ようこそ実力至上主義の生徒会へ   作:まぐまれむ

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試験4日目は、日曜日で終日休みとなっている。

とは言っても、この施設から出ることはできない。

体育館やグラウンドなどの施設は使用できるが男女で使用時間が分かれており、相変わらず夕飯の時間以外では異性間の交流はできなくなっている。

 

そうなると特にやることがないため、部屋でこれまでの疲れを癒し、後半戦に臨むというのが大半の生徒の考えのようだ。

 

朝6時の音楽で全員が起きる。

休日でもその辺りは変わらないため、これを機に早起きの習慣をつけさせる狙いか。

 

「清隆、また高円寺がいないぞ。今日は休日だからまだいいが、この調子じゃ明日以降も続くんじゃないか」

 

啓誠が呆れ顔で高円寺のベットへと視線を向けている。昨日は朝食作りで全員が4時過ぎに起床したため問題にならなかったが、今日はすでにどこかに行ってしまったようだ。

 

「大丈夫だ啓誠、今回は頼れる保護者を同伴させてある。無茶な行動をするようなら止めてくれるはずだ」

 

「保護者?」

 

「グッモーニン、エブリワン。今日も素晴らしい朝だねえ」

 

一体何のことかと首を傾げる啓誠だったが、丁度話題の主が帰還する。

 

「高円寺、何度も言うが勝手な行動は慎めよ。お前だってこの試験は団体行動が大事だとわかってるはずだ」

 

「ノープロブレムだよ。今日はホリデーじゃないか」

 

「お前の場合、休日関係なく続けるだろ」

 

「それはそうだねえ。日課は毎日続けるから日課というのだよ。それにわざわざ補助役を寄こしたんだ。君たちも公認ということだろう?」

 

「補助役?」

 

先ほどのやり取り同様、啓誠が疑問を持ったところで扉がノックされる。

 

「休日にすまないが、少し邪魔をする」

 

「葛城さんっ!」

 

いち早く反応した弥彦の言う通り、現れたのはAクラスの葛城。首にタオルをかけ、身体中から熱気を放っていることから、運動直後ということがわかる。

 

「普段は1人で肉体美の追及をする私だが、たまには補助付きで違うトレーニングをするのも悪くないからね。その点、葛城ボーイは使える男さ」

 

コウィケのステージで筋肉美を披露していた2人。

葛城曰く筋トレ仲間とのことだったので、今回お目付け役として抜擢した。

そうして先日、高円寺の朝活の様子を見てきて欲しいと弥彦に伝言を頼んでおいたのだが、まさか一緒にトレーニングをしてくるとは……。

 

「でもいいのかよ、葛城。この試験は体力を使うものばっかりだ。余計なことをしている場合じゃないんじゃないか?」

 

同じクラスの橋本が当然の疑問を投げかける。的場グループとしても主力には休んでおいて欲しいと思っているはず。

 

「心配無用だ。空気の良い大自然に囲まれているからか、普段より体力が有り余っていてな。ちょうど汗を流したいと思っていたところだった」

 

それは大自然の癒しのパワーではなく、単純に坂柳を乗せて動いていない分の余力なのでは?と、部屋にいた大半の生徒が思っただろうが、誰も口にはしなかった。

 

「お前もそっち側に行っちまうのかよ……」

 

橋本がぼそっと呟く。

数少ない良識人としてこの男も何かと苦労しているのかもしれない。

 

「葛城さんが一緒なら高円寺のことも安心ですね」

 

「弥彦、高円寺は己にストイックなだけだ。例え俺がいなくとも筋トレで迷惑をかけることはない」

 

高円寺と葛城の間には謎の信頼関係が出来上がっている様子。

そうはいっても真面目で責任感のある葛城のことだ。

万が一高円寺が校則に反するような行動を取ろうとすれば、止めようとするはず。

結果、上手く抑えられれば良し。力及ばす問題が起きても現場に居合わせた葛城(Aクラス)にも少なからずダメージになる。痛み分けに持ち込めるだけマシだろう。

 

「確かに、相手にするだけ時間の無駄か。すまないが葛城、高円寺のことは頼んだ」

 

