ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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クリスマスイブらしさ

綾小路からの呼び出し。

昨日の今日で、どこからか俺の連絡先を入手し、わざわざイブに会いたいと連絡を寄こすなんざ正気の沙汰じゃねえ。

バックレてやろうかと思ったが……昨日の傷が疼きやがる。アイツが何考えてんのか、少しでもわかるのなら、家で寝て過ごすよりは幾分かマシだ。

 

少し早めに待ち合わせ場所、海岸に面した通りのベンチについた。

遅れて綾小路を挑発するのも手だが、アイツが先に着いてこの場に何か仕込まれる方がリスクだ。

ここはベンチにどっしりと座って待ち構えてやろう。

 

……にしても、色々と笑えねえ状況が続いている。

 

ペーパーシャッフルの結果を皮切りに俺のクラスは3つに分断された。

ひとつは、現在も俺の下にいる石崎たちのような馬鹿共。

もうひとつは、時任を筆頭に南雲の軍門に下った奴ら。

最後に、ひよりを中心とした中立派――とは言ってもほぼ綾小路派と言ってもいいかもしれねえが。

 

完全に支配したと思ってからのこのザマだ。

ゴミみたいなクラスポイントに、ペーパーシャッフルでプライベートポイントは使い果たし、南雲の野郎に借金状態。

極めつけは昨日のイベントでの敗北。腕っぷししか能のねえ連中が束になっても敵わない相手、初めて感じた恐怖。

 

このままじゃ、勝てる勝負にも勝てねえ。

 

こんな事態になった元凶は……もう疑うまでもないな、綾小路の野郎――いや、それを読み誤った俺の責任か。

 

どっちにしろ、クラスを再度支配しない限り、現状の打破はあり得ねえだろうな。

だが、俺だけでは再支配は実質不可能に近いのも事実。

 

南雲についている連中は、そうすることで自分たちだけは救われると思っているめでたい奴ら。

アイツが本当に実力で個人でAクラスを目指せるようなルールを作ったとして、どうして自分たちがその対象になれると思うのか。

あの手の人間は弱者がもがくのを見て楽しむだけ楽しんで最終的に救ったりなどしない。その方が面白いからな。

 

そんな奴らが俺の言うことをすんなり聞くはずがない。

南雲の本性を理解させるか、ヤツを失脚させるか――人の配下を洗脳した報いはいずれ受けてもらう。

 

そいつらの事を含め、現状をどうにかする方法は限られてくる。

 

元々、この学校のクラス編成には疑問があった。

 

最初に編成されたDクラスは『不良品』の集まり。

何らかの訳アリ連中の寄せ集め。

 

だが、連中を見ていると、明らかに、俺たちのクラスにいる連中のほうがDクラスでもおかしくないような奴らがいる。

たかがコミュニケーション能力が原因で、学年でもトップクラスの学力の鈴音や幸村が普通底辺クラスになるか?

石崎のような札付きの不良の方がDクラスには似合っている。似たような比較をするなら三宅と石崎の差はどこにある。

 

逆にうちのクラスにも不可解な存在はいる。

中身の残念な金田は置いとくが、ひよりはどうだ。

ひよりは勉強ができる反面、運動能力とコミュニケーション能力は高いとは言えない。

Dクラスだった鈴音や幸村との差はなんだ。

 

万引きが原因でBクラスの一之瀬。

普通に考えりゃDクラスじゃねえか。

コミュニケーション能力があっても盗みを働く欠陥は見逃すか。

 

Aクラスにも戸塚の様なパッとしねえ生徒が紛れている。

アイツの実力じゃ良くてBクラスだろ。

 

そして、奇妙なのは最初からクラス毎に特色があること。

 

最初の編成では

 

Aクラスは頭脳面で秀でているが、運動面はそこそこ

Bクラスはザ・無難、だが協調性に優れている

Cクラスは脳筋軍団で喧嘩含め運動ができるやつが多い

Dクラスは一芸特化で得意分野なら輝ける、かもしれない奴ら

 

といった具合に意図的に能力別に分けたとしか考えられない。

だが、その中でも様々な試験に対応できるように、違う分野が得意な生徒も一定数は配置してある。

 

