ステンノという愛について【完結】   作:AIRUNo(旧AIRU)

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時間決めずに大体夕方〜夜で投稿していますが、0時を超えて投稿は無くすようにしていきます。


幕間 探偵メドゥーサは眠らない

 

 

「……しまった、つい本にのめり込んでしまいました」

 

 マスターの部屋から借りた本を読んでいた結果、ずいぶんと時間を食ってしまった探偵メドゥーサ。

 穏やかながら心に闇を抱えたヒロインの話に、随分時間ミュケーネ取られてしまった。

 この時管制室では、ステンノの裏切りや女神トリニティーの登場で慌ただしくなっていた。

 

 それを知らぬまま、ともかく、マスターの部屋でステンノが何かをしたのを把握した。

 

「調査といえば、まずは情報収集……監視カメラの記録を確認するのはどうでしょう」

 

 部屋の扉には監視カメラがあり、それを見ればいつ誰がやってきたのかが分かる。

 まずはステンノがマスターの元を頻繁に訪れるようになった前後の期間を調べてみれば、何か分かるのではないか。

 そう思い、メドゥーサは監視記録のチェックの許可を貰いにいった。

 

「……えぇ、10倍速、いえ20倍速で結構です。姉様たちの姿なら、それでも見逃しませんから」

 

 記録映像をスタッフに頼んで、早回しで観測する。

 時間は、姉たちが部屋にいない時間帯を見ていく。

 

「そこ、止めて。ゆっくり……あぁ、上姉様ですね。マスターの部屋に入り、3時間後に出ていく……普段と変化はありませんね。もう少し前の時間をお願いします」

 

「これは下姉様です、飛ばして結構」

 

「これは姉様の格好をさせられたランサーの私です。はぁ、この頃の背丈に戻りたい……」

 

 映像を見る中で、どうも最近は1日1回以上マスターの部屋に入っているらしいことが判明した。

 ならば逆に1日も入らない期間まで遡ったほうが、何かが変わったきっかけを掴めるのではないか。

 とはいえ、20倍速で見たとして、単純に20日分をチェックしても1日がかり。更に時間を絞っても、どうやら相当時間がかかると判明した。

 

「……というわけで、任せましたよ。アヴェンジャーの私」

 

「おい待て。なぜ私がこのような真似をさせられる。それにそのふざけた格好はなんだ」

 

 呼ばれたのはアヴェンジャー、ゴルゴーン。

 手足に鱗と爪、長い尾と髪の先にいくつもの蛇の頭。

 メドゥーサの別霊基であり、生前では彼女の末期にあたる怪物に近い存在である。

 

「ですから……頭が複数あったほうが、映像を同時にチェックできて効率的だと。私はその間、別の作業をします」

 

「違う、なぜ私が姉のいない余暇を割いてまで、このような事を手伝わねばならんのだ」

 

「ハァ……これは貴方のためでもあるのですよ。『姉が何かを企んでいる』、そういえば分かりますね?」

 

「クッ!! これは借りだ、後で覚えておくが良い!!」

 

 苦々しく顔をして、渋々受け入れるゴルゴーン。

 本来彼女の髪に生えた蛇たちは理性がないのだが、姉の姿を見ると本能で怯えるために、確かに姉たちの行動記録を見る分には役立つ。

 

「さて、次は調べ物です。まずは文献を当たるのが良いでしょうか」

 

 探偵メドゥーサは、図書館へ赴いた。

 

 □□□

 

 

「おや、読み聞かせの最中でしたか……」

 

 声がすると思えば、図書館司書である紫式部と子供サーヴァントたちのものだった。

 定期的に読み聞かせ会が開かれているのは知っていたが、大人のサーヴァントも聴きいっているあたり人気なのだろう。

 探偵は邪魔にならないよう、こそこそと隅で文献を探す。

 長身なので高い本棚にも手が届きやすいが、

 それを言われる度に「背が高いと悪いことのほうが多いです」と返すのが常だった。

 

「これはどうでしょう……」

 

 手に取ったのは、ゴルゴン三姉妹の伝承に関するもの。

 メドゥーサは、あまり自分の話が書かれたものは、化け物としての面を強調されやすいため読みたくない。

 しかし、今はステンノの別霊基に関わる情報が知りたいため、仕方なくページをめくった。

 

「……これは、後世の人たちによる話ですか」

 

 自身がペルセウスに倒されてから、ギリシャやローマ、そして近代に至るまで様々な逸話が加わったり解釈が増えたりした。

 たかが人間にどう思われるようがメドゥーサは気にしないが、時に再び神として祀られることもあったというのは初耳だ。

 

『オルペウス教では、ゴルゴンたちは崇拝され、時に月を「ゴルゴーンの首」として崇めることもあった』

 