「俺の筋肉(ため)にもなるからな、喜んで引き受けよう」

 

一通りのやり取りを見守っていた啓誠がそう結論づけたことで、グループ内でも高円寺の早朝外出を問題にすることはなくなった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

朝食の時間。

2年生の作った料理は少なくとも昨日のオレたちのよりは質が高いものだった。

 

「どうだ綾小路、俺の作ったほうれん草の胡麻和えの味は?」

 

「えぇ、そうですね……」

 

ちょうど胡麻和えに箸をつけたところで話しかけてきたのは桐山。

特に可もなく不可もない味だったが、自分がこれ以上の物を作れるかわからないため評価が難しい。

櫛田基準で言うなら『もっと精進してください』となるし、石崎基準でいいなら『お店を出せますよ』となる。

 

「なかなかですね。自分じゃこうはいきません」

 

結果、無難な回答をしておいた。桐山らしくていいんじゃないだろうか。

 

「そうか、それならよかった。お前たちよりは少なくとも1年長く自炊しているからな。2年はある程度料理ができる生徒が多い」

 

「南雲もですか?」

 

「……アイツは『和食は俺の専門じゃないのさ』とか言って、オリーブオイルを探しに行ったり、塩や胡椒を高いところからサラダにかけようとしたりしていたな」

 

「戦力外も良いところですね」

 

「ちょっと小洒落たものを作るのは得意らしいんだがな」

 

勝手なイメージだが俗にいう『映え』を気にしそうだな。

それはそれで南雲らしいとも言えるか。

とりあえずこの施設にオリーブオイルがなくて助かった。

朝からオイルまみれのサラダは遠慮したい。

 

「それで胡麻和えの感想を聞きに来ただけじゃないですよね」

 

「ああ。話すなら、南雲がオリーブオイル入荷の交渉をしに行った今がチャンスかと思ってな」

 

「本気でおっしゃっているなら、そんな隙を作る人間を警戒するのも馬鹿馬鹿しくなりませんか?」

 

「それだけ南雲には余裕があるってことだろう。堀北先輩とはうまく話せたか?」

 

昨日の一件は桐山が一枚嚙んでいたようだ。

『25』と書かれたメモを置くためにはオレのベットの位置を知らなくてはならない。

それを把握しているのは、グループメンバーを除けば前日にトランプをした上級生のみ。

 

「そうですね。堀北先輩の意向は伝わりました。桐山先輩は堀北先輩のサポートをされてるんですか?」

 

「こっちが一方的に情報を送っているだけだけどな。不要だとは思うんだが、南雲が何かを企んでいるなら情報は多いに越したことはない」

 

それは情報の精度にも依るが……果たして南雲が桐山のスパイ活動に気が付かないだろうか。あえて泳がせて偽の情報を堀北兄に届けさせている、と言われた方が納得できる。

 

「オレから見て南雲が特に何かしているような感じはしませんが、実際何かあるんですか?」

 

「そうだな……綾小路、お前にも共有しておく。表立っての行動はしていないが、堀北先輩の大グループメンバー何人かに別のグループの2年が接触している。おそらく南雲の差し金だな。あとは俺たち2年Bクラス以外には、バスの中ですでにグループ作成の指示が出ていたようだ」

 

「Bクラス以外、ですか?」

 

「鬼龍院の活躍もあってな、俺たちはなんとかAクラスに食らいつける状況にある。だが、情けないことに2年の他クラスはすでに白旗を上げた。そいつらは南雲の支配下にあると思ってもらっていい。それに……これは身内の恥になるが、Bクラス内にも南雲を崇拝する者はいる」

 

南雲の体制ももうすぐ盤石になるということか。

想定よりBクラスが粘っているのは朗報だが、それもどこまで続くか怪しい。

 

「ありがとうございます。大体の状況は把握できました」

 

「幸いにもこの大グループには俺たちがいる。いざという時は、成績を落として堀北先輩のサポートをするぞ」

 

「そんなことにならないことを祈るばかりですね」

 

身も蓋もないが確実とも言える作戦。

 

