どうしようか?」

 

「……誰かが囮になって引き付けている間に盗むのが定石だろうな」

 

警察はこちらに対してどんな形でもタッチすればいいだけだが、泥棒は警察に触れたら終わりなので反撃できず基本的に回避して逃げ回ることしかできない。

一度見つかってしまえば、相手を撒くだけの走力、体力、機転が必要だ。

よって囮役が一番危険な役割になる。任命責任は重い。啓誠が言い淀む。

だが、そんなことを気にしていてはお宝をゲットすることなどできない。

 

「それならオレに任せてくれ」

 

「大丈夫なのか、清隆」

 

「ああ、問題ない。ただ、見えている範囲以外にも潜んでいる警察がいると考えるべきだ」

 

守る側としても、当然、囮の可能性を考えるだろう。

こちらの誘いに乗らないことや盗んだ後に捕まえようと狙うなど、様々な可能性がある。

 

ただ、あくまで予想だが、オレが囮になれば警察は必ず追ってくる。

 

「念のために、オレが引き付けた後、明人が様子を見ながら近づいてみてくれ。伏兵がいてもそれであぶりだせるはずだ」

 

「わかった。幸いこの辺りは下見しておいた場所だ。相手を撒くポイントは頭に入っている」

 

「危険な役割を任せてしまってすまないな」

 

「気にすることはない。実は相手に触れずに転ばせるのは得意なんだ」

 

キョトンとする4人だったが、清隆ならホントに大丈夫なんだろうと話はまとまった。

 

「えっと、合流ポイントはどうしよう?」

 

「そうだな、全員集まるまでは身を隠したいから、探索範囲の端、ケヤキモール手前の茂みでどうだ。お宝表示もない以上、この辺りは比較的安全である可能性が高い」

 

啓誠が合流場所を表示する。

 

「わかった。それじゃ、各々配置につき次第作戦決行だ」

 

「よし、きよぽんを生贄にお宝ゲット作戦スタート!」

 

「おい」

 

「清隆の犠牲は無駄にはしない」

 

「わたし、絶対逃げ切るからね、清隆くんありがとう」

 

「合流の場所の話、時間の無駄だったか」

 

誰も言葉ではオレの帰還を祈ってくれなかったが、不思議と嫌な気分にはならない。

こういう悪ノリができる関係も悪くないな。

 

各々が配置についたことを確認し、オレはお宝を狙っていますよーといった感じで姿を晒す。

 

「おい、あれ、綾小路だろ。お前ら囲め、囲めっ!」

 

「ワー、コンナ大勢デ追ッテコラレタラ捕マルカモシレナイナー」

 

名演技で相手を挑発し、引きつけつつ、囲まれる前に反対側へ走り出す。

追えば捕まえられるかもという距離を保ち、離れすぎないのがポイントだ。

 

「綾小路が逃げたぞ、追え、追えー!!」

 

見張っていたのは3人だったが、周囲に隠れていた2人が加わり、計5名がオレを追ってくる。

上々の出来だろう。

南雲の事だから、オレを捕まえた生徒には特別ボーナスを出すと警察側に伝えていてもおかしくはないと思っていたが、この様子だと予想が的中したようだ。

オレを追い詰める目的だったのだろうが、囮として最大限にこの状況を活かさせてもらう。

 

大通りからそれた脇道をそこそこのスピードで走り抜ける。

 

今頃、愛里たちは上手くやっているだろうか。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

清隆くんが囮になってくれたおかげで、周囲に警察はいなくなった。

 

「よし、じゃあ俺が様子を見てくる」

 

明人くんが周囲を警戒しながら宝箱に近寄っていく。

すると、その後ろから一人、警察の人がこっそりと出てきた。

 

「あぶないっ!」と声に出してしまうと、こっちの存在がバレてしまうので、事前の打ち合わせで警察が現れたら、波瑠加ちゃんから明人くんにチャットを飛ばすことになっている。

 

携帯の振動を感じ取った明人くんが後ろを振り向き、警察の人と向かい合う。

そして次の瞬間、走り出した。

 

まさかバレると思っていなかったのか、警察の人はワンテンポ遅れて追いかける。

 