そして、ここからは憶測だが、各クラスの配属は、最初にリーダーになりうる人物を何人か配置した後に他の生徒を決めていった、そんな気がしている。

 

Aなら坂柳、葛城と相反する2人。

Bは一之瀬、神崎、柴田あたりか。

Dなら、鈴音、平田、櫛田、そして綾小路。

 

そうして特色ある各クラスで、各リーダー候補がどう動き、どう争っていくのか。

そういう人材の配置にしなければ、そもそもクラス同士の競争が発生しない。

優秀な生徒の集まるAクラスの独走で何事もなく終了するはずだ。

 

目的はわからないが、学校側はそういう実験データをとっている。

 

それが俺の結論。

 

2年で言えば、元Aクラスの桐山、鬼龍院が学校の期待したほどのリーダーシップを発揮しなかった結果、南雲の下剋上を許し、独走状態となっている。

他クラスのリーダー候補もすでに退学させられたと見るべきだろうな。

それも1つのサンプルデータであるため、南雲の学年支配を黙認している。

そうでなければ、学校から規制が入らなければおかしいことをアイツはやっている。

 

 

つまりうちのクラスにも、俺以外に学校から期待された実力を持つリーダー候補が配属されていることを意味する。

 

俺は一度そいつにクラスを渡し、俺は俺でやることを進めていく。

それが、クラスの浮上のきっかけ、そして綾小路を倒すための活路になるはずだ。

綾小路を倒すためには、ちょっとやそっとの策じゃ通じねえ。

正直いまも勝てるビジョンはまだ見えていない。

 

だが、まだ見えていないだけだ。ま

だ学校生活は2年以上ある。いくらでもやりようはあるはずだ。

 

そんなことを考えていたら、綾小路がやってくるのが見えた。

さて、俺を呼びつけたんだ、一体どんな話を聞かせてくれるのか……久しく忘れていた感情が胸の奥から湧き上がってくる。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「クク、やけに暖かそうな格好じゃねえか。流石の副会長様も寒さには弱いってか」

 

「そんなところだ。ソフトクリームでも持ってきてくれれば苦しむかもしれないぞ」

 

「ハッ、つまらねえ冗談だ」

 

待ち合わせ場所に先に到着していた龍園。

正直やってくるかどうかは5分5分だったが、この調子なら要らぬ心配だった。

 

「それでイブに何の用だ」

 

「ちょっと世間話でもと思ってな」

 

「そんなもんは、お前の女たちとしておけ」

 

「悪いが、イブを共に過ごしてくれるような女子はいなかった」

 

綾小路グループの集まりは例外として、結局、クリスマスイブを一緒に過ごそうと誘ってくれるような人物はいなかったからな。

おかげで一之瀬にポイントを返せたり、龍園と会う時間ができているわけだが……。

 

「ハッ、面白い冗談も言えるじゃねえか。俺が手を下すまでもなく、そのうち刺されそうだな」

 

「なんのことだか」

 

こちらを煽るように大げさに笑っていた龍園が真剣な顔つきに戻る。

この辺りで本題を切り出した方がいいだろうな。

 

「今日呼び出したのは、昨日のイベントのことで補足しておこうと思ってな」

 

「補足だと?」

 

ギリっとこちらに睨みをきかせてくる。

龍園にとっては余計なお世話かもしれないが、事実確認は大事だ。

今後のためにもコイツの現状は把握しておきたい。

 

「意外とクラスメイトを大事にしているんだな、龍園」

 

「……ふざけたことを言うじゃねえか」

 

「あの屋上からの体育館前の流れ、ポイント獲得を優先するなら適当なところで一之瀬にカギを渡してしまえば確実だった」

 

「お前をぶちのめすチャンスだったからな。そっちを優先しただけだ。その結果はクソみたいだったが」

 

「それも本来のお前ならもっと上手い方法――というより、より卑劣な策を取ってもおかしくない。一之瀬から鍵を奪った後、人質にするのがもっと効率的だしな」

 

「何が言いたい?」

 

「それができなかったのは、南雲からの命令だったから――大方、南雲の策の中で、オレを負傷させる命令が出ていた。ポイントはそのオマケの報酬ってところか」

 

「何から何までお見通しってか」

 