「それじゃ俺は怪しまれないうちに戻るとする。綾小路も何か掴んだら堀北先輩の力になってやってくれ」

 

桐山はそう言って2年のグループへ戻って行った。

ちょっとした会話であれば、生徒会役員同士のコミニュケーションという説明で怪しまれるほどのものではないだろう。

 

今の会話で確信したが、桐山は南雲にうまく利用されているな。

なんせ男子の大グループの作成を言葉巧みにコントロールしていた南雲だ。

南雲が本気で正々堂々と戦うつもりなら、不穏分子になり得る桐山とオレを一緒のグループに配置するはずがない。

そもそも南雲の小グループは、Aの南雲、Bの桐山を除けば、残りはCとDクラス。

何かを狙っていると考えたくもなる。

 

しかし、それが南雲の戦略の一つ。

ブラフの混じった様々な情報を与え、真の狙いを掴ませないようにしている。

堀北兄との一騎討ち約束についてもそうで、他者を本当に巻き込まないのか、実は手を回しているのか、それを肯定する材料と否定する材料が出てきている。

 

情報が増えれば増えるだけ、可能性が浮かんでは消えるの繰り返し。

そうなってしまうと答えを見つけ出すのは容易ではない。

 

万が一を考え、全てに対応しようとすれば堀北兄だけでは手が足りなくなる。

あとは、そうしてできた隙に強力な一撃を叩き込むだけ。

 

ただこの仮定は堀北学が専守防衛をする場合の話。

学の方も何らかの攻撃に出れば南雲も守りを考える必要が出てくる。

……はずなのだが、両者ともに大きく動いているわけではないため、まだ展開が読めない部分が多い。

 

穴だらけの真実を埋めていくためには、掴まされた情報ではなく、もっと外野からの情報を自分で掴んでいく必要がある。

 

そのことを桐山が理解しているかどうか。

 

いずれにせよ、2人の勝負については静観することにしたが、南雲がオレを攻撃しないとは言い切れないため動向は探っておくつもりだ。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

朝食を済ませるとそこからは自由時間。

オレも例に漏れず特にやることがないため、部屋で休息する予定だ。

昨日は朝食作りで早起きした上に深夜に呼び出しをされていたため、少し寝不足気味だしな。

 

部屋の前まで戻ってくると、誰かと待ち合わせだろうか、石崎とアルベルトが入り口の前に立っていた。

携帯がないとこういう時大変だなと思いながら、部屋に入るため近づいたところで声をかけられた。

 

「待ってたぜ、綾小路!」

 

「Hey brother!」

 

待ち人はまさかのオレだった。

 

「やっと休みだからよ、約束のアレ教えてくれよ」

 

「いや、オレはねむ――」

 

「さっそく道場行こうぜ!」

 

拒否しようとしたが、がっちりとアルベルトから両肩を掴まれ、簡単には振りほどけない。

これがカツアゲならいくらでも対処できるのだが、相手に悪意がないため、強硬手段を取ればこちらが不利となる。

 

結局断り切れず、道場で石崎とアルベルト相手に軽く組み手をして過ごすこととなった。

 

こちらとしては迷惑な話だったが、2人は終始ご機嫌だったので、グループの士気向上に貢献した、ということにしておく。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

そうしてやってきた夕食時間。

 

「王子~!準備できてますよ」

 

食堂に入るなり、入口付近で待機していた諸藤に声を掛けられる。

 

「流石の手際だな。携帯もない中、大変だったんじゃないか?」

 

「このくらい朝飯前です。それより、皆さん、楽しみにしていらっしゃるので」

 

「わかった。食事を受け取ったらすぐ向かう」

 

「はい。あの席付近がそうですので、お気をつけて」

 

食事のトレーを持ち、諸藤が指定した場所へ向かう。

そこにはそわそわした様子で佇む2、3年の女子生徒の集団があった。

人数はおよそ20人ぐらいか。

 

「お疲れ様です。すみません、急に集まっていただいて」

 

「そ、そんなことないよ。交流会を開いてくれるって聞いて感動したぐらいだし、ねっ?」

 