清隆くんも明人くんも無事に戻ってきますように。

 

「よし、それじゃ私たちは私たちの仕事をしよう」

 

波瑠加ちゃんの言葉に、啓誠君と2人頷く。

念には念をと警戒を怠らず宝箱に近づくが、警察が出てくる様子はなさそう。

 

「あ、開けちゃうよ?」

 

「うん、波瑠加ちゃんお願い」

 

波瑠加ちゃんが宝箱を開けると、中からはQRコードが記されたボードが出てくる。

 

「やった!ササッと読み込んで逃げよー」

 

「いや、待て。これなんだ?」

 

啓誠君が何かに気づく。

箱にはもう一枚ボードが入っていた。

 

「えーと、『このお宝には鍵がかかっている。下記暗号を解読し、解除キーを入力せよ』って、嘘でしょ」

 

「だめ、QRを読み込んでみたけど、パスワードの入力画面が出てきた」

 

「流石に大きいお宝は一筋縄じゃいかないってことか」

 

「いつ警察が戻ってくるかわかんないから、急いで解読しちゃおう。ゆきむーが残っててくれたのは幸いだったね」

 

確かに勉強のできる啓誠君がいれば鬼に金棒だ。

そうして三人で暗号を覗き込む。

 

『352×869-25×(8654+3580)+桐山or一之瀬=?』

 

「なにこれ?」

 

波瑠加ちゃんがつぶやくのもわかる。

私もちんぷんかんぷんだ。

 

「とりあえず、数字の部分の答えは『38』だ」

 

「えっ!?ゆきむーこれ計算したの?」

 

「これぐらいなら暗算できる」

 

「すごいよ、啓誠君」

 

「よしてくれ、肝心の答えにはたどり着けていないんだ」

 

謙遜する啓誠君だったけど、この速さで暗算してしまうのは流石だった。

多分、携帯の電卓とか使う問題なんじゃないかな。

 

「『38+桐山or一之瀬』ってことか……桐山って、生徒会の人だよね」

 

「うん、清隆くんたちがリレーで抜き去ってた人だったと思う」

 

「一之瀬は、あの一之瀬だよな」

 

「……こういうのって大抵2人に共通点があって、それを入れるのがお約束だよね」

 

「共通点……でも、私たちこの2人の事よく知らないね……」

 

「逆に考えると、その人自身を知らなくてもわかるってことだ」

 

「客観的な情報ってことなら……生徒会役員、白組……あ、Bクラスとかじゃない?」

 

波瑠加ちゃんが閃いた!といった表情で話す。

 

「なるほどな、その可能性は高い」

 

「『38B』って打ち込んでみるね!」

 

早速、端末のパスワード入力画面に打ち込む。

が、出てきたのは不正解の表示。

 

「ち、違うみたいだよ」

 

「『38B』からもうひと捻りいるってことかぁー」

 

「そろそろ警備が戻ってきてもおかしくない、どうする?」

 

「囮の2人を信じて、もう少しだけ粘ろ」

 

波瑠加ちゃんも啓誠君も焦りながらも懸命に考える。

私も力になりたい。さんじゅうはちびぃ、さんはちびい……みやびぃ。

あっ……。

 

「ねぇ、2人とも、これって『雅』ってことじゃないかな……」

 

「「……」」

 

2人が何とも言えない顔で沈黙してしまう。

 

「あわわ、や、やっぱり違うよね、忘れて」

 

「違うの愛里。多分、いや絶対それが正解だよ。一瞬真剣に悩んでたのが馬鹿馬鹿しくなっちゃっただけだから」

 

「生徒会の問題だからな、関係者の名前が出てくるのもおかしくはない」

 

「だ、だよね。よし、打ち込むね」

 

再びQRコードを読み取って、『雅』とパスワードを入れる。

 

すると……

 

『大正解!おめでとう!ロックが解除された』

 

と表示が出てきて『お宝ゲット!』とテロップが表示される。

 

そしてこれまでとは違い、雷がピカッとなって、ゴゴゴーという効果音のあと、花吹雪がまって『100万ポイント獲得!』という豪華な映像演出が私たちの頑張りを称えてくれた。