 そんな文献の話を読んで、そういえばあの微笑特異点にも偽物の月があったことを思い出す。

 まさかあの月は、もしかして上姉様の宝具だったりするのだろうか。

 そういえば、最初に見せてもらった時、メドゥーサの持つ『他者封印(ブラッドフォート)鮮血神殿(アンドロメダ)』という宝具に似ていると直感した。

 メドゥーサの持つ石化の魔眼の効力を拡大し、島一つ分の範囲にいるものから生命力を吸い上げる神殿という名の結界だ。

 ただし。カルデアで召喚された自身では宝具から『鮮血神殿』という名称のスキルにまで性能を下げているため万能性はない。

 

 一方で先ほどあったアヴェンジャークラスのメドゥーサは、怪物という側面を強調された結果、『強制封印(パンデモニウム)万魔神殿(ケトゥス)』という宝具を持つ。

 それは鮮血神殿をより強力ににしたもので、真名解放した途端に生物は皆溶解するという恐るべきものである。

 

(もし上姉様が、私の『鮮血神殿』を真似したとすれば……石化の魔眼がない代わりに、美貌により周囲の人間の目を惹きつけることで魂を吸い上げるような効果になるでしょう……)

 

 同じゴルゴーン三姉妹であれば、姉妹の逸話や宝具を借り受けることも可能だろう。

 カルデアでも、本来は近親者や近い間柄の宝具を譲り受けて使う例もみられる。

 

「……まぁ、そんなこと起こるわけないでしょうけど。カルデアであんな巨大な月を出したら、私より置き場所に邪魔でしょうし」

 

 メドゥーサは、まだ特異点で何が起こっているかを知らないため、あまり真剣に考えず本を閉じた。

 

「メドゥーサ様、いらっしゃっていたのですね」

 

 柔らかな物腰の声に振り向くと、黒髪色白の司書、紫式部が微笑んでいた。

 音読会はどうやら終わっていたようだ。

 

「立ちながら難しい顔をなされていますが、どうないました? 調べ物でしたら、私も協力させて頂きますが」

 

「……なぜ、私が調べ物をしていると?」

 

「その探偵のような格好、調べ物の最中ではないのですか?」

 

「……合っています」

 

 初歩的な推理をされてしまったのは私の方でしたか、と内心少し悔しがメドゥーサ。

 すると周囲に、音読会で集まっていた子供サーヴァントたちもやってきた。

 

「あら、メドゥーサのお姉さん。その鹿追帽はなあに? 名無しの森に探検なら、一緒に行きましょう!」

 

Bonjour(ボンジュール)、お姉さん。森なら開拓しなくちゃだね!」

 

「こんにちはー、解体楽しみー!」

 

 キャッキャッとはしゃぐ少女たち。

 小さく可愛らしい彼女たちに、メドゥーサは彼女たちのように、姉たちのように、成長せず可愛らしい存在になりたいと思っていたことを思い出す。

 三姉妹の中で1人だけ成長してしまったせいで、可愛くなくなり、姉からお仕置きを貰い、そしてトラウマとなっts。

 それでいて可愛いものが好きの彼女は少女たちをみて微笑み、同時に姉たちによるトラウマを思い出し、癒されて、恐怖し、癒されて、顔が引き攣る。

 そして感情が限界を迎えた結果、キュウと倒れ込んでしまった。

 

「メドゥーサさま──ー!?」

 

 図書館に、紫式部の叫びが木霊(こだま)した。

 

 

 

 □□□

 

 

「……おのれ、いつもの悪戯かと思えば全く違うではないか。聞いていないぞ、メドゥーサよ」

 

 監視映像を見終えたゴルゴーンは悪態をついた。

 どうせどこかに悪戯用の罠を仕掛けたとか、物を隠したとかいつもより手の込んだ悪戯を計画していたとか、そういう話だと思っていた。

 しかし、この映像に映るのは全く別のものだった。

 

 画面はステンノがマスターの部屋に物を持って入る映像と、最後に出ていく瞬間で止まっている。

 映像は何もおかしくはない。

 問題なのは、3つ目の一時停止された映像。

 そこに映っているのもまた、ステンノが出ていく瞬間である。

 

「なぜ、2回も映っているのだ……!」

 

 つまり、入室するステンノは1人であるにも関わらず、出ていくステンノは2人いるのだ。

 

 片方が同じ顔のエウリュアレということはない。

 他人ならまだしも、ゴルゴーンは姉たちを間違える妹ではない。

 

 事件の謎は、探偵メドゥーサが何も知らないままに、少しずつ追求されていくのであった。

 




原作だとメドゥーサの幕間も好きです。
どうでも良い相手への態度とか、ステンノの姉妹なんだなって感じですので、是非チェックしてみて下さい。
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