「うん!ファンクラブに入ってて良かったぁ。生綾小路くんヤバい」

 

「ずっとお話してみたかったんだけど、学年違うとなかなか難しいからさ。こんなチャンス逃すわけないよね」

 

挨拶をすると遠慮がちに一人の生徒が返事をしてくれ、周りの生徒に同意を求めたところ早くも盛り上がりはじめる。

 

ここにいる上級生は綾小路ファンクラブの会員。

昨日、ファンクラブの交流会を開きたいと諸藤にお願いしたところ快諾。

声を掛けてみたところ想像より集まったため、上級生と1年で2回に分けたそうだ。

 

もちろん、交流会は表向きの理由。

この会を通して女子側の情報収集をするのが目的だ。

決して男子ばかりの生活に嫌気が差していたわけではない。

諸藤には今度お礼に平田とのツーショットでも送っておこう。

 

「綾小路くんもすっかり人気者だねー」

 

「身に余る光栄ですね」

 

親し気に声を掛けてきたのは朝比奈なずな。

意外なことにファンクラブ会員のひとりでもある。

 

「ちょっとなずな、やけに親し気じゃん。抜け駆けとかずるくない」

 

「いやいや。綾小路くんは茶道部の大事な後輩……あれ、指導員だから先生?になるのかな。ともかく、すでに仲良しってわけ。いいでしょ」

 

「えー、なら私も茶道部入ろうかな」

 

「アリだね」

 

部員が増えればそれだけ活動資金も増える。悪い話ではないな。

 

「いつでも歓迎しますよ」

 

「「「「キャー」」」」

 

こちらの一言一言に過剰ではないか?と思うぐらいのリアクションを返してくれる会員の皆さん。この調子なら上手く情報を引き出せそうだ。

 

本題に入ろうと姿勢を正すと、少し離れたところに一之瀬の姿がチラッと見えた気がした。

こうしてたくさんの女子生徒に囲まれていれば、昨日問題となった綾小路ガールの実在の否定、もしくは誰が綾小路ガールなのか特定が難しくなるだろう。

これで万が一にも一之瀬の迷惑になることはないはずだ。

 

「皆さんはこの合宿楽しまれてますか?男子の方はグループ分けも大変でした」

 

「そうなんだー。私たちはね――――」

 

そうしてグループ分けについてや、授業内容についてなど様々な話題になる。

そのほとんどがたわいのない話。試験攻略には役に立たないだろうと思われるもの。

だが、そういった作られていない情報にこそ価値が合ったりもする。

 

「そういえば、橘先輩と一之瀬の大グループに所属している方はいらっしゃらないんですね。一応、生徒会の仲間なのでどんな様子か気になっているんですが……」

 

「ん?……ホントだね。……あ~、そっか、そりゃそうだよね」

 

こちらの問いに朝比奈がひとり納得する。

 

「どうされました?」

 

「大した話じゃないんだけど、その大グループの2年生って、みんな雅推しっていうか、雅からも頼りにされてるメンバーで構成されてるからさ。ここにはいないよねーって」

 

「なるほど……」

 

「そう言われてみると、3年の方も南雲くんのファンクラブ会員の人とか多いよね」

 

「確かに~」

 

「ま、雅のヤツも一応人気あるからさ、ファンも多いし、グループ分ける時にファン同士で固まるのも不思議じゃないよね」

 

その話が本当であれば、あの2人は南雲のファンクラブに囲まれてしまったのか。気の毒に。

合宿中に一之瀬に会えたら、南雲への毒舌は控えるよう伝えておいた方がいいかもしれない。

 

しかしそのグループ構成には引っかかりを覚える。

もう少し深く探ってみるか、そう思った時だった。

 

「既に始まってしまっていたか。ファンと交流する機会を設けるとは殊勝な心掛けだな、綾小路」

 

「ご無沙汰してます、鬼龍院先輩」

 

不敵な笑みを浮かべながら颯爽と現れた鬼龍院。なぜか彼女もファンクラブ会員。

 

「私も会員なんだ。参加させてもらう」

 