「ペーパーシャッフルの際、南雲と何かしらの取引があったことは想像できたからな。だが、そこでクラスメイトを切らずに、南雲の下につく選択をとるとは思わなかった」

 

「雑魚どもでも、貴重な手足には変わらねえ。それにあれは俺の失態だ。支配者としてあそこで部下を切り捨てんのは三流のすることだ」

 

「お前なりの美学ってことか」

 

龍園なりの哲学があるのか、本心を話す気がないのか。

 

「そんな大層なもんじゃねえ。所詮この学校生活は遊びの延長、いざとなったら退学してやっても良かったんだがな……気が変わった」

 

「というと?」

 

「お前も南雲の野郎もぶっつぶしてやる。こんなに胸が高鳴るのは久々だ」

 

そういう方向で結論を出してきたか。だが、それを実現できるかは別の話。

 

「やる気になるのは結構だが、今のお前のクラスの状況でそれが可能だと?」

 

「無理だろうな。だから、俺はリーダーを引退させてもらうぜ」

 

「引退?」

 

いくつかパターンは想定していたが、一番可能性が低いと思っていた選択肢。

 

「これからうちのクラスを率いていくのは、ひよりだ」

 

「なるほど……少し心配な部分もあるが、考えたな」

 

現状龍園クラスが分裂しているのは、龍園への不満によるところが大きい。

その元凶が退くだけでも、ある程度の変化は見込める。

 

そして新しいリーダーがひよりであれば、オレも敵対する必要はなくなるだろうという算段。B、C、Dクラスで協力し、Aクラスへ攻撃する体制すら考えられる。

 

ひよりは茶道部を廃部から救ったように行動力もあり、学力も高い。

温厚な人柄から、龍園とのギャップで心を許すクラスメイトも多いだろう。

ひよりの洞察力や推理力に、オレも感心させられたことが幾度となくある。

南雲に支配されないだけの自分を持っていることも強みか。

 

問題があるとすれば、本人にその気がないのではないか、というところだが……。

 

その点をどうにかしてクラスの運営を任せ、その間に龍園は龍園で力を蓄える、ということだろう。

ひよりの裏で、虎視眈々とこちらの寝首を掻こうとする。

表立って行動しないだけに、厄介であることは間違いない。

 

「そういうわけだ。新しいリーダーをいじめないでやってくれよ?」

 

「元々オレの望みは平穏な学生生活だからな」

 

「冗談にしちゃ笑えねえな。平穏な生活を望むようなヤツの行動とはまるで違うじゃねえか。俺はてっきり権力振りかざして、ハーレム作って、邪魔者は捻りつぶす快楽主義者だと思ってたぜ」

 

「それこそ笑えない冗談だな……」

 

オレの何を見てそんな発想に至ったのか。

 

「これだけ親切に教えてやったんだ、こっちからも一つ聞かせろ。お前はなんで南雲を放置してんだ?」

 

「オレじゃ南雲会長には勝てないからな、と言ったら信じるか?」

 

何を聞いてくるかと思えば、南雲との関係か。

今のところ放置している理由なんて一つしかない。

南雲に限らず、すべては貴重なサンプルだ。

俺はこの学び小屋で行われているある種の実験をそれなりに楽しませてもらっている。

楽しむ機会を自ら減らすことは誰だってしないだろう。

 

「俺に勝ったヤツが、アイツ以下なはずがねえだろ。南雲の執着からお前たちは権力争いをしてるんだと踏んでたんだがな」

 

「生徒会の権力に興味はないからな。絡んでくるのは南雲の趣味みたいなもんだ」

 

「随分いい趣味をしてやがる」

 

龍園がベンチから立ち上がる。

これ以上話すことはないと判断したのだろう。

 

「次やるときはお前を潰す。それまで精々その平穏な日々を楽しんでおくんだな」

 

そういって寮の方へ歩いて行った。

イブに告白される内容がこれなのは何とも悲しい限りだ。

 

とは言え、昨日のことで、自暴自棄になって周りを巻き込む可能性、戦意喪失して退学する可能性も考慮していただけに戦う意志を捨てなかったことには敬意を表したい。

 

再戦することが叶った時、どんな手を使ってくるのか、楽しみだな。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

