ステンノという愛について【完結】 作:AIRUNo(旧AIRU)
女神は気まぐれである。
女神は怠慢である。
いかにして自らは動かず、人を必死にさせるかを常に考え面白がっている。
「ねえ、一つお願いしたことがあるのだけど。か弱い女神にはできない、貴方にしか頼めないことよ」
神話の頃から、近づくものは彼女に自然と魅力されて言いなりになっていく。
飴と鞭なんて言うけれど、彼女は飴1つだけで100年鞭打ちを耐えさせるし、それも突然気分を変えて見限ったり、石にしてしまう。
魅力の効きにくい純粋な人間は、本能で彼女を避けるけど、結局巻き込まれ、彼女の視界にいる人間は全て彼女のオモチャに等しいのだ。
「だめでしょうか、もう頼れる人は貴方しかいないのに。マスター」
初めて彼女を紹介してから3日目、そう尋ねられた。
その問いに、少しでも悩んだが最後、立香は気付くと予想外の試練に巻き込まれていた。
「島に隠していた財宝を取りに行ってほしいの」
そう言われて目的地へ向かうと、魔物の群れやメドゥーサに襲われた。
「前回はごめんなさい。でも今回は趣向を変えたの。頑張って楽しんできてね♪」
そう言われて向かうと、魅了された者同士で戦わせられ、魔力が切れて倒れ込む様子を最前線で楽しまれた。
そんな風に、例え急いでいても、強敵と戦わねばならない特異点の先でも、不意に難題を思いつき、ふっかけるのだ。
あとでその事を言うと
「ごめんなさい、うっかりしていました」
落ちこんだ目でそう言われると、叱ることもできない。全く反省していないことが分かっているとしても。
まるで恋人のような目線で、母のように慈しみ、最後は蛇のように絡めとる。
落ち着いた口調からは考えられないくらいに飄々(ひょうひょう)と、人を試しては去っていく。
だからギリシャ出身のサーヴァントはよく立香に忠告を残していく。
イタズラ好きの女神とは距離を置け。
実際、最初の頃はステンノと戦闘を共にする機会はなかった。
ライダークラスの戦闘ではアサシンクラスが有利だというデータを示されても、彼は主にバーサーカーを連れて戦っていた。
方針が変わったのは、敵の戦闘力が高いと感じ始めた、第六特異点エルサレムの修復を終えてからだった。
バーサーカーのみでは、敵の高い体力を削りきるまえに魔力制御の限界を迎え、やられてしまうことが増えていた。
そこでまずライダークラスのエネミーに対して、適度に種火を貢いでいた(半ば強制的に貢がされていた)ステンノを採用したのだが……結果、彼女が実は見た目以上の強さを見せてくれた。
「戦闘は苦手なのだけど……」
と言いながら、
「いや、すごいよ!! ステンノってこんなに強かったんだ」
「フフ、ありがとう。神話の頃とは違って、サーヴァントの身体は強くなれるのね。とても楽しいわ」
その後改めて彼女の霊基を強化し直し戦闘任務に同行させるようになった。
段々と敵がライダークラスでなくともサポート役として働いてもらった。
そうして人理修復を終えて、気づけば、最も連れ立ったサーヴァントの1人となっていた。
「ステンノ、いつもありがとう」
「いいえ、感謝など要りません。サーヴァントですもの、貴方に従い戦うという当たり前のことをしているだけです。それよりマスター、また1つ面白い遊びを考えたのだけど、聞いて下さる?」
ただ、この時はまだ恋も愛も関係ない。
彼女へ真摯に接するマスターと、そんな彼を面白い玩具として見続けるサーヴァント。
その歯車が狂い出すのは、新宿で起きた幻霊事件の直後である。
そもそもステンノのことをよく知らない人がいるのでは、と思い書いてみました。
話自体はノリで書いてますが、完結まで筋はあるので、未完結放置とはならないはず…