当然の如くオレの向かいの席に割り込む。

だが、同じ2年生はもちろん、3年生も文句を言える猛者はいなかった。

触らぬ鬼龍院に祟りなし、ということだろう。

 

「皆さんと仲良くお願いしますよ」

 

「ハハッ、当然だろう。ここにいるのは皆同志だからな。とはいえ、私と君の仲だ。少しの贔屓を期待してしまう乙女心をわかって欲しい」

 

まるでわからない。オレたちの間にはどんな仲も何もないはず。

1つ確かなことは、ここでの対応を失敗するとファンクラブが早くも崩壊しかねない、ということ。

特になくても困らないが、月のポイント収入と今回の様に情報収集に使えることを踏まえるとできれば存続させたい。

というより、結成ひと月足らずで解散する自分のファンクラブなんてあまりに悲しすぎる。

 

「この場では皆さん平等です。鬼龍院先輩だからといって特別扱いをするつもりはないですよ」

 

「ふむ、殿方を立てることも必要か。すまなかったな、遅れた分、綾小路と話したい気持ちが先行してしまったのだが、良ければこの場所を少し譲ってもらえないか?」

 

「ど、どうぞ」

 

鬼龍院が割り込んだ相手に謝罪をして正式に席を譲り受ける。

 

「さて、今回の特別試験、それ自体よりも新旧生徒会長の勝負の行方の方が注目されているが、可愛い後輩の君はどちらが勝つと思う?」

 

「難しい質問ですね。今のところどちらのグループにも大きな動きはないですし」

 

先ほどまでの和気あいあいとした空気を吹き飛ばすような話題の投下。こちらを試しているのか、からかっているのか、あるいは――――。

 

「謙遜する必要はない」

 

「いえ、実際、何を勝利とするかで見方は変わりますからね」

 

「えっと、大グループの平均点が高い方が勝ちって話だったよね」

 

朝比奈が話に加わる。南雲と堀北兄の勝負は他人事であって他人事ではないのだろう。

 

「表向きはそうらしいがな。何か裏があるならその限りではなくなる」

 

「雅は正々堂々と戦うって約束したんだから、そのままの勝敗でいいと思うけど」

 

「とても信頼されてるんですね」

 

「信頼というか、アイツやたら勝負を持ちかけるけど、これまで約束したルールは守ってきたからさ」

 

朝比奈も堀北学と同じ意見の様だ。

南雲雅という男は、周囲からそのように認知されている。

 

「鬼龍院先輩こそ、最近の活躍は耳にしていますが、この試験はどうなさるんですか?」

 

「これほど茶番と言える試験もそうはない、自由にさせてもらっているよ」

 

ニヤリと笑う鬼龍院。

 

「なるほど」

 

「あーわかる。禅とかスピーチとかわけわかんないよね」

 

「高校生がやること?って感じ」

 

「ねー。これなら受験勉強とかしたかったなぁ」

 

鬼龍院の意見に同意する上級生たち。

ただ、鬼龍院の言っている茶番の意味を読み間違えてはいるが。

 

「フッ、わざわざ忠告する必要はなさそうか。せっかくの交流会だ、あとはみんなで楽しむといい」

 

鬼龍院はそう言い残し立ち去っていく。

どうやらこの試験に対して必要があれば助言を考えていたのかもしれない。

それだけ南雲のやろうとしていることは面倒なこと、ということだろう。

 

鬼龍院が去ったあと、残り時間は再びたわいのない話をして過ごすこととなった。

オレとしては十分に情報を集めることができた。あとは他からの情報と照らし合わせて、真実を探っていく。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

夕食での交流会を終え、部屋に戻ると、オレのベットにメモが置かれていることに気がつく。

 

『25』とだけ書かれた紙。

 

昨日の今日で何かあったのだろうか。

急いでいたのか昨日とは違い、殴り書きのように書かれた数字。

そのためか若干筆跡が異なっているようにも見える。

 

放置するわけにもいかず、25時を待って、昨日と同じ場所に移動する。

 

「来たか、綾小路」

 

暗闇の中から声を掛けてきたのは、堀北学ではなく――南雲雅だった。

 

 

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