龍園との会合のあと、オレはライブハウスに足を運び、綾小路グループでバンドの練習に励んでいた。

 

「演奏はかなり形になってきたな」

 

「ああ。これなら本番も安心だ」

 

明人と啓誠の言うように、短い期間ではあったものの、1曲を集中して練習した結果、音楽としてのまとまりは出てきている。

 

「残る課題は……大きく2つかな」

 

波瑠加が少し頭を抱えている。

 

「まずは、きよぽん」

 

「オレ?」

 

キーボードは、そつなくこなせていると思っていたのだが……。

 

「なんていうか、演奏が完璧すぎるんだよね。グルーブ感が足りない」

 

「……難しい注文だな」

 

グルーブ感。

定義も曖昧なこの言葉だが、演奏で感じる高揚感などを指すらしい。

実際は、その場の演奏の空気を感じ取り、あえてズラしたり、タメを作ったり、緩急を入れたりする、人間味を前面に出した演奏のことのようだ。

……あれ、これ無理かもしれないな。どうやったら出せるんだ?

バンドの演奏で人間味が出るのであればホワイトルームも苦労しない。

 

「清隆は真面目過ぎるからな、もっと気楽に演奏すればいいんじゃないか」

 

「気楽……か」

 

明人からのアドバイス。

つい正確に演奏してしまうのが欠点のようだ。

誰か気楽に演奏してくれたらそれをコピーできるのだが……残念ながらオレ以外にキーボードを演奏できるものはいない。

 

結局、タメや緩急をつけようにも、ここでこうしようと決め込んだ時点でライブ感は失われるわけで、グルーブ感から外れてしまう。

 

複数名で演奏しなければ気づけなかったこと。

なるほど、音楽も奥が深いな。

 

「もう一つは、私たちのダンス……なんか致命的に可愛さがないのはなんでだろ?」

 

「波瑠加がわからないなら、俺達には無理だな」

 

「ううう。私がもっと可愛い女の子だったらみんなに迷惑かけずに済んだのに……」

 

男性陣が可愛い女子やアイドルに疎いため、何のアドバイスを送ることができない。

外村や本堂あたりに見てもらって意見を求めるかと提案したところ、波瑠加から即否決された。

 

そうしてオレはグルーブ感を波瑠加と愛里は可愛いダンスを追い求め練習を続けたが――

 

「あ~、今日はもう無理。何やっても改善される気がしないし、今日はもう上がって気分転換しよ!なんせイブだよ、イブ。皆の衆、パリピになろうっ!」

 

「練習前は、バンドマンにはクリスマスなんてないの、って言ってなかったか?」

 

「みやっちの意地悪」

 

「でも、私もクリスマスらしいことしたい、かな」

 

「俺も否定はしない」

 

「ゆきむーはホント素直じゃないよね。でもありがと」

 

「昨日の打ち上げもまだだし、丁度いいかもな」

 

そうしてオレたちは練習を切り上げる。

外はすっかり暗くなっており、イルミネーションの光に包まれている。

この時期特有の情景は、素直に美しいと思える。

 

「俺も清隆みたいにしっかり防寒対策しておくんだったな」

 

「オレもたまたまだ」

 

それに一之瀬のおかげで寒さは感じない。

クオリティが高いためか、手作りだと誰も気づいていないのは幸いだった。

誰から貰ったものかと追及されるのも面倒だ。

 

「うーん、どこもお店一杯みたい……」

 

イブの夜ということで、カラオケやレストランなどめぼしい場所は混みあっていた。

 

「別に軽食を持ち寄って、誰かの部屋でいいんじゃないか?」

 

「それもそうだね……じゃあきよぽんの部屋に行ってみよー!」

 

「おい、何でオレの部屋なんだ」

 

「なんか一番片付いてそうな気がする」

 

「女子の部屋に行くのは俺にはハードルが高い。清隆の部屋なら安心だ」

 

波瑠加の提案に、啓誠が賛同する。

こちらも特に拒否する理由もないため、承諾し、コンビニに寄って寮へ向かった。

 

「清隆くんの部屋、初めて入るからちょっと緊張するかも」

 

