ステンノという愛について【完結】 作:AIRUNo(旧AIRU)
「マスター!!」
立香は目を覚まし、そしてすぐに状況を思い出した。
すぐに身を起こし、奥にそびえる虚月神殿と、マシュ以外のサーヴァントが誰もいないことを確認する。
何より満身創痍のマシュから、今の危機的な状況を察する。
歴戦で鍛えられた勘が、ここに来て冴え渡っていた。
「マシュ、召喚サークルの準備だ!」
「……はい!」
確か記憶では、サーヴァント数騎騎分を召喚する魔力があったはず。
その間、通信が入る。
ダヴィンチの落ち着いた声だ。
『状況を報告しよう、敵は女神トリニティーを名乗る神霊サーヴァント。我々は先ほどから変形した虚月神殿による砲撃を受けている。ともかく戦闘するのなら、まずはあの神殿まで近づかなくちゃいけないね』
「了解です」
ダヴィンチは、今すぐ戦闘から撤退するか、などと無駄な質問はしない。
カリギュラの作り出した時間のみでは装置の都合で撤退完了ができず、何より2人は引く気がないことを、ダヴィンチは即座に理解していた。
(誰を召喚するべきか……)
立香は数秒考える。
目の前にあるのは巨大な月型の神殿。
例えば、人類初の月面着陸者ニール・アームストロングを呼べば、あそこまで容易にたどり着けるだろう。
「月世界旅行」という月への行く話を手がけた映画監督ジョルジュ・メリエスも、攻を奏すかもしれない。
しかし生憎、立香は彼らと縁がないために確実に呼び出せるか分からない。
月へ行く逸話を持ち、移動の『
対神性のスキルを持ち、敵の防御を無視して因果逆転の死を与える『
だけどそれでは、ピースが足りない。
最後の最後で何かを掛け違えるという直感がはたらく。
敵の女神トリニティーは、ステンノの神核をもとに生まれた存在。
「マスター……ハァ、ハァ、準備完了まであと1分……です」
マシュの呼びかけに頷きながら、改めて彼女の重傷具合を確認する。
おそらく彼女にはもう戦う力が残っていない。
この召喚に全てがかかっている。
しかし、敵もそれに気付いていた。
カリギュラの消滅後、ようやくマシュたちを発見した女神トリニティーは、改めて宝具を放つ準備に入る。
巨大な神殿が動き、方位角、射出の威力を調整し始めた。
「「「何らかの術式作成を確認……よって確実な殲滅より先に妨害行為を開始する」」」
そうして飛ばされたのは、威力が落ちながらも
家一つは全壊させられる破壊力の魔弾。
ただの人間と動くことすらままならないサーヴァント2人だけでは避けることが難しい。
召喚サークルはまだ起動完了していない。
これで勝敗は決するはずだった。
バンッ
爆撃。
炎が燃え上がり、煙が周囲に広がる。
しかしそれは、立香たちのいる場所などでなく、はるか頭上で起きた。
「「「……推定、何者かによる妨害により、射撃が空中で相殺された可能性」」」
立香たちはそのことに気づかない。
そして盾の召喚サークルが大きく輝いた。
「マスター!!」
少年は右手を突き出し、声高らかに告げる。
「────告げる」
汝の身は我が下に
我が命運は汝の剣に
聖杯の寄るべに従い
人理の轍より応えよ
我は常世総ての善と成る者
我は常世総ての悪を敷く者
汝三大の言霊を纏う七天
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ──―!
まばゆい光が大地を照らし、虚なる月を霞ませる。
それは一時、女神の眼さえもくらませる。
そこに現れるのは……
———立香は最後まで考えていた。
あの女神を倒すにはどうするべきか。
そこで発想を変えたのだ。
あの女神を倒すのに、相応しいのは誰なのか。
魔力を帯びた光により、人の形が作り出される。
1人は巨大で恐るべき怪物。
1人は小さくも美しき姿。
1人はその2騎の中間の姿。
頭には蛇を。
手には不死殺しの鎌を。
地面には乙女を縛り付ける鎖を。
1人で3つの側面を持つサーヴァント。
ゴルゴーン三姉妹の末弟にして、成長する女神。魔眼の女怪。
アヴェンジャーは悪態をつく。
「全く……どうして上姉様は毎度トラブルを起こすのか」
ランサーはギュッと武器を握りしめる。
「行きましょう……絶対に上姉様を助けてみせます!」
ライダーは振り返り、立香に微笑んだ。
「よくやりました、リツカ……あとはお任せ下さい」
サーヴァント、メドゥーサ。
3つの
「姉の不始末は、妹がつけるものですから」
後編が明日ということなので、今日もう1話上げられたらなと思います。