 

「や、やったよ。波瑠加ちゃん、啓誠君!」

 

「だね、愛里!いえーえ」

 

波瑠加ちゃんとハイタッチを交わす。

 

「お前たち、喜ぶのはいいが、早く合流ポイントまで移動するぞ。ここは危ない」

 

そう指摘する啓誠君だったけど、顔はとても嬉しそうだった。

 

「これで明日のイブはみんなでパーっとやれるぞー」

 

「わあ楽しみだぁ」

 

「……悪くないな」

 

周りを見ながらも3人で100万ポイントの使い道を話しながら楽しく合流地点へ向かった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「葛城くん、次は北北西へ200m前進です」

 

「承知した」

 

「お次は、北に150m」

 

「承知した」

 

マイカーの葛城くんが警察の追跡をかわしながら校舎裏を駆け回ります。

その間、私が司令塔となりAクラスの皆さんからの情報をまとめ、各自に指令を出す。

そうしているうちに葛城くんがお宝の元へ進みます。

警察の奇襲を心配することなく情報を精査できるこの戦術は、他の方たちには真似できませんね。

 

ふふふ、このままだとAクラスがお宝を大量ゲットすることになりますよ、綾小路くん。

 

「葛城くん、このあたりにレアなお宝があるはずです」

 

「わかった」

 

この状態だと高いところを確認するのも楽ですね。

これまでの人生で高いところを見上げることができたのはお父様に抱きかかえられていた時ぐらい、懐かしいものです。

 

「ハッハーッ、失礼するよ。リトルガール」

 

そんな私たちの目の前に現れたのは……忌まわしき不遜筋肉。

私たちが探していたレアなお宝をさっと見つけ出し、読み取って立ち去ります。

 

せっかくの回想を台無しにされた気分。

ですが、私も子どもではありません。

狙っていたお宝を横取りされたぐらいでは、心は動かないのです。

道を歩いていたら、ゴリラが横切ったぐらいに思っておきましょう。

 

「葛城くん、次はあっちのお宝を目指しますよ」

 

「おや、また君たちかい。悪いけどこのトレジャーは私が頂くよ」

 

再び不遜筋肉に先を越されます。

 

「葛城くん、次です」

 

「もしかして、君たちは私のファンなのかな?」

 

何度方向を変えても必ず邪魔をしてくるこの男。

仏の顔も三度まで。

 

「どうやら彼にはお灸を添えてあげる必要がありそうですね。葛城くん、あの筋肉ダルマを追ってください」

 

「高円寺をか?……気は進まないが、命令ならしかたない」

 

猛スピードで走っていく不遜筋肉を、マイカーがフルスロットルで追いかけます。

 

「おやおや、さながらターミネーターじゃないか、葛城ボーイ。私ほどじゃないが、今日も良い筋肉をしているね」

 

「高円寺に言われると悪い気がしないな。そっちもナイスバルクだ」

 

笑い合うお二人。ですが、聞き捨てならないことがあります。

 

「失礼ですね、葛城くんはシュワちゃんというよりブルース●ウィリスでしょう」

 

「坂柳、どこを見ての発言だ?」

 

「それこそナンセンスだねえ。マクレーン刑事は若い頃はふさふさだったじゃないか」

 

「……どうして俺ばかりこんな目に」

 

「似合ってますよ、葛城くん。というより、なんだか彼と親しげでございませんか?」

 

思わず変な指摘から入ってしまいましたが、本題はこちら。

さきほどの、今日『も』という発言が気になっていました。

 

「ああ。高円寺とは筋友だからな」

 

「はい?」

 

「俺が肉体改造を進めていた時に、伸び悩んでいた時期があった。そこで通りかかった高円寺が教えてくれた自重トレーニングがなかなか良くてな。続けるうちに大きな壁を乗り越えることができたんだ。それ以来、たまに一緒に筋トレをしている」

 

「葛城ボーイは、なかなか見どころがあるからねえ」

 

「……」

 

最近乗り心地とスピードがますます良くなったと思っていましたが

この男が勝手にマイカーをカスタムしていた、ということですか。

その不敬な行いを許すことはできません。

 

「葛城くん、遠慮はいりません。やってしまいなさい」

 

「落ち着け坂柳。泥棒同士での暴力行為は禁止されている。ここで俺が失格になったら、誰がお前を運ぶんだ」

 

マイカーからの忠言。

冷静に優先順位を考えます。

ここで彼を陥れることはできないでしょう。

でしたら、仕方がありません。舞台が整うまでは生かして差し上げましょう。

 

「……私としたことが少し取り乱してしまったようです。この借りはいずれ返させていただきますよ」

 

「そんな日が来るとは思えないけどねえ。ただ、私はリトルとは言えガールからのお誘いは断らないよ」

 

どこまでもこちらを馬鹿にしてくる不遜筋肉。

この学校で私に喧嘩を売ることのできる人間は限られています。

ここはひとつじっくりと後悔してもらいましょう。

 

「私はあっちのトレジャーに興味があるんでね、君たちとはここまでだ。アデュー」

 

「ああ。またな」

 

「全く無駄な時間を過ごしてしまいました。私たちは校舎の中に向かいますよ、葛城くん」

 

「了解した」

 

そうして校舎内に入ったとき、携帯が振動します。

 

『~ミッション開催のお知らせ~』

 

確認するとそんな告知が来ていました。

 

『これより各地で随時ミッションが開催される。開催地に近づくとマップに表示される。

イベントを有利に進めるアイテムの入手が可能だ。

 

参加人数が限られているものもあるため、希望する泥棒は早めに訪れることを推奨する』

 

「どうやら図書館でミッションがあるようです。行ってみましょう」

 

表示されたマップに、さっそく開催地の表示がありました。

アイテムとやらも気になるところですし、ミッションの内容がわからない以上、誰かにお任せするのも得策とはいえません。

図書館で行うものであれば、身体能力が問われることもないでしょうしね。

 

「着いたが、入っても大丈夫か?」

 

「ええ。構いません。ミッションエリア内では警察によるタッチは無効とのことですから」

 

そうしてゆっくりとドアを開け、図書館へ入ります。

 

「ようこそ、お越しくださいました。……たしか、葛城くんと、坂柳さんでしたか」

 

「はい、その通りです。あなたは、Dクラスの……椎名さんでしたか」

 

茶道部で綾小路くんと一緒にいる生徒の1人。いずれお話をしなくてはと思っていたところです。

 

「はい。今回はここのミッションの担当をさせていただきます。よろしくお願いいたしますね」

 

そう言って穏やかに微笑む彼女。

おっとりした様子ですが、学力の高さは噂に聞いています。

私の敵となることはないでしょうが、ミッション内容次第では多少苦戦することもあるかもしれませんね。

 

果たして彼女はどれだけ私を楽しませてくれるのでしょうか。

 





【ルール補足】


・警察、泥棒ともに武器などの道具を使用しての攻撃を禁止する
→警察の身体に触れてしまうとアウト、なら鉄パイプやバールのようなもので武装すれば反撃できるじゃん、といった危険思想をなくすためのルールですね。当たり前のはずが、明記してないと誰かやりそう……。まあ一番やりそうな人物が警察側ですが……。

・一部エリアの進入禁止
→今回のイベントでは校舎内も解放されていますが、3年エリア、食堂や職員室、図書館、カフェ、保健室などには入ることができないようになっています。お宝を隠すのに丁度良さそうですが、参加していない生徒や先生方の迷惑にならないような配慮と、事故の起こりやすそうな場所も禁止になっているイメージです。
逆に通常では使われないため、そういった場所をミッションエリアに指定している場合もあります。3年生の皆さん、図書館使えずすみません。
ちなみに生徒会室がイベント本部なので、こちらは完全に立ち入り禁止です。

・イベント中に限り、廊下は走ってOKです。

・ミッションエリア内は、開催中は参加意思がある泥棒は無敵状態です。
ミッションでの脱落はあっても、通常ルールでのタッチは無効となります。
また、ミッション後にその場にいた警察は3分ほど移動禁止。ミッションエリア周辺での待ち伏せも禁止となっています。
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