「愛里~エッチな本とか出てきたらどうする?」

 

「えええっ、そ、それは健全な男子ってことだから……うん」

 

波瑠加の無茶ぶりに顔を真っ赤にする愛里。

 

「ということですが、きよぽんさん」

 

「残念ながら何も出てこないぞ」

 

そう言ったやりとりをしているうちに部屋の前に到着する。

 

……その瞬間、背筋が凍るほどの悪寒が走る。

ドアノブを降ろすと、鍵が開いていることがわかったからだ。

 

何も出てこないといったが、あれは嘘だ。

このままじゃ櫛田が出てくる。

エッチな本の発見よりも状況が悲惨なことになるのは火を見るよりも明らか。

 

「すまない。そう言えば、昨日部屋を散々散らかしてしまって人が入れる状態じゃないことを、今思い出した」

 

「えー、少しぐらい気にしないよ?」

 

「いや、畳んだ洗濯物を全てひっくり返してしまったり、朝食をぶちまけてしまったままだったり、実はエッチな本もたくさん散乱している。流石に人には見せられない」

 

「そ、そっか……」

 

オレからの必死の訴えが伝わったのか、そこまで言うならと急遽明人の部屋に変更になった。

 

「オレはちょっと荷物整理してから向かう。少し遅れるかもしれないが気にせず始めててくれ」

 

そういって4人を送りだし、視界から消えたところで部屋に入る。

 

「メリークリスマス、綾小路くんっ」

 

そこには、サンタコスをした櫛田サンタがいらっしゃった。

 

「綾小路くんにはサンタさんからプレゼントだよ」

 

こちらに有無を言わさず、櫛田から手渡された紙切れ。

 

『なんでも堀北退学する券』

 

なんだこれ?

 

「なんだこれ?」

 

思わず思ったことをそのまま口にしてしまう。

 

「やだなあ。そのままの意味じゃない。それを使ってくれたら、綾小路くんが堀北を退学にするって券だよ?」

 

「それオレが使うメリットは……」

 

「私のサンタ代は安くないよ?」

 

「クーリングオフで」

 

とんでもない券は返却させてもらうに限る。

 

「もぉ冗談に決まってるじゃない。本当のプレゼントはこれ」

 

そう言って渡された包みには、恐らく手作りであろう、ツリーやサンタなどの形をしたクッキーが入っていた。

 

「変に重いものを渡して面倒な女って思われるのも嫌じゃない」

 

と、少し目を逸らしながら伝える櫛田サンタ。

 

「ありがとう。大事にいただく」

 

「うん!それじゃ、私、これから女子会あるから、もう行くね」

 

「わざわざ待っててくれたのか。すまなかった」

 

「ううん。本当は一緒に夕飯食べたかったんだけど、そういう会に顔を出しとかないと男ができたとか疑われちゃって、面倒だからさ。また、今度ご飯は作りに来るから」

 

「ああ。楽しみにしておく」

 

危なかった。

櫛田が夕飯を作っていた場合、綾小路グループの会への参加が危ぶまれたが、その場合、誰かオレの部屋に様子を見に来てもおかしくはなかったからな。

 

女子会を開いてくれたメンバーには感謝しかない。……本当に女子会はあったのだろうか。ドアの前での会話は部屋の中に届いていてもおかしくはない。

 

ふと気になりもしたが、待たせても悪いのでオレも明人の部屋に向かった。

 

「メリークリスマス、きよぽん!ささ、駆けつけ一杯行ってみよう」

 

「何のノリだ、それ」

 

「パリピ感だよ、パリピ」

 

パリピか……世の中にはまだまだ分からないことが多いな。

 

「ま、波瑠加の事は放っておいて楽しもうぜ」

 

「コラコラ」

 

明人の提案にピシッとツッコミを入れる波瑠加。

 

「では改めて、メリークリスマス&リアルケイドロお疲れー&コウィケガンバロー」

 

「どれにのればいいかわからんな」

 

「全部全部!」

 

そうして5人で賑やかな時間を過ごした。

ホワイトルームではただの一日に過ぎなかったクリスマスイブ。

一之瀬から始まり、多くの人と過ごした一日となった。

こうして過ごすことのできるありがたさを感じることとなった